抽象化思考とは|具体化思考との関係や鍛え方を紹介

抽象化思考とは、情報のなかから物事の本質を捉えたうえで、考えることができる能力を指します。本記事では、抽象化思考の概要やメリット、鍛え方などについて紹介します。企業で抽象化思考を導入したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
- 01.抽象化思考とは
- 02.4つの抽象化思考法
- 03.抽象化思考を高めるメリット
- 04.抽象化思考の鍛え方・トレーニング方法
- 05.抽象化思考の問題例
- 06.抽象化思考を学べるSchooのオンライン研修
- 07.まとめ
01抽象化思考とは

▶︎参考:頭のいい人になる具体⇄抽象トレーニング
抽象的思考とは、物事の共通点や本質を見つけ、複数の事象をひとつ上の階層にまとめて考える力を指します。抽象的思考を養うことで個々の具体的な事象から要素を抜き出し、分類やグルーピングを行うことで、全体像や根本的な構造を把握できます。
例えば、異なる事例の背後にある共通法則を見つけたり、一見関係のないテーマを結びつけて新しい発想を得たりすることが可能になります。抽象的思考を鍛えることで、情報を整理しやすくなり、複雑な課題に対して本質的な解決策を導き出せるようになります。
具体的思考との違い

具体的思考は、物事を分解し詳細に分析して鮮明にイメージする力を指します。例えば「猫」という対象を考える際に、「飼い猫」「ペルシャ」「三毛猫」「近所の野良猫」と細かく区別するのが具体的思考です。現象を具体的に捉えることで、事実を正確に理解し、相手にもイメージを共有しやすくなります。一方で抽象的思考は、複数の要素から共通点や本質を取り出してまとめる力です。この2つは対立する概念ではなく、状況に応じて使い分けることで理解が深まり、課題解決や新しい発想につながります。
具体↔︎抽象思考とは

具体と抽象を行き来する思考法は「具体↔︎抽象思考」と呼ばれます。具体的な事例を抽象化して共通の枠組みにまとめ、さらに必要に応じて具体的な事象へと落とし込む往復を繰り返すことで理解が深まります。図で示されるように、階層を上がることで全体像を把握し、階層を下がることで事例を鮮明に説明できます。この思考法を身につけると、相手の理解度に応じて説明のレベルを調整でき、コミュニケーションの質や課題解決の精度が大きく向上します。
024つの抽象化思考法

▶︎参考:頭のいい人になる具体⇄抽象トレーニング
抽象化思考は一見難解に思われますが、具体的なアプローチを学ぶことで誰でも習得可能です。代表的な方法には「共通点思考」「分類思考」「要点思考」「法則思考」の4つがあります。これらを意識して活用することで、複雑な情報から本質を捉え、課題解決や新しい発想につなげることができます。
共通点思考
共通点思考は、複数の事象や要素から似ている部分を抽出して概念化する方法です。例えば「カップラーメンと恋愛の共通点は?」と考えると、一見無関係なものの中から「手軽さ」「熱が冷めやすい」といった共通点を導けます。このように特徴を列挙し、共通する概念を見出すことで、思考の幅を広げることが可能です。日常の異なる対象を比較しながら共通点を探す訓練を繰り返すと、抽象化力が自然に鍛えられます。
分類思考
分類思考は、散らばった要素をグループに分け、整理する方法です。机の上を片づけるときに、書類・文房具・飲み物といったカテゴリに分けるのも分類思考の一例です。複数の情報を整理して俯瞰することで、関係性や全体像が見えやすくなります。業務では、タスクを種類ごとに分類することで優先順位を明確化し、効率的に進められます。複雑な情報を整理して理解を助けるための基盤となる思考法です。
要点思考
要点思考は、具体的な情報の中から重要な部分を抽出する方法です。大量の情報の中で「結局、何が大事なのか」を見極めることで、課題の本質が浮かび上がります。例えば「メールの件名は何?」と問いかけると、内容の要点を端的に表す言葉を考えることにつながります。会議の議論でも同様に「要点は何か」を意識すると、無駄な情報に振り回されず、重要な意思決定を行うことが可能になります。
法則思考
法則思考は、共通点思考・分類思考・要点思考で得た情報をさらに抽象化し、一般化された法則を導き出す方法です。例えば「成長している企業の共通点は?」を考えたときに、「顧客志向」「継続的学習」といった普遍的な法則にまとめられます。法則思考を用いると、特定の事例に依存せず、応用可能な知見を得ることができます。業務においては成功パターンや失敗パターンを抽象化し、再現性のある戦略を立てる力につながります。
03抽象化思考を高めるメリット
抽象化思考を高めることで、発想力や学習力、コミュニケーション力、応用力など多方面で効果が得られます。変化の激しい社会において柔軟に対応できるため、個人の成長はもちろん、組織全体にとっても大きな価値を生み出す要素となります。
- 1.さまざまなアイデアを生み出せる
- 2.知識やスキルを短期間で習得できる
- 3.幅広いコミュニケーションに対応できる
- 4.応用力が高くなる
それぞれのポイントを具体的に見ていきましょう。
さまざまなアイデアを生み出せる
抽象化思考を活用することで、豊かな発想力が生まれます。既存の概念にとらわれず、新しい組み合わせを考え、これまで思いつかなかったアイデアを導けます。結びつける要素が離れているほど、ビジネスインパクトは大きくなります。抽象化によって今までと違った切り口で分析でき、大きな成果につながることが期待できます。
知識やスキルを短期間で習得できる
抽象化思考により物事の全体像を先に捉えると、学習効率が高まります。まず抽象的なレベルで業務や知識を理解することで処理速度が上がり、その後に具体的な要素を覚えると短期間での習得が可能になります。このプロセスは新しいスキルを学ぶ際にも有効です。
幅広いコミュニケーションに対応できる
抽象化思考を重視した話し方を意識すると、全体像を提示しながらストーリー立てて説明できるようになります。相手も話の骨子を先に把握できるため、理解が進みやすくなります。その結果、立場や状況に応じて柔軟に伝え方を変えられ、円滑なコミュニケーションが実現します。
応用力が高くなる
抽象化思考によって本質を捉える習慣がつくと、問題に直面した際に幅広い視点から解決策を立てられるようになります。単なる事例依存の対応ではなく、汎用性のある方法を見出せるため、状況に左右されない応用力を発揮できます。これにより、多様な課題へ柔軟に対応する力が養われます。
04抽象化思考の鍛え方・トレーニング方法
抽象化思考は、日常的な練習によって段階的に高められます。特に「共通点を探す」「グループ分けしてみる」「要点をまとめる」「法則を探す」といった4つの方法は実践しやすく、個人でも企業研修でも取り入れやすいトレーニングです。それぞれの方法を習慣化することで、複雑な情報の整理力や本質を見抜く力が自然に鍛えられます。
共通点を探す
共通点を探す思考は、一見無関係なものの中から似ている特徴を抽出する方法です。例えば「カップラーメンと恋愛の共通点は?」と問いかけると、どちらにも「手軽さ」や「熱が冷めやすい」といった共通点を見出せます。対象の特徴を列挙しながら共通する概念を導くことで、発想力を広げる訓練となります。日常的に異なるものを比較して共通点を見つける習慣をつけることで、抽象化思考が強化されます。
グループ分けしてみる
散らばった要素をカテゴリーごとに整理するのが、グループ分けのトレーニングです。例えば「机の周りを片づける」際に、書類・文房具・飲み物などに分けることで全体像を把握できます。ビジネスでもタスクを種類ごとに分類すると優先順位が明確になり、効率的に進められます。グループ分けを繰り返すことで、情報の構造を整理する力やパターンを見抜く力が高まります。
要点をまとめる
要点をまとめる思考は、大量の情報の中から「結局、何が大事なのか」を抽出する方法です。例えば「会議の要点は何か?」と考えると、余分な情報を削ぎ落とし、重要な意思決定に直結する要素を導き出せます。メールの件名を考える際にも、本文全体を要約する力が求められます。日常業務で意識的に要点を整理する習慣をつけることで、情報伝達力や判断力が大きく向上します。
法則を探す
法則を探す思考は、共通点や分類、要点を踏まえて普遍的な原則を導き出す方法です。例えば「成長している企業の共通点は?」を探ると、そこから「顧客志向」「継続的な改善」といった法則に抽象化できます。個別の事例から一歩引いて法則を見つけると、他の分野にも応用できる知見が得られます。このトレーニングを繰り返すことで、ビジネスにおける再現性の高い戦略構築が可能になります。
05抽象化思考の問題例
抽象的思考は、複数の出来事から共通点や法則を見抜き、意思決定の基準をつくる力です。本章では、Schooの授業の考え方を用い、短時間で実践できる問題形式のトレーニングを紹介します。日々の振り返りやチーム学習に取り入れて、説明力と課題発見力を高めていきましょう。
問題:「〇〇」とかけて「△△」と解く。その心は? 一見、関係が薄い2つの対象の共通点を見つける練習です。
例題:「カップラーメン」とかけて「恋愛」と解く。その心は?
▶︎参考講座:頭のいい人になる具体⇄抽象トレーニング
回答例
回答例:「熱くて冷めやすい」「放っておくとダメになる」。
解説
この問題は、一見関係のない2つの対象を比較し、特徴を抽象化して共通点を導き出すトレーニングです。具体的な現象を分解し、共通の概念を言葉に置き換えることで、説明力や発想力が磨かれます。3つのステップを順に実践すると、短時間でも思考が整理され、相手に伝わる表現が可能になります。
STEP1:それぞれの特徴を列挙する
最初のステップでは、対象となるものをできるだけ具体的に分解し、特徴を列挙します。例えば「カップラーメン」は「熱い」「放置すると伸びる」「待ち時間がある」と捉えます。「恋愛」は「熱量が高まる」「放置すると冷める」「継続には手入れが必要」と整理できます。ここでは正解を探すのではなく、要素を幅広く出すことが重要です。特徴を書き出すことで後の共通点発見につながります。
STEP2:共通点を探す
列挙した特徴をもとに、両者に共通する抽象的な要素を見つけ出します。カップラーメンと恋愛の場合、「温度」「時間」「維持」という抽象語でまとめられます。異なる対象を同じ観点でくくると、それぞれの性質が整理され、理解が深まります。この段階で共通のフレームワークを作ると、視点を転換する力が養われ、他の対象にも応用しやすくなります。
STEP3:なぞかけの答えを考える
最後に、抽象語を用いて共通点を端的に表現する言葉を作ります。ここでは「熱くて冷めやすい」「放っておくとダメになる」といった答えになります。表現を短くまとめることで相手に伝わりやすくなり、言葉の精度も磨かれます。このプロセスを繰り返すと、情報を整理して抽象化し、再度具体的に落とし込む一連の流れを自然に実践できるようになります。
06抽象化思考を学べるSchooのオンライン研修

Schoo for Businessは、国内最大級の9,000本以上の講座を保有しており、抽象化思考をはじめ、階層別研修からDX研修まで幅広く活用いただけます。また、自己啓発の支援ツールとしてもご利用いただけるため、学びを組織全体に定着させる仕組みづくりに役立ちます。
受講形式 | オンライン (アーカイブ型) |
アーカイブ本数 | 9,000本 ※2023年5月時点 |
研修管理機能 | あり ※詳細はお問い合わせください |
費用 | 1ID/1,650円 ※ID数によりボリュームディスカウントあり |
契約形態 | 年間契約のみ ※ご契約は20IDからとなっております |
抽象化思考に関するSchooの講座を紹介
Schooは汎用的なビジネススキルからDXやAIのような最先端のテーマまで、9,000本以上の講座を提供しています。この章では、抽象化思考に関する代表的な授業を紹介します。
地頭力を鍛える「抽象化思考法」特訓
「地頭力」の重要要素である抽象化思考力を実践的に鍛える授業です。複数の具体的事象から共通点を導き出し、本質を見抜く力を高めることを目的としています。抽象化を通じて、既存の経験をまったく新しい状況に応用できる柔軟な発想力が養われます。
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ビジネスコンサルタント。株式会社クニエ コンサルティングフェロー。著書『地頭力を鍛える』などを通じ、問題解決力や思考法の普及に注力している。
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
頭のいい人になる具体⇄抽象トレーニング

「頭のいい人」に共通する具体と抽象を自在に行き来する力を鍛える授業です。抽象的な問いを具体的なタスクに落とし込み、効率的に解決するための思考法を学びます。課題発見から解決までの流れを体系的に学習でき、実務に直結するスキルとして習得可能です。
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株式会社キーメッセージ代表取締役。人事・DX・経営コンサルティングに従事し、大手企業の組織改革や人材開発を支援。具体と抽象を往復する思考力育成に強みを持つ。
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
07まとめ
抽象化思考は、複数の情報から共通点や本質を見出し、意思決定や課題解決に活かせる重要なスキルです。本記事では、抽象化思考の意味や具体との違い、代表的な4つの思考法、鍛え方やトレーニング方法を解説しました。さらに、実践的な問題例を通じて日常での活用法を紹介し、Schooの研修講座も取り上げました。
抽象化思考を身につけることで、発想力や応用力が高まり、変化の激しい環境においても柔軟な対応が可能になります。個人の成長はもちろん、組織全体の競争力向上にも直結します。日常業務や研修に取り入れ、繰り返しトレーニングすることで、抽象化思考は誰でも習得できる力として定着していきます。
▼【無料】越境学習による企業人材育成|ウェビナー見逃し配信中

越境学習を活用した人材育成についてのウェビナーアーカイブです。多様性が重要視され、イノベーション人材が求められている中で、積極的に自分が持っている価値観や考え方とは別の文脈に触れられる「越境学習」についてご紹介します。
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登壇者:石山 恒貴 様法政大学大学院政策創造研究科 教授
NEC、GE、米系ライフサイエンス会社を経て、現職。越境的学習、キャリア形成、人的資源管理、タレントマネジメント等が研究領域。日本労務学会副会長、人材育成学会常任理事等。主な著書:『越境学習入門』(共著)、『日本企業のタレントマネジメント』、『地域とゆるくつながろう!』(編著)、『会社人生を後悔しない40代からの仕事術』(共著)等