社員が抽象化思考を持つことで企業に与える影響とは?メリットや鍛え方を解説

抽象化思考とは、情報のなかから物事の本質を捉えたうえで、考えることができる能力を指します。本記事では、抽象化思考の概要やメリット、鍛え方などについて紹介します。企業で抽象化思考を導入したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
- 01.抽象化思考とは
- 02.社員が抽象化思考を持つことのメリット
- 03.抽象化思考が企業に与える影響
- 04.企業が行える抽象化思考の鍛え方
- 05.抽象化思考を学べるSchooのオンライン研修
- 06.まとめ
01抽象化思考とは
抽象化思考とは、物事を抽象化して考えることで本質を捉える考え方を指します。言い換えると、大きなまとまりでざっくりと考える方法を意味するのです。抽象化思考で考えることで、重要な情報だけをピックアップできるため、本質を見抜く力を高められます。 例えば、猫と聞いて「4本足を持つ動物」「哺乳類」などと表現するのは、抽象的思考です。これら2つの特徴は、猫だけでなく他の動物にも広く当てはまる特徴です。 抽象化というと、物事を曖昧にすると捉える人がいるかもしれません。しかし、曖昧にするのではなく、共通の要素を見つけてひとつの概念にまとめる特徴を持っています。
具体的思考との違い
具体的思考とは、ひとつの物事を深く突き詰めて考えることを指します。上記で紹介した猫を例に挙げると、「飼い猫」「ペルシャ」「三毛猫」「近所の野良猫」などと表現するのが、具体的思考に該当します。 抽象化と具体化は、反対の意味を持つ言葉です。抽象化が、物事の特徴を理解しやすくするのに対し、具体的とは物事をくわしく表すことだと理解できます。
抽象化が得意な人
抽象化思考が得意な人は、ひとつの物事をさまざまな切り口から柔軟に捉えることができます。一見すると関係がないようなふたつの物事から関連性を見つけ出し、結びつけて考える能力があり、多角的なアイデアを生み出せます。
抽象化が苦手な人
抽象化思考が苦手な人は、物事を多角的に捉えることができないため、視点が少なく単一的な視点で考える癖があります。また、モノやコトの共通点を、見つけられない傾向があり、アイデアがなかなか浮かばず、臨機応変な行動に対応しにくい点も特徴です。
02社員が抽象化思考を持つことのメリット
企業において、社員が抽象化思考を身につけると、多くのメリットをもたらします。抽象化思考を持つ社員は、変化の激しい現代社会で必要とされる人材です。
- 1.さまざまなアイデアを生み出せる
- 2.教えたことを短期間で覚えられる
- 3.さまざまなコミュニケーションに対応できる
- 4.応用力が高くなる
ひとつずつ具体的に見ていきましょう。
さまざまなアイデアを生み出せる
抽象化思考を活用することで、豊かな発想力が生まれます。既存の概念にとらわれず、新しい組み合わせを考え、これまで思いつかなかったアイデアを生み出せます。 結びつける要素が離れているほど、アイデアが生まれた時のビジネスインパクトは大きいものです。抽象化思考により、今までと違った切り口で分析できるようになり、大きなアイデアへとつながることが期待できます。
教えたことを短期間で覚えられる
物事の全体像を俯瞰して捉えるスキルが身につきくこともメリットです。このため、教えられることを短期間で覚えられるようになります。 最初に、抽象的なレベルで情報を処理すると処理速度が上がります。この特性を活かし、まずは業務内容全体を理解し、その後詳細を覚えていくと短期間で覚えられるのです。
さまざまなコミュニケーションに対応できる
抽象化思考を重視した話し方を心がけると、話をストーリー立てて、分かりやすく相手に伝えられます。相手も先に物事の全体像を提示されると、話の本質を理解しやすくなります。その結果、さまざまな場面における円滑なコミュニケーションが可能となります。
応用力が高くなる
抽象的思考により、本質を見極める考え方を身につけると、問題が発生した時に幅広い視点から解決策を立てることができます。これは、ひとつの問題に対して応用力を高める機会にもなり、あらゆる場面に対応できる力が養えるのです。
03抽象化思考が企業に与える影響
社員が抽象化思考を身につけると、会社に対して大きな影響を与えます。どの影響も、会社にとってプラスになるものであり、社員の行動力を鍛えます。それぞれの影響について、内容をさらに詳しく見てみましょう。
生産性向上
具体的思考に固執してしまうと、思考のアンテナを張り巡らせることができず、先に進めなくなってしまいます。抽象化思考により、物事の目的や本質が明確になると、情報を素早く整理できるようになり、生産性の向上が見込めます。
コスト削減
抽象化思考では不要な考え方を排除しなくてはなりません。会社経営や事業に必要なコストに対しても、同じことが言えます。コスト削減のためには、工程上の無駄な作業を省かなくてはならず、抽象化思考の考え方と一致しているのです。
業務の効率化
コスト削減とも関係しますが、業務効率化も抽象化思考の考え方が大きく影響します。業務を効率化するには、工程上の作業を見直す必要があります。 作業の見直しにより、重要度の低い作業を省くことができます。この結果、作業が滞りなく進むようになり、業務の効率化が見込めます。
イノベーション
イノベーションとは、今までの常識を覆すような、新しい価値を生み出す変革を指します。イノベーションが注目されている背景には、市場競争の加速化・少子高齢化による人材不足・終身雇用制の崩壊・グローバル化・ITシステムの発展など、さまざまな要因が考えられます。 日本企業が生き残るためには、イノベーションを実行しないわけにはいきません。しかし、多くの日本企業ではイノベーションに消極的な姿勢であり、閉鎖的だとされる企業文化が根強く残っていることも影響しています。 抽象化思考は、イノベーションを達成するのに必要不可欠な考え方です。社員が抽象化思考を身につけることで、イノベーションと隣り合わせであるリスクへの適切な対処法が見つけられます。 先の見通しが困難な現代では、企業の存続や継続的な成長にイノベーションが必要です。そのためには、抽象化思考により新たな視点を取り入れる姿勢が求められます。
04企業が行える抽象化思考の鍛え方
ここまで紹介したように、抽象的思考は社員および企業に対して、多くのメリットをもたらします。では、抽象化思考を鍛えるには、どのようなトレーニング方法を実践すると効果があるのでしょうか。企業で実践できる方法をいくつか紹介します。
抽象化思考を鍛える研修を行う
抽象化思考を効率良く鍛えるには、研修を行うのがおすすめです。社員を講師として研修をする方法や、外部の研修機関に委託する方法などがあります。 抽象化思考は、理解力や応用力を大きく高められるスキルです。社員全体で身につけることで、企業の発展に役立てるきっかけにできます。 多くの会社でDX化が進んでいる現代では、抽象化の考え方が広く浸透していますが、研修を受けると意味をより深く理解できます。DXにより生まれた膨大なデータの中から、共通点やパターンを見つけ出すことで、抽象化思考のトレーニングにつながります。
企業内レクリエーションを行う
社員同士の交流を兼ねて、レクリエーションを行うのも効果的な方法です。最初に2つの単語を設定しますが、単語同士の関係性が低いものを選ぶと良いでしょう。次に、単語を使って「○○は、まさに△△である」といった文章を作り、その答えを考えます。 これは、「Why型」と呼ばれる思考を活用したものです。抽象的な思考を深く掘り下げることで、物事の具体的な本質を追究できるのです。 100%正しい答えはありませんので、出来るだけ多くの社員の回答を聞くと、自分の考え方を深める参考になるでしょう。
企画書作成の際にFAVAのフレームワークを利用する
抽象化思考のフレームワークとして、「FAVA」という4つの要素があります。それぞれの要素は、以下の意味を持っています。
- Fact:事実
- Abstraction:抽象化
- Viewpoint:視点
- Actualize:具体化
上記の要素に沿って企画書を作成すると、もともと持っている視点から別の視点に目を向けやすくなります。その結果、打開策が見つけやすくなり、企画書作成においてさまざまなアプローチを見出せるようになるでしょう。
業務を仕組み化する
業務を仕組み化するには、抽象化思考が必要です。つまり、誰でも分かりやすい方法で業務の流れを定めなくてはいけません。 抽象化思考により、作業全体の流れを誰もが理解できるよう伝えることで、抽象化思考を身につけるトレーニングになります。流れのなかで、同じ問題が再発してしまえば、正しい仕組み化ができていないということになります。
05抽象化思考を学べるSchooのオンライン研修
Schoo for Businessは、国内最大級7,000本以上の講座から、自由に研修カリキュラムを組むことができるオンライン研修サービスです。導入企業数は2,700社以上、新入社員研修や管理職研修はもちろん、DX研修から自律学習促進まで幅広くご支援させていただいております。
Schoo for Businessの特長
Schoo for Businessには主に3つの特長があります。
【1】国内最大級7,000本以上の講座数
【2】研修設定・管理が簡単
【3】カスタマーサクセスのサポートが充実
抽象化思考に関するSchooの講座を紹介
Schooは汎用的なビジネススキルからDXやAIのような最先端のスキルまで、7,000本以上の講座を取り揃えております。この章では、抽象化思考に関する授業を紹介いたします。
地頭力を鍛える「抽象化思考法」特訓
この授業は「"地頭力"の要素の1つである抽象化思考力を鍛える授業です。」抽象化思考法を身につけることで、いくつかの具体的な事象から共通点を見出し、物事の本質を見抜く(=コツを掴む)ことができるようになります。それは個別の事象に応用をさせる能力であり、これまでの経験を全くの新しい事にも活かすための能力です。この授業で抽象化思考力を身につけましょう。
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ビジネスコンサルタント
1964年神奈川県生まれ。東京大学工学部を卒業後、株式会社東芝を経てビジネスコンサルティングの世界へ。 アーンスト&ヤング、キャップジェミニ等の米仏日系コンサルティング会社での経験を経て2009年より株式会社クニエのマネージングディレクター。2012年より同社コンサルティングフェロー。 戦略策定や業務/IT改革を製品開発領域等のコンサルティングを実施。近年は問題解決や思考力に関する講演やセミナーの企業や各種団体、大学等に対して国内外で実施中。著書に『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』等。
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
「意思決定」を科学する
本授業では『「意思決定の科学」 なぜ、それを選ぶのか』(講談社)の著者であり、 公立はこだて未来大学で実験経済学を研究分野としている川越敏司先生をお迎えして、意思決定の分類と大きな選択に時間をかけるための日常的な選択のあり方・大きい選択で人が行いがちな傾向とリスクとの付き合い方など、意思決定を科学的に分析し、自らの選択を適切に変えていく秘訣を学ぶことができます。
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公立はこだて未来大学システム情報科学部・教授
1970年和歌山市生まれ。1993年福島大学経済学部卒業。1995年大阪市立大学大学院修了。博士(経済学)。埼玉大学経済学部助手等を経て、2013年より現職。専門分野はゲーム理論・実験経済学。著書に、『実験経済学』(東京大学出版会)、『行動ゲーム理論入門』(NTT出版)、『マーケット・デザイン』(講談社選書メチエ)、『はじめてのゲーム理論』『「意思決定」の科学』(ともに講談社ブルーバックス)など多数。
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
06まとめ
本記事で紹介してきたように、抽象化思考を身につけることで、物事の本質の意味を捉え、全体像が掴みやすくなります。複数の問題が抽象化すると、さまざまな解決策が見い出せるようになり、会社にとって大きくプラスにはたらくのです。 物事を曖昧にするのと、本質を捉えるのとでは性質がまったく異なります。抽象化思考で大切なのは、本質を捉えることであり、さまざまな視点から物事を見るのに大変重要なのです。
▼【無料】越境学習による企業人材育成|ウェビナー見逃し配信中

越境学習を活用した人材育成についてのウェビナーアーカイブです。多様性が重要視され、イノベーション人材が求められている中で、積極的に自分が持っている価値観や考え方とは別の文脈に触れられる「越境学習」についてご紹介します。
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登壇者:石山 恒貴 様法政大学大学院政策創造研究科 教授
NEC、GE、米系ライフサイエンス会社を経て、現職。越境的学習、キャリア形成、人的資源管理、タレントマネジメント等が研究領域。日本労務学会副会長、人材育成学会常任理事等。主な著書:『越境学習入門』(共著)、『日本企業のタレントマネジメント』、『地域とゆるくつながろう!』(編著)、『会社人生を後悔しない40代からの仕事術』(共著)等