公開日:2023/01/12
更新日:2023/04/09

価値協創ガイダンスとは?6つから構成される全体像や伊藤レポートとの関係性を解説

価値協創ガイダンスとは?6つから構成される全体像や伊藤レポートとの関係性を解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

価値協創ガイダンスとは、企業と投資家の間の「共通⾔語」の質を高めるために経済産業省が作成した手引きのことです。本記事では、価値協創ガイダンスの概要や特徴、さらに伊藤レポートとの関係性を紹介します。

 

01価値協創ガイダンスとは?

価値協創ガイダンスとは、企業や経営者と投資家間の「共通言語」として、企業側が投資家に伝えるべき情報を整理し、投資に必要な情報の開⽰や企業と投資家の対話の質を⾼めるための⼿引きのことを指します。

具体的な使用方法

価値協創ガイダンスは、企業や経営者が、自らの経営理念やビジネスモデル、戦略等を一連の価値創造ストーリーとして投資家に伝えるための手引としても使用することが進められています。経営者が自社の持つ価値をより発展させるために現在の経営状態を整理し、振り返るとともに、今後の経営に向けて事業を効率化や強化をしていくためのマネジメントツールとしても活用できます。

また、この枠組みはESG投資の潮流の中で増加傾向にある統合報告書においても重視される要素で構成されているので、現在の情報開示から変更したいという会社にとっても使いやすい指標となっています。

投資家が求める視点とは

投資家は、投資判断や投資先企業の企業価値を高め成長を促すスチュワードシップ活動に役立てるための手引として、価値協創ガイダンスを活用することができます。投資家が企業に投資する場合、中長期的戦略や社内のガバナンスなど観点から企業を評価します。また、企業が属する業界の動向や世界情勢などを踏まえて判断します。

投資家やアナリストは、企業側から本ガイダンスの項目が一方的に開示・説明されることを待つのでなく、企業との情報・認識ギャップを埋めていくために本ガイダンスを参照して企業と対話を行い、自らの投資判断等に必要な情報を把握することが期待されています。

価値協創ガイダンスができた背景とは?

価値協創ガイダンスには、1.0と2.0という2つのバージョンがあり、それぞれ2017年、2022年に公表されました。いずれも2014年に公表された 「伊藤レポート1.0」 に始まる、日本経済活性化に向けた研究・提言の取り組みの中で作成されています。

経済産業省は2014年、日本企業が欧米企業と比較して長期に渡り低収益に陥っていることを課題視し、その構造をひも解き打開していくための提言を行いました。それが「伊藤レポート1.0」です。ここでは、従来の慣習に捉われない企業収益体質の改善や、それを促進する企業と投資家との対話が重視されました。 続いて経済環境の変化の中、「持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会」が2016年8月に発足しました。ここでは企業の競争優位となる資産が有形資産から無形資産にシフトしていることなどを背景に、企業は重要な無形資産(人材・知的財産・ブランド等)への投資を行い、投資家は非財務情報をもとにしたESG投資を行うことが重要だと指摘されました。これらの提言は 「伊藤レポート2.0」にまとめられ、企業側と投資家側が共通の目線を持って対話をするための指針として、「価値協創ガイダンス1.0」が作られたのです。

また近年、様々な紛争や気候変動が人の生活に与える影響が注目を集めるようになりました。そのため経済産業省は、2020年に公表した「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会 中間とりまとめ」内で、企業が長期的かつ持続的に収益を維持するためには社会的なサステナビリティの観点が企業活動にも織り込まれることが必要であるとの考えを提唱しました。そしてこの議論を更に深めたものとして、これら「サステナビリティ・トランスフォーメーション」の要点をまとめた「伊藤レポート3.0」と、投資家と企業との対話基準として「価値協創ガイダンス2.0」が提示されるに至ったのです。

 

伊藤レポートとは?

伊藤レポートとは前項の通り、日本政府の成長戦略の一環として経済産業省が発足した「『持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~』プロジェクト」の最終報告書報告書の通称のことを指します。プロジェクトの座長を務めた伊藤邦雄氏の名前から、伊藤レポートと名付けられています。2014年に公開された後、日本企業を取り巻く環境の変化に合わせ、2017年と2022年に改訂版が公表されました。

伊藤レポート1.0では企業の収益体質の改善、2.0では無形資産へ投資やイノベーション創出のため取り組み、3.0では社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを「同期化」させていくために必要な経営・事業変革への実現に向けた効果的な情報開示や建設的な対話を行うためのフレームワークが提示されました。

▶︎参考:伊藤レポート

▶︎参考:伊藤レポート2

▶︎参考:伊藤レポート3

 

02価値協創ガイダンスの5つのフレームワークを解説

価値協創ガイダンスは、無形資産の投資やESGの取組がどのように企業の強みや競争優位性を確保し持続的に向上させるのに繋がるかという「価値創造ストーリー」を説明するために「価値観」「長期戦略」「実行戦略」「成果と重要な成果指標(KPI)」「ガバナンス」「実質的な対話・エンゲージメント」という6つのフレームワークを挙げています。企業の競争優位やイノベーションの源泉となる、人材や知的財産などの無形資産への投資を重視し、企業の持続可能性・成長性という観点から、ESGへの取組も重視する考え方に基づいています。

▶︎参考:経済産業省|企業と投資家の対話のための「価値協創ガイダンス 2.0」(価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス 2.0 - サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)実現のための価値創造ストーリーの協創 - )

▶︎参考:経済産業省|価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス 2.0

1.価値観について

まず1つ目の価値観とは、企業や社員が社会課題に対して取るスタンス、判断軸、判断の拠り所となるものを指します。ここでは、自社の価値観を社外に明示するとともに、どのような社会課題を重視しているのかを示すことが重要とされています。これらを対外的に明示することで、企業は変化の激しい社会において判断の礎が出来、従業員エンゲージメントの向上や中長期的な価値創造に繋げられます。また、投資家は企業価値観を知ることで、ビジネスモデルや成長戦略、KPIについて適切に判断できるようになる」効用が期待できます。

また、価値観に近い言葉として、企業理念、社是、社訓、ミッション・ビジョン、パーパスなどの言葉があります。実際に「価値観の明示」を実行するにあたっては、これらを策定・磨き上げて対外的により広く発信していくことが必要になります。

2.長期戦略について

2つ目の項目である「長期戦略」は、企業が中長期で実現を目指す「長期ビジョン」、それを支える「ビジネスモデル」、安定的な企業経営を行うための内部・外部環境分析(「リスクと機会」)で成り立ちます。長期的かつ持続的な価値創造の基盤となる設計図の役割を果たします。企業が人・情報・お金・時間・知的財産などの無形・有形の経営資源を効率良く使うことで、長期的かつ持続的な企業価値向上へとつなげていく仕組みです。

企業は、長期ビジョンを達成するための、ビジネスモデルを構築するとともに、必要に応じて社内を変革することが重要です。また、競争優位を確保するのに必要な要素として、「経営資源・知的財産を含む無形資産」「ステークホルダーとの関係維持・強化」「収益構造や自社の牽引要素を提示」が挙げられます。 外部環境の変化を見据え、競合との差別化や将来市場における自社のポジショニングを把握し、ビジネスモデルに組み込むことで、投資家の理解も得ることができます。

3.実行戦略について

3つ目に挙げられている「実行戦略」は、企業が長期戦略を実現する上で取り組む足元・及び中期での戦略のことであり、会社の中期経営戦略などが該当します。実行戦略の取り組みを通じ、企業が有する経営資源やステークホルダーとの関係を維持や強化を図ります。

ここでは自社の足下の財政状態・経営の分析や現在の評価を洗い出すと共に、長期的なリスクと機会の分析をすることで、長期戦略の具体化に向けた戦略を策定・実行することが必要となります。特に、長期戦略を策定した時と外部関係の状況が変化している場合は、進むべき道が正しいのかを再度確認することも大切です。また、企業を取り巻く様々なリスクへの対応として、ESGやSDGsなどを戦略に組み込み、対外的に提示していくことも重視されています。

4.成果と重要な成果指標(KPI)について

4つ目に挙げられている「成果(パフォーマンス)と重要な成果指標(KPI)」は、自社が持つ価値観を踏まえた長期戦略や実行戦略によって、どのぐらい社会に対し価値を創出することができたか、また経営者がどのように分析・評価しているかを示す指標です。結果を出さずに理想の社会像や自社の持つ価値観を語っても投資家やステークホルダーからの信頼を得ることはできません。

企業は、KPIを用いて長期戦略等の進捗管理・成果評価を振り返ると共に、今後に向けて必要に応じた見直しを行うことが重要となります。 投資家に向けて、KPIを設定した理由や、価値観や重要課題とのつながり、長期戦略や実行戦略における位置づけなどを詳しく説明することが望ましいです。また、財務価値とKPIとのつながりや今後の見通しを併せて示すことで、投資家の理解をさらに深めることができるでしょう。

5.ガバナンスについて

5つ目の項目は、「ガバナンス」は、長期戦略や実行戦略の策定・推進・検証を行い、長期的・持続的に企業価値を高める方向に企業を規律付ける仕組み・機能です。企業は、長期戦略などの企業行動を律するためのガバナンスの仕組みを整備することが求められています。投資家は、投資している会社のガバナンス状況を確認することで、企業を信頼し、安心して投資をすることができるようになります。

具体的な行動として、企業の経営判断を担う社長やCEOをはじめとした、業務執行取締役、執行役・執行役員などが持つ役割・機能分担を明確に公表し、それぞれの役割・機能を実効的に果たしていくことが求められています。株式会社の場合は、取締役が株主によって選任されるためより、役割の明確化が求められます。また、これらの体制が長期戦略の実現や価値の創造にどのように寄与するのか、なぜその体制を構築したのかが併せて提示できることが望ましいとされています。 また近年では、属性や経験、能力等の多様性が確保されていること、透明性・合理性の高い意思決定を行う仕組みが担保されていることを重視されることも多いです。

6.実質的な対話・エンゲージメント

最後である6つ目の項目である「実質的な対話・エンゲージメント」は、企業として成長しつつ持続的な価値創造を実現するために必要な、企業と投資家相互の対話を意味します。投資家からの支援は、企業にとって非常に影響力のある重要なものです。価値協創ガイダンスにおいては、前項までで述べた企業価値観からガバナンス体制までの指標を投資家に適切に示すこと、投資家からはそれらを用いて適切な企業評価を行い相互に発展的な関係を構築することが重視されています。

具体的なアクションとしては、企業側から投資家に対する実効的な情報の開示、そして投資家はその情報をもとに、価値創造を強化・促進するための対話のアジェンダ設定が求められます。投資家は大局的な視点に立ち、企業が価値創造に役立てられる情報・意見交換や助言・質問を行います。企業はそれらを通じて得た示唆を、企業活動に反映していくこと価値の協創が図れるのです。


 

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03まとめ

価値協創ガイダンスは企業と投資家を繋ぐ「共通⾔語」の質を高めるために経済産業省が作成した手引きのことです。本記事では、価値協創ガイダンスの概要や特徴、さらに伊藤レポートについてを紹介してきました。企業と投資家との関係を向上させ長期的な関係にするための参考にしてみてください。

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