公開日:2022/03/11
更新日:2023/08/01

CSV経営とは?メリットやCSRとの違い・実践している企業事例を紹介

CSV経営とは?メリットやCSRとの違い・実践している企業事例を紹介 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

これまでは経営目標の達成に向けた事業展開や売上規模といった数字で企業の評価が行われていました。しかし近年は、数字で把握できる事業活動だけでなく、社会問題の解決や社会貢献の企業活動がその企業の価値を測る指標として注目されています。この記事では、推進している企業が増加傾向にあるCSVについて、実際に実践している企業の事例も紹介しつつ解説していきます。

 

01CSV経営とは

CSVとはCreating Shared Valueの略称で「共有価値の創造」を表しています。社会貢献活動と認識されることがありますが、あくまで事業を通じた社会課題の解決が重要だとされており、社会課題の解決が経済的な利益に繋がるという考え方です。これまでは、事業活動を通した利益と社会貢献から生み出される利益をどちらも確立できないとされてきましたが、現実可能な範囲で社会的に価値のあるビジネススタイルが生み出されました。そのためCSV経営とは、CSVを経営戦略の一つの軸として企業活動を進めることを指しています。

CSRとの違い

CSVと似たワードにCSRがあります。CSRは「Corporate Social Responsibility(企業としての責任)」の略称で、自社の利益だけでなく社会の問題に目を向け、地域貢献や環境保全活動に力を入れるものです。そのため、利益の創出に重きをおいておらず、利益を生み出す事業活動とは別で取り組まれます。その一方CSVは、社会貢献活動が自社の経済的な利益を生むという考え方のため、事業の一つとしてCSV活動に取り組めば自社と社会の利益を両立できます。

▼CSRに関して詳しく知りたい方はこちら▼
【関連記事】CSRとは|関連用語との違いや推進すべき理由を併せて紹介

SDGsとの違い

SDGs(Sustainable Development Goals)は、持続可能な開発目標を指すものであり、CSVとは異なる概念です。SDGsは国連が定めた17の目標であり、地球上のあらゆる課題に対処し、貧困の撲滅や教育の普及など、持続可能な未来の実現を目指しています。 SDGsは広範な問題に対処するため包括的ですが、具体的な事業戦略との結びつきが相対的に緩やかな傾向があります。

▼SDGsに関して詳しく知りたい方はこちら▼
【関連記事】SDGsとは?社内に浸透させるポイントを解説
 

02CSV経営が注目されている理由

CSVが注目される理由の一つに、政府が主導して推進しているSDGsの普及があります。2015年の国連サミットで持続可能な開発目標(SDGs)が制定されたことをきっかけに、政府だけでなく国内の企業もSDGsの目標達成への努力が求められるようになりました。その影響で、自社の既存事業とSDGsの取り組みを関連づける企業が増え、CSVに対する注目度も高まりました。この動きは消費者にも影響を与え、環境に配慮された商品など社会的に意義のあるサービス・商品を購入する動きが強くなります。企業にとっても新規事業の展開や新しい市場への参画のよい機会となり、事業戦略の中心にSDGsを置く流れが強まっていきました。

▶︎参考:価値協創ガイダンス解説資料 | 経済産業省

 

03CSV経営のメリット

一見CSVは事業の利益に繋がらないと捉えられがちですが、結果的に企業の利益に繋がる利点があります。これからCSV経営の推進を検討されている企業の参考になれば幸いです。

ブランドイメージの向上

CSV経営はブランドイメージの向上に繋がります。ステークホルダーは利益や売上だけに注目しているイメージがありますが、環境問題への取り組みや地域のボランティアに積極的に取り組む姿勢は評価されます。SDGsの社会的な普及により、この風潮はより強くなっていると言えます。社会貢献活動からのブランドイメージの向上は、ステークホルダーからの信頼獲得はもちろん、新しいファンの獲得も期待できます。

他部署や他企業など横の繋がりが生まれる

CSV経営は一つの部署で完結することはなく、複数の部門や企業全体で取り組むものです。そのため、これまで交流が少なかった他部署の社員と関わる機会が増え、社内の人間関係や雰囲気に好影響を与えることもあります。また、同じ取り組みを進める企業同士が接点を持つ機会もSDGsの普及により増えています。他企業との関わりが増えれば新しい発見やマッチングが生まれ、事業活動の発展に繋がることも期待できるでしょう。

 

04CSV経営のデメリット

CSV経営の推進はどの企業も初めての部分があり、進めていく中で困難に感じることもあります。デメリットを確認した上でCSV推進に取り組みましょう。

一社での社会課題の解決は困難

CSV経営は社会課題を事業に繋げることが前提ですが、環境問題や貧困の解決は一社で解決できるほど規模は小さくありません。そのため他企業との連携やステークホルダーへの説明・理解などが必要になってきます。始めから複数の企業や団体と一緒にプロジェクトを進行するのを想定しておくと良いでしょう。

評価を得るのに時間がかかる

一社での課題解決が困難なので、ステークホルダーからの評価やブランドイメージの向上とは時間がかかり、形として実感できるまでは長期的な期間が必要になります。また、CSV経営が悪い方向に働き、時には企業評価を下げてしまうリスクがあります。社会課題の解決に対する事業が社会的に問題のないものか確認を徹底しましょう。

 

05CSV経営の実践方法

“CSV経営の実践方法”

具体的にCSV経営をイメージするために、アメリカの経営学者であるマイケル・ポーター氏が提唱するCSVの3つのアプローチをもとに、実践方法と事例を紹介します。今後の取り組みの参考にしてみてください。

▶︎参考:第3部 中小企業・小規模事業者が担う我が国の未来 | 経済産業省

自社サービス・製品の見直し

実践方法の一つに、自社サービスや製品の見直しがあります。既存事業がどのような社会課題の解決に繋がっているのか検討し、提供価値について再検討することで新しいブランドイメージを策定できます。検討中には、これまで参入したことのない新市場への参画の機会が生まれる可能性もあります。自社の強みを生かした課題解決に繋がる新しいサービス、製品、市場への挑戦が重要です。

バリューチェーンの再定義

バリューチェーンは、製造工程から販売までのプロセスです。このバリューチェーンを再定義することで、社会課題の解決に事業を繋げられます。例えば、製造に必要な材料を仕入れている企業を再検討し、環境に配慮した製造方法で製造、発送に見直すことで、社会問題の解決に繋がる事業活動を図れます。

産業クラスターの創出

CSV経営の推進には、産業クラスターの創出も重要です。産業クラスターの創出には、地域企業や団体との関わりが大切で、一社で解決できない課題にも挑戦できます。産業クラスターの繋がりが強まれば、互いに協力し合ったインフラ設備の構築や地域の活性化に繋がり、そこに住む住民の生活レベルが上がるなど事業以外の利益に繋がります。

 

06CSV経営を実践している企業と取り組み

CSV経営を実践し、ステークホルダーだけでなく社会的評価を受けている企業があります。自社ではどのように実践できるか頭でイメージしながら参考までに確認してみましょう。

ネスレ日本株式会社

ネスレ日本株式会社は、2025年までにネスレ製品のパッケージを100%リユース、もしくはリサイクル可能にするという目標を掲げています。その他、自社の商品であるネスカフェを楽しみながら繋がりを作れる高齢者向けの集いの場づくりの支援も行っています。沖縄では国産コーヒー豆の栽培を目指すプロジェクトを推進するなど、幅広い分野での取り組みが注目されています。

▶︎参考:「ネスレ日本株式会社:2025年までに包装材料を100%リサイクル可能、あるいはリユース可能にすることを目指す」

キリン株式会社

キリン株式会社は、具体的に「健康」「地域社会・コミュニティ」「環境」という社会課題に取り組んでいます。糖質やカロリー、カフェインをオフした商品の提供や、「水源の森活動」による水資源を守る活動を進め、自社の商品に関連づけながら豊かな社会の実現のために事業を展開しています。

▶︎参考:「キリン株式会社:持続可能な水資源の利用」

トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社は、2015年から「トヨタ環境チャレンジ2050」を掲げています。CO2の削減や水の使用量削減などの目標を掲げており、環境改善への取り組みを加速させています。事業活動においてもCO2排出量の少ない自動車の開発や、水に関する環境問題を改善する「アクアソーシャルフェス」を開催しています。活動は自社だけでは留めず、NPO法人などと連携し着実にCSV経営と事業活動を繋げ、環境問題の解決に取り組んでいますね。

▶︎参考:「トヨタ株式会社:6つのチャレンジ」

株式会社リコー

株式会社リコーは、脱炭素社会の実現などを目標に掲げました。加えてCSV経営あるべき姿である新たな市場への参画や顧客開拓の実現も目指しています。その取り組みとして「BOPプロジェクト活動」により、インドでの貧困問題解決に取り組んでいます。現地住民の働く場所を創り支援することで、生活レベルの向上を実現しつつ、自社の今後新たに始めるビジネスの種としても活用しています。

▶︎参考:「株式会社リコー:CSVの取り組み」


 

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Schooは汎用的なビジネススキルからDXやAIのような最先端のスキルまで、8,000本以上の講座を取り揃えております。この章では、CSV経営に関連する授業を紹介いたします。

脱炭素×ITからひも解くイノベーション最前線

脱炭素社会の実現は、再生可能エネルギー(グリーンエネルギー)供給の地盤固めが不可欠です。イノベーションの最前線がITから再生可能エネルギーへと軸足がうつっていくことが予測される中で、具体的にどのようなビジョンが描けるのかを学んでいきます。

 
  • 樽石デジタル技術研究所 代表

    レッドハットおよびヴィーエー・リナックス・システムズ・ジャパンにて、OS、コンパイラー、サーバーの開発を経験後、グーグル日本法人に入社。システム基盤、『Googleマップ』のナビ機能、モバイル検索の開発・運用に従事。東日本大震災時には、安否情報を共有する『Googleパーソンファインダー』などを開発。その後、楽天を経て2014年6月よりRettyにCTOとして参画。海外への事業展開に向け、技術チームをリードし、22年1月に退職。21年12月に立ち上げた樽石デジタル技術研究所の代表のほか、PowerX社外CTO、22年3月からは某大手企業でCTOを務める。

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変化する消費者へ届ける付加価値としてのSDGs -考え方と事例-

この授業では、SDGsとビジネスを両立させた企業の事例を紹介しながら、時代背景や生活者(消費者)の価値観の変化と、企業に求められるこれからの考え方について解説します。

 
  • 株式会社YRK and 取締役 東京代表

    マーケティングプランナー、ソーシャルプロダクツ事業コンサルタント 1989年4月 株式会社ヤラカス舘(現 株式会社YRK and)入社。マーケティングプランナーとして、ヘルスケアメーカーのカテゴリーマネジメントやストアマーケティング、スーパー・ドラッグストアの売場開発などを得意とする。 2017年より、ソーシャルプロダクツのマーケットプレイスを運営する株式会社SoooooS.カンパニー取締役。2019年より一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会事務局長として、ソーシャルプロダクツの適正な市場普及や、企業によるSDGsの本業化・ブランディング・コミュニケーション活用に取り組んでいる。

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SDGsがひらく地方創生

この授業では、地方創生・活性化のためにもカギを握るSDGsの見方と使い方を「SDGsの自治体での活用」を研究されている高木超先生と学んでいきます。

 
  • 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任助教

    NPO等を経て、2012 年から神奈川県大和市役所の職員として住民協働等を担当。その間、明治大学公共政策大学院を修了。17年9月に退職し、米国で「自治体における SDGs のローカライズ」に関する研究を行い、帰国後の19年4月から現職。内閣府地域活性化伝道師のほか、全国の自治体でSDGs推進アドバイザーを兼務。著書に『SDGs×自治体 実践ガイドブック 現場で活かせる知識と手法』、『公民連携×SDGs 先進地域に学ぶ課題解決のデザイン』(以上、学芸出版社)『まちの未来を描く!自治体のSDGs』(学陽書房)など。

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08まとめ

CSV経営というワードは聞いたことはあっても、ハードルの高さやステークホルダーからの目を気にして取り組みを進められていない企業もあるかと思います。ただ、既存の事業を見直せば、CSVに関連する点は見つかるはずです。現代の社会問題の背景から、CSV経営は今後より注目される企業の在り方になるでしょう。小さな改善からスタートし、事業活動と両立させながら社会貢献活動を推進していきましょう。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
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Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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