自己効力感とは|自己肯定感との違いや高める方法を紹介

さまざまなビジネスシーンにおいて成果を挙げるため努力を続けていたとしても、目標達成のために適切な行動を取れると自信を持って言える人は、それほど多くないのではないでしょうか。この記事では目標を達成するために必要な根拠のある自信、自己効力感について解説します。
- 01.自己効力感とは
- 02.自己効力感の3つの種類
- 03.自己効力感が高い人の特徴
- 04.自己効力感が低くなる理由
- 05.自己効力感を高めるメリット
- 06.自己効力感を左右する4つの要素
- 07.自己効力感の測定方法
- 08.自己効力感を高める方法
- 09.まとめ
01自己効力感とは
自己効力感(Self-efficacy)は、カナダ出身の心理学者アルバート・バンデューラが1977年に提示した概念です。もともとは心理学領域で研究されてきた概念ですが、近年はビジネスの文脈でも注目されています。
Schoo for Businessの授業『人生を変える ポジティブサプリ~前向きになれるテクニックを毎月学ぶ~』で横山信弘先生は、自己効力感とは、「自分が行うことは効力があると信じられる感情」のことだと話しています。
自己効力感が高まると、目標に向けた行動を選びやすくなり、困難があっても粘り強く取り組む助けになります。その結果として、成果につながる可能性を高める要因の一つになり得ます。
▶︎参考:日本看護科学会誌|自己効力感の概念分析
▶︎参考:厚生労働省|セルフエフィカシー
自己肯定感との違い
自己肯定感とは、自己の否定的な側面もふくめて、ありのままの自分を受け入れ、自分が自分であっても大丈夫と思える感覚です。例えば自己肯定感が高いと、他者からの批判やトラブルを経験しても、その出来事と「根本的な自分の価値」は切り離して捉え、「自分には価値がある」と信じられる状態を維持しやすくなります。
一方で自己効力感は、「ある状況で必要な行動をうまく遂行できる」と自分が信じられる感覚です。簡単に言えば「自分ならできる」という見通しで、特定の課題や行動にひもづきます。
したがって両者の違いは、自己肯定感が自分の価値や受容(自己評価)に関わりやすいのに対し、自己効力感は課題達成に向けた行動の遂行可能感に関わる点にあると言えるでしょう。
▶︎参考:東京学芸大学|田島賢侍・奥住秀之 (2013). 子どもの自尊感情・自己肯定感等についての定義及び尺度に関する文献
02自己効力感の3つの種類
自己効力感とは、「どんなことでも上手くやれる」という万能な自信ではなく、特定の課題や状況において「自分は必要な行動を組み立てて行動できる」という確信です。つまり、課題の領域によって高い/低いが異なる可能性があり得るため、それら「領域」ごとに語られることが一般的です。ここでは代表例として、次の3つの領域について解説します。
- ・自己統制的自己効力感
- ・社会的自己効力感
- ・学業的自己効力感
1.自己統制的自己効力感
自己統制(自己調整)的自己効力感は、自分の行動や感情を整え、目標に向けた行動を継続できるという見通しです。新しい業務や前例のない課題でも「試行錯誤しながら進められる」と捉えやすくなります。
2.社会的自己効力感
社会的自己効力感は、対人場面で必要なやり取りを行い、関係を築けるという見通しです。初対面や価値観が異なる相手とも、対話を通じて協働できると感じられることにつながります。
3.学業的自己効力感
学業的自己効力感は、理解・演習・試験・資格学習などの学習課題をやり遂げられるという見通しです。これまでの達成経験が積み重なるほど高まりやすいとされています。
03自己効力感が高い人の特徴
自己効力感が高い人の特徴は次の通りです。
粘り強く挑戦できる
自己効力感は、活動の選択や努力量、粘り強さに影響し得るとされています。そのため自己効力感が高い人は、難易度の高い課題に挑戦する時にも試行錯誤を続けやすい傾向があります。その課題を完遂できると信じられているため、一度失敗しても「やり方を変える」「周囲に相談する」「必要な情報を集め直す」といった次の行動につなげやすくなります。
主体的に問題解決しようとする
自己効力感が高い人は、目の前の困難を受け身で捉えるのではなく、自分たちで打ち手を考えるべき課題として捉えやすいとされています。
例えば、プロジェクトで予期せぬ予算削減に直面した際、制約条件の大きさから打ち手が限られると感じることがあります。一方自己効力感が高い人は「今あるリソースで成果を出す代替案は何か?」と自ら問いを立て、関係者との交渉や優先順位の再設計に動き出します。
「自分なら状況に影響を与えられる」という確信が、指示待ちではなく、自ら解決策を探索し、環境に働きかける主体的な行動につながりやすいのです。
04自己効力感が低くなる理由
自己効力感は、自分自身の経験だけでなく、他者の状況を見ることや心身のコンディションによっても影響を受けると考えられています。ここでは、自己効力感が低くなる理由について解説します。
▶︎参考:日本看護科学会誌|自己効力感の概念分析.
失敗経験の積み重なり
失敗の経験が続くと、できたことよりも「できなかったこと」に注意が向きやすくなります。それが重なり状況を変えられないという感覚が強まると、新しい挑戦への見通しが下がりやすくなります。
否定的・失望させるようなフィードバック
能力や適性を否定する言葉、期待を下げるメッセージが繰り返されると、それが内面化され、自己効力感が下がりやすくなります。
自分と似た人が失敗している
自分に近い立場や能力の人が失敗する場面を目にすると、「自分にも難しいかもしれない」と成功可能性を低く見積もりやすくなり、自己効力感が下がることがあります。
強い不安や疲労を抱えている
心身の状態も、自己効力感を左右する要素です。例えば緊張による動悸を「能力不足」や「失敗の予兆」と解釈すると、挑戦への意欲が下がりやすくなります。また、気分が落ち込んでいる時や疲労が溜まっているときには、ちょっとした困難に対しても「もう無理だ」と諦めやすい傾向があります。
05自己効力感を高めるメリット
自己効力感を高めると、ビジネスの場ではどのようなメリットがあるのでしょうか。5つご紹介します。
1.成長するモチベーションが上がる
自己効力感を高めることは、自分の能力や行動、結果を冷静に分析することにも繋がるため、ポジティブな行動を加速させることに寄与します。その結果、ビジネスにおいてよりスキルを高めたり、経験を積んだりといった、成長に対するモチベーションが高まっていくのです。
2.チャレンジ精神が向上する
自己効力感を高めるほど、より困難な目標にも恐れを抱かずにチャレンジできるようになります。取り掛かるのが早く、その後も「自分ならできる」と信じて、積極的に目標達成に向けて取り組むことができるのです。行動にスピード感があり、失敗してもチャレンジを続けるため、ビジネスチャンスが舞い込みやすく、大きく飛躍して成果を上げることができるでしょう。
3.立ち直りが早く打たれ強くなる
誰でも失敗をすれば多少は落ち込むものですが、自己効力感を高めると必要以上に引きずることはなく、分析して教訓を見出し、次の成功へつなげようとします。落ち込んでいる時間を惜しんで素早く立ち直り、次のチャレンジをするべく行動を開始するということです。「気持ちの立て直しが早い」ということがストレスを回避できる自信につながり、さらには、自己効力感を高めることもあるでしょう。
4.目標を達成しやすくなる
自己効力感を高めると困難なことがあっても容易に諦めなくなるので、目標を達成できる可能性が高くなります。ビジネスの場では、このような姿勢が協力者を増やすことにつながるので、本人のスキル不足や経験不足を補ってもらいやすくなり目標達成に有利な環境が自然に整っていくのです。最初は達成が困難だと感じるような目標でも、自己効力感の高いメンバーが周囲を巻き込み、最後には予想を超えた達成率に到達するといったケースも十分にあり得るということです。
5.コミュニケーション能力が高まる
ビジネスをする上では、自分と相性があまり良くない人とも協力して物事を行わなければならないことが頻繁に起こります。自己効力感を高めると、このような時でも相手を良く観察し、円滑なコミュニケーションを行うための糸口を探ることができます。ビジネスにおいてコミュニケーションが重要だということを理解しているだけではなく、「自分なら相性が良くない人とでも、円滑に仕事を進めるためのコミュニケーションが取れるはずだ」と信じているからこそできる行動です。
06自己効力感を左右する4つの要素
ビジネスシーンにおいて大切な、自己効力感を高めるにはどうすれば良いのでしょうか。バンデューラは、自己効力感を左右する要素として「達成体験」「代理体験」「言語的説得」「生理的・情動的状態」の4つの要素を整理しています。
1.達成経験(遂行行動の達成)
達成経験とは、「自分で取り組み、やり遂げた経験」のことです。自己効力感を形成する情報源の中でも、達成経験は最も強い影響を持つとされています。自分自身の工夫や努力によって課題を乗り越えた経験があると、別の課題にぶつかったときにも「あの時もできたのだから、今度もやればできる」と感じやすくなります。
特に「簡単すぎず・難しすぎない」適度な水準の課題に対して、努力と工夫によってやり遂げた経験は、自己効力感を高めやすいと考えられます。一方で、自己効力感が十分に育つ前の失敗経験は、自信を弱めることもあります。
2.代理体験(モデリング)
自己効力感は、自分の経験のみで左右されるのではなく、他者の成功を観察することでも影響を受けると考えられています。例えば、年次の近い会社の先輩がリーダーに抜擢されたのを見た時に、「先輩が任されるなら、自分もその役職を担えるかもしれない」と感じることなどが挙げられます。
代理体験による自己効力感の向上は、特に観察する対象が自身と似た立場や条件にあるときに、効果が発揮されやすくなります。身近な他者の行動や工夫、課題の乗り越え方を見ることで、「自分にもできるかもしれない」という見通しを持ちやすくなります。
特に、自らがまだ直接経験していない領域では、身近なロールモデルがいることにより、行動への一歩を踏み出しやすくなるでしょう。
3.言語的説得(周囲からの励まし・フィードバック)
言語的説得とは、周囲からの励ましやフィードバックのことです。能力や努力、挑戦する姿勢に対して、信頼できる他者から前向きなフィードバックを受けることで、「自分にもやり遂げられるかもしれない」という認識が強まりやすくなります。
特に、困難に直面した場面では、外部からの期待や信頼を伴う言葉が、挑戦を続ける心の支えとして働きます。こうした言語的な後押しは、自己効力感の低下を防ぎ、自分には遂行できる力があるという感覚を保つ助けになるでしょう。
4.生理的・情動的状態(不安・緊張・疲労など)
自己効力感には、不安や緊張、疲労、落ち着きといった心身の状態も影響します。人はこうした反応を手がかりに、「自分はこの課題をやり遂げられそうかどうか」を判断することがあります。
例えば、不安やストレスを「失敗の前兆」と受け止めると、自己効力感は低下しやすくなります。一方で、同じ反応を「挑戦に伴う自然な緊張」や「適度な高まり」と捉えられると、自己効力感を保ちやすくなります。つまり、心身の状態そのものだけでなく、それをどう解釈するかが、自己効力感の維持に影響します。
07自己効力感の測定方法
一般性セルフ・エフィカシー尺度とは、自己効力感を測定するために開発された尺度です。人間の行動を「先行要因」「結果要因」「認知的要因」という3つのカテゴリーに分類し、自己効力感はこれらの行動を決める認知的変数になるという考え方です。
自己効力感を測定する項目として全16種類の質問を用意し、アンケート形式にて「はい」か「いいえ」で回答してもらいます。答えた得点が高ければ高いほど、自己効力感が高いということになります。日本における一般性セルフ・エフィカシー尺度は、「行動の積極性」「失敗に対する不安」「能力の社会的位置付け」という3つの項目に分けられ、具体的な設問としては以下のようなものがが挙げられます。
- 1.何か仕事をするときは、自信を持ってやるほうである。
- 2.人と比べて心配性なほうである。
- 3.何かを決めるとき、迷わずに決定するほうである。
- 4.引っ込み思案なほうだと思う。
- 5.結果の見通しがつかない仕事でも、積極的に取り組んでいくほうだと思う
- 6.どんなことでも積極的にこなすほうである。
- 7.積極的に活動するのは、苦手なほうである。
- 8.過去に犯した失敗や嫌な経験を思い出して、暗い気持ちになることがよくある
- 9.仕事を終えた後、失敗したと感じることのほうが多い。
- 10.何かをするとき、うまくいかないのではないかと不安になることが多い。
- 11.どうやったらよいか決心がつかずに仕事に取り掛かれないことがよくある。
- 12.小さな失敗でも人よりずっと気にするほうである。
- 13.友人より優れた能力がある。
- 14.人より記憶力が良いほうである。
- 15.友人よりも特に優れた知識を持っている分野がある。
- 16.世の中に貢献できる力があると思う。
1.3.5.6.13〜16に「はい」と答えた場合、自己効力感が高い傾向にあります。一方で、2.4.7〜12に「はい」と答えた場合、自己効力感が低い傾向にあると判断されます。自分が「はい」と回答したもので、自己効力感が高いものが多いか、低いものが多いかで自分自身の自己効力感を測ることができるのです。
▶︎参考:日本看護科学会誌|自己効力感の概念分析
08自己効力感を高める方法
自己効力感を高める要因には、代理体験や対人的影響などがあります。これらの要因を基にしながら、自己効力感を高める具体的な方法を紹介します。
コントロールゾーンにフォーカスする
Schoo for Businessの授業『集中力を高めるための小さなコツ』に登壇する大平 信孝先生は、自己効力感を高める方法として「コントロールゾーン」に集中する手法を紹介しています。コントロールゾーンとは、自分が直接影響を与えられる範囲のことです。
例えばコントロールできないものとしては、天気や景気、同僚や家族の機嫌などがあります。反対に、自分の行動や緊張感などはコントロールできるものに該当します。
コントロールできないものにばかり目を向けると、「思い通りに行かない」というネガティブな経験が積み重なる可能性があります。コントロールできているものに意識を向けて、自分が決めたことを着実に実行するというサイクルを積み上げることが、自己効力感アップにつながります。
目標設定を工夫する
自己効力感を高める鍵は、自力でやり遂げた「達成経験」の蓄積にあります。そのためには、高すぎる壁に挑むのではなく、努力と工夫で届く「少しストレッチした目標」を定める工夫が有効です。
これはセルフマネジメントだけでなく、管理職がメンバーの自己効力感を高める観点でも重要です。最終的な結果だけでなく「1日5件の新規架電」「見積もり提出数」など、プロセス目標を組み合わせることで、進捗を実感できる設計をすると良いでしょう。
まずは小さな成功を積み上げ、段階的に難易度を上げる。この「手の届く挑戦」の連続が、自己効力感を育む効果的な打ち手になります。
他者の成功体験を収集する
自己効力感を高める要因の一つに、他者の成功を観察して「自分にもできそうだ」と感じられる代理経験(モデリング)があります。代理経験を得るには、身近な人の成功体験を見聞きし、成功の結果だけでなくプロセス(工夫・練習・支援の得方)まで、具体的に把握することが有効です。
その際、モデルは「自分と状況や経験が近い人」や「少し先を行く身近なロールモデル」を選ぶと、成功の再現可能性をイメージしやすくなります。重要なのは「自分にもできそうだ」という見通しを持てるかどうかです。自分とかけ離れた成功談は、「あの人だからできた」と受け止めやすく、自己効力感の向上にはつながりにくい場合があります。
管理職にポジティブフィードバックスキルを習得させる
管理職がポジティブフィードバックを身につけることは、部下の自己効力感を支えるうえで有効です。自己効力感は、周囲からの励ましやフィードバック(言語的説得)によって高まり得るとされています。
ポジティブフィードバックとは、相手の良い点や強みに着目し、前向きな評価を具体的に伝える方法です。改善点に偏った伝え方だと、受け手によっては批判と受け止めやすい一方、良い行動を具体的に言語化して伝えると、意欲や自信を引き出しやすくなります。
たとえば「行動量は十分だが、クロージングがうまくいかず目標未達だった営業担当」には、次のように伝えられます。
従来の言い方(改善点に偏る例):「クロージングに課題がある。もっと詰めないといけない」
ポジティブ+次の行動につなげる例:「今期は訪問件数を継続できていた点が良かった。次は成約に近づけるために、商談の早い段階で“次回日程の仮押さえ”を入れてみよう。来週、トークの組み立てを一緒に確認しよう」
このように、まず事実に基づいて強み(良い行動)を承認し、そのうえで「次に何を変えるか」を具体化すると、部下の自己効力感を支えながら行動改善にもつなげやすくなります。
生活習慣を見直す
自己効力感を形づくる要因の一つに、生理的・情緒的状態(不安、緊張、疲労など)があります。人はこうした心身の反応を「自分はできそうか」を判断する手がかりとして解釈するため、コンディションが悪いと自己効力感が下がりやすくなります。そのため、生活習慣を見直して心身の状態を整えることは、自己効力感を不用意に下げないうえで有効です。
具体的には、残業時間の把握や働き方の見直しによって回復の余地(睡眠・休息)を確保し、健康を維持できる基盤をつくることが重要です。
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■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など

09まとめ
自己効力感とは、自分はある状況において物事を実現できる能力があるという認知ができているということを指しますが、ビジネスにおいては自己成長や目標達成、円滑なコミュニケーションなど多くのメリットがあることがわかりました。自己効力感の高め方や伸ばし方をしっかりと理解し、さまざまなビジネスシーンで役立ててみてください。