更新日:2024/06/11

自己効力感とは|自己肯定感との違いや高める方法を紹介

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さまざまなビジネスシーンにおいて成果を挙げるため努力を続けていたとしても、目標達成のために適切な行動を取れると自信を持って言える人は、それほど多くないのではないでしょうか。この記事では目標を達成するために必要な根拠のある自信、自己効力感について解説します。

 

01自己効力感とは

自己効力感は、「自分が周囲の期待や要請に対して、十分に対応できているという確信・自信」という意味の言葉です。1990年代にカナダの心理学者アルバート・バンデューラによって提唱され、英語では「Self-efficacy」と表現されます。

自己効力感は元々心理学用語でしたが、昨今ではビジネスの場面でも注目されています。目標を達成するための努力を促し、結果的に成功の可能性を高め、自分自身の生き方を肯定的にとらえるためにも、自己効力感は重要な要素として位置づけられているのです。

▶︎参考:自己効力感の概念分析

▶︎参考:厚生労働省|セルフエフィカシー

自己肯定感との違い

自己肯定感とは、「自分の価値や存在を肯定できる気持ち」のことです。簡単に言うと、「自分は人の役に立てる」と思えることが自己肯定感と言えます。

一方で、自己効力感は、「自分が周囲の期待や要請に対して、十分に対応できているという確信・自信」のことです。簡単に言えば、「自分ならできる」と思えることが自己効力感です。<

したがって、自己肯定感は自身の「存在」に対して抱く感情で、自己効力感は自身の「能力」に対して抱く感情という違いがあります。

 

02自己効力感の3つの種類

自己効力感は、心理学的には以下の3種類に分類されます。

  • ・自己統制的自己効力感
  • ・社会的自己効力感
  • ・学業的自己効力感

この章では、それぞれの内容について詳しく解説します。

1.自己統制的自己効力感

自己統制的自己効力感とは、自分の行動や感情をコントロールするために適切な行動が取れると認識していることを意味します。一般的な自己効力感の定義は、この自己統制的自己効力感の定義と同義です。

自己統制的自己効力感が高い人は、「自分ならできる」と考えることができるため、初めて取り組む仕事や前例のない問題にも、前向きに臨むことができます。

2.社会的自己効力感

社会的自己効力感とは、「周囲の人と上手くコミュニケーションを取るために必要な行動が取れている」と認識していることを意味します。

社会的自己効力感が高い人は、周囲の人が敬遠するような人でも、「自分なら仲良くできる」と考えることができるため、多様な人と良好な人間関係を構築することができます。

3.学業的自己効力感

学業的自己効力感とは、「学習することを肯定的に捉えている」ことを意味します。この自己効力感は、「難しい資格を取得した」・「第一志望の大学に合格した」などの、学習による成功体験によって育まれると言われています。

学業的自己効力感の高い人は、「自分なら学べば成功できる」と考えることができるため、未経験の業務を任されたとしても自己学習しながら、自分自身で乗り越えていくことができます。

 

03自己効力感の高い人・低い人の特徴

自己効力感にはさまざまな種類がありますが、自己効力感の高い人・低い人は具体的に特徴があるのでしょうか。次ではそれぞれの特徴について解説するので、押さえていきましょう。

自己効力感の高い人の特徴

自己効力感の高い人には、具体的に次のような特徴があります。

  • ・自信を持って行動する
  • ・コミュニケーション能力が高い
  • ・ミスしても落ち込まず、逆境に強い
  • ・問題解決行動に積極的

自己効力感が高いとストレスフルな環境においても心身ともに健康的で、課題や困難に対しても積極的に行動することができます。前提として、「自分にはできるはず」といったマインドを持っているため、うまくいかないことに対しても、結果が出るまで頑張ることができるのです。また、ビジネスにおいては、困難な目標においてもそれを達成しやすく、成果を挙げることで、さらに自己効力感が高まることが予想されます。

自己効力感の低い人の特徴

ビジネスにおいては、なかなかモチベーションが上がらず、新しいことにも挑戦したがらないため、目標達成は困難なものとなるでしょう。自己効力感の低い人は、具体的に次のような特徴があります。

  • ・劣等感を持つ
  • ・コミュニケーションにおいて攻撃的になりがち
  • ・自分を責め、言い訳が多い
  • ・失敗を恐れ、行動が消極的になる
  • ・行動する前から努力することを諦める

自己効力感が低い人は、自分に自信がないため、「自分にはできない」というマインドが強い傾向にあります。そのため、何かに挑戦してみても長続きせず、すぐに諦めてしまったり、実施前からできないと考えてしまいます。結果的に言い訳が多くなったり、自分の保身のためにコミュニケーションが攻撃的になってしまうのです。

 

04自己効力感を高めるメリット

自己効力感を高めると、ビジネスの場ではどのようなメリットがあるのでしょうか。 5つご紹介します。

1.成長するモチベーションが上がる

自己効力感を高めることは、自分の能力や行動、結果を冷静に分析することにも繋がるため、ポジティブな行動を加速させることに寄与します。 その結果、ビジネスにおいてよりスキルを高めたり、経験を積んだりといった、成長に対するモチベーションが高まっていくのです。

2.チャレンジ精神が向上する

自己効力感を高めるほど、より困難な目標にも恐れを抱かずにチャレンジできるようになります。 取り掛かるのが早く、その後も「自分ならできる」と信じて、積極的に目標達成に向けて取り組むことができるのです。 行動にスピード感があり、失敗してもチャレンジを続けるため、ビジネスチャンスが舞い込みやすく、大きく飛躍して成果を上げることができるでしょう。

3.立ち直りが早く打たれ強くなる

誰でも失敗をすれば多少は落ち込むものですが、自己効力感を高めると必要以上に引きずることはなく、分析して教訓を見出し、次の成功へつなげようとします。 落ち込んでいる時間を惜しんで素早く立ち直り、次のチャレンジをするべく行動を開始するということです。 「気持ちの立て直しが早い」ということがストレスを回避できる自信につながり、さらには、自己効力感を高めることもあるでしょう。

4.目標を達成しやすくなる

自己効力感を高めると困難なことがあっても容易に諦めなくなるので、目標を達成できる可能性が高くなります。 ビジネスの場では、このような姿勢が協力者を増やすことにつながるので、本人のスキル不足や経験不足を補ってもらいやすくなり目標達成に有利な環境が自然に整っていくのです。 最初は達成が困難だと感じるような目標でも、自己効力感の高いメンバーが周囲を巻き込み、最後には予想を超えた達成率に到達するといったケースも十分にあり得るということです。

5.コミュニケーション能力が高まる

ビジネスをする上では、自分と相性があまり良くない人とも協力して物事を行わなければならないことが頻繁に起こります。自己効力感を高めると、このような時でも相手を良く観察し、円滑なコミュニケーションを行うための糸口を探ることができます。 ビジネスにおいてコミュニケーションが重要だということを理解しているだけではなく、「自分なら相性が良くない人とでも、円滑に仕事を進めるためのコミュニケーションが取れるはずだ」と信じているからこそできる行動です。

 

05自己効力感を高める4つの要因

ビジネスシーンにおいて大切な、自己効力感を高めるにはどうすれば良いのでしょうか。 バンデューラが提唱した4つの方法をご紹介します。

1.直接体験

自分自身が成功を直接的に体験することが、自己効力感を高めるのに最も重要だとされ、特にビジネスにおいては、困難な目標を労力や時間をかけて達成した経験があれば、大きな自己効力感につながります。 例えば上司の立場にあるとしたら、部下に少し困難な仕事を任せてみるのがこの方法です。 上司として言葉でアドバイスするよりも、部下が自分で困難を乗り越え成果を挙げることで自己効力感を高めるほうが、成長しやすいことはイメージしやすいでしょう。 ただし、成果を挙げるのが容易な仕事をいくつか任せても、自己効力感を高めることには繋がらないため、注意しましょう。

2.代理体験

ビジネスにおいては、ロールモデルとなる他者行動を見習いお手本とすることで、自分にもできるかもしれないと感じる体験を指します。 講演会などで成功した人の話を聞いたり、スキルの高い人のブログやSNSを通じた発信内容で情報収集をしたりすることなども、代理体験にあたるでしょう。 一方で、代理体験ばかりを積むと、根拠のある自信ではなく根拠のない自信を生んでしまうことに注意が必要です。

3.対人的影響

人から褒められたり、先生や親、友人からポジティブな言葉を何度もかけられたりする体験を通じて、少しずつ自己効力感が高まっていきます。 ビジネスにおいては、自分が目標達成に向けてチャレンジする場合に、否定的ではなく肯定的に捉えて応援してくれるような環境に身を置くのが望ましいでしょう。 対人的影響だけで自己効力感を高めようとすると、人の評価ばかりを気にするようになってしまうので注意しましょう。

4.生理的・情動的喚起

心身の状態や情緒的な安定のことで、ビジネスにおいては自己管理の面で、「健康的で規則正しい生活を送ること」が自己効力感の向上に繋がります。 どれだけ自己効力感の高い人でも、不安や緊張、体調が優れないなどの要因で、仕事へのモチベーションを低下させてしまう場合があるということです。 このことから規則正しい生活を送り、良い生活習慣を築くことで自己効力感を高めることができると言われています。

 

06自己効力感の測定方法

一般性セルフ・エフィカシー尺度は、General Self-Efficacy Scaleの略語でアルバート・バンデューラ博士によって提唱された自己効力感を測定するための尺度です。人間の行動を「先行要因」「結果要因」「認知的要因」という3つのカテゴリーに分類し、自己効力感はこれらの行動を決める認知的変数になるという考え方です。

自己効力感を測定する項目として全16種類の質問を用意し、アンケート形式にて「はい」か「いいえ」で回答してもらいます。答えた得点が高ければ高いほど、自己効力感が高いということになります。日本における一般性セルフ・エフィカシー尺度は、「行動の積極性」「失敗に対する不安」「能力の社会的位置付け」という3つの項目に分けられ、具体的な設問としては以下のようなものがが挙げられます。

  • 1.何か仕事をするときは、自信を持ってやるほうである。
  • 2.人と比べて心配性なほうである。
  • 3.何かを決めるとき、迷わずに決定するほうである。
  • 4.引っ込み思案なほうだと思う。
  • 5.結果の見通しがつかない仕事でも、積極的に取り組んでいくほうだと思う
  • 6.どんなことでも積極的にこなすほうである。
  • 7.積極的に活動するのは、苦手なほうである。
  • 8.過去に犯した失敗や嫌な経験を思い出して、暗い気持ちになることがよくある
  • 9.仕事を終えた後、失敗したと感じることのほうが多い。
  • 10.何かをするとき、うまくいかないのではないかと不安になることが多い。
  • 11.どうやったらよいか決心がつかずに仕事に取り掛かれないことがよくある。
  • 12.小さな失敗でも人よりずっと気にするほうである。
  • 13.友人より優れた能力がある。
  • 14.人より記憶力が良いほうである。
  • 15.友人よりも特に優れた知識を持っている分野がある。
  • 16.世の中に貢献できる力があると思う。

1.3.5.6.13〜16に「はい」と答えた場合、自己効力感が高い傾向にあります。一方で、2.4.7〜12に「はい」と答えた場合、自己効力感が低い傾向にあると判断されます。自分が「はい」と回答したもので、自己効力感が高いものが多いか、低いものが多いかで自分自身の自己効力感を測ることができるのです。

 

07自己効力感を高める方法

自己効力感を高める要因には、代理体験や対人的影響などがあります。これらの要因を基にしながら、自己効力感を高める具体的な方法を紹介します。

小さな成功体験を積む

自己効力感を高める要因の1つに、自分自身が成功を直接的に体験すること(直接体験)があります。そのため、自己効力感を高めるには、小さな成功体験を積み重ねることが最も効果的な方法と言えるでしょう。わずかに挑戦的な目標を定め、それを達成することを繰り返すことで徐々に自己効力感を高めることができます。また、管理職としてメンバーの自己効力感を高めたい場合は、目標設定をする際に少しストレッチした目標を設定すると良いでしょう。

その際には、実現可能性の低い目標を掲げないように注意が必要です。努力しても成功体験を得られなければ、「自分は頑張っても報われない」という感情を抱いてしまいかねません。そのため、最初から大きな目標を設定するのではなく、まずは小さな目標を設定し、成功体験を積み上げていくようにしましょう。

他者の成功体験を収集する

自己効力感を高める要因の1つに、「あの人でも出来るなら自分もできる」という代理体験があります。この代理体験を得るために、身近な人の成功体験を見たり、聞いたりするという方法もあります。この方法で自己効力感を高めるには、自分と似たような能力や境遇にいる人、もしくは自分よりも能力が劣る人をモデルにしましょう。

この方法の重要な点は「あの人でも出来るなら自分もできる」という感情を抱けるかどうかです。そのため、自分より圧倒的に能力が高い人の成功体験を聞いても、「あの人だから出来る」と考えてしまうので、自己効力感を高めることには繋がりません。

管理職にポジティブフィードバックスキルを習得させる

管理職にポジティブフィードバックというスキルを身につけてもらうのも、社員の自己効力感を向上させるためには重要です。ポジティブフィードバックとは、「相手の成長のために、相手の存在、行為や結果について、肯定的な言葉で、思いやりを持った良質なコミュニケーション」をとることを言います。

通常のフィードバックは、上手くいかなかったことや、改善すべき点についてフォーカスすることが多く、いわば批判されているような感覚を受ける人も少なくありません。一方でポジティブフィードバックは肯定的な言葉を用いるので、部下の承認欲求を満たすことにも繋がるのです。

「行動量は申し分ないが、クロージングが上手くいかず、営業成績が目標に届かなかった人」を例にしてみます。フィードバックは、「君はクロージングに課題がある。もっと相手と握らないとダメだ」というコミュニケーションになりますが、ポジティブフィードバックであれば「君の行動量はすごいね!来期はその行動量を活かして、お客様のスケジュール管理も細かくやってみたら、クロージングが先延ばしにならないかもよ」というように、相手の強みを承認し、肯定的な言葉でフィードバックを行います。

生活習慣を見直す

自己効力感を高める要因の1つに、生理的・情動的喚起があります。簡単に言えば、「健康的で規則正しい生活を送ること」が自己効力感を高めるのです。そのため、生活習慣を見直して、健康的で規則正しい生活を送るように心がけるという自己効力感を高める方法もあります。

残業時間の把握や、働き方の見直しを行い、健康な状態を維持できるような基盤を作ることも、自己効力感を不用意に下げないという観点で非常に重要です。また、適度な運動も欠かせません。最初は「10分間ジョギングをする」といった小さな目標を掲げ、徐々に目標を上げていくことで自己効力感をさらに高めることができます。


 

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08まとめ

自己効力感とは、自分はある状況において物事を実現できる能力があるという認知ができているということを指しますが、ビジネスにおいては自己成長や目標達成、円滑なコミュニケーションなど多くのメリットがあることがわかりました。 自己効力感の高め方や伸ばし方をしっかりと理解し、さまざまなビジネスシーンで役立ててみてください。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
Editor
Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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