アダプティブラーニングとは?導入メリットや注意点を企業事例とともに解説

アダプティブラーニングは、IT技術を教育分野に活用する「EdTech」のひとつとして注目されていますが、これを企業の人材育成にも導入する動きが加速しています。本記事では、アダプティブラーニングの概要と導入するメリットや注意点を企業事例とともに解説します。
01アダプティブラーニングとは
アダプティブラーニングとは、「学習者の要求や知識、好みなどの要素に基づき、適切なコンテンツを適切な方法・タイミングで提供する教育手法」のことです。
アダプティブラーニングは、それぞれの学習者に合わせた学習体験を提供する教育手法であるため、AIやビッグデータなどのテクノロジーを活用することを前提に議論されることが多いです。特にeラーニングの文脈で語られることが多い教育手法であり、アダプティブeラーニングと呼ばれることもあります。
▶︎参考:アダプティブ e-ラーニングのための図形問題の類似度算出法
▶︎参考:Behind the Scenes of Adaptive Learning: A Scoping Review of Teachers’ Perspectives on the Use of Adaptive Learning Technologies
02アダプティブラーニングのメリット
アダプティブラーニングのメリットには、主に以下の5つがあります。
- ・個々の習熟度に合わせた効率的な学習ができる
- ・学習成果の向上
- ・認知負荷の管理
- ・自己学習の促進
- ・学習状況の「見える化」でフォローがしやすい
この章では、これらのアダプティブラーニングのメリットについて詳しく紹介します。
個々の習熟度に合わせた効率的な学習ができる
アダプティブラーニングを導入するメリットには、従業員個々の習熟度に合わせた効率的な学習ができることが挙げられます。従業員一人ひとりには、それぞれ異なる得意分野と苦手分野がありますが、個々で学習することで、得意分野はテンポよく、苦手分野は繰り返し徹底的に学習することが可能です。また、個々の習熟度に合わせた課題提供になるため、一律での学習のように、理解できずに先に進んだり、習得したポイントを無駄に繰り返したりすることも避けられます。
学習成果の向上
アダプティブラーニングは、指導や課題を学習者の現在の能力レベルに合わせて個別化することで、学習成果を高めることができます。例えば、中国の8年生を対象にした研究では、アダプティブラーニングを活用したグループは、教員主導の従来の指導法を用いたグループと比較して、数学のテストでより大きな成果の向上が見られたという結果も出ています。また、AL技術は、多様な学習者間における成果の格差を埋めるのに役立つ可能性も示されています。
認知負荷の管理
学習者中心のアプローチに基づき、提示される学習コンテンツやタスクの複雑さのレベルを調整する機能があるため、アダプティブラーニングは「認知負荷の管理」にも貢献します。アダプティブラーニングは、指導や課題を生徒の現在の能力レベルに合わせて個別化することで、学習者が自分のペースで進捗できるように適切な支援(足場かけ)を提供します。これにより、学習者は過度に難しい内容に直面することなく、認知負荷が管理された状態で学習を進め、学習成果を高めることが期待されます。
自己学習の促進
アダプティブラーニングのプラットフォームは、AIを活用することで自己学習を促進します。これらのプラットフォームは、学習者が改善すべき領域について詳細なフィードバックを提供し、学習者を導きます。また、生徒にコンテンツを通じて代替経路を選ぶオプションや、新しいコンテンツに挑戦するオプション、または以前の概念を復習するオプションを提供できるプログラムもあります。
学習状況の「見える化」でフォローがしやすい
従業員の学習状況の「見える化」でフォローがしやすいのもメリットとして挙げられるでしょう。アダプティブラーニングの学習履歴は、システム上で管理することが可能です。従業員の学習内容やかかった時間、正解率などを知ることができるため、管理者は学習履歴をもとに、的確なフィードバックやアドバイスに繋げることができるでしょう。
03アダプティブラーニングのデメリット・課題
アダプティブラーニングを導入するには、ICT環境の整備に費用がかかることを考慮しなければなりません。また、それぞれの学習者に合わせた学習体験を提供するためには、必然的に豊富なコンテンツが必要です。これらのコンテンツを揃える費用もかかるでしょう。
さらに、学習内容は時代と共に変わっていきます。陳腐化するものもあれば、更新しなければならないもの、新しく追加しなければならないものもあります。そのため、一度揃えれば終わりではなく、ランニングコストとしてコンテンツの整備に費用はかかり続けると考えておかなければならないでしょう。
04アダプティブラーニングの代表的な教育サービス8選
アダプティブラーニングサービスは多数ありますが、ここでは、代表的な教育サービスを8つ紹介します。
Knewton
Knewtonは2008年に創立されてから、人間の学習の仕組みに関する数十年にわたる研究をもとに、アダプティブラーニングのシステムを開発してきました。ニューヨーク、ロンドン、東京にオフィスを持ち、学習者数は全世界で約4,000万人以上を誇ります。日本ではZ会や学研とパートナーシップを結び、学習プロダクトを開発しています。
すらら
すららは、株式会社すららネットが提供する、アダプティブな対話式ICT教材です。小学生から高校生までの5教科を中心に扱い、国内の約2,171校の塾や学校にサービスを提供しています。また、家庭学習や海外、放課後のデイサービスなどにおいても広く活用されるようになっています。
Cerego
Ceregoは、アメリカに拠点を置くCerego社が開発したアダプティブラーニングのプラットフォームです。脳科学や認知心理学の研究を活かした、記憶定着特化型の学習エンジンを提供しています。
Core Learn
Core Learnは、印刷会社大手の凸版印刷株式会社が提供する、社会人向けの完全習得型デジタル教材です。業務に必要な知識を理解し、記憶に定着させることで、完全習得を目指します。当初は、金融機関向けのデジタルドリルを販売していましたが、現在では業種を問わずに100社以上の導入実績を持ちます。
Z会Asteria
Z会Asteriaは、通信教育サービスを提供するZ会が提供する、アダプティブラーニングのプラットフォームです。内容理解・問題演習・添削指導、すべてがタブレット内で完結します。問題演習では、添削指導者による1人ひとりに向けた丁寧な指導をオンラインで受けることが可能です。Z会が持つ85年の指導実績とテクノロジーで、学習効果を最大限に高めることができるサービスです。無学年学習を採用しているので、学年・年齢を問わず受講できます。
Brightspace LeaP
Brightspace LeaPは、学習者の習熟度に応じて、カリキュラムを組むことができるアダプティブラーニングツールです。例えば、「内容理解のための動画を見たら、問題演習に進むことができる」といったように、学習者ひとりひとりに対して各学習オブジェクト(内容理解の動画・問題演習・評価シートなど)へのリリース条件を設定できます。
atom
atomは、学習塾向けアダプティブラーニング教材です。問題の丸つけ・採点、次に解くべき問題や解き直すべき間違えた問題の指示、生徒の苦手分野の発見と出題、学習進捗の管理などを行うことができます。生徒の得意不得意・進度に合わせた個別指導や、生徒のモチベーション維持への注力、少ない講師による多人数の個別指導などを可能にします
Qubena
Qubenaは、AI (人工知能)を活用したアダプティブラーニングツールです。児童・生徒によって間違え方はそれぞれであり、解決方法もそれぞれですが、Qubenaでは搭載している数万問から一人ひとりに個別最適化された問題を出題します。対象は小1〜中3で、「算数・数学」「英語」「国語」「理科」「社会」の5教科が一つにまとまっています。
05企業におけるアダプティブラーニングの活用例
アダプティブラーニングは非常に効果的な教育手法ですが、コンテンツの整備やシステムの管理に工数がかかります。そのため、アダプティブラーニングを活用した方が良いシーンを見極め、徐々に活用の幅を広げていくのが良いでしょう。この章では、企業におけるアダプティブラーニングの活用例を紹介します。
全社員を対象とした研修
アダプティブラーニングは、コンプライアンス研修や情報セキュリティ研修など、全社員を対象とした研修に有効活用できるでしょう。これらの研修は「テストで満点を取るまで再受講してテストを受け直す」といった流れで行われることが多いです。そのため、テスト結果に基づいて、それぞれの学習者に合わせた内容だけを受講できるような環境は、忙しい社員にとって大きな負担軽減になります。
新入社員研修
アダプティブラーニングは、新入社員研修にもおすすめです。昨今の新入社員は入社時点でスキルにばらつきがあることが多く、全員一律の研修が効果的ではなくなっています。
例えば、すでにExcelを使える新入社員には、基礎的なExcel研修の受講は免除して、代わりにマクロやVBAを習得してもらうなど、それぞれの社員に適した研修体験をアダプティブラーニングでは実現することができるのです。
管理職研修
管理職に求められるスキルは多岐にわたります。目標達成マネジメントが苦手な人もいれば、ピープルマネジメントに課題がある人もいるでしょう。このように、求められるスキルが複雑かつ豊富だからこそ、アダプティブラーニングが効果を発揮します。
ただし、管理職に必要なスキルは複数あり、内容も係長に求められるレベルから、部長に求められるレベルのスキルまであります。そのため、テストやアンケート、360度評価などを用いながら、個々の社員に対して適切な研修内容を提供できれば、忙しい管理職の継続的なスキル向上が目指せます。
06アダプティブラーニングを導入した企業事例
最後に、アダプティブラーニングを導入した企業事例を2つ紹介します。
Ceregoを導入した「西日本旅客鉄道株式会社」
西日本旅客鉄道株式会社では、Ceregoの導入後、運輸関係指令員が対応業務に関するマニュアルを覚えるために活用しています。業務の中には、乱れたダイヤの修正が含まれますが、そのための多岐にわたる知識を習得する必要があります。また、昼夜問わず業務に忙しく携わる運輸関係司令員にとって、隙間時間を有効活用できる最適な学習方法になっています。
Core Learnを導入した「株式会社三菱UFJ銀行」
株式会社三菱UFJ銀行では、金融機関向けの完全習得型デジタル教材「Core Learn」をベースにして作成された、独自の教材「骨太ドリル」を活用しています。銀行員にとって、業務上必要な知識は完全に理解する必要がありますが、アダプティブラーニングの導入により、効率的な学習が可能になっています。
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■資料内容抜粋
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・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など

07まとめ
アダプティブラーニングを導入するメリットや注意点、企業事例をまとめました。EdTechのひとつとして教育現場における導入が急がれていますが、人材育成や社員教育にも効果を発揮することが分かりました。人材育成には人的、時間的コストがかかりますが、アダプティブラーニングの導入により、効率的かつコストを抑えて育成効果を得ることが可能です。
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登壇者:越川 慎司様株式会社クロスリバー 代表取締役
ITベンチャーの起業などを経て2005年に米マイクロソフト本社に入社。業務執行役員としてパワポなどの責任者を経て独立。全メンバーが週休3日・リモートワーク・複業の株式会社クロスリバーを2017年に創業し、815社17万人の働き方と成果を調査・分析。各社の人事評価上位5%の行動をまとめた書籍『トップ5%社員の習慣』は国内外で出版されベストセラーに。