社内にナレッジを蓄積する方法とは?そのメリットや課題の解決方法についてもご紹介
社内ナレッジを蓄積し共有していれば、特定の業務が属人化していたがために一人の離職で業務が停滞する、というケースを減らせるでしょう。そのために必要な蓄積方法や解決すべき課題について解説していきます。
- 01.社内ナレッジとは何か
- 02.社内にナレッジを蓄積・共有するメリット
- 03.社内にナレッジを蓄積する具体的な方法
- 04.ナレッジ共有を社内に浸透させる方法
- 05.社内ナレッジ共有が失敗するケースと解決方法
- 06.まとめ
01社内ナレッジとは何か
社内ナレッジとは、全社的に共有されており活用できる状態になっている業務的な知見のことを指します。従業員がその業務上で得てきた個別の経験などは、どこにも発表せず共有されていなければ、それはただの「個人のナレッジ」のままです。 それらはどれだけ貴重な知見であろうとも、その従業員が退職すれば職場から失われてしまいますし、もしかするとその知見をもっている当人が忘れてしまうかもしれません。社内ナレッジを蓄積して業務で役立てるためには、定期的に業務の振り返りを行って共有し、社内に残す仕組みが必要となります。
暗黙知と形式知
人々が個々人の中だけにもっており、言語化されておらず共有化もされていない「個人のナレッジ(=勘)」のようなものを、暗黙知と呼びます。反対に、誰でもアクセスできる状態になっており明文化された「全体のナレッジ」のことを形式知と呼びます。社内ナレッジについては、個人の暗黙知を全体の形式知に変え、媒体に記録することで蓄積し、共有して有効活用できるようにすることが重要となります。このような状態が、社内ナレッジを活用する際における最終目標となるのです。
【無料アーカイブ動画】
ナレッジマネジメントツール「flouu」のCEOが語るナレッジマネジメントを成功せるポイント
この動画では、ナレッジマネジメントツール「flouu」を提供するプライズ株式会社 代表取締役CEOの内田 孝輔氏が、ナレッジマネジメントについて、必要性から方法、ポイントまで詳しく解説しています。ツール提供者だからこそ知りえる、多くの企業を支援してきた中で見えてきた失敗例などもケーススタディとして語っていただいているので、ナレッジマネジメントに本格的に取り組みたいという方はぜひご覧ください。
-
プライズ株式会社 代表取締役CEO
アクセンチュア経営コンサルティング本部等にて多数の戦略・業務改革コンサルティング業務に従事。その後、カカクコム食べログ本部等3社にて新規事業の立ち上げおよび事業経営に従事した後、株式会社iettyにて取締役COOとして業務改革、オペレーション組織立ち上げを中心とした幅広い企業経営に携わる。 営業から経理まで幅広い領域における業務変革をコンサルタント・事業経営者としてリードした経験を有する業務変革のプロフェッショナル。
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
02社内にナレッジを蓄積・共有するメリット
社内にナレッジを蓄積・共有することのメリットは主に以下が挙げられます。
- 1.業務を効率化し生産性を高める
- 2.過去の失敗を活かすことができる
- 3.業務の属人化を防ぐことができる
- 4.スキルアップや即戦力化が期待できる
- 5.安定したサービスや製品を提供できる
- 6.新たなイノベーションに役立つ
これらはナレッジを社内に蓄積し、共有することで初めて効果を発揮します。それぞれのメリットについて以下で詳しく紹介します。
1.業務を効率化し生産性を高める
社内にナレッジを蓄積・共有するメリットの1つに、業務効率化があります。「〇〇になっている場合は△△をすると成功しやすい」・「こうするとミスが起こりやすい」といったナレッジは、作業者ベースでは蓄積されているものの、そのままでは暗黙知であり個人のナレッジに過ぎません。
その暗黙知を形式知として全体共有することで、誰でも利用できる社内ナレッジとなります。それまでは従業員個々人が同じような失敗をし、同じような気づきを得ながら業務上の成長を果たしてきたはずです。その成長過程で得られた知見を共有化することで「効率的な状態」にすぐに誰でも近づくことが可能になります。
また、一見するとAさんとBさんはいずれもエース社員で、どちらも高い業務効率かもしれませんが、彼ら個人は別の知見を活用して現在の効率を達成しているのかもしれません。Aさんの知見をBさんが、Bさんの知見をAさんが取り入れることで、さらなる業務効率化ができる可能性もあります。
2.過去の失敗を活かすことができる
業務上起こりうる問題の全てを防ぐことはできません。しかし、どのような問題が起こりそうか予期しておいて、あらかじめ備えておくことは可能です。もちろん、やり方によっては問題そのものを回避することも可能でしょう。そのため、社内のナレッジには、成功事例だけではなく失敗事例も蓄積させることが重要です。
過去に誰かが起こしてしまった失敗があるなら、なぜその失敗が起こったのか、どうすれば防げたのかを、同じような状況にある人が事前に知っておくことができるのです。誰かが失敗して損失を出してしまっても、社内にナレッジを蓄積・共有できていれば、それと似た状況の人がもう一度失敗をなぞって、同じ轍を踏む可能性を下げることができます。このように、業務上の成果を上げてプラスをさらなるプラスにする、という使い方だけでなく、マイナスを極力発生させない、というような使い方もできます。
3.業務の属人化を防ぐことができる
転職が当たり前となり、人材の流動性が高まっている昨今。特定の業務が特定の個人に紐づいてしまうと、その人が退職した際の業務的なダメージは大きなものとなります。もちろん引継ぎを行えば良いのですが、そのためには業務上の負担や停滞など、一定のコストがかかってしまうでしょう。
一方で社内にナレッジを蓄積・共有し、誰でも該当業務ができる状態にしておくことができれば、引き継ぎコストを削減できます。また、次の人が業務に慣れてベテラン社員と同じような効率を引き出すまでの期間も短縮できるでしょう。円満な退職に限らず、事故や病気、家庭の事情など、引継ぎのタイミングもなく社員が離職する場合もあります。社内ナレッジを共有して誰でもどんな業務でもできるような下地を作っておけば、そのような不測の事態にも対応可能です。
4.スキルアップや即戦力化が期待できる
社内にナレッジが蓄積されていれば、新入社員や中途入社の社員が新たに仕事を始める際に即戦力化、中期的にスキルアップしやすいといったメリットもあります。入社年数に限らず、部署異動をしたり別の事業部に配属されたりすることで、それまでの業務で得てきた経験や勘が当てにならないということは少なくありません。そのような場合、「新人が一人前になるまでの過程」が知見として残されていれば、誰かが通った道をなぞるだけで良いため、最初の一人よりも早い期間で一人前になれるでしょう。その他、同じ部署で成功した人の手法や、別の部署でうまくいった事例などを取り入れれば、ベテラン社員であってもまだまだ成長して成果を上げることは可能です。
5.安定したサービスや製品を提供できる
社内ナレッジの蓄積と活用は「個別ケースごとのマニュアル化」とも言えます。何か問題が起こったときや社員の対応が必要になったとき、対応する社員の性格や性質によって対応方法が変わってしまっては、安定したサービスであるとは言い難いでしょう。個別ケースに対する知見が共有され、対応方法がマニュアル化され明確になっていれば、誰が担当しても同じような対応を行うことが可能になります。また製造部などであれば、不良品対応や微妙な作業が求められる製作において、「職人の経験と勘」に頼る機会を減らすことができます。このように、社内ナレッジを活用することはサービスや製品を安定させることにもつながるのです。
6.新たなイノベーションに役立つ
過去の知見に誰でもアクセスできると、新たなイノベーションに役立つ可能性があります。過去同じような課題にぶつかったことはないか、そのときはどうやって解決したか。 あるいは、過去の事例では壁にぶつかって頓挫したかもしれないが、社内ナレッジの蓄積によって解決できるようになっていないか。場合によっては、今発見した知見が、過去に諦めたアイデアの問題解決の糸口になる可能性もあります。社内ナレッジが蓄積していけば、こういった知見同士の相互作用を起こしやすくなるため、イノベーションが起きやすい環境が整うのです。
03社内にナレッジを蓄積する具体的な方法
ナレッジを活用するためには、ナレッジの蓄積と共有の双方が欠かせません。この章では、まず社内にナレッジを蓄積する具体的な方法を紹介します。
社内wiki
社内wikiとは、社員が自由に知識やノウハウなどを書き込むことができるツールのことです。閲覧権限の設定もできることが多く、ナレッジの活用だけでなく議事録や社内共有資料としても活用できます。
社内wikiを活用するメリットは、情報の整理のしやすさです。ナレッジを社内で蓄積し、共有するためには、ナレッジを探しやすく整理しておくことが欠かせません。その点で、社内wikiはツリー構造を簡単に作成できるので、部署単位でまとめたり、施策単位でまとめることが簡単にできるので、ナレッジを探しやすい状態で蓄積することができます。
社内wikiツールの代表例として、esa・Notion・Confluenceがあり、特にNotionはAI活用もできるため、蓄積する社員の負担を軽減するという面でおすすめのツールです。
Notion AIの使い方を動画で解説
この動画では、Notionを活用した効果的なアイデア出し、to doリストの生成、文章翻訳、要約、記事作成の方法を学ぶことができます。Notionの基本的な概要と使い方、NotionAIの便利な機能(アイデア出し・to doリスト生成・文章翻訳・要約・記事作成)、NotionAIの具体的な活用イメージなどを実際にNotionの画面を用いながら解説しています。
-
AI活用インフルエンサー
AIを日常使いする方法をSNSで発信中。Notion公認資格所持。企業へのAI導入や受託開発、Notion運用支援の実績多数。国際基督教大学卒業
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
Google Workspace
Google Workspaceとは、Google社が提供している無料で使用できるツールのことです。Microsoft社が展開しているExcelやPowerPoint、Wordとほぼ同じ利用が可能なため、スタートアップ・ベンチャー企業ではGoogle Workspaceがよく使用されています。
Google Workspaceのメリットは、リアルタイムでの同時更新と無料という部分にあります。同時に複数人が書き込み、編集することができるので、オンラインMTGの際はホワイトボードのような使い方も可能です。一方で、社内wikiのように情報を整理するという面では1つ手間がかかるというのがデメリットです。GoogleDriveでフォルダを分けて、そのフォルダに格納しなければ情報が整理されず、ナレッジを探しにくくなってしまいます。
ナレッジマネジメントツール
ナレッジマネジメントに特化したツールを活用するという方法もあります。ナレッジの蓄積と共有に強みを置いたツールになるので、ナレッジ活用を本格的に推進したい企業に向いています。
一方で、ナレッジマネジメントツールと社内wikiツールの境界線は昨今薄れてきており、機能がそれぞれ追加されて、どちらも同様の機能が備わっていることも多くなってきました。用途ごとに異なるツールを導入されても、それぞれ開くのが面倒で使わなくなる危険性があるので、社内wikiをすでに導入している場合はその社内wikiでナレッジの蓄積と共有を実現できないか、まずは検討してみるのが良いでしょう。
04ナレッジ共有を社内に浸透させる方法
ナレッジは蓄積するだけでは意味がなく、共有されて初めて意味をなします。しかし、社内にナレッジを蓄積していくことと同様に共有する文化を浸透させていくことも難しいのが事実です。この章では、ナレッジ共有を社内に浸透させる方法について紹介します。
ナレッジマネージャーを決める
社内にナレッジが蓄積され、共有されることは望ましいと考える社員が大半でしょう。しかし、実態としてうまく機能している会社は多くありません。その理由は端的に言えば、面倒だからです。特に、目標を達成するために多くの業務をこなしているプロフィットセンターの社員の中には、ナレッジの蓄積と共有はされたら嬉しいが自分が率先して続けることは億劫に感じてしまうという人も少なくないでしょう。多くの社員にとってナレッジの蓄積と共有は自身の目標になっておらず、査定にも響かないので、やった方が良いがやらなくても損を感じない仕事なのです。
そのため、ナレッジマネージャーという役割を決めて、ナレッジの蓄積と共有を推進する人材をチームや部署内に置くことが有効です。そして、そのナレッジマネージャーの目標設定にナレッジの蓄積と共有、仕組み化などを組み込むことによって、ナレッジマネージャーにとってその仕事が達成しなければならないタスクに変わります。最初はチームメンバーに頻繁に声をかけて、蓄積を促し、共有する場を設けるなどの取り組みが必要ですが、一度仕組み化して定常化してしまうと、それが当たり前の文化になるので、そこまで昇華させることができれば、ナレッジマネージャーとして会社に大きく貢献したと言えるのではないでしょうか。
共有すべきナレッジを決めておく
部署やチームにとって有益なナレッジは何かを考え、そのナレッジに関しては共有する仕組みを組むようにしましょう。例えば、目標達成に関してのナレッジは必ず共有するとルール化することで、メンバーも何を共有して何を共有しなくて良いのかの判断に迷うことがなくなり、共有が面倒なものと感じる要因を減らすことができます。
また、どのようにナレッジを共有するのかもルールにしておくと良いでしょう。おすすめはチャットツールで表記ルールも決めた上で共有する方法です。例えば、【ナレッジ共有】と文頭に必ず入れるといったルールを決めておくことで、後々探しやすい状態も共有と同時に作っておくことができます。これは中途採用で入ってきた社員に共有する際にも有効なので、ぜひ試してみてください。
ナレッジ共有によって結果を出す
多くの社員にとってナレッジ共有は面倒なもので、自分の業務に影響をもたらさないものと思われているでしょう。このような思考を打破するには、ナレッジ共有によるメリットを感じてもらう他ありません。社内にナレッジを蓄積・共有する目的も生産性の向上や形式知による業績貢献のはずなので、結果を出すことは目的にも則しているはずです。
ナレッジの共有によって、他者に貢献したという結果をまずは出しましょう。そして、その結果が出たことも大々的に共有することもおすすめです。誰かの役に立ったという経験がナレッジ共有に向き合う姿勢に大きく影響するので、部署やチーム内で発言力や影響力の強い人材を率先して巻き込めるように工夫すると、ナレッジの蓄積・共有が文化として根づきやすくなります。
05社内ナレッジ共有が失敗するケースと解決方法
次に、実際に社内ナレッジ共有を行う際、陥ってしまいがちな失敗とその解決方法について解説していきます。
- 1.ナレッジの記録がしづらい
- 2.ナレッジを探しにくい
- 3.ナレッジが活用されない
1.ナレッジの記録がしづらい
社内ナレッジ活用のための第一歩は、個人の暗黙知を形式知にして蓄積することです。ツールへの記録がしにくいと、この第一歩となるナレッジ蓄積がうまくできません。そのため、仕組み自体はあるが、ツールの中には何の蓄積もない、という失敗に陥ってしまいます。
- ・ナレッジ記載手順を見直してボトルネックを見つけ改善する
- ・前述した社内ツールを導入する
- ・ナレッジをツールに記録するまでの業務フローに組み込む
上記のような対応で解決できるでしょう。
一つめのボトルネックに関してですが、よくあるのが以下のような問題です。
- ・記載項目が多すぎて時間がかかる ・全てを網羅しようとして、通常は記載の必要がない項目が設けられており記載者が混乱する
- ・記載箇所が一つしかなく、ナレッジに関連した周辺情報の全てを記載者が文章で書かないといけない
設問数は必要十分であるか、記載者の負担はかかりすぎないか、といった点を見直すと良いでしょう。
2.ナレッジを探しにくい
蓄積されたナレッジを共有する際にも問題が起こりがちです。それが、共有されたナレッジを探しにくいという問題です。
- ・社内wikiの階層構造が適切ではなく乱雑で、探しにくい
- ・ただただ蓄積されているだけで、書き方が記載者によって異なるため読みにくい
- ・膨大過ぎて自分が探したい情報にアクセスできない
上記のような問題が起こり、ナレッジを探しにくいため活用までいかない、という問題です。
- ・検索性が高い社内ツールを導入する
- ・発生場所、発生内容、対応内容などの項目をそろえ、ソート検索しやすいようにする
- ・用語や文言を統一し、検索性が高いデータにする
- ・探しやすくまとめやすい記載フォーマットを整える
- ・特定のナレッジに関しては特定の人、というようにナレッジの管理者を決める
共有化の問題のように感じられますが、実際にはナレッジを蓄積する際の注意でほとんど対応可能です。そのうえで、社内ナレッジのデータベースを適切に管理する担当者を置けばさらに使いやすくなるでしょう。
3.ナレッジが活用されない
せっかく蓄積され共有されやすい状態にしても、社員が活用してくれないという問題も起こります。どういうナレッジがあるのかをそもそも知らず、自分がこれから取り組むことにを活用せずに進めようとしてしまうのです。
- ・社内ナレッジ蓄積に関わってもらい、存在を知ってもらう
- ・プロジェクトを始める前の事前調査に、ナレッジ調査もフローとして組み込む
- ・社内ナレッジを活用する文化を醸成する
上記のような方法で解決できるでしょう。また、社内ナレッジを活用しながら活躍していく社員を目の当たりにしたり、自分が一度でも活用して有用であると感じられれば、その後は積極的に使っていく社員も増えていきます。
「研修をしてもその場限り」「社員が受け身で学ばない」を解決!
研修と自己啓発で学び続ける組織を作るスクーの資料をダウンロードする
■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など
06まとめ
従業員たちは何もせずとも業務上で必要な知見を蓄積していきます。あとはその個人の知見を社内ナレッジとして共有し、誰でも活用できるようにするのみです。 ここで紹介した社内ナレッジの共有化に必要な考え方やツールは、そのために役立つでしょう。ぜひこの機会に、自社の社内ナレッジの共有方法について取り組みを見直してみてください。