退職証明書への記載項目と発行に関する注意点について解説する
従業員が退職した後に発行する退職証明書にはどのような意味があるのでしょうか。退職証明書は、企業を退職したことを証明し過去に在籍していたことも証明する大切な書類です。企業の人事担当者は、従業員の退職後の処理の1つとして退職証明書を発行する必要があります。本記事では退職証明書へ記載すべき事項や発行に関する注意点を解説していきます。
- 01.退職証明書とは
- 02.退職を証明する書類は複数あることを理解しておく
- 03.退職証明書提出が必要となる場合を理解する
- 04.退職証明書に記載する項目
- 05.退職証明書作成における注意点
- 06.退職証明書のテンプレート活用について
- 07.まとめ
01退職証明書とは
退職証明書は文字通り「退職」を証明する書類です。退職証明書には、どのような意味があり、その扱いはどうするべきなのでしょうか。退職証明書の発行に関する法令を踏まえて退職証明書について解説していきます。
公的文書はない退職証明書
退職証明書は、過去にその会社に勤めていたことを示す書類です。中途採用後に、新しい職場で提出を依頼される場合も多く履歴書に記載されている内容と齟齬がないか確認するために利用されます。退職証明書はハローワークから交付される離職票とは異なり公文書ではなく、原則的に退職者からの申請に基づき作成されるものです。
退職証明書発行は義務
退職証明書の発行は、退職者の請求が生じた場合には発行することが義務化されています。労働基準法第22条1項において、請求に応じて速やかに発行することが定めており、むやみに拒否することはできません。また、特別な理由なく遅延しての交付も違法となります。
参照:厚生労働省「労働基準法第22条」
発行をしない場合の罰則について
労働基準法第22条1項では、交付を請求された場合に拒否をすることや特別な事由なく遅延する場合には、30万円以下の罰則処分をさだめています。処罰をされると労働基準局内で公開され、その後の採用活動にも影響するため誠意ある対応を行いトラブルが起きないようにすることが必要だと理解しておきましょう。
02退職を証明する書類は複数あることを理解しておく
退職を証明する書類は退職証明書だけではありません。その他に、「離職票」「資格喪失証明書」があり、それぞれは発行する元が異なり、利用するシーンも異なります。次に退職を証明する書類の違いについて解説していきます。
退職証明書
退職したことを証明する書類で請求者の請求に応じて作成します。請求を拒むことは違法になるため、請求に応じて速やかに発行する必要があり拒むことでの罰則もある。
- 発行元 :退職した企業
- 利用用途:転職先などに提出し履歴書などとの相違が無いかを確認するために利用。
離職票
企業の人事担当者の手続きによりハローワークにて発行する書類。離職理由に加えて、過去半時間の給与、出勤日数が記載される。第三者機関で発行する公的書類となり発行は法律で義務化されている。
- 発行元:所轄のハローワーク
- 利用用途:市役所での国民健康保険の加入や失業保険取得手続きに利用。
資格喪失証明書
社会保険に加入していた者の退職に伴い社会保険加入権利の喪失を証明する書類。社会保険対象でなくなった日付や加入していた企業名が記載される。
- 発行元:協会けんぽ、健康保険組合
- 利用用途:国民健康保険の加入や社会保険任意継続手続きの際に利用。
03退職証明書提出が必要となる場合を理解する
退職証明書が必要になるシーンにはどんな場合があるのでしょうか。従業員が退職する際には、必要となるシーンを説明し発行の必要性を確認しておくことも人事部門の役割です。従業員は、退職証明書が持つ意味や利用シーンを知らない場合もあるため、退職前に確認を行い発行有無を確認しておくことでトラブルを回避することができます。
国民健康保険に加入する場合
退職後、すぐに別の会社に所属する場合や家族の社会保険に加入する場合を除き、通院の予定がある場合には国民健康保険証の発行が必要です。通常、国民健康保険の加入には離職票を使用しますが、手続きの関係で時間を有する場合には退職証明書で代用することができます。離職票が届いていない場合には、窓口でその旨を説明し退職証明書を提示することで国民健康保険への加入手続きが可能です。
失業保険手続きを行う場合
失業保険手続きには離職票を提示する必要があります。しかし、依頼をしても離職票の到着が無い場合には、退職証明書を持参し相談することが可能です。失業保険を受けとるには7日間の待機期間が必要となりますが、離職票が届かない場合には待機期間を開始する受付ができません。このような場合には退職証明書をもとに離職を証明し、その後の手続きについて相談を行います。ハローワークから勤務先への問合せや送付の依頼を行ってくれる場合もあり失業保険の受給を遅らせない方法を取る事ができます。
04退職証明書に記載する項目
退職証明書に記載する項目について解説していきます。各項目は必須ではなく、退職者の希望項目のみの記載であることに注意が必要ですが、人事部門でなければ記載事項を認識していることは少ない場合が多く、記載項目の取捨選択は実施されることは、ほとんどありません。
退職年月日
退職時には有給休暇を消化する場合が多くありますが、退職年月日は、有給休暇を取得完了した退職日を記載します。最終出勤日ではない点に注意が必要です。退職時に次の勤務先が決まっている場合には、転職先の雇用契約開始日と退職年月日に重複期間がある場合には社会保険手続きが複雑になる点を理解し退職者に確認を取ることを忘れず行いましょう。
勤務期間
試用期間の記載はしない、勤務期間は何年などのように簡素化して書く方法もインターネット上には紹介されていますが、入社日(試用期間開始日)から退職日までを正確に書くことが基本です。離職票の到着が遅れた場合には、ハローワークへ提示することも想定されるため、正確な期間を記載しておくことが必要だと理解しておきましょう。
業務の種類
退職前にどのような業務を担当していたかを記載します。これは、転職後の勤務先で参考にするために必要なため、詳細な内容を記載する必要がありません。勤務期間中に異動を多くしていた場合などは、直近3か年程度の所属部署、業務名を記載しておくとよいでしょう。
その事業における地位
最終的な役職名を記載します。記載できるのは、最終的な役職名のみで問題ありません。転職先においても過去の役職ではなく最新の役職情報のみが必要です。退職者は必要に応じて職務経歴書などに詳細を記載しているため最終的な役職1つを記載することでトラブルになることはありません。
離職以前の賃金
退職前の賃金を記載します。記載する賃金は、支給額(手取り額)ではなく、社会保険料や税金を控除する前の総支給額で、交通費や残業代も含みます。離職票のように過去半年分を記載するなどの決まりはなく、1ヵ月分や半年分など企業のルールに合わせて記載することになります。記載する月数や内訳の有無は、転職後の給与額確定で必要になる場合も多いため、退職者の意向を確認することを忘れないようにしましょう。
退職事由
退職理由を記載します。一般的に、「自己都合」「契約期間満了」「定年」「解雇」などのように簡素化されて記載します。解雇などが退職理由の場合には、記載を拒む場合があります。退職理由は転職先でも重要視する部分ではありますが、退職者の意向を確認して記載することが必要です。
05退職証明書作成における注意点
退職証明書作成における注意点
退職証明書作成における注意点を解説します。本人の請求により作成、発行する退職証明書ですが、作成についてはいくつかの注意点があります。退職証明を必要とする退職者に確認すべき項目もありますので、内容を理解しておきましょう。
本人希望項目以外の記載禁止
退職証明書の記載項目は、退職者の希望項目のみです。社内にフォーマットがあるかという理由で、希望しない項目を記載することはできません。あくまで、退職者の要望にそって作成することが原則となります。記載項目については、退職前に確認をトラブルにならい対策を取ることが必要です。
利用用途は退職者の自由
退職証明書の利用用途は退職者の自由です。利用用途に応じて記載項目の変更や作成を拒むことはできません。退職者が使用するかしないかも自由になります。企業側は、あくまで退職者の請求により作成する書類であるだけであり、利用用途を確認することも禁止されていることを注意しておきましょう。
作成申請期限
作成の申請期限は2年間とさだめられています。この間であれば、退職者はいつでも作成を依頼することが可能です。また、退職証明書の発行は退職後となります。在籍期間や最終出勤日に作成し渡すことは禁止されています。できるだけ早い受取を希望する場合には、退職後数日中に送付できるようにあらかじめ準備しておきましょう。
発行回数に制限なし
退職証明書には発行回数の制限はありません。退職者が複数回請求してきた場合には、その都度作成を行う必要があります。複数箇所に同時に提出したい場合なども想定されるため、発行に際しては必要枚数を確認することも忘れずに行いましょう。
06退職証明書のテンプレート活用について
退職証明書については、あらかじめフォーマットなどを準備しておくと便利です。退職前に必要項目を確認する場合や実際に作成する場合にも、フォーマットが整っておくことで人事部門の負荷が軽減されます。次に退職証明書のテンプレートについてご紹介しましょう。
労働基準局作成のテンプレート
労働基準局のHPには、人事部門で利用する様々なテンプレートが準備されています。その中に退職証明書のテンプレートも準備され掲載されています。記載項目などについては、労働基準法に準じているため利用することで項目の漏れなどを抑制できます。
その他のテンプレート
その他にもインターネットで検索すると様々なサイトで退職証明書のテンプレートを掲載しています。その多くは、労働局のテンプレートと同じです。その他にも記載事例などを掲載しているコンテンツもあるため、一度、検索をして確認しておくとよいでしょう。
発行元:労働局「退職証明書」
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07まとめ
本記事では、退職証明書をテーマに記載項目や類似する書類について解説しています。実際に退職後に必要となり急に作成を依頼されることもある退職証明書については、人事部門として退職処理における1つの項目として捉え、いつでも対応できる準備をしておくことが必要です。今後の退職証明書発行については、本記事でご紹介した内容を元にすすめてください。