ABWとは?導入するメリットや注意点から活用方法を解説
ABW(Activity-Based Working)は、従来の固定的なオフィス作業ではなく、社員の作業内容や気分に合わせて働く場所を自由に選択できる働き方のことです。 自分の作業スタイルに合った場所で仕事ができるので、集中力アップや異なる部署間の連携ができ、生産性の向上が期待できます。この記事では導入するメリットや注意点から活用方法を解説します。
- 01.ABWとは
- 02.ABWを導入するメリット
- 03.ABWを導入するデメリット
- 04.ABWを導入する方法
- 05.ABW導入の企業事例
- 06.まとめ
01ABWとは
ABW(Activity-Based Working)は、従来の固定的なオフィス作業ではなく、社員の作業内容や気分に合わせて働く場所を自由に選択できる働き方のことです。 自分の作業スタイルに合った場所で仕事ができるので、集中力アップや異なる部署間の連携ができ、生産性の向上が期待できます。
ABW型オフィスとは
ABW型オフィスとは、オフィスの仕事において社員同士が働きやすい空間を提供したフロアのことを言います。 例えば、部署間での連携をスムーズに行うためのミーティングスペースやゆったりと過ごせるソファースペース、集中したい時に利用する個室スペースなどが挙げられます。 これにより、社員はその日の業務内容や気分に合わせて働く場所をオフィス内で選択することができ、社員満足度を高めることができます。
フリーアドレスとの違い
ABWとフリーアドレスでは、オフィススペースの効率的な利用と柔軟性を追求する点では共通点はありますが、「働く場所」と「考え方」に違いがあります。 働く場所について、フリーアドレスはオフィス内の席を自由に選択できる意味を指しているため「オフィス勤務が前提」となります。一方、ABWはオフィス勤務に囚われず、勤務場所はカフェやコワーキングスペース、社内会議室などさまざまです。 つづいて考え方では、フリーアドレスは勤務場所のみに焦点を当てているためオフィス利用の効率化を目指しています。一方、ABWは勤務場所だけでなく、ITや社員の行動にも焦点を当てており、より主体性を重視した働きやすい環境を整備するための考え方になります。
02ABWを導入するメリット
つづいて、ABWを導入するメリットについて紹介します。
- ・社員の生産性が向上する
- ・ワークライフバランスを両立しやすい
- ・固定費の削減につながる
- ・優秀な人材確保できる
- ・社員のエンゲージメントが向上する
- ・社員の自発的な働き方を促すことができる
社員の生産性が向上する
ABWは社員が働く場所を自由に選択できるため、個々のニーズや好みに合わせてより効率の高い環境を提供することができます。 例えば、作業に集中したい時は静かな作業スペースを選んだり、他部署の人と打ち合わせをしたい場合は共有エリアを利用したりすることが可能です。 このように働き方に柔軟性があることで、社員は快適な状況で仕事を行い、集中力を高めることができます。また、他部署との連携も容易に行えるようになるので、情報共有やアイディア出しなどもスムーズに行えます。 結果、全体的な作業の生産性が向上して企業の成果にもプラスな影響を与えてくれます。
ワークライフバランスを両立しやすい
ABWを導入することで、社員は作業スケジュールや場所を選択できるので、仕事とプライベートとの調和が取りやすくなります。 作業内容によって、リモートワークを活用したり作業時間を変更したりすることができるため通勤ストレスが軽減され、かつ時間を有意義に使えるようになります。 ワークバランスの向上は、社員の幸福度や健康にも大きな影響を与えるため結果的に離職率の低下や求人の需要も高まります。
固定費の削減につながる
従来のオフィス環境では、各社員に固定席やオフィススペースを割り当てる必要があり、それに伴って賃貸コストや設備維持費用などがかかっていました。 しかし、ABWであれば社員が必要に応じて場所を選択できるため、席の割り当てが柔軟になり、無駄なスペースの浪費が削減されたり、賃貸費用やインフラによるコストなどの固定費が削減できるようになります。
優秀な人材確保できる
現代における労働市場では、社員が働く環境や柔軟性に対する期待が高まっています。 働きやすい会社だというイメージが強くなれば、入社を希望する優秀な人材も増える可能性があります。 また、うまくABWを活用することができれば定着率も向上するため離職率低下にもつながります。
社員のエンゲージメントが向上する
ABWの導入によって、異なる部署やチームと同じスペースで作業し、ビジネスにおけるアイディア出しや意見交換ができるようになります。 それにより、社員はプロジェクトへの参加意識を高めることができるので、仕事に対するエンゲージメントが高まります。また、自分自身の作業環境を選び、快適な場所で働けることも満足度やモチベーションを向上させるきっかけになります。
社員の自発的な働き方を促すことができる
ABWを活用するためには、仕事の進捗状況と優先順位を自己管理しなければなりません。自分のタスクを把握して、日程や時間の割り振りから効率的に作業を行う必要があります。 このようにABWは、個々のニーズと好みに合わせた柔軟性を持つ一方で、責任と調整の役割も強化されることになるので、より効果的に自己管理を行うスキルを磨くことができます。
03ABWを導入するデメリット
つづいて、ABWを導入するデメリットについて解説します。
- ・セキュリティ対策の強化が必要
- ・社員の評価や勤怠管理が複雑化する
- ・社員同士のコミュニケーション不足が懸念される
- ・ABWの働き方が浸透しないケースもある
- ・自己管理能力が必要
セキュリティ対策の強化が必要
社員がオフィス以外の場所で仕事をする場合、情報セキュリティのリスクが高まります。 例えば、社員がWi-Fiネットワークを使用する際、機密情報が漏洩する可能性があるため、データの暗号化やアクセス制御、社員に対するセキュリティトレーニングなどの強化が必要になります。
社員の評価や勤怠管理が複雑化する
オフィス環境であれば出勤時間や席の利用状況で勤怠管理が容易に確認できます。 しかしABWになると、異なる場所で仕事をするため、社員の動向を追跡することが難しくなります。評価や勤怠管理が複雑化すると、社員の成果評価や給料計算などに影響を与えるため、プロセス重視でなく、成果重視の評価に偏ってしまいます。
社員同士のコミュニケーション不足が懸念される
社員が異なる場所で作業していた場合、対面のコミュニケーションが少なくなるので、チーム間の連携が難しくなります。 チーム間での連携が低下してしまうと、情報共有やアイディアの交換に制限がかかってしまい、クリエイティブや協調性に影響を及ぼしてしまいます。
ABWの働き方が浸透しないケースもある
社員や組織によっては、従来の固定的なオフィス環境に慣れ親しんでおり、ABWの柔軟な働き方への適応が難しい場合があります。 そうするとABWを十分に活用できなくなり、結果、ABWのコンセプトや目的が達成できないことが懸念されます。
自己管理能力が必要
ABWによって、社員はタイムマネジメントやタスク管理など主体性が求められます。 また、自己組織化や調整能力も必要です。 自己管理が不足している社員の場合、生産性や成果に影響を大きく及ぼしてしまうため、社員に対するトレーニングやサポートが必要となります。
04ABWを導入する方法
ここでは、ABWを導入するための手順をご紹介します。
- 1:ニーズ調査
- 2:インフラ整備
- 3:管理と教育
- 4:運用開始
- 5:運用後の評価調査
1:ニーズ調査
ABWの導入にはまず、組織内のニーズを詳細に調査することから始めます。 社員の作業スタイル、ABWに対するニーズ、設備の状況などを調査して、ABWの導入が企業または組織において適切かどうかを判断します。 調査をする際は、各チームや組織のリーダーからフィードバックを収集して、導入の目的とゴールを明確化するようにしましょう。
2:インフラ整備
ニーズ調査によりABWが導入できると判断できたら、次にABWのためのインフラ整備が必要になります。 柔軟なワークスペース、高速インターネットのアクセス、セキュリティ対策などの導入と必要な設備とシステムを整備しましょう。社員がスムーズにABWを活用できる環境を整えることが大切です。
3:管理と教育
ABWの成功には、社員の管理と教育が欠かせません。 ABWの目的や利用方法を社内セミナーを通してしっかりトレーニングしましょう。 そうすることで、自己管理能力への意識向上につながります。また、運用ルールやポリシーを策定し、コミュニケーションを円滑にする管理体制を整えましょう。
4:運用開始
インフラ整備と社員への管理環境、教育が完了したら、ABWを本格的に運用開始します。 初期段階では、社員や各組織のリーダーから意見を収集して、必要に応じて調整を行いましょう。
5:運用後の評価調査
ABWが一定期間運用された後、その効果を評価する調査を行います。 社員の満足度、生産性、他部署との連携などの指標を設定・評価して、目標達成度を確認します。得られたデータに基づいてABWの改善点を特定し、運用を最適化しましょう。
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05ABW導入の企業事例
ここでは、ABW導入の成功事例をご紹介します。ABWの導入を考えている方は他社事例をぜひ参考にしてみてください。
株式会社イトーキ
株式会社イトーキは、事務用品であるデスクやチェア、各種設備を取り扱う会社です。 イトーキは、世界各国で30年以上ABW導入支援を行っている Veldhoen+Company と業務提携し、2018年11月に「XORK Style」というABWを取り入れた新しい大規模ワークスペースを導入しました。 XORK Styleでは、ABWの考え方に基づく「10の活動」を分類し、その分類ごとに最適な環境をスペース内に配置しています。また、ペーパーレスの推進により収納量を70%減少し、その分のスペースを確保、DX化への推進も行っています。
▶︎引用:株式会社イトーキ ABWの考え方に基づく「10の活動」
ABW導入後の社内意識調査によると、導入前と比べて生産性が実感できたと答えた方が年々増加していることがわかります。
アイリスオーヤマ株式会社
アイリスオーヤマ株式会社は、生活用品や家電の商品企画や販売をしているメーカーです。 2018年11月に「アイリスグループ東京アンテナオフィス」でABWを導入しており、個々が集中できる個室エリアやソファーエリア、ソロワークデスクエリア、スタンディングミーティングエリアなど様々なスペースを提供しています。 当初ABWの導入で、フリーアドレスの導入や集中スペースを社員に説明しても理解してもらえなかったといいます。しかし、導入後は多くの社員から「非常によかった」「今まで入らなかった情報が入るようになった」という好評の意見をもらっているとのことです。
▶︎参考:アイリスオーヤマ株式会社 働く人のウェルネスを高めるWELL認証とは?
株式会社竹中工務店
株式会社竹中工務店は、大手総合建築会社です。 竹中工務店では2015年9月にABWを導入し、研究員が活動内容にあわせて場所を選択するだけでなく、高い健康性・快適性が実現されるようにオフィスが新改築されました。 一人一人の多様性や嗜好性を考慮して、6つの性格タイプに合わせた最適なワークプレイスを提供したり。社員の健康行動を促進するようなプログラムから日々の健康作りのサポートも行っています。
ABW導入前と比べて、他部署とのコミュニケーションの満足度は34%増加、総合的なコミュニケーション満足度は34%から43%増加したというデータ結果もあり、社員への満足度向上が伺えます。
06まとめ
ABWを導入することで社員にとって働きやすい環境を提供することができ、業務の効率化や主体性の向上、生産性の向上が期待できます。 さらに、賃貸コストや設備費用などの削減、優秀な人材確保にもつながるので、ぜひABWの導入を検討してみてください。