試用期間中の解雇は違法か|認められるケースと納得できない場合の対処法
試用期間とは、採用した人材に対して「能力」「適正」を見極める期間として設けられています。現在、試用期間を設けている企業はおおくなり、試用期間中の解雇などの問題も出ています。本記事では、試用期間中の解雇をテーマに違法性や注意点を解説していきます。
- 01.試用期間とは
- 02.試用期間中の解雇は可能
- 03.試用期間中の解雇に納得できない場合の対処法
- 04.まとめ
01試用期間とは
試用期間とは、本採用をするかどうかを見極めるために設けるお試し期間のことです。試用期間中には、「適正、能力、就業態度」などを元に見極めを行います。雇用される側も、試用期間中に企業の風土や実務を通して、長期的に勤務可能かどうかを判断することができます。
試用期間は概ね1ヶ月、多くても3ヶ月ほどで設定されます。あまりにも長期にわたり、必要以上の試用期間は裁判で不当と判断されたこともあります。ただし、試用期間の最大期間に明確な基準はなく、適正判断に妥当と思われる期間で設定するしかありません。
また、試用期間を延長することは可能です。ただし、試用期間を延長する場合は、本人への打診と同意が必要です。さらに、試用期間における労働契約書にも「試用期間延長の有無」として記載を行っておくことも求められます。
▶︎参考:厚生労働省|裁判例
02試用期間中の解雇は可能
試用期間中に、本採用に不適格と判断した場合は解雇することが可能です。
試用期間は「解約権留保付労働契約」という契約で、会社と労働者は契約関係を締結します。「解約権留保付労働契約」とは、一定の範囲や条件により労働契約を解消できる権利(解約権)が留保されている労働契約のことです。
つまり、試用期間中に労働者を解雇することは会社側に認められた権利と言えるのです。
試用期間の解雇が認められるケース
前提として、解雇をする権利を会社側は保有していますが、自由に解雇して良いわけではありません。客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当な場合にのみ認められる場合のみ、労働者を解雇することができます。
例えば、社風に合うかどうかを見極めたいという理由で試用期間を設けたとしても、社風が合わないから解雇することはできないのです。この章では、試用期間の解雇が認められるケースについて紹介します。
病気やケガが理由により休職復帰後も就業が難しい場合
試用期間中に病気やケガにより休暇を取得する可能性は誰にでもあります。病気やケガを治療する期間が長期的になる可能性がある際には、正社員は休職となり治療に専念することができます。契約社員の場合、正社員の扱いと同じように「業務中のケガや事故で休職をした場合は、休職後30日間は従業員を解雇する」ことはできません。ただし、業務には関係ない要因での病気やケガであり復帰後に業務内容を見直した場合でも勤務継続が難しいとされる場合には解雇が認められます。企業は、病気やケガを理由に一方的な解雇は禁止されており、業務内容の変更を行い労働者をサポートする義務があります。
勤怠不良である場合
指導を繰り返し行っても、正当な理由のない「遅刻」「欠勤」を繰り返す場合には、解雇の正当な理由になります。試用期間中に何回以上であれば、正当な理由となるなどの回数規程はなく、企業の判断により勤怠不良であると判断することができます。この際、必ず指導、教育を行っていることが条件となり指導や教育を行っていない場合には、不当解雇にあたる可能性があることを注意しておきましょう。
協調性に問題が生じている場合
業務を円滑に行う上で、職場内での人間関係や協調性は重要です。先輩社員が指導、教育する中で反発するなど、協調性がない行動を繰り返し行い企業としての注意や指導を行っても改善が認められない場合には解雇の正当な理由として判断されます。不当解雇の訴えに備えるためには、反発したことに対しての記録や注意、指導に関する記録をとり改善を期待して指導してきたことを証明できるようにする必要があります。
期待していた成果を見込めない場合
試用期間中に達成できる目標をクリアできなかった、経験を活かした業務を担当させたが対応できなかったなど、試用期間開始前に期待していた効果が見込めない場合には、解雇の正当な理由になる可能性があります。成果の基準は、到底到達できないことや、ベテラン社員でなければ到達できないという目標であってはいけません。担当する業務を行う中で当然にクリアできること、配置転換などを行い成果ができる指導を行ったなどの対応を行った結果、成果を見込めないと判断することが必要です。
過去の経歴を詐称していた場合
応募する際に提出した履歴書や職務経歴書の内容、保有資格に虚偽があった場合には、正当な理由として解雇することができます。経歴詐称が判明した場合には、即時解雇も可能な場合もあり試用期間中の解雇を行うことで、予定していた人員の採用をもう1度行う必要性がでるなど採用担当者と指導社員の負荷が増える可能性があります。
03試用期間中の解雇に納得できない場合の対処法
この章では、労働者視点で試用期間に解雇を言い渡されてしまい、その理由に納得いかない場合の対処法を紹介します。
1.解雇理由証明書の発行を依頼
まず、会社に解雇理由証明書の発行を依頼してください。労働基準法22条で、「労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。」と規定されています。
この証明書を発行してもらっておくことで、解雇理由を変更させることができなくなります。裁判まで進むかどうかを判断する前に、まずは解雇理由を会社側に明確にしてもらい、言質をとっておきましょう。
▶︎参考:厚生労働省|労働基準法
2.話し合いは録画・録音する
解雇理由証明書を出してほしいと依頼した場合に、会社は大事にされたくないと判断することが多いです。そのため、話し合いの席を打診してくることもあるでしょう。
その際は、会話内容を録画・録音しておくと良いでしょう。仮に、会社が適当な解雇理由を説明してきた場合、その録音・録画のデータが解雇が妥当ではないことを証明してくれるかもしれません。
3.弁護士に相談する
費用はかかってしまいますが、弁護士に相談することが最も適切な助言を得る方法です。解雇が適切なのか不適切なのか、労働法を遵守しているのかなど、素人では判断できないことを弁護士は適切に判断してくれます。
弁護士に相談することで、その会社に復職したい場合も復職したくない場合も、依頼人の意向に沿って対応してくれます。例えば、復職したくない場合、未払賃金や慰謝料の支払い請求などをしてくれます。
04まとめ
本記事では、試用期間中の解雇をテーマに解雇の事例や注意点を解説しています。試用期間だから解雇できるという安易な判断では、不当解雇として訴えられる可能性もあり対応には注意しなければいけません。本記事を参考にして頂き、トラブルを未然に防ぎ試用期間の労働者を雇用してください。