労働時間の取り扱い方と法令遵守における方法について解説する
従業員が働いている時間を労働時間といいます。労働時間について法令で定められている内容を理解し遵守することは企業として必須の事柄であり、労働者を守ることになります。本記事では、労働時間の取り扱いや法令を意識した注意点について解説していきます。
- 01.労働時間とは
- 02.労働時間扱いとなるのか?注意すべき6つの概念
- 03.労働時間に関する法令の解説
- 04.労働時間の管理でトラブルを防ぐ方法やポイントを紹介
- 05.まとめ
01労働時間とは
労働時間の定義や、労働時間の種類について解説していきます。労働時間の種類を理解しておくことで、労働時間の管理を正しく行うことにつながります。労働基準法を元に、各定義を解説します。
労働基準法による労働時間の定義とは
労働時間とは、「休憩時間を除いた実際に労働に充てた時間で、労働者が指導者の指揮命令下時間」と定義できます。この労働時間については、労働基準法で「原則として1日8時間、週40時間以内」と決められています。これに違反した場合の罰則は、「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」となります。
所定労働時間とは
労働時間と混同しやすいのが「所定労働時間」です。所定労働時間とは、就労時間とも呼ばれ、就業規則や労働契約書で定めた業務を行う時間を指します。就業規則などで定められている所定労働時間は、過重労働になどで健康を損なうことがないよう、休憩時間や残業時間を定める必要があります。
法定労働時間とは
法定労働時間とは、休憩を除いた実労働時間を示します。通常、労働時間と呼ばれ法令により休憩時間、一日の最大時間が定めています。法定労働時間という用語は、労働基準法などで利用される法定労働時間は、労働時間のことを示していると考えて問題ありません。
実労働時間とは
実労働時間とは、実際に労働に従事した時間を示します。所定労働時間にさだめられている範囲の中で実際に労働に従事した時間であり、遅刻や早退などは差し引いて考えていきます。残業代の計算などには、この実労働時間を元に計算されます。
02労働時間扱いとなるのか?注意すべき6つの概念
企業は、従業員の労働時間を正確に把握する必要があります。正確な把握のためには、6つの概念を理解しておく必要があります。次に正しい労働時間を把握するために理解しておきたい6つの概念について、解説していきます。
始業前と終業後
休憩時間については、会社からの指揮命令下で取得している場合でも労働時間には含みません。実際に業務に従事していない時間であり、労働者保護のために休息を取ることを指示されている時間です。ただし、休憩時間を使ってランチオンミーティングを実施する場合には、業務に従事していると判断され労働時間に含まれます。この場合には、別途、業務に従事していない休憩時間を取得させる義務が生じます。
有給休暇
有給休暇を取得した場合には、実際の業務に従事してはいませんが労働時間として扱われます。有給休暇は労働者の申請により、労働義務がある日の労働を免除する制度です。文字で表されている通り、「給与が有る」となり給料計算対象となります。
自宅での残務持ち帰りの残業時間
自宅での残業については、業務命令によるものか自発的なものであるかにより判断が変わります。業務命令の場合には、労働時間に該当します。自発的なものである場合にも会社の方針として労働時間と見なす場合があります。
研修時間
会社の指示による研修参加の時間は労働時間に該当します。会社の指示で参加している場合には、業務時間と判断されることで労働時間として扱われます。自分のスキルアップを目的とした休日などに参加する研修やセミナーは労働時間としては扱われません。
03労働時間に関する法令の解説
労働基準法には労働時間に関する定めが明記されています。労働時間を適切に管理するためには法令の理解も必要です。次に労働時間に関する法令について解説していきます。法令は改正が行われることもありますので、最新の法令を確認する習慣をつけておきましょう。
36協定による原則的限度時間とは
労働基準法で定められている労働時間は「1日8時間」「1週40時間」が最大です。しかし、季節的な業務量増加が見込める業種などについては、この労働時間を超えて勤務することが必要です。こうした場合には、36協定により労働時間の延長を届けておく必要があります。例外的限度時間となる「1年に6回まで1ヶ月に100時間、1年に720時間以内」であれば労働時間の延長を定めることができます。最新の36協定に関する定めでは、「当月を含む直前2ヶ月から6ヶ月の 1ヶ月平均時間外労働時間 は、80時間を超えてはならない」と定義されています。
法定労働時間を超える残業は原則月45時間・年360時間まで
労働基準法には、「法定労働時間を超える残業は原則月45時間・年360時間まで」と定められています。これは、労働者の過度な業務を避け健康の維持を行うためです。また、月に45時間の条件を設けることは、平均して1日あたり2時間の残業を行うことになります。出勤日は、毎日2時間の残業を行うことは労働者にとっては良いことではありません。上限を設けたとしても残業時間を抑制する対策を取る必要があることを理解しておきましょう。
労働時間の上限を超えた場合の罰則
労働時間の上限を超えた場合には「30万円以下の罰金」または「半年以下の懲役」」の罰則が適用されます。罰則金としては安価となりますが、労働者に過度な業務をしいている、労働者を大事にしない企業となり社会的信用を失う可能性もあります。
04労働時間の管理でトラブルを防ぐ方法やポイントを紹介
労働時間の管理でトラブルを防ぐにはどんな方法があるのでしょうか。次に取り入れておきたい方法や導入のポイントについて解説していきます。ご紹介する方法は、労働時間管理のトラブルを防ぐだけではなく、従業員満足度の向上にも効果を発揮する方法もあります。労働時間の管理方法を工夫することで相乗効果を期待できるため、自社に取り入れていく方法を検討していきましょう。
変形労働時間制を導入
変形労働制の導入を行うことで、労働時間の調整や繁忙期の労働時間を集中させることができます。変形労働時間制とは、月や年単位での労働時間を調整する方法を指します。あらかじめ従業員の賛同を得ることで、閑散期と繁忙期における1ヵ月の労働時間を定めることやフレックスタイム制を導入し出勤時間の調整を行うことで繁忙となる時期や時間の労働力確保を図ることが可能になります。
有給取得促進
働き方改革関連法の施行により、年間10.日以上の有給休暇を取得する者においては5日間の有給を取得することが義務化されました。これにより、有給休暇の取得促進がおこわれます。この効果として、労働者にとっては有給を取得しやすくなり、有給休暇を活用したリフレッシュも可能になります、企業においては、残業を防ぐことにも繋がり労働時間の総時間を限度範囲内にとどめる効果を期待できます。現在では、新卒での就活者は有給の取得率を確認するなどの企業分析を行います。働きた改革関連法の施行により有給休暇の取得率は、大幅に上がることが予測されますが、その中でも企業として有給休暇取得を促進していることで取得率が秀でることになり魅力的な企業と評価されることにつながります。
有給以外に特別休暇を設ける
有給休暇期外に特別休暇を施行することは、企業の裁量権のみで実施できます。有給休暇を取得すること以外に、会社内での特別休暇を設け業務を行わない日を設けることは、労働者の働く環境を整備する効果的な方法です。原則的にと特別休暇は有給として扱います。特別休暇の制度が実施されることは、企業イメージの改善にもつながり求職者に魅力的な企業として映り労働力確保の要因ともなります。
勤怠管理方法の見直し
労働時間の管理には勤怠管理を正確に行う必要があります。従来から活用されていた紙媒体でのタイムカードなどでは、月の締日以降でしか該当月の労働時間を確認することはできませんでした。しかし現在では、勤怠管理のシステム化が進み多くのサービスが展開されています。勤怠管理の仕組みをシステム化することで、リアルタイムで労働時間や残業時間の把握が可能になるだけではなく、有給の取得率や打刻漏れの管理も可能となり人事部門の負荷を大幅に削減可能です。展開されているサービスでは、アラート機能などを兼ね備えているサービスもあるため自社における活用をイメージしながら選択していきましょう。
従業員の意識改革も必要
労働時間が違法にならないためには、従業員自身の意識改革も必要です。従来であれば、残業を美徳とする考え方があり、残業を多くする人こそ働いている人材として評価されていました。しかし、現在の考え方はそれとは異なり、定められた時間内で成果を上げる人材こそが評価されます。また、残業が慢性化している従業員も多数存在し、意識を変え時間内で業務を簡潔させる指導が急務だと考えられています。従業員の意識改革は短期間で完成するものではありません。人事部門を始め、直接の上司による指導を繰り返し行い意識改革を進めていきましょう。
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05まとめ
本記事では、労働時間をテーマに労働時間の考え方や労働時間の上限などについて解説しています。労働時間に関する議論は、以前からも行われており労働環境における大きなテーマです。自社においても労働時間の見直しを行い従業員にとって働きやすい環境作りを行っていきましょう。