ラポールとは?信頼関係がビジネスにもたらすメリットについて解説
ビジネスにおいては、円滑な人間関係とコミュニケーションが欠かせません。 顧客や上司・部下など、他者との信頼関係を築くことは重要な意味をもちます。 当記事では、信頼関係の構築に役立つ「ラポール」の考え方と、ラポール形成がビジネスにもたらすメリットについて解説します。
- 01.ラポールとは
- 02.ビジネスにおいてラポールが必要な場面
- 03.ラポールを形成するメリット
- 04.ラポール形成における3つの原則
- 05.ラポール形成の具体的なテクニック
- 06.ラポールが崩れた場合の対処法
- 07.まとめ
01ラポールとは
ラポールとは「架け橋」という意味のフランス語「rapport」が語源となっており、もともとは心理学の用語でした。本来は、セラピストとクライアントの間で構築される信頼関係を指す言葉でしたが、近年ではビジネスシーンにおいても使われるようになっています。 スムーズに仕事を進めていくためには、良好な人間関係が欠かせません。親密で信頼しあえる関係を構築するために、ラポール形成は必須のコミュニケーションスキルといえるでしょう。
02ビジネスにおいてラポールが必要な場面
ビジネスを進めていく上では、さまざまな人々との関わりが生じます。こうした関わりのなかで上手に意思疎通を図るには、ラポールを形成し打ち解けた状態にする必要があります。
営業活動
顧客とラポールを形成することは、営業担当者にとって重要なプロセスとなります。ラポールが形成されないまま一方的に売り込みをされた場合、おそらく顧客は購入や契約をためらうのではないでしょうか。 一方的なセールストークをするのではなく、雑談を切り口に会話をかさねることでラポールを形成していきます。そうすることで信頼関係が構築でき、購入や契約につながるのです。 さらに信頼関係が深まれば、「またあの人から買いたい」という理想的な状態になり、その顧客はリピーターとなってくれます。
職場の人間関係
職場においてもラポール形成は重要な意味をもちます。上司と部下、同僚との間で信頼関係が構築できていれば、職場の雰囲気は明るいものになるでしょう。良好なコミュニケーションが保たれ、生産性も向上するのではないでしょうか。 反対に信頼関係がない場合、職場の雰囲気はギスギスして居心地の悪いものになってしまいます。生産性は上がらず、離職者も多く出るといった悪循環に陥る可能性が高くなります。
人材育成
人材育成においてもラポール形成は必須といえます。 部下への指導や能力開発に「1on1ミーティング」を取り入れている企業も多くなっています。1対1の定期的な面談においてラポールが形成されていなければ、成果が上がらないばかりか逆効果となってしまうでしょう。 また、研修の場面でも講師や運営スタッフと受講者の間にラポールが形成されているかどうかは、得られる研修効果に大きな影響をもたらします。研修運営側にはラポール形成を意識した言動が求められるのです。
03ラポールを形成するメリット
ラポールを形成すると、どのようなメリットをもたらすでしょうか。
人間関係が円滑になる
信頼関係が構築されることで相手に安心感をもたらします。この安心感がコミュニケーションの質を高め、円滑な人間関係を育むことにつながるのです。 ラポールが形成され意思疎通しやすい状態になれば、ポジティブな心理状態になり、より前向きな会話や気持ちのやりとりが生まれます。 ビジネスだけでなく家庭や恋愛など、すべての人間関係に大きなメリットをもたらすでしょう。
説得力が高まる
ラポールが形成された関係性においては、相手に話を聴いてもらいやすくなります。人は好意をもつ相手の話は、ポジティブに捉える性質をもっています。 前向きに話を聴いてもらえることで、説明力や説得力が高まり、ビジネスにおいても提案が通りやすくなるといったメリットにつながるのではないでしょうか。
相手の本音を引き出せる
ラポール形成により安心できる関係性が生まれることで、相手は警戒心のない状態となります。こうした状態になれば、相手は本音で話してくれるようになるでしょう。 営業活動においては、顧客の「本当のニーズ」をくみ取れるようになります。また、部下の悩みを的確に把握できれば早めの対処が可能となり、不満が溜まった末の離職といった不幸な結果を防ぐことにもつながります。
04ラポール形成における3つの原則
ラポール形成においては、以下に挙げる3つの原則が重要となります。いずれの原則にも共通するポイントは、相手に対して誠実で温かみのある態度を示すことにあるといえるでしょう。
相手への関心
ラポール形成においては、相手に対して興味や関心を深いレベルでもつことが重要なポイントです。 「相手を理解したい」「相手の役に立ちたい」という姿勢を示し、うわべではなく本心から相手に関心を寄せることが、ラポール形成の大前提となります。
相手を肯定する
相手の話を聴くときは、否定的な感情をもたず「まず受け入れる」という姿勢に徹することが大切です。 人は肯定的に話を聴いてもらえる相手には、安心感をもって本音を話せるものです。 たとえ意見の相違があったとしても、自身を肯定してくれる相手の意見は、ポジティブに捉えられるのではないでしょうか。議論になったとしても本音をぶつけあえれば、さらに信頼関係を深めることにつながります。
相手との共通点を見出す
人は、自分と共通点をもつ人物に好意を示しやすいという性質をもっています。 例えば「同じ出身地」や「共通の趣味」をもっている相手とは、初対面であっても話がはずみ仲良くなれるものです。 商談などでは相手のプロフィールを事前に知り、自身との共通点を話題にすることで心理的な距離を縮める方法もあります。しかし、相手に対する誠実な関心が伝わらなければ、こうした方法は逆効果となるため注意が必要です。
05ラポール形成の具体的なテクニック
相手との共通点は、心理的な距離を縮める効果があることは前述の通りです。 相手に自分との類似性や親近感を覚えてもらうための物理的なテクニックがあり、駆使することでラポールは形成しやすくなります。ここでは、そういった物理的なテクニックをいくつかご紹介します。 ただ、こうしたテクニックは、まず相手に対する誠実な関心があって、初めて効果を発揮するものであることは忘れてはいけません。
ペーシング
呼吸や話し方、話すスピードなどを相手に合わせることで、相手との一体感を生み出すテクニックです。視線の高さや、会話のテンションを相手に合わせることも効果的です。 相手にペースを合わせることで、無意識に「自分と近い」という感覚を覚えてもらえるため、安心感につながります。
ミラーリング
ミラーリングは相手の仕草や表情といった、目から入る情報を相手に合わせていくテクニックです。 相手が首をかしげれば、自分も同じように首をかしげる。相手の「まばたき」に合わせて自分も「まばたき」するというように、鏡に写った相手のように同じ動作をします。 ペーシングと併用すれば、より相手に親近感をもってもらえるでしょう。しかし、あまりに露骨に行うと気づかれてしまい逆効果となります。自然に行うことが大切です。
マッチング
相手と同調することで親近感を演出するテクニックです。早口で話す相手には自分も早口で話す、ゆっくり話す相手には自分もゆっくり話すことで相手に親近感を与えます。 声の大きさやトーンを同調させても良いでしょう。 また上手に活用できるようになれば、あえて相手に合わせないことで、場の雰囲気をコントロールすることも可能です。 例えば早口で怒りをぶつけてくる相手に、あえて穏やかにゆっくり話すことで、怒りを鎮めるといったこともできるようになります。
バックトラッキング
いわゆる「オウム返し」です。相手の発言をそのまま返すテクニックです。 相手が話した事実や感情を繰り返したり、話の内容を要約して返したりすることで、相手は「自分の話を受け止めてくれた」と感じてくれます。 これも露骨すぎると相手に気づかれてしまいます。自然に行いましょう。
キャリブレーション
キャリブレーションとは、仕草・表情・雰囲気などの情報から、相手の心理状態を察するテクニックです。先入観をもたず相手を観察することで、心情を察して相手の状態に合わせたコミュニケーションをかさねます。 相手は「自分の心情に寄り添ってもらえている」という安心感を覚え、ラポール形成につながるでしょう。
06ラポールが崩れた場合の対処法
この章では、ラポールが崩れてしまった際の対処法について紹介します。
自身の行動を内省する
ラポールが崩れてしまった場合、まずは自分に落ち度がなかったか内省することから始めましょう。相手との信頼を崩してしまう行動や言動、認識の相違などがなかったか確認することが重要です。また、一度構築されたラポールが崩れる要因は、環境変化なども考えられます。例えば、これまで対面で会話していたものが、リモートワークでオンラインでの会話が中心になるといった環境の変化が間接的に影響していることもあります。
認識のズレを解消する
内省することで、相手と自分の間にどのような齟齬や認識の違いがあるのかを見つけたら、そのズレを解消しましょう。ラポールを崩す要因となった言動や行動は、概ね認識のズレによることが多いです。特にビジネスの場においては互いの前提条件が異なることで生じます。そのため、まずは対話の機会をもち、認識を揃えることから始めてみると良いかもしれません。
07まとめ
ビジネスにおいては、人と関わることは避けて通れないものです。 ラポールを形成し、円滑な人間関係を構築することは、日々の仕事をスムーズに進めるために大切なことであるといえます。 従業員にラポールの重要性を十分に理解してもらい、良好な人間関係が保たれた健全な職場環境を構築していきましょう。
関連授業:絶対達成する人間関係構築のヒント
この授業では、ラポールとは何か?・ラポール診断・ビッグラポール3つのポイントをもとに、 「絶対達成する人間関係構築のヒント」について横山先生に教えていただきます。
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経営コンサルタント
アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長。 企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。「日経ビジネス」「東洋経済」「PRESIDENT」など、各種ビジネス誌への寄稿、多数のメディアでの取材経験がある。メルマガ「草創花伝」は4万人超の企業経営者、管理者が購読する。『絶対達成マインドのつくり方』『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの他、『「空気」で人を動かす』『自分を強くする』等多数。著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。
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