セルフキャリアドックとは?導入するメリットや手順、効果的に導入している具体例をご紹介

近年働き方の多様化により、従業員対するキャリア形成が重要視されるようになっています。そういった中で「セルフキャリアドック」という制度が注目を集めています。セルフキャリアドック制度とはどういった制度なのか、導入するメリットや効果的な導入事例をご紹介します。
01セルフキャリアドックとは
近年働き方の多様化により、従業員対するキャリア形成が重要視されるようになっています。 そういった中で「セルフキャリアドック」という制度が注目を集めています。 セルフキャリアドック制度とはどういった制度なのか、導入するメリットや効果的な導入事例をご紹介します。従来までの従業員育成では、企業にとって必要となるスキルを従業員に対して教育するといったケースが一般的でしたが、セルフキャリアドック制度では、従業員一人一人に寄り添い、従業員自体のキャリアを重視・尊重し、教育などを通じて支援していく制度になっています。
参考:「セルフ・キャリアドック」導入の方針と展開|厚生労働省
日本再興戦略改訂 2015にて提言される
そんなセルフキャリアドック制度ですが、日本経済再生本部によって産業競争力強化のための報告をまとめた「日本再興戦略改訂 2015」によって初めて提言されました。 「日本再興戦略改訂 2015」では従業員が自ら主体的となり、キャリアの形成について立ち止まって考えるための気づきの時間が必要であると示されています。 そういった流れを受けて国が本格的に個人のキャリア形成の支援を開始し、厚生労働省によって2016年に職業能力開発促進法の一部を改正する省令が出され、企業に対して事業主が積極的にキャリアの支援を行っていく必要があると定められました。
02HRテクノロジーの概要と近年のトレンド
厚生労働省によって定義づけられているセルフキャリアドック制度ですが、セルフキャリアドックが重要視されている背景には以下の3つのポイントがあります。
- 1:少子高齢化による労働人口の減少
- 2:定年退職の延長
- 3:キャリア形成促進助成金などの政府による後押し
1.少子高齢化による労働人口の減少
日本の少子高齢化は深刻化の一途を辿っており、労働人口は減少し続けています。その中で企業にとって人材を確保し続けることが困難になっており、一人の従業員に長く働いてもらうためにキャリア全般の支援が必要になってきます。 従業員にとって、会社が直接仕事とは関係のない部分のキャリア形成まで支援を行ってくれることで働くモチベーションが高まり、会社への帰属意識も高まるため企業に長く在籍してもらいやすくなるでしょう。
2.定年退職の延長
以前は60歳が定年退職の区切りでしたが、近年ではそれが延長され、65歳まで企業に務めて働くことが一般的になっています。 かつては60歳になると一斉に退職されていた人材が引き続き働くことが可能となったため、今までにはないキャリアの形成が必然的に求められてきます。 少子高齢化の進行も相まって、60歳以降の労働人口は増えているため、国を挙げてそういった年代に対するキャリア支援を行う必要が生じてきているのです。
3.キャリア形成促進助成金などの政府による後押し
「キャリア形成促進助成金」とは、労働者のキャリア形成の促進を目的として、厚生労働省によって給付される助成金のことを指します。 企業が雇用している従業員に対して、職業訓練などを実施した際に訓練経費や訓練期間中の一部を、国が助成してくれるという仕組みです。 こういった国の支援の後押しもあって、キャリアドック制度は急速に普及が進んでいます。
03セルフキャリアドック制度を導入するメリット
企業がセルフキャリアドック制度を導入するにあたってどういったメリットがあるのでしょうか。
以下の3つの観点からセルフキャリアドック制度を導入するメリットについてご紹介します。
- 1:従業員のモチベーションの向上
- 2:人材の定着化に繋がる
- 3:生産性の向上
1.従業員のモチベーションの向上
企業がセルフキャリアドック制度を導入し、従業員のキャリア形成の支援を積極的に行っていくことで、従業員のモチベーションが向上するというメリットがあります。 通常であれば従業員がキャリア形成を行うためには、業務の時間外に自らのお金を投資する必要があります。そのため、従業員が主体的にキャリア形成を進めることができませんでしたが、企業が費用を負担して業務時間の中で行ってくれるということは従業員にとって大きなメリットになります。 従業員のモチベーション向上にかなり高い効果があると言えるでしょう。
2.人材の定着化に繋がる
企業が従業員に対してキャリア形成を積極的に支援することで、従業員には「この会社に在籍していれば、キャリア形成の支援をしっかりと行ってくれる」という思いが生まれるため、会社への帰属意識が強まります。 結果として人材の定着化につながるため、労働人口が減っている昨今において、非常に大きなメリットになります。
3.生産性の向上
セルフキャリアドック制度を導入することで、企業が主体的に従業員のキャリア形成の支援を行ってくれるため、従業員のモチベーション向上に繋がります。 また、キャリアコンサルティング面談では一人一人の悩みや課題の解決に関しても相談に乗ってくれるため、スキルの向上に繋がり会社全体として生産性の向上にも繋がります。 従業員の能力不足による生産性の低下に悩む企業は、積極的に導入を進めていきましょう。
04セルフキャリアドック制度を導入する手順
セルフキャリアドック制度のメリットを踏まえた上で、実際に導入する場合にはどういった手順を踏めば良いのでしょうか。
セルフキャリアドック制度の導入方法を以下の3つの手順に沿って解説します。
- 1:事前ガイダンスの実施
- 2:キャリアコンサルティング面談の実施
- 3:面談結果のフィードバックを行う
1.事前ガイダンスの実施
まず第一に、セルフキャリアドック制度を導入しキャリアコンサルティング面談を実施していくという事前のガイダンスを従業員に対して行いましょう。 次のステップとしてキャリアコンサルティング面談に進むにあたって、従業員のキャリアの棚卸しが必要になるため、それに備えた事前準備進めてもらわなくてはなりません。。 キャリアの棚卸しというのはすぐにできるものではないため、ガイダンス後に十分な時間を与え、キャリアコンサルティング面談に備えてもらいましょう。
2.キャリアコンサルティング面談の実施
事前ガイダンスの後に、キャリアコンサルタントを配置し、従業員と面談を1対1で行います。 キャリアコンサルタントは社内にいない場合が多いのため、外部のキャリアコンサルタントに依頼するケースが多いです。 面談の場では事前に棚卸ししてもらったキャリアについて確認していき、今後の展望などの希望を聞き従業員に寄り添う形でキャリア形成を支援していきます。 また、仕事に対して現状抱えている課題や不安があった場合は、しっかりとヒアリングし解決できるように働きかけていきましょう。 面談の内容は、従業員のプライバシーに関わってくることが多いため、面談の際には周囲を十分に確認し面談のデータが外部に漏れないよう徹底してください。
3.面談結果のフィードバックを行う
面談後にはしっかりとフィードバックをすることも重要です。ヒアリングした内容によって会社が抱えている課題が見えてきたり改善すべき業務も見えてきます。 場合によっては組織全体で改善に取り組み、継続的に面談結果の振り返りを行っていく必要があります。
05セルフキャリアドック制度を効果的に導入している企業
セルフキャリアドック制度を効果的に導入している以下の3つの企業の事例をご紹介します。 これから社内に導入を検討している企業はぜひ参考にしてみてください。
参考:セルフ・キャリアドック普及拡大加速化事業 好事例集|厚生労働省
- 1:株式会社インテージ
- 2:水ing株式会社
- 3:日清紡テキスタイル株式会社
1.株式会社インテージの事例
株式会社インテージは、東京都千代田区にある情報サービス業の会社です。 個人の中長期的なキャリアプランを踏まえたモチベーションの向上や社員の退職予防として、セルフキャリアドック制度を導入しました。 希望者15人に対してキャリアコンサルティング面談を行ったところ、面談後のアンケートによる満足度は100%だった実績を持っています。 キャリア相談によって今まで見えてこなかった組織の課題が判明し、今後はその課題を現場のマネージャーへフィードバックし、職場の環境改善・業務改善を進めています。
2.水ing株式会社の事例
水ing株式会社は、東京都港区にある建設業の会社で従業員は4,000名弱に上ります。 会社の中枢を担うミドル層へのキャリア開発支援を目的とし、セルフキャリアドック制度を導入しました。 49歳〜51歳の希望者に対しキャリア研修を実施し、その後キャリアコンサルティング面談を行ったところ、従業員から非常に満足度が高かったという結果がありました。 会社のボリュームゾーンである50代前後のミドル社員が共通して抱えている課題が発覚し、解決に向けて動いていくと共に組織の活性化や、強化に繋げ企業として大きな変革を進めています。
3.日清紡テキスタイル株式会社の事例
日清紡テキスタイル株式会社は、大阪にある繊維製造業の会社です。 目まぐるしく変化していく社会情勢の中で、自律的に考え行動できる人材を育成したいという思いから、セルフキャリアドック制度を導入しました。 若手社員を中心に、集合研修とキャリアコンサルティング面談を実施したところ、対象となった若手社員は面談を通して課題にしっかりと向き合うようになり、今後様々なことに挑戦したいという意欲が生まれた、という声もありました。 キャリアコンサルティング面談を実施したことにより、若手社員の目線で自社の経営課題が発覚し、セルフキャリアドック制度の導入効果が高くでた事例となっています。
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06まとめ
セルフキャリアドック制度は国を挙げて普及が進んでおり、今後ますます重要になってくる制度です。 従業員の定着化や生産性の向上といったメリットにもつながるため、今回紹介した事例を参考に入を進めていきましょう。
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登壇者:田中 研之輔 様法政大学キャリアデザイン学部 教授
一橋大学大学院(社会学)を経て、メルボルン大学・カリフォルニア大学バークレー校で、4年間客員研究員をつとめ、2008年3月末に帰国。2008年4月より現職。教育・研究活動の傍ら、グローバル人材育成・グローバルインターンシップの開発等の事業も手がける。一般社団法人 日本国際人材育成協会 特任理事。Global Career人材育成組織TTC代表アカデミックトレーナー兼ソーシャルメディアディレクター。 著書―『先生は教えてくれない大学のトリセツ』(筑摩書房)『走らないトヨタ―ネッツ南国の組織エスノグラフィー』(法律文化社)『都市に刻む軌跡―スケートボーダーのエスノグラフィー』(新曜社)他多数