Tグループとは?Tグループの概要やメリット・注意点を解説
Tグループとは、「トレーニンググループ」の略称であり、社員の成長を目指すためのアプローチ法のひとつです。本記事ではTグループの概要やメリット・注意点、また効果的な方法について紹介します。これからTグループを導入したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
- 01.Tグループの概要
- 02.Tグループの7つの局面
- 03.Tグループのメリット
- 04.Tグループの注意点
- 05.まとめ
01Tグループの概要
TグループのTは「トレーニング」を指しており、人間関係を深く学ぶための体験学習方法です。 考案されたのは1946年であり、アメリカの心理学者であったクルト・レヴィンらが手法を確立しました。もともと、人種差別のためのワークショップを行ったのが起源ですが、日本では福祉職や管理職に向けたリーダーシップ研修を中心として、活用されてきました。近年ではこれに加え、コミュニケーション課題を解決する手法のひとつとして取り入れられています。 Tグループの特徴としては、話し合いのテーマを決めずにグループで討論やロールプレイングを行い、現場での人との関わり合いを肌で感じながら、本音で意見をぶつけ合う点があげられます。
エンカウンターグループとの違い
Tグループと似た意味で使われる言葉に、「エンカウンターグループ」があります。1960年代に心理学者であったカールロジャースが提唱した、集団カウンセリング療法のひとつです。Tグループの考えを応用したものであり、グループでの話し合いを通じて、自分自身の考え方を話す点で、Tグループとは共通しています。 双方の違いとして挙げられるのが、エンカウンターグループは治療を目指した方向性が強く、Tグループよりも広い意図を設定する場面が多い点です。
02Tグループの7つの局面
Tグループの受講を通して、受講者は徐々に自分自身の変化を感じるようになります。次に挙げる7つの局面を経ると言われていますが、順番には個人差が出る場合もあります。各局面の詳細について確認していきましょう。
出来事中心のやりとり
ディスカッションが始まる段階では、自分の考えをいきなり提示することはあまりありません。グループのメンバー同士で自己紹介をしたり、これから始まるディスカッションの概念を共有し合ったりする段階です。 この段階では司会者であるトレーナーは、会話の流れを指図することはなく、各々の意思に任せた時間を過ごします。そのため、周囲に積極的に話しかける人や、様子を伺っている人など、さまざまな人を見られます。
自己直面ととり乱し
次は、なりたい自分と現実の自分の間に存在するギャップに気づき、動揺を起こす段階に入ります。これまでの学習や業務において、受け身の形で課題を与えられてきた経験が多い場合、自ら課題を設定して答えを見つけるという流れを提示されると、大きな戸惑いを見せることがあります。 トレーナーはグループの進行を行わず、流れを見守るだけであることが一般的です。そのため、自分の存在や発言が、周囲に大きな影響を与えていることに気づくのです。これにより、人との関わりの重要さを再認識します。
自己理解
周囲との関わりを通じ、自分という存在を一度壊した上で改めて理解し、 自分はどうあるべきか・どう生きていきたいのかなど、見つめ直していきます。ただし、これまで積み上げてきた自分自身の人生の履歴を全てリセットするのではなく、書き足していくことが重要です。 また、Tグループの場において、他の参加者との関わりを通じて影響を受け、変化している事実も見逃してはいけません。自分らしい自分へと変わるための第一歩を踏み出しつつ、ここからさらに自分が持つ価値を開拓していくのです。
同一化と公約
自己理解を行ったことで、自分の中で起こり出したものを率直に周囲へ伝えます。もしくは、Tグループにおける気づきにより、自分がこれから目指していく姿を明確にし、周囲と約束を交わします。 周囲から送られた「こうあってほしい」という願いを取り込み、自分の考えと同一化したことを知らせる役割もあるのです。この段階で、自分の感情を露出できるという変化が起き、感受性が豊かになったと気づきます。
他者からの受容
自分の中で湧き出した感情を素直に話したことで、周囲が受け入れてくれたのか、どう感じてもらえたのかなどを伝えてもらいます。周囲が誤解している部分があれば、公約の段階に戻って訂正しながら、さらに理解を深めてもらいます。 表面の言葉通りに意味を受け止めるのではなく、言葉の中に込められた思いや考え方を参加者と共有し、受容してもらうことで、自己受容につなげられるのです。
自己受容
これまで取り組んできたディスカッションを通じて、自分についての気づきが持つ意味を知り、自己受容ができるようになります。その結果、自己肯定が可能となりますが、自分の中に起こった新たな自分に対して、納得できることが重要です。 この時点で、新たな自分に対してしっくりきていなければ、前の局面に戻ることも必要です。
出会い
6つの局面を経て、自分と周囲がお互いに自然と本音が出せるようになり、お互いを受け入れられる状態になれば、信頼関係の構築につながります。自分の相手は違う存在であっても、それを認め合つことで共に前を向いて進んでいけるようになるのです。 これらの局面をすべて経ると、対等の立場で本音で語り合える相手と出会える瞬間が体験でき、自己充実感に満たされます。「「
03Tグループのメリット
Tグループは、進め方やテーマが決められていないなかで、参加者同士の対話を通じて成長していくプログラムです。テーマがないため資料などもなく、対話の内容がTグループの結果を左右するのです。Tグループを行うメリットには、次のようなものがあります。
自己理解を深められる
Tグループへの参加により、対人関係の場面で自分がどのように考え方を示せるのかを模索し、自己開示と相手からのフィードバックを繰り返しながら、自己理解を深められるようになります。 Tグループが始まったばかりの段階では、何を話したら良いかという点に意識が集中しがちですが、ディスカッションが進むにつれ、自分の考え方や発言などに気が向くようになるのです。
他者を理解し受容する能力を高められる
自己理解を進めるとともに、他者理解につながる能力を得られるのも、Tグループのメリットです。自分が発言した内容に対して、相手がどのように考えているのか、どのような意見を持っているのかなどを聞き入れることで、新たな気づきが生まれます。 自分の発言だけではディスカッションが成り立たないことを理解したうえで、相手を理解して受け入れるのが、他者理解なのです。
自分のコミュニケーションの癖に気づく
Tグループを進めていくにつれ、普段の自分では気づかないコミュニケーションの癖に気づけるようになってきます。特定の言葉から会話を始める、自分の発言に自分で納得してしまう、相手の悩みを聞いているのに自分の話の方が多くなってしまうなど、癖の特徴はいくつかあります。 ディスカッションの内容にふさわしくないコミュニケーションの癖が出てしまうと、相手が本当の気持ちを伝えきれないこともあります。Tグループの場で癖に気づくことで、場面ごとにふさわしいコミュニケーション方法が理解できるでしょう。
他人との関係や自身をさまざまな角度から再認識できる
Tグループにおけるディスカッションの内容は、参加するメンバーによって大きく変わってきます。よって、まったく同じディスカッションをするTグループは存在しないのです。 また、他人から見た自分自身の印象は、指摘されて改めて気づくことが多いものです。これらにより、他人との関係性や自分自身の考え方などを、再認識できるきっかけになります。
04Tグループの注意点
Tグループは、本音で話し合うことが大きな特徴であり、参加者同士の関係性や日程調整には注意が必要です。Tグループを有意義な研修にするために、次の2点を理解しておかなければなりません。それぞれの内容を詳しく見てみましょう。
フィードバックにより自分の印象や欠点に気づかされる
メリットの点で解説した「コミュニケーションの癖に気づく」という点は、同時に注意点にもなり得るのです。コミュニケーションの癖が、自分の印象を下げたり、欠点につながったりするものであれば、相手からの指摘により落ち込んでしまうことも考えられます。 しかし、この指摘こそが自分自身を成長させる糧となるため、フィードバックを前向きに捉えて受け入れたいものです。
Tグループ参加の日程調整が必要
Tグループは、1日で終わる研修ではなく、通常3泊から6泊程度の合宿形式で行われます。このため、従業員がTグループに参加する際には、従業員同士の日程調整が必要です。特に企業を上げての研修であれば、通常業務に支障が出ないように日程を組まなければなりません。
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05まとめ
人間関係が希薄となりがちと言われる現代では、コミュニケーションスキルを学ぶ場が減ってきています。特に意見や本音をぶつけ合える場面は、限られているのが現状です。 Tグループへの参加は、自分自身を見直すとともに、相手との適切な関わり方を学んでいく絶好の機会といえるでしょう。
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登壇者:越川 慎司様株式会社クロスリバー 代表取締役
ITベンチャーの起業などを経て2005年に米マイクロソフト本社に入社。業務執行役員としてパワポなどの責任者を経て独立。全メンバーが週休3日・リモートワーク・複業の株式会社クロスリバーを2017年に創業し、815社17万人の働き方と成果を調査・分析。各社の人事評価上位5%の行動をまとめた書籍『トップ5%社員の習慣』は国内外で出版されベストセラーに。