公開日:2022/01/26
更新日:2023/08/07

CIO(最高情報責任者)とは|主な仕事内容や日本企業の設置事例を紹介

CIO(最高情報責任者)とは|主な仕事内容や日本企業の設置事例を紹介 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

CIOとは、「Chief Information Officer」を略した言葉であり、日本語では最高情報責任者・情報統括役員などと訳されます。当記事では、CIOの定義や役割、CIOに求められる資質などについて紹介します。これからCIOを社内に配置したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

 

01CIO(最高情報責任者)とは

CIOとはChief Information Officerの略称で、日本語では「最高情報責任者」と訳されます。

社内のシステムや情報管理など、情報システム部門を統括する役割を持つだけでなく、経営陣の一員として情報戦略の立案や実行する役割も担います。

元々は米国の企業で設置されるケースの多い役職で、日本での設置事例は多くありませんでした。しかし、全ての上場企業に対して、内部統制報告書の提出が義務づけられ、「内部統制報告書について監査証明を受ける」という規定(日本版SOX法)の施工や、AIやデータ活用が求められている社会背景をうけて、日本でCIO(最高情報責任者)を設置する企業も徐々に増えています。

 

02CIO(最高情報責任者)とCTO・CDOの違い

CIO(最高情報責任者)と似たようなポストとしてCTO(Chief Technical Officer:最高技術責任者)とCDO(Chief Data Officer:最高データ責任者)があります。

企業によっては、CTOがCIOの役割を兼ねる場合もあれば、CIOではなくCDOを設置する企業もありますが、言葉の定義から見ていくとCIOとCTO・CDOの違いは明らかになってきます。この章では、CIO(最高情報責任者)とCTO・CDOの違いを詳しく紹介します。

CTOとの違い

CTOは、Chief Technical Officerの略であり、最高技術責任者と訳されます。言葉のとおり、企業における技術関連業務のトップであり、技術部門や開発部門を統括する役割も担うことが多いです。

一方で、CIOは情報関連業務のトップであり、情報システム部門を統括する役割を担うことが多く、技術と情報という観点で違いがあります。

しかし、情報(データ)を正しく管理するためにはサーバーやプログラミングの知識が必要になります。そのため、CTOがCIOの役割も担う企業も多く、特にIT企業においてはこの傾向が強いようです。

CDOとの違い

CDOは、Chief Data Officerの略であり、最高データ責任者と訳されます。CDOはデータマネジメントやデータ分析のようなデータに関する戦略の立案・施策の実行が主な役割です。

CIOが担う情報をデータとして扱うのであれば、CIOとCDOが果たす枠割は相違がないということになります。一方で、CIOとCDOが並列で語られる場合、既存の情報システムの管理や最適化・情報セキュリティなどを担う役割がCIO、データ活用による新規事業の創出や、既存事業のDXを担う役割がCDOとして区別されることが多いです。

 

03組織によって異なるCIOの役割

CIO(最高情報責任者)は、企業のみならず行政の場においても役割を果たしています。日本政府では、次の3種類のCIO(最高情報責任者)について活躍する分野を制定し、各組織において知識を活用しながら業務を行っているのです。それぞれのCIO(最高情報責任者)の業務内容を見てみましょう。

行政CIO(最高情報責任者)

行政機関に勤務し、業務の革新や情報技術の活用などを担当します。政府CIO(最高情報責任者)、府省CIO(最高情報責任者)、政府機関CIO(最高情報責任者)(独立行政機関など)、自治体CIO(最高情報責任者)など、勤務先は多岐にわたります。技術の活用により各機関のデジタル化を進め、情報社会で求められるスキルを発揮する人材です。

企業CIO(最高情報責任者)

企業の競争力を高めるために、マーケティングの推進役として取り組む役割をもっています。マーケティングに必要な情報や情報技術を備えもったうえで、利益を伸ばすために必要な技術革新を目的としています。ビッグデータの活用が企業の業績上昇に大きく寄与しているため、ビッグデータをうまく活用するスキルが求められます。

教育CIO(最高情報責任者)

高等教育機関(大学・高等専門学校・専門課程を置く専修学校)の現場では、教育の高度化に対応したり、教育環境を充実させたりするため、CIO(最高情報責任者)が役割を果たしています。また、地域ごとに置かれている教育委員会にも教育CIO(最高情報責任者)が配置され、学校の ICT化を進めるためのサポート体制強化に取り組んでいます。

参考:政府CIO(最高情報責任者)ポータル CIO(最高情報責任者)とは
 

04CIO(最高情報責任者)の主な仕事内容

企業経営にITの技術が必要不可欠である現代で、CIO(最高情報責任者)に求められる役割はますます増えています。企業の経営理念に合った情報化戦略を立案するためには、適切なデータの活用が重要です。CIO(最高情報責任者)の主な役割は、次の3つです。それぞれの詳細を見ていきましょう。

情報を活用した経営戦略の作成

冒頭で紹介したように、CIO(最高情報責任者)は企業全体の経営戦略を決定する立場にあります。経営戦略を決めるためには、根拠に基づいたデータを収集・活用するスキルが必要です。 CIO(最高情報責任者)は、このスキルをもち合わせているスペシャリストであり、ビッグデータの結果やIT、システムなどの知識を活かした経営戦略を立てていきます。現代のCIO(最高情報責任者)に求められるのは、単にITを使って業務の合理化や効率化を行うだけでなく、さまざまな部署との情報共有によって新たな価値を創造していく能力なのです。

社内業務・プロセスの改善

社内業務において改善が必要な業務は、どの企業でも見受けられるのではないでしょうか。CIO(最高情報責任者)は、ビッグデータの解析により、社内業務のプロセスを改善する役割を担っています。業務改革手法を用いて業務プロセスを正しく分析し、改善につながる手がかりを探っていきます。

IS戦略・ITガバナンスの確立

IS戦略とは、情報システムを活用した戦略を立てることです。また、ITガバナンスは、IS戦略をコントロールする統治能力であり、IT基盤の整備を行ってIT戦略を策定する行為を意味します。 ITを活用した新規事業を生み出すのも、CIO(最高情報責任者)の役割の一つです。そのために、ITに対する投資やリスクを管理したり、IT人材の育成や円滑な組織運営のための仕組みづくりを行ったりするなど、ITを最適化するための知識が必要です。

参考:CIO(最高情報責任者)のための知識体系
 

05CIO(最高情報責任者)に求められる知識やスキル

CIO(最高情報責任者)は、会社の顔ともいえる存在であり、経営・ITに関する責任者でもあります。そのため求められる資質やスキル水準も高く、幅広い知識やスキルが必要です。今後数年で、CIO(最高情報責任者)に求められる資質がさらに増えるといわれるなかで、特に次の4つが重要とされています。

情報セキュリティ

IT化が進むなかで、企業の情報セキュリティ管理は喫緊の課題となっています。想定されるセキュリティトラブルを未然に防ぎ、万が一サイバー攻撃の被害を受けた場合でも適切に対処できる技術などが必要です。 そのためには、セキュリティ関連の法規、個人情報保護法、ITリスクの管理法、セキュリティ管理などを習得する必要があります。

ITリテラシー

ITリテラシーとは、IT全般を活用するための高度なスキルであり、CIO(最高情報責任者)になくてはならない資質です。社内のセキュリティ対策を万全に整える、ITの構築・運用を円滑に行う、コストだけで判断できないIT戦略を見極める、正しい情報を正しく活用するなど、ITリテラシーを高めることで組織全体の信頼アップやセキュリティ強化などにつながります。

マネジメントスキル

CIO(最高情報責任者)が業務上で関わる関係者は、社内のさまざまな部署の責任者や他企業の役員など幅広く、日常的に交渉や調整などが行われます。ITチームのマネジメントのみならず、企業全体の組織改革や成長に必要なマネジメントスキルがCIO(最高情報責任者)に求められる資質なのです。

経営的な視点

CIO(最高情報責任者)は、ITのスペシャリストであると同時に、企業の経営戦略を立案・遂行する立場の管理者でもあります。このため、IT戦略を立てる際には経営的な視点から見極める必要もあるのです。 CIO(最高情報責任者)の評価基準は、経営面から見た成果で判定されることが一般的です。経営者としての視点はCIO(最高情報責任者)に欠かせません。

 

06CIO(最高情報責任者)を設置している企業事例

日本ではCIO(最高情報責任者)を設置している企業は多くありませんが、昨今DXの潮流をうけて設置の流れも加速しています。

この章では、CIOを設置している企業を3社紹介いたします。

日本郵船株式会社

日本郵船株式会社は、CIO(最高情報責任者)がDX推進グループを担当しています。同社CIOの高橋氏は日本海事新聞の取材で「組織の枠組み作りや、ITという道具を使って何をするかを考える、そういった役割を期待されていると認識している」と語っています。つまり、日本郵船株式会社においてCIOは、IT技術を用いたビジネス貢献を期待されているということでしょう。

その一方で、同新聞の取材で「ITという観点から言うと、サイバーセキュリティーなどのリスクも増大し、システムの安定運用という意味でも非常にやるべきことが多い」とも語っており、情報システム部門の責任者としてのCIOの役割も担っているようです。

▶︎参考:日本郵船株式会社|役員一覧

▶︎参考:日本海事新聞|日本郵船執行役員グループCIO(最高情報責任者)・高橋泰之氏、DXで新規事業創出を

三菱自動車工業株式会社

三菱自動車工業株式会社は、2016年10月1日にCIO(最高情報責任者)という役職を新設しました。この背景には、基幹システムの刷新があります。現行システムから新システムへの移行を機動的に推進する必要があり、外部から情報システム及び情報管理の有識者をCIOとして登用しました。

また同日付で、三菱自動車工業株式会社は「グローバルIT本部」も新設し、CIO(最高情報責任者)に就任した車真佐夫執行役員がグローバルIT本部長も兼任しています。グローバルIT本部に、経営企画本部のIT部門である「グローバル共通システム推進室」・「IT戦略マネジメント部」・「システム基盤部」・「エンジニアリングIT部」・「ビジネスIT部」を移管しており、情報システム部門の責任者というCIOという側面と、IT技術を活用する前提の経営企画部門の責任者というCIOの両面が期待されているようです。

▶︎参考:三菱自動車工業株式会社|役員一覧

株式会社日本取引所グループ

日本取引所グループ(JPX)は、東証で2005年から2006年にかけて起きた大規模なシステム障害を背景に、システム全体を把握する責任者としてCIO(最高情報責任者)を設置しました。

日本取引所グループ(JPX)のCIOが担う役割は大きく2つあり、1つはシステムの安定的な運用です。不測の事態が起きたとしても、最小限の収拾ができるように準備しておくというリスク管理も、この安定的な運用という役割に内包されます。

もう1つは、変革にドライブをかける改革の旗振りとしての役割です。日本においては取引所間の競争はそこまで激しくないですが、私設取引システム(PTS)や仮想通貨・デジタル資産の取引など、競争相手が変化する時代となっています。このような時代において、安定的なシステム運用はもちろんのこと、その中で応用を効かせて変化に対応できるような準備をする役割も担っています。

▶︎参考:株式会社日本取引所グループ|役員一覧


 

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07まとめ

日本の企業ではCIO(最高情報責任者)の普及率がそれほど高くないうえ、 CIO(最高情報責任者)を必要と考えている企業も諸外国に比べ大幅に少ないのが現状です。企業間の競争に勝ち残っていくためには、ITと経営の両方に精通するCIO(最高情報責任者)の存在が大きな意味をもっています。CIO(最高情報責任者)の設置を迷っているなら、ぜひ前向きに検討してみてください。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
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Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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