公開日:2022/01/26
更新日:2024/08/31

人事部長と異なる?CHROとは|役割や必要な能力・スキルを解説

人事部長と異なる?CHROとは|役割や必要な能力・スキルを解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

人的資本経営に注目が集まる中で、CHROというポストを新たに設置する企業も増えてきました。CHROは経営の一員であるため、人事部長とは根本的に役割が異なります。この記事ではCHROと人事部長の違いや、CHROに求められるスキルについて紹介します。

 

01CHROとは

CHROとは

CHRO(Chief Human Resources Officer)とは、企業や組織における最高人事責任者の役職のことです。 CHROは人事部門全体の戦略的な計画や方針を策定し、組織の人材管理や人事戦略の実行を担当します。

人事部長・人事担当役員との違い

CHROを設置している企業は徐々に増えていますが、これまで人事担当役員と呼んでいた役職をCHROという名前に変えただけの企業も中にはあります。しかし、CHROと人事担当役員・人事部長は異なる役割を担います。

CHROは、経営陣の一員として組織やホールディングス全体の経営戦略を考え、その中で人と組織をどうするのかを思案します。一方で、人事担当役員は、人事の専門家としての最高位です。そのため、経営から降りてきた戦略を基に、人や組織を考えることが役割です。

CHROが求められている背景

CHROが求められている背景には、人的資本経営の潮流もあります。人を投資の対象として考え、人の成長によって経営を推進していくためには、経営戦略と人材戦略の連動が必要不可欠です。そのため、経営の観点から、人材戦略を策定することのできるCHROが求められているのです。その証拠に、「人材版伊藤レポート」の中でも、経営戦略と人材戦略を連動させるための取組みの1つとして「CHROの設置」が挙げられています。

▶︎参考:人材版伊藤レポート2.0

日本企業におけるCHROの現状

日本の人事部の調査によると、CHROが「いる」と回答した企業は21.1%という結果となっています。今後、導入する予定の企業も合わせると30%がCHROの必要性を感じているということになります。

従業員別の調査結果を見ると、5001名以上の企業では45.7%がCHROが「いる」と回答しています。しかし、従業員数1,000名以下の企業でCHROを既に導入している企業は20%に満たないという結果となっています。

▶︎参考:日本の人事部|人事白書調査レポート2023

 

02CHROの5つの役割

CHROが果たす役割は、企業によって異なります。しかし、以下の5つはいかなる企業でも共通する役割ではないでしょうか。

  • 1:サクセッション・プランの策定
  • 2:現場の声と経営トップをつなぐ
  • 3:経営視点での組織変革
  • 4:人事施策の進捗管理
  • 5:企業理念の浸透

CHROはあくまでも経営陣の1人であるため、人事部長・人事担当役員とは果たすべき役割が異なるという点が重要です。

1.サクセッション・プランの策定

CHROの役割として、サクセッション・プランの策定があります。特に経営レベルのサクセッション・プランはCHROしか担えない可能性があります。対象となるポジションに近い人材は、そもそも後継者候補に名を連ねていることが多く、後継者候補の選定議論に参加することができません。そのため、CHROが俯瞰した立場となり、サクセッション・プランを策定したり、選定軸を決めたりする必要があるのです。

また、CHROが将来の経営リーダーのサクセッション・プランを担うべき理由はもう1つあります。それは、人事評価の高い社員が経営リーダーに向いているわけではないからです。扱いにくいが、賢く、大胆で、周りの人間を惹きつける魅力がある。そのような人材を見出し、次世代の経営層候補として育成する役割はCHROだからこそ担える役割と言えます。

2.現場の声と経営トップをつなぐ

CHROは、現場の声を経営に届けるという役割を持っています。組織が大きくなるにつれて、現場と経営の距離が遠くなることは避けられません。現場が声を発しても中間管理職が伝言ゲームを止めてしまい、現場の声は経営まで届かないということも多くあるでしょう。そのため、CHRO自らが現場の声を拾い、経営に届けるべきものをしっかりと届け、迅速かつ適切な意思決定を経営ができるようにする必要があるのです。

3.経営視点での組織変革

CHROが果たすべき役割として、経営視点での組織変革があります。例えば、HRBP(Human Resource Business Partner)の導入などの判断は、CHROにしかできない意思決定です。このような判断が採用・育成といった機能別の長から出てくることはないでしょう。そのため組織を俯瞰で捉え、全体最適の視点で思考できるCHROが、このような組織変革を推進していく必要があります。

4.経営視点での組織変革

CHROは、企業の人事戦略や施策の進捗状況を管理し、必要に応じて調整を行います。これには、採用活動、社員教育、評価制度、報酬体系などの人事施策が計画通りに実施されているかを監督し、目標達成に向けた軌道修正を行うことが含まれます。効果的な進捗管理は、組織のパフォーマンスを最大化し、戦略的目標の達成を支援します。

5.企業理念の浸透

企業理念やビジョンを全従業員に浸透させることもCHROの重要な役割です。企業理念は、組織の方向性や価値観を示すものであり、従業員が共通の目標に向かって働くための基盤となります。CHROは、企業理念を日常の業務や行動規範に反映させるための施策を策定し、全社的な理解と共感を促進します。これにより、企業文化が強化され、従業員のエンゲージメントが向上します。

 

03CHROに必要なスキル・能力とは

CHRO(Chief Human Resources Officer)を育成するためには、特定のスキルや経験を計画的に積み重ねることが重要です。主な手法として、次のようなものが挙げられます。

  • ・戦略的なHR経験の積み重ね
  • ・リーダーシップスキルの向上
  • ・ビジネス洞察力の習得
  • ・ネットワーキングと継続的学習の実施

これらの方法を通じて、CHROは高度な戦略的視点と実行力を持つリーダーへと成長し、企業の成功に大きく貢献できるようになります。ここでは、それぞれについて解説していきます。

戦略的なHR経験の積み重ね

CHROとしてのキャリアを築くためには、戦略的なHR(ヒューマンリソース)経験を積むことが不可欠です。単なる人事業務だけでなく、企業全体のビジネス戦略と連動した人事施策を策定・実行する経験が求められます。これには、採用戦略の設計、組織開発、タレントマネジメント、労務管理、報酬制度の設計など、幅広い人事分野での実務経験を積むことが含まれます。こうした経験を通じて、人事の視点から企業の成長に貢献できるスキルが養われます。

リーダーシップスキルの向上

CHROは企業のトップマネジメントの一員として、組織全体をリードする役割を担います。そのため、リーダーシップスキルの向上は非常に重要です。リーダーシップ研修やコーチングを通じて、効果的な意思決定、チームのモチベーション管理、変革の推進といったスキルを磨くことが求められます。また、他の経営幹部との連携を強化し、全社的な視点でリーダーシップを発揮できる能力も養う必要があります。

ビジネス洞察力の習得

CHROは人事の専門家であるだけでなく、ビジネス全般に精通している必要があります。企業の財務状況、市場動向、競争環境、事業戦略など、経営に直結する要素について深い理解を持つことが求められます。このため、MBAの取得や経営学の研修に参加することが推奨されます。また、他部門との協働やプロジェクトへの参画を通じて、ビジネス全体の流れを理解し、戦略的な意思決定ができる能力を身につけることも重要です。

ネットワーキングと継続的学習の実施

CHROとしての成長には、外部とのネットワーキングや継続的な学習も欠かせません。業界の最新トレンドやベストプラクティスを学ぶために、カンファレンスやセミナー、HRコミュニティへの参加を積極的に行うことが推奨されます。これにより、新しい知識や視点を取り入れることができ、企業にとって有益な人事戦略を構築する際に役立ちます。また、他のCHROや人事専門家とのネットワーキングを通じて、実務における課題解決のヒントや新たなビジネスチャンスを見出すことも可能です。

 

04CHROに必要なスキル・能力とは

CHROに必要なスキル

ここでは、CHROの業務において必要なスキルや能力について説明していきます。CHROは幅広い知識や能力が求められます。CHROを導入する際にはこれらのスキルや能力を持った人材が必要となるため、把握しておきましょう。

1.経営全般の知識

CHROは人事視点と経営視点を兼ね備えた立場として、組織の経営にも携わります。そのため、経営全般に関する知識が必要不可欠です。基礎的なものはもちろん、業界内の経済動向や場合によっては海外の経営情報についてもタイムリーな知見が求められます。経営戦略を策定する際など、経営層と同等の立場に立って組織経営について考えなければなりません。そのため経営について幅広い知識や情報を持っておくことで、自社の経営戦略に活かすことができます。

2.経営戦略の立案力

組織の経営をサポートする立場にあるCHROには、経営戦略を立案するスキルが求められます。CHROは経営に積極的に参画し、人事視点を持って経営戦略について進言しなければなりません。経営陣と同じ目線から意見し合い、組織の発展に繋がる良い経営戦略を立てるためにはその場しのぎの意見では不十分です。長期的な目線で自分なりに経営戦略を講じることが必要とされるため、高い立案力が必要となります。また人事戦略の策定にあたっても、経営戦略の意図を正しく理解し適切な戦略を組まなければなりません。CHROは経営への知識だけでなく、より実践的なスキルも求められるポジションだと言えるでしょう。

3.人事全般の知識・経験

CHROは人事のトップとして、人事に関する業務全般の責任を負っています。そのため、人事や労務についての基礎知識や経験が十分に備わっている必要があります。給与や労務管理などの業務に必要な知識はもちろん、労働基準法などの法律に関する知識も重要です。特に法律関連の知識については適宜改正されることもあるため、定期的に情報をチェックし、常に最新の知識を頭に入れておかなければなりません。近年は働き方改革や新型コロナウイルスの感染拡大などを背景に、様々なワークスタイルが一般化しています。そうした事情が変化していく中で人事として適切な対応を取っていくためには、人事や労務の基礎知識を正確に習得しておくことが大切です。

4.人事マネジメント力

CHROは組織の人事全般の統括を行う立場であるため、自分の部署だけでなく、他の部署も含めた総合的なマネジメントを行わなければなりません。そのため、高い人事マネジメント力が必要だと言えます。社内全体の人事についてマネジメントするためには、人事部だけでなく社内の部署一つ一つの業務や役割などについて理解を深めていく必要があります。特に、各部署の人事に関する現状や課題を捉えることが大切です。それぞれの部署の業務内容はもちろん、求めている人材などについてもしっかりと把握することでそれを反映したマネジメントを行うことが求められるため、CHROはハイレベルなマネジメント力の習得が必要です。

5.問題解決力

経営戦略を立てる際や人事戦略を実行する際など、業務を行う中で様々な課題に直面することがあります。CHROにはそうした場面でも発生した課題に向き合って分析を行い、解決していく問題解決能力が求められます。ただ課題に対して自分の意見を出すだけでなく、経営層や現場の社員の声を取り入れて迅速にアクションを起こさなければなりません。場合によっては、講じた解決策を他部署の社員や管理職に向けて分かりやすく説明する必要もあります。このように、CHROはトラブルが発生した場面においても筆頭に立って解決していかなければなりません。そのため、ビジネスシーンにおける多様な課題に対しいつでも冷静かつ論理的に対処し解決していくスキルを持っていることが大切です。

6.コミュニケーション力

CHROとしての業務は、多くの場面でコミュニケーション力を必要とします。例えば経営戦略を立てる際には経営層と互いの意見やアイデアをシェアしながら意思疎通を図り、協力して経営戦略を練っていく必要があります。また経営の面だけでなく、日常の業務でも現場の社員や管理職とのコミュニケーションを取る場面が多くあります。社員らの声を聞いて社内環境の調整を行ったり、意見を元に今後の人材育成などに役立てたりしなければなりません。このようにCHROは人材の意見を引き出し、人事における社内の課題を洗い出す役割も担っているため、業務の様々な局面で高度なコミュニケーション力が求められます。社員が抱えている思いをしっかりと汲み取り、活かすことで社員のモチベーション維持にも繋がるでしょう。CHROの多方面とのコミュニケーションが社内に与える影響は大きく、とても重要なスキルだと言えます。

 

05CHROの導入企業

ここでは、CHROを既に導入している日本企業の事例をご紹介します。日本では既にCHROを導入し様々な改革を行うことで組織として成長を遂げている企業があります。ぜひ導入の際の参考にしましょう。今回紹介するCHROの導入企業は以下の3つです。

  • 1:株式会社SmartHR
  • 2:株式会社メルカリ
  • 3:株式会社サイバーエージェント

1.株式会社SmartHR

株式会社SmartHRは、人事や労務の業務効率向上の為の人事労務ソフト「SmartHR」を運用する企業です。2019年以降、このSmartHRに人材マネジメント機能を加え、人材領域にサービスを拡大しています。株式会社SmartHRは2022年よりCHROを導入しました。人材業界の複数社で経験を積んだ人材をCHROに登用することで、CHROの知見を活かし自社のサービス向上を図っています。

2.株式会社メルカリ

株式会社メルカリでは、CHROの木下氏を筆頭に新しい人事評価制度を導入するなど、様々な改革を行っています。それまで総合評価で判断していた評価制度を成果とバリューの発揮度の2つに分けることで、数値化しづらい行動評価にも焦点が当たるようにしました。これによりテレワーク導入後も社員のバリューを体現することへの意識を下げることなく、高い生産性を保つことに成功しています。

3.サイバーエージェント

サイバーエージェントは、日本のインターネット広告・メディア事業を展開する企業であり、人事戦略の一環としてCHROを導入しています。CHROの役割として、組織全体の人材戦略の策定や実行を担当し、従業員のエンゲージメントや成長を重視しています。具体的には、下位5%の人材にマイナス査定を行う「ミスマッチ制度」の導入し人材戦略の効果的な実行と組織の成果の最大化を図っています。

 

06CHROの育成方法

CHROは経営戦略を検討・議論できる人材でなければなりません。そのため、人事だけでなく営業やマーケティング、経営企画など様々な業務経験を積んでいる人の方が良いでしょう。

また、多様な経験という観点では、複数の業界を経験をしていると良いでしょう。1つの業界だけに属する企業は少なく、複数の業界に跨って事業をおこなっている企業がほとんどであり、業界の幅が今後も増える可能性すらあるためです。

もちろん、人事経験が全くない人がCHROとしての役割を果たせないので、人事としての経験も積んでおく必要があります。したがって、CHROを育成するには、人事に限らず多様な経験を積んでいることが最低条件となりそうです。


 

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Schooは汎用的なビジネススキルからDXやAIのような最先端のスキルまで、8,500本以上の講座を取り揃えております。この章では、人事に関する授業を紹介いたします。

デジタル化で人事業務をUPDATE

この授業では、デジタルツールを活用することで人事業務をUPDATEさせた株式会社一休が「なぜ、デジタルツールの活用に成功したのか?」を株式会社一休 執行役員 CHRO 管理本部長の植村弘子様に解説してもらっています。

 
  • 株式会社一休 執行役員 CHRO 管理本部長

    2001年新卒でエスビー食品株式会社に入社。コンビニエンスストアチェーン本部セールス 兼 PBブランド商品企画を担当。 2006年10月より26番目の社員で株式会社一休にジョイン。2006年にローンチした『一休.comレストラン』のセールス、『一休.com』のセールス等を経て、カスタマーサービス部門でコールセンターの立ち上げ、改革を実施。 2016年4月より執行役員CHROに就任、2016年7月から現職の執行役員CHRO管理本部長。

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はじめての戦略人事

この授業では、戦略人事の考え方、アクションの起こし方について学ぶことができます。戦略人事についての基本的な考え方を把握し、自社における戦略人事を定義付けられるようになります。

 
  • 株式会社モチベーションジャパン 代表取締役社長

    リクルートで組織人事コンサルタントとして活躍。ファーストリテイリングでは、執行役員人事総務部長、執行役員マーケティング&コミュニケーション部長を歴任。ソフトバンクでは、ブランド戦略室長。福岡ソフトバンクホークスマーケティング代表取締役として球団立上げを行う。現在は、経営、人事、マーケティングのコンサルティング企業である株式会社モチベーションジャパンを創業。

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08まとめ

CHROは、人事部長や人事責任者の持つ人事的視点と経営陣の持つ経営的視点を併せ持ったポジションです。CHROは経営陣と人事のかけ橋となることのできる貴重な人材であるため、今後の企業経営においてその需要は高まっていくでしょう。しかし今回取り上げたように、CHROを務めるには経営や人事に関する知識はもちろん、幅広いスキルや能力が求められます。こういった点から、今すぐに社内で適切な人材を見つけ、CHROを導入することは簡単ではありません。そこでまずは、将来的にCHROになることのできる人材を育成することから始めていく必要があります。そのためには自社でCHROを導入するために人材に身に付けてほしい知識や能力を洗い出しましょう。そのうえで適切な人材育成の方法を模索していきます。すぐにCHROを導入しようとするのではなく、将来的にCHRO適した人材を着実に抜擢できるような土台を少しずつ構築していきましょう。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
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Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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