CHOとは?主な役割や必要な能力、導入している企業事例を紹介
日本語では「最高人事責任者」と訳されるCHOとは、一体どのような役職でしょうか。当記事では、混同されがちな人事部長との違いや、CHOに求められるスキルを紹介しています。また、実際にCHOの役職を設けている企業事例についても取り上げています。
- 01.CHO/CHROとは?
- 02.CHOと類似するポジションとは
- 03.CHOの主な役割とは
- 04.CHOに求められる要件・能力とは
- 05.CHOを導入している企業の事例
- 06.まとめ
01CHO/CHROとは?
CHOとは「Chief Human Officer」の頭文字を取った役職で、「最高人事責任者」と訳されるのが一般的です。その名の通り、CHOの主な役割は企業の人事統括にあり、主に採用戦略や組織作り、また従業員のモチベーション管理を行います。 アメリカの企業では人的資源の管理を行う最高の責任者として、以前から存在していた役職です。しかし、日本企業では歴史が浅く、まだまだ浸透しているとは言えません。 CHOとほぼ同じ意味をもつ役職に、CHRO(Chief Human Resource Officer)が挙げられます。これはGoogleやFacebookなど、アメリカのシリコンバレーを中心に浸透しつつある「Chief Happiness Officer」の略称であるCHOと区別するために作られた名称です。「CHO(Chief Human Officer)=CHRO」と捉えることもできます。 もう一方のCHO(Chief Happiness Officer)は、企業における従業員の幸福をマネジメントする専門役職であり、当記事で説明するCHO(Chief Human Officer)とはまったく異なる役職です。
人事部長との違いとは
しばしばCHOと混同されがちな役職が人事部長です。日本では「人事部長」の呼び名が一般的でなじみ深く感じますが、この二つの役職には明確な違いがあります。 それが会社の経営に参画する権限の有無です。人事部長は単に人事部のトップを意味しますが、CHOは経営陣の一人として人材戦略の指揮を執る役割を担っています。いわば人事戦略家であるCHOは企業経営を支える立場であり、CEOにアドバイスをする機会も少なくありません。 経営幹部職として人事を統括する存在に「CHO」という名称は使わず、「取締役人事部長」と表す会社も存在します。
02CHOと類似するポジションとは
CHOとよく似た役職として、CEOやCFO、またCIOやCROが挙げられます。いずれも「C=Chief、O=Officer」を意味しますが、これらの役割にはどのような違いがあるのでしょうか。ここではそれぞれの役職の役割について紹介します。
CEO(最高経営責任者)とは
CEOは「Chief Exective Officer」の略称で、日本語では「最高経営責任者」を意味します。ベンチャーなど、日本企業のなかにもCEOを置いている会社は多く、聞いたことがある人も少なくはないでしょう。 その名の通り、経営の責任者であるCEOは会社の経営方針や事業計画などを打ち立てて、長期的な経営の責任を負います。経営戦略の共有や人材育成戦略の策定を行うこともあります。
CFO(最高経理責任者)とは
CFOは「Chief Financial Officer」の頭文字をとったもので、「最高財務責任者」と呼ばれる役職です。企業の資金面や財務面、また経理面など、財務に関する全項目の責任を負っています。 CEOに次ぐナンバー2のポジションとしても知られています。 財務戦略の立案や執行、コスト管理や資金調達と仕事の幅は広く、CEO同様に経営権を有している役職です。
CIO(最高情報責任者)とは
CIOは「Chief Information Officer」の略で、「最高情報責任者」と訳される役職です。「情報統括役員」や「情報システム担当役員」と呼ばれることもあります。CIOには企業の情報戦略における全責任を負う役割があり、情報社会といわれる昨今にあって重要度の高い役職と考えられています。 費用対効果の高い情報戦略の立案や情報システムの最適化、また経営陣の一人として役員と協力し合いながらIT化を促進するなど、CIOの役割は多岐にわたります。
CRO(最高リスク対応責任者)とは
日本ではまだあまりなじみのないCROは「Chief Risk Officer」の頭文字を取った略称で、「最高リスク対応責任者」を意味します。社内で起こりうる、ありとあらゆるリスクを事前に想定し、危機管理体制を構築する役割を担っています。 具体的には、従業員への教育や現場マネージャーへのリスク周知はCROの任務です。トラブルが発生した際にも、最終的にはCROが対応をしなければなりません。企業のコンプライアンスが問われる昨今、企業のブランドイメージを保つためにCROは必要不可欠な存在と言えます。
03CHOの主な役割とは
それぞれの責任者の違いを理解したところで、ここからはCHOが担う主な役割について紹介します。人事に特化したイメージが強いCHOですが、企業全体を統括する存在として、さまざまなシーンにおける活躍を期待されています。 ミシガン大学の教授であり、さまざまな企業の人事部門や専門職をサポートしてきたデイビット・ウルリッチ氏は、自身の著書である「MBAの人材戦略」で、人事の役割として以下の4つの項目を掲げています。 ・ビジネス戦略のパートナー ・人材管理のエキスパート ・組織・風土変革のエージェント ・従業員のチャンピオン このなかで、特にCHOに必要とされる2つの項目について説明します。
ビジネス戦略のパートナー
経営に携わる権利を持つCHOは、いわばCEOのビジネス戦略パートナーです。企業にとって有益なCHOになるためには、経営戦略を深く理解したうえで、事業戦略に則った人事戦略を立案しなければなりません。 そのためには、さまざまな人事業務をこなしつつ、CEOの右腕的存在になれる人事のスペシャリストを目指す必要があります。
組織・風土変革のエージェント
時代の変化はめまぐるしく、特に「終身雇用制度」や「年功序列制度」は形骸化しつつあります。このような状況下で、旧態依然の人材配置や異動を行っていては、組織がうまく機能しなくなるおそれがあります。 CHOは時代の流れを敏感に察知し、雇用形態が多様化した現代にマッチする人事戦略を練り、主導しなければなりません。組織や風土変革の中心的人物になることは、CHOの役割といえるのです。
04CHOに求められる要件・能力とは
人事管理能力ではなく、経営側からの視点も求められるCHOは、一朝一夕でなれるものではありません。それでは、CHOに適した人物はどのような資質を秘めているのでしょうか。ここではCHOが備えておきたい4つの要件・能力を説明していきます。
人事分野でのプロとして支援できる
人事部のトップに立つCHOは、当然のことながら人事分野に関する事項を熟知していなければなりません。人事部門のなかで最も重い責任を背負うことになるCHOへの就任は、人事関連の専門知識や経験の保有が必要条件といえます。
経営戦略や事業戦略の理解
CHOは、経営者として自社の経営戦略や事業戦略を深く理解していなければなりません。自分自身が人事施策を立案するときでも、各事業部の戦略を認識していなければ、施策と戦略の方向性にズレが生じてしまうためです。 広い視野をもって他人の意見にも耳を傾けられる人材が、経営戦略や事業戦略を理解しなければならないCHOの理想像といえます。
マネジメント能力
現場のマネージャーやリーダーの良き相談役になるためには、CHOにもマネジメント能力が求められます。 事業戦略に則った人事戦略を立案して終わるのではなく、現場の意見に耳を傾けて、ときには戦略を修正し、人材採用や育成計画を進めて、進行度合いや従業員のモチベーションを管理・指導できる人材が適任です。
戦略を成功に導く実行力
人事戦略を立案できても、それを成功させることができなければ、CHOに適任とはいえません。 立案された戦略を成功に導くためには、課題把握能力や問題解決能力、リーダーシップといった、一般社員と同じような実行力が求められます。 課題把握能力や問題解決能力を有している人材は課題を整理し、現時点で最善な解決手段を見つけ出すことに秀でています。さらにコミュニケーション能力が備わっていれば風通しの良いチームを構築して、メンバーと話し合いながら納得のいく着地点を見つけられるはずです。
05CHOを導入している企業の事例
CHOを導入している国内企業はまだ少なく、配置方法が分からないという企業も少なくありません。そこで、ここからは実際にCHOを設けている企業を2社紹介します。新たな役職を配置する際の参考にしてください。
サイバーエージェント
株式会社サイバーエージェントでは、2021年現在曽山哲人氏が常務執行役員CHOに就任しています。人事部長を経て取締役統括に就任した曽山氏は、社内の採用・育成・活性化・適材適所・企業文化に取り組んでいます。主体的な人材の育て方には定評があり、何冊もの著書を発行し、人事セミナーの開催にも積極的です。
日清食品
カップヌードルで有名な日清食品ホールディングスも、CHOの役職を置いている企業の一つです。 2014年に上村成彦氏が同社の人事統括を担当したことで、対外的なイメージが大幅にアップ。2017年にはランスタッド社主催の「勤務先としていま最も人材をひきつける魅力のある企業」のランキング1位を獲得しました。ソニー本社人事センターで、副センター長を務めた経験のある上村氏の人事戦略が功を奏した結果と考えられています。
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・自己啓発への活用方法 など
06まとめ
自社の従業員が活躍できる人事戦略を立案するCHOは、今後の日本企業にとってなくてはならない存在になっていく可能性があります。 経営側と現場側の双方に立つことで、効果的かつ効率的な戦略の立案を期待できます。現在CHOの役職配置を検討している方は、ぜひ他社事例を参考にしてみてください。