在宅勤務とは?導入時のポイントや企業事例を解説
近年、多くの企業が注目している在宅勤務。導入により大きな働き方改革が見込めますが、思わぬデメリットがあるところも事実です。当記事では、これから在宅勤務の導入を検討している方に向けて、導入時に必ず押さえておきたいポイントと、実際の企業事例をご紹介します。
- 01.在宅勤務とは
- 02.テレワーク(リモートワーク)と在宅勤務の違い
- 03.在宅勤務の導入が進む背景
- 04.在宅勤務のメリットとは
- 05.在宅勤務のデメリットとは
- 06.在宅勤務を導入する際のポイント
- 07.在宅勤務を導入している企業事例
- 08.まとめ
01在宅勤務とは
在宅勤務とは「企業に出社することなく、自宅で業務を行う勤務形態」を指します。主にノートPCなどのIT機器を使って作業し、会社や顧客との連絡にはチャットツールや電話、Web会議システムなどが用いられます。 一週間の中で在宅勤務をしてよい日数を定める方法や、コアタイムを設けてそれ以外は在宅勤務を可能にする方法など、さまざまな導入方法がとられています。
02テレワーク(リモートワーク)と在宅勤務の違い
テレワーク(リモートワーク)とは在宅勤務よりも広い概念として用いられていて、ICT(情報通信技術)を活用した、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方の総称です。在宅勤務は自宅で働くことを前提にした言葉ですが、テレワーク(リモートワーク)は働く場所を問わず自分の好きな場所で働けるという点で違いがあります。また、テレワークは働く場所によって以下の3つに分類されます。
- ・在宅勤務
- ・モバイルワーク
- ・サテライトオフィスワーク
すなわち、在宅勤務はテレワークの1種となります モバイルワークとは、電車や新幹線、飛行機など交通機関での移動中に仕事をする働き方のこと。そして、サテライトオフィスワークとは、自宅以外の本社から離れた小規模オフィスや施設を利用して仕事をする働き方のことです。
03在宅勤務の導入が進む背景
在宅勤務の導入が進んでいる背景にはさまざまな要因が考えられますが、最もわかりやすいものは「政府による働き方改革の推進」でしょう。これによって、在宅勤務を導入する企業への助成金やPR支援などの取り組みも始まっています。 さらに「ITツールの発達」も大きな要因です。これまではエンジニアなどごく限られた職種でしか在宅勤務の導入が進んでいませんでしたが、チャットツールやWeb会議システムの発達により、より多くの業界、職種で在宅勤務の導入が進んでいます。 さらに在宅勤務の導入に拍車をかけたのが、2020年からの新型コロナウイルスの感染拡大です。これを受けて政府は緊急事態宣言を発令し、人が一箇所に集まる満員電車やオフィスなど、いわゆる3密な環境を避けるために、在宅勤務などのテレワークを推奨するに至りました。このように、多様な社会要因を背景に在宅勤務の導入が進んでいるのです。
▶︎参考文献:厚生労働省|「働き方改革」の実現に向けて
04在宅勤務のメリットとは
ここまでで在宅勤務の定義や、導入背景などの前提知識をお伝えしました。次に在宅勤務のメリットについて確認していきます。在宅勤務は企業側、従業員側の双方にとって多くのメリットがあります。ひとつずつ見ていきましょう。
通勤やオフィスに関わるコストを削減できる
在宅勤務を導入すれば基本的に出社の必要がなくなるため、従業員への通勤手当や、オフィスの維持費を削減することができます。従業員が多い企業ほど大幅なコスト削減が見込めるでしょう。 また従業員にとっても、苦痛と感じることが多い満員電車での通勤から解放されるため、肉体的・精神的な負担を軽減することができ、結果的に生産性の向上を見込めます。
従業員の業務効率が向上する
オフィスに出社して働いていると、予定外の打ち合わせが入ったり、顧客からの連絡が入ることによって業務を中断させられるなど、集中して自分の業務に取り組むことができない場合があります。人によっては周囲の話し声が気になったり、かえって気疲れしてしまったりする場合もあるでしょう。 それも自宅内作業であればひとりの時間を保つことができるため、業務に集中でき、生産性が改善されます。
離職率が低下する
従業員が離職する理由はさまざまですが、両親の介護や出産後の育児期間など、いわゆるライフステージの変化による離職は在宅勤務の導入によって防ぐことが可能です。 「本当はもっと働いていたいのに辞めなければいけない」と思いながら離職されてしまうのは、企業と従業員の双方にとって大きな痛手です。離職する従業員が優秀であれば、それだけ損失も大きくなるでしょう。新たな人材を確保するための採用コストがかかる場合もあります。 それも在宅勤務を導入することで、働く場所の拘束がなくなるため、人生ステージの変化に合わせた柔軟な働き方が可能になります。その結果として、離職率の低下につながるのです。
非常事態に対応できる
オフィスに人が集中して働いているという状況は、企業の要ともいえる人材資本が一極集中することになります。 そのため地震などの自然災害や、感染爆発などの非常事態が発生した際に、一斉に企業活動が停止してしまうおそれがあります。在宅勤務を導入していれば、非常事態が発生しても被害を局所的に抑えることができ、事業の継続性が向上します。
05在宅勤務のデメリットとは
在宅勤務には大きな可能性がありますが、その一方デメリットがあることも事実です。 在宅勤務のデメリットについて確認していきます。メリット・デメリットをしっかり比較したうえで、導入、実施の判断を行いましょう。
セキュリティ上の危険性が高まる
在宅勤務に伴うPCや記録媒体などの持ち出しが必要になる場合、紛失や破損、盗難のおそれがあります。 また、ウィルス感染やサイバー攻撃のリスクも考えられるため、思わぬかたちで社内の機密情報が漏洩してしまう可能性もあります。在宅勤務を導入する場合は、より一層のセキュリティ対策を考える必要があるでしょう。
従業員同士のコミュニケーションが減る
在宅勤務ではそれぞれが自宅での労働となるため、必然的に従業員同士のコミュニケーション頻度は減少します。オフィスにおける勤務では不明な部分があった場合に、近くにいる上司や同僚に直接確認して作業を進めていくことが可能です。 しかし在宅勤務の場合は、チャットツールやWeb会議にての確認になるため、やりとりに時間的なコストがかかってしまうことが考えられます。また従業員によっては孤独を感じることで、精神的にネガティブな影響が生じ、業務の生産性が下がってしまうおそれもあるでしょう。
勤怠管理や人事評価が難しくなる
在宅勤務になることで「従業員がどのように働いているのか」が見えづらくなるため、勤怠管理が難しくなります。 また人事評価という観点においても、基本的に成果物のみの評価となるため、業務プロセスが把握できず、正しく評価できないおそれがあります。
社員の育成体制を変える必要がある
これまで日本企業が長年続けてきた出社を前提としたOJT・集合研修が中心の人材育成は、在宅勤務を取り入れた場合は変える必要があります。業務で悩みが出た際にも在宅勤務であれば横で教えてくれる人はおらず、悩んでいる方が自分で声をかけない限りは基本的にOJT担当者が気づいてくれません。また、在宅勤務を自由に選択できる働き方を取り入れた場合は、各社員が全国に点在するということも起こり得ます。その際に、集合研修を実施するためだけに本社に全員を招集することは非効率であり、テクノロジーを駆使してオンライン研修などの代替策を検討する必要があります。
06在宅勤務を導入する際のポイント
ここまでで述べてきた通り、在宅勤務にデメリットがあるのは事実ですが、大切なのはそれらを理解したうえで適切な対策を行うことです。 デメリットを最小限に押さえ、メリットを最大限に享受できるように、ここからは在宅勤務を導入する際のポイントを見ていきましょう。
セキュリティ対策を徹底する
在宅勤務による情報漏洩問題を未然に防ぐために、ハード面とソフト面からのアプローチが考えられます。 ハード面では、仮想デスクトップやセキュリティ対策ソフトの導入を検討しましょう。 またソフト面においては、セキュリティ研修の実施における社員教育が有効です。セキュリティガイドラインを策定し、不審なメールを受信した際の対応方法を統一しておきましょう。
コミュニケーションツールを活用する
チャットツールやWeb会議ツール、グループウェアなどを活用して、在宅勤務でもコミュニケーションを円滑に取れる仕組みを作っておきましょう。 プロジェクトの進捗状況や業務に関する相談はもちろん、それ以外のことでも気軽に話せるような環境を整えておくことで、従業員の業務効率向上と、チームの生産性向上が見込めます。
勤怠管理ツールを導入する
2019年4月より「客観的方法による労働時間把握」が政府によって義務化されています。在宅勤務では特に労働時間の把握が難しくなるため、勤怠管理ツールの導入を検討しましょう。出勤や退勤、残業時間などを見える化することで、従業員のパフォーマンス管理やフィードバックもしやすくなります。
在宅勤務での人事評価方法を策定する
在宅勤務の従業員が不当な評価を受けないように、在宅勤務に合わせた人事評価方法の策定が必要です。正確な評価が行われない場合、離職や転職の要因にもなるため、あらかじめ社内でしっかり話し合っておきましょう。
オンラインでの育成体制を整える
在宅勤務を導入すると、これまでのような集合研修がしにくくなったり、OJTが機能しないという事態が発生します。しかし、これをデメリットと捉えるのかメリットと捉えるのかは人それぞれです。例えば、オンライン研修を充実させたことによって、OJT担当者のレベル差で悩む人が減るというメリットも起こりうるかもしれません。また、これまで集合研修にかけていた費用がオンライン研修に変えることによって大幅に削減できるかもしれません。そのため、在宅勤務を前提とした際に、どのように育成体制を整えれば、いま以上に社員の成長を実現できるのかを考えるべきでしょう。
07在宅勤務を導入している企業事例
ここからは、在宅勤務導入のイメージをより鮮明に持っていただくために、実際の企業事例を見ていきましょう。「他社がどのように導入しているのか」という引き出しを持っておくことで、自社の導入においてベストな判断を下すことができます。
株式会社北都銀行
秋田県内を中心に事業展開している北都銀行では、既存のタブレット端末を使用することで、コストをかけずに在宅勤務の導入を実現しています。 いきなり全社員を対象にするのではなく、賞与評価や人事考課などを行う管理職から在宅勤務に移行したと言います。その際は週に1回程度、1日単位で事前申告書を所属長に提出し、翌日に成果を報告する形で業務進捗を把握していました。 その後は特に業務内容に縛りを設けず、在宅勤務が可能な職種か否かを現場レベルで判断しながら導入を進めています。 実際に在宅勤務を行った従業員からは、電話などによる業務中断がなくなり「集中して速やかに仕事ができた」という声が集まっています。 また在宅勤務におけるコミュニケーション頻度の減少については、社内のイントラネット上にある掲示板を活用することで、スムーズな情報共有を図っています。
リコーITソリューションズ株式会社
ソフトウェアの企画、設計、開発を行うリコーITソリューションズでは、以下に記載するような環境再構築を行い、在宅勤務を含めたテレワーク導入を実現しました。 ・クラウドシステムを活用した勤怠管理システムの導入 ・クラウドを利用したWEB会議、チャットツールやSNSの導入 ・仮想私設通信網(VPN)によるセキュリティ強化 これによって定年後のシニア再雇用率が向上し、50%以上のシニア社員がテレワークを利用しています。 さらにオフィスの省スペース化、ペーパーレス化も実現。2018年度における時間外労働時間は、2015年度比で16.5%削減できています。
▶︎参考:リコーITソリューションズ株式会社
株式会社テレワークマネジメント
日本初のテレワーク導入専門のコンサルティング会社として、2008年の会社設立時より全社員がテレワークを実施している、株式会社テレワークマネジメント。 自社で独自開発したクラウド上の在席管理システム「Fチェア」(特許5134737号)によって、実労働時間のみを記録することで、従業員の時間意識の向上と生産性向上につなげています。 さらに従業員の全員が仮想デスクトップを使用することで、手元のパソコン内には一切情報を残さず、情報漏洩リスクを低下させる環境を整備しています。 これらの施策の実施により「家事や家族のケアを行いながら、柔軟に働くことが可能になった」「企画業務などクリエイティブな仕事の効率が向上した」という報告が上がっています。
▶︎参考:株式会社テレワークマネジメント
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・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など
08まとめ
本記事では近年注目を集めている在宅勤務について、実際の導入事例と合わせながら、導入におけるポイントをお伝えしてきました。 大幅なコスト削減や生産性の向上、離職率の低下など、在宅勤務導入におけるメリットは計り知れません。しかし、デメリットがあることもまた事実です。 ここでお伝えしたポイントを参考に、デメリットをカバーしながら導入を進め、理想的な働き方改革を実現しましょう。