企業価値を高めるパーパスとは?設定するメリットやビジョン・ミッションとの違いも解説

近年、企業の経営において「パーパス」が注目される機会が増えています。なぜ注目されているのでしょうか。また、似た概念であるビジョンやミッションとは、どのように異なっているのでしょうか。当記事で解説していきます。
- 01.パーパスとは「存在意義」のこと
- 02.ビジョン・ミッション・クレド・企業理念との違い
- 03.なぜ今パーパスが注目されているのか
- 04.パーパス策定のメリット
- 05.まとめ
01パーパスとは「存在意義」のこと
企業を分析したり、企業の理念などを語る際、「パーパス」という概念が注目される機会が増えてきました。 パーパスとは、直訳すると「目的」のことです。 企業のパーパスという場合は、「企業としての存在意義」のようなものであると理解すればいいでしょう。
企業活動の目的は、当然ながら事業を通じて収益を上げることです。しかし現代社会では、多くのリーダーがただ利益を上げるためだけではなく、事業を通じて社会に与える影響を見据えて会社を経営しています。 この社会の中でなぜこの会社が存在しているのか、どういった役割を果たしているのか、あるいは、なぜ存在していることが許されているのか。そういった、「この企業の存在意義は、〇〇である」と表現できるような、企業が重きを置く価値のようなものがパーパスなのです。
02ビジョン・ミッション・クレド・企業理念との違い
企業が掲げ、社内にも社外にも広く示すものとしては、パーパスだけでなくビジョン、ミッション、クレド、企業理念といった言葉が挙げられます。 これらの言葉の中には、その企業の想いが強く表現されていることが特徴です。 似たような概念をもった言葉たちですが、少しずつ要素が異なっています。ここでは、周辺用語との違いを知ることで、よりパーパスについて理解を深めていきましょう。
ビジョン
ビジョンとは、直訳すると「視覚」ですが、企業が掲げるビジョンとは、企業として実現したい未来像のことを示しています。
自社の活動によって、どういった未来を作り出したいのか。 ある意味では、「なぜこの会社が存在するのか」という存在意義を問われたならば、「ビジョンを実現するためである」と答えることもできるため、パーパスに非常に近い概念であるとも考えられるでしょう。しかし、パーパスは企業活動の根底にある会社の存在意義であり、その活動の結果として中長期で実現したい未来像がビジョンであるという違いがあります。 ビジョン、ミッション、それらに加えてクレドを設定している企業はありますが、これらを設定している場合、重要とされる最上位の概念はビジョンなのです。 また、そういった企業がさらにパーパスも設置している場合、パーパスはビジョンよりもさらに上位に位置する、と考えておけばよいでしょう。
ミッション
ミッションとは、使命や任務といった意味の言葉です。 企業が掲げるミッションとは、ビジョンを叶えるために普段から行うべき行動のことを示す場合が多いでしょう。 まずはビジョン(企業が実現したい未来像)があり、そのビジョンを叶えるために、企業や社員はどのような行動をしていくべきか、といった内容です。
クレド
クレドとは、ラテン語で「志」や「信条」を意味する言葉です。 企業がクレドを設置する場合、ビジョンやミッションを実現するための従業員の行動指針のようなものであると考えるとよいでしょう。
ビジョン→ミッション→クレドと、企業が目指す未来からブレイクダウンし、段々と具体的な行動に落とし込まれていくのが一般的です。 とはいえ、クレドの段階でもまだ「チャレンジしつづけよう」「ユーザーのために何ができるか考え続けよう」といった、はっきりと行動レベルまで落とし込んだ内容ではないことが多いです。 このクレドをもとにして、〇〇部の行動目標、チームの行動計画などに落とし込まれることでさらに行動は具体化され、実際に個人が行う業務に近いものになっていきます。
企業理念・経営理念
これまで説明してきた概念とは少し異なるのが、企業理念や経営理念という言葉です。 これらは、創業者や経営者の想いなどがまとめて表現されています。 パーパス、ビジョン、ミッションなどを一緒にしたようなものと言っても問題ないでしょう。 なぜ起業したのか、どんな想いで受け継ぎ、またどういったことを目指して会社を経営しているのか。そういった想いが、経営者の言葉や代表のメッセージなどとして示されています。
03なぜ今パーパスが注目されているのか
なぜ今、企業のパーパスが注目されているのでしょうか。 それにはいくつかの理由が存在していますが、簡単にまとめると時代の要請による部分が大きく関係しています。この項では、パーパスが注目されている3つの理由について確認していきましょう。
消費者が企業に社会的意義を求めるようになった
社員に違法な労働を強いる「ブラック企業」や、法令違反を犯すことを意味する「コンプライアンス違反」といった考え方はすでに一般社会に広く浸透しています。 価値観の変化に伴って、これまでの日本社会と比較しても、企業の環境問題や労働環境などに対する姿勢がより厳しく見られる時代になってきています。 その流れで、「悪いものを是正または排除する」だけでなく、「より健全な企業を推していこう」という人が増えているのです。 社会の中でどのような存在意義をもつのかを調べ、その内容を元にして、どの企業を支援するか、どの商品を購買するかを消費者が選べるようになっています。 彼らの検討のテーブルに挙げてもらうためには、まずはしっかりとパーパスを設定し、掲げておく必要があるのです。
VUCAの時代を乗り越える礎にするため
VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった言葉です。 さまざまな状況が刻一刻と変化し、複雑化し、想定外の事態が発生するため未来予測が難しい、現代の状況のことを表しています。
パーパスは、VUCA時代の企業の指針になりえるものだと期待されています。 パーパスは、企業のビジョンよりもさらに上位の概念であり、度々変更するようなものではありません。何が起こるか分からないVUCA時代では、少しの変化に動転して理念や目的を見失ってしまいがちですが、パーパスを決めておけば企業の「礎」や「軸足」にできるのです。 テクノロジーの進化や社会の変化に伴い事業戦略や計画は変わっていきますが、「会社が何のために存在するのか」という根本が定まっていると本質がブレない経営ができます。 また、こういったパーパスにしっかりと軸を置いた経営を行うことは、後述するパーパスドリブンの概念ともつながっています。
企業におけるダイバーシティーの推進が求められるため
パーパスを軸にした企業運営を行うことは、ダイバーシティの推進にも寄与することが期待できます。 現代社会では、企業は人々の多様性(ダイバーシティ)を認め、平等に雇用することが求められています。ダイバーシティは、パーパス同様に社会からの要請でもあるのです。 パーパスを設定すると、企業活動の根幹となる考えが社員間で共有されることに繋がります。また、パーパスは社の方向性を導くガイドラインであり、事業の戦略や戦術はその方針に沿った内容になります。そのためパーパスには、異なる環境や価値観の社員同士を結びつけ一体感を醸成するための機能を果たすことも期待できるのです。
04パーパス策定のメリット
パーパスを策定することは大きなメリットがあります。ここでは、代表的な3つのメリットについて確認していきましょう。
- ・1.パーパスブランディングができる
- ・2.パーパスドリブンにできる
- ・3.従業員のロイヤルティ向上につながる
1.パーパスブランディングができる
前述したとおり、消費者が企業に向ける目は厳しいものになってきており、従来の品質や値段だけでなく、「企業哲学」のようなものにも注意を払うようになってきています。 まずは自社でパーパスを決め、そしてそれを広く社会に認知してもらうことで、自社のブランディングにつながっていきます。 自社のパーパスが好みでなかったユーザーは離れていくのでは、と感じるでしょう。 その点はその通りです。そして、それは問題ないことです。 なぜなら、離れていくユーザーをつなぎ止めることよりも、パーパスに共感し、支持してくれるユーザーやファンになってくれるユーザーのほうが重要だからです。 こういったパーパスブランディングは、今後より必要になってくるでしょう。
2.パーパスドリブンにできる
パーパスドリブンとは、自社内におけるさまざまな判断が、パーパスを起点として語られ、パーパスを軸にして決定される状態のことです。 パーパスが、さまざまな事業や活動を動かしていく、という状況です。 状況に応じて対応や言動がブレてしまったり、同じ管理職でも聞く人によって下される判断が変わってしまったりすると、一貫性がなく、消費者や従業員の不満を招くでしょう。 統一的なブランディングもできませんし、経営者が考えるビジョンを実現するのも難しくなるのではないでしょうか。 そういった状況を、パーパスドリブンにすることで防ぐことができます。利益に直結するものの、企業理念に反するような行動が選択肢として示されたとしても、はっきりとNOと言うことができるようになります。 その代わりに、少しリスクがあるが経営理念に即している行動を、明確な意図をもって選び取ることもできるようになるのです。
3.従業員のロイヤルティ向上につながる
パーパスは、企業が目指すべきビジョンや行うべきミッションの上位に位置する概念だとお伝えしました。 パーパスを全社に浸透させることは、その先にあるビジョンやミッションの浸透にもつながります。パーパスを軸にしてさまざまなブランディングを行うことで、従業員の士気も上がっていくでしょう。 加えて、明確にパーパスを示しておけば、それに合致した人が入社を志望する割合が多くなり、反対に社内にいる合わない人は去っていくだめ、結果としてロイヤルティが高い組織になっていきます。 そのためには、例えば従業員の評価もパーパスドリブンで決める、といった手法が効果的です。 パーパスと合わない人が会社に残り続けるメリットを薄くし、合う社員がどんどん評価されて活躍していくような評価制度にすれば、従業員ロイヤルティの向上もさらに進んでいくでしょう。
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・自己啓発への活用方法 など
05まとめ
パーパスとは、変化の激しい現代社会を企業が乗り切るために必要となるものです。 その出発点は社会的な要求から策定を求められたものかもしれませんが、決して面倒なものではなく、むしろ設定することには多くのメリットが存在しています。 ぜひこれを機に、自社のパーパスを確認してみてください。
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登壇者:荒川 陽子 様Great Place to Work® Institute Japan 代表
2003年HRR株式会社(現 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ)入社。営業職として中小~大手企業までを幅広く担当。顧客企業が抱える人・組織課題に対するソリューション提案を担う。2012年から管理職として営業組織をマネジメントしつつ、2015年には同社の組織行動研究所を兼務し、女性活躍推進テーマの研究を行う。2020年より現職。