玉突き人事とは?従業員とのトラブルを防ぐポイントを簡潔に解説
予想外の人手不足により時折起こってしまうのが玉突き人事です。従業員に負荷がかかったり、ミスマッチが生まれたりしてしまう可能性があります。玉突き人事を行う際に、従業員とのトラブルを防ぐポイントについて簡潔に解説しています。
01玉突き人事とは突発的に不在となったポストへ人事異動が繰り返されること
玉突き人事とは、急な人手不足を解消するため、場当たり的に繰り返される人事異動です。畑違いの部署への異動となる場合であっても、突発的に行われるため、人材育成を目的としたジョブローテーションとは異なります。また、社内の人員配置を入念に行っていても、急な退職や社会情勢の変化等により、急遽人手不足となることもあるので、避けられず発生する時もあります。
計画性がある異動ではないため、ネガティブな印象の言葉ではありますが、ポイントをおさえて行えば、企業にとってのメリットもあります。
02玉突き人事の3つのメリット
トラブルが発生する恐れもありますが、玉突き人事にはメリットもあります。 早急な人手不足への対応や組織の改善につながる玉突き人事のメリットについて、解説します。
スピーディーな人手不足の解消
急な人手不足が起きた際に、毎回中途採用を行うと莫大な工数、コストがかかり、また、入社後の教育も必要となります。
一方で、即戦力となる経験者を採用したとしても、会社によって業務の進め方が異なり、コミュニケーションの面でも中途入社者が組織になじみ、活躍できるようになるまでは長い時間がかかるケースも少なくありません。
それに比べて、玉突き人事は社内の人材を異動させるので、これまでの実績や人柄を把握できており、新しい人を入れるよりもリスクが低いです。 大きなコストをかけず、人手不足を解消できるのが、玉突き人事の大きなメリットの1つです。
業務の見直し・改善につながる
玉突き人事では急な人事異動となるので、そのポストでの業務経験のない人が対象となることが多いです。そのため、引継ぎの際に新しい視点で教育をする必要があります。属人化しており、特定の人しか従事できなかった業務がある組織においては、見直しを図るためのいいきっかけとなります。また、経験がない目線を持つ人が業務を行うことで、新しい効率的な方法を見つけられる可能性もあります。
不正を防ぐ
長期的に異動がなく、同じ人が同じ業務をし続けていると、不正が発生するリスクが高まりやすくなるといわれています。 玉突き人事は突発的かつ、今まで別業務をしていた人が来ることが多いため、社員間で身内びいきが発生しづらくなり、過去の不正を隠ぺいできなくなります。長年、異動がなかった組織に玉突き人事を行うと、このような不正防止の面でもメリットがあります。
03玉突き人事の2つのデメリット
玉突き人事を行うことにより、一方でミスマッチや離職率の増加等が起こる可能性があります。玉突き人事によるデメリットを詳しく解説します。
従業員のモチベーション低下による離職増加のリスク
玉突き人事は、従業員のモチベーション低下につながりやすく、離職の増加が懸念されます。離職につながりやすい人事異動には、転勤を伴う場合と、自己決定権のない異動の場合が挙げられます。
転勤を伴う玉突き人事は離職の原因となりやすい
転勤を伴う玉突き人事は、特に離職の原因となりやすいので、注意が必要です。
近年は地元志向が強く、転勤を望まない従業員が増えてきています。また、転勤があることでライフイベントの面でも不安を感じる人も多く、想定していない急な異動命令を受け入れられない従業員も一定数います。そのような理由から、転勤を伴う異動については「拒否する人」や「拒否できない場合は退職を検討する人」が非常に多くなってきています。
また、小さな子どもがいる、介護中の家族がいる等、家族の都合で転勤ができない人もいるかもしれません。
入社後に家庭環境の変化で転勤に対応できなくなる人もいますが、できる限り、転勤の可能性がある職種の従業員には、入社時にその可能性がある旨を十分に伝えておき、食い違いがないようにしておく必要があります。
ミスマッチが起こる可能性
玉突き人事は、突発的な人事異動となるので、対象従業員と担当業務や異動先の間にミスマッチが発生するかもしれません。 普段行われる人事異動では、従業員のこれまでの経験やスキルを考慮した上で、そのポジションに適しているとされる人が対象となります。玉突き人事の場合は、急な人手不足の解消のためとされるので、人選を十分に検証する時間がないままに行われることが多いためです。そのため従業員にとって、玉突き人事は望まないキャリア変更となるケースがあります。
ミスマッチが起こると従業員のキャリア形成の妨げとなるだけでなく、円滑に業務が回らず、周りの人々のパフォーマンスも下がってしまいます。
他の従業員のモチベーションも下げてしまう危険性がある
玉突き人事の対象者だけでなく、他の社員も「いずれ自分が対象となるかもしれない」と危機感をもつ可能性があります。 特に若手社員は、会社が安心して働ける場所か心配するため、「先輩のように、急に異動させられないうちに転職しよう」と早期離職してしまうリスクも考えられるでしょう。
ミスマッチによる生産性の低下
前述の通り、玉突き人事によって突発的に異動対象者が決まると、対象者が業務そのものや部署になじめず、ミスマッチとなる恐れがあります。特に中堅社員が経験がない仕事への異動となると、新人のように手取り足取り業務を教えてもらうのも難しいため、教育や引き継ぎが円滑に行えない可能性があります。 そうなってしまうと、異動対象者だけでなく、部署内でコミュニケーションがうまく取れなくなり、業務の連携ができず、仕事がまわらないようになってしまうリスクがあります。
04玉突き人事をトラブルなく行う5つのステップ
玉突き人事は積極的に行うようなものではありませんが、急な人手不足により、やむを得ず行わなければならないケースもあると思います。 その際に、従業員とのトラブルなく実施できるステップを確認していきましょう。
社内ルールを確認
就業規則に人事異動が可能と明記されているか、また過去に同じような異動の事例はあるのかを、玉突き人事を行う前に、しっかり確認しておく必要があります。 異動させることができる対象社員や配属先の範囲も、可能であれば明記しておくのが望ましいでしょう。例えば一般職は県内の異動のみ、総合職は国内の異動が可能等です。あらかじめ明確に対象範囲を決めておくことで、県外に転勤したくない人は一般職として、転勤を許容できる人は総合職として就職してくるため、いざ人事異動となった時に、トラブルに発展するケースが少なくなります。
また、就業規則に明記されていても、過去に事例が少なく、いきなり玉突き人事が行われる場合は、異動対象者の反発が強まる恐れがあります。「自分だけ急に会社の都合で異動させられた」と受け取られないように、なぜこのタイミングで異動となるのか、何を期待されているのかを伝え、納得を得なければなりません。
対象者を決める
対象者のスキルや経験を確認し、異動後も問題なく業務が遂行できる人材か判断する必要があります。また、本人が希望しているキャリアプランをできる限り事前に把握しておき、異動後のポストが大きく乖離していないか考慮しなければなりません。
「経理の仕事にやりがいを感じ、資格取得の勉強をしている人」「営業の経験を長く積みたい人」等自身で明確にキャリアを思い描いている人を異動させないように注意が必要です。日頃から社員とコミュニケーションをとり、本人の希望のキャリアプランを把握しておくことが大切です。
受け入れる部署と送り出す部署の理解を得る
玉突き人事を行う際は、部門間の理解を得る必要があります。送り出す部署には「部員が異動して問題ないのか」確認しておく必要があります。受け入れる部署には「どのような経歴の人材が配属されるのか」「畑違いの業務となるので、その点を考慮し、丁寧に育成すること」を事前にしっかりと伝えておく必要があります。この行程を行わず玉突き人事を行うと、部署間や社員本人に対して大きな負荷がかかり、トラブルとなる恐れがあります。
内示・人事異動
内示の際は、人事異動により成長を期待する旨を本人に伝える必要があります。長期的な目線で、勉強となる経験であることを理解してもらう必要があるからです。 急にこれまでの経験と全く違う部署に異動されるとなると、社員本人が「今の部署で戦力外と判断された」「急な退職者が出たから穴埋めにされた」とネガティブな思い込みをしやすいため、なおさらそのような発想とならないよう「期待していること」について、伝えることがとても重要です。
事後フォロー
人事異動の事後フォローは基本的に、業務が円滑に引き継がれているか等、業務に関することについて行いますが、玉突き人事の場合はこれに加えて、異動対象者本人のメンタルケアを入念に行う必要があります。 畑違いの部署へ異動となっている場合は、本人の心身ともに負担が大きくなってしまうため、コミュニケーションを円滑にとれているか、いきなり高度な業務を要求されていないかを可能な限り、確認する必要があります。
玉突き人事後にすぐに退職した場合、会社都合退職となってしまう恐れもあります。本人の納得は必要不可欠となりますので、入念にフォローしましょう。
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05まとめ
玉突き人事はネガティブな印象に捉えられがちな一方で、、従業員とのトラブルなく行えばメリットはとても大きいです。社員とのコミュニケーションを日頃からしっかりとり、信頼関係を築くことがトラブルなく行う重要なポイントとなります。急な事情で止むを得ず発生する玉突き人事。その際は、今回記載した注意点についてしっかり確認しながら行い、自社にとっていいきっかけとなるよう行ってみてください。