公開日:2022/10/20
更新日:2023/02/02

みなし役員とは?税法上の取扱いについて判定の基準や配偶者への給与支払いとあわせて解説

みなし役員とは?税法上の取扱いについて判定の基準や配偶者への給与支払いとあわせて解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

みなし役員は、役員として登記をしていないにも関わらず、税法上では役員として扱われます。みなし役員と判定されるかどうかで、給与や賞与の支払額や取扱いが異なります。 企業の経費にも大きく影響が出てくるので注意が必要です。みなし役員に該当するかは、判定基準がわかりづらいので、見落とされがちです。みなし役員の税法上の取扱い、判定の基準や配偶者への給与支払いについて、よくある疑問を踏まえながら解説しています。

 

01みなし役員とは

みなし役員とは「税法上の役員」とされるものです。役員とされていなくても、「税法上の役員」に該当すれば、役員とみなされ、給与や賞与に制限をうけるようになります。以下に「税法上の役員」の例をあげます。

  • ・相談役、顧問、会長等の取締役を退いているが、法人の経営に関わる者。
  • ・同族会社の従業員で会社の経営に携わり、かつ、株式の所有割合が一定の要件を満たす者

みなし役員の判定基準は「法人の経営に関わっているか」「所有株式の割合が一定以上の要件を満たすか」の2点となっています。

会社法上の役員との違い

一般的に役員というと、「会社法上の役員」を指すケースが多いです。例えば、取締役、監査役、会計参与が会社法上の役員とされています。「会社法上の役員」とは、会社の経営方針を決めたり、重要事項を決断したりする者のことです。それと比較して、「税法上の役員」は「取締役、監査役、会計参与以外で法人の経営に関わる者」または「所有株式の割合が一定以上の要件を満たす者」となります。

執行役員との違い

執行役員は、税法上はあくまで従業員とされます。執行役員は従業員でありながら、会社の経営にも携わる者となります。会社法上でも執行役員は明確に定義されておらず、会社によって与えられている役割が大きく異なります。組織図としては、役員の下に執行役員が存在する形になります。執行役員は従業員の中のトップ層として、会社の経営にも携わりますが、あくまで従業員であり、経営に関する決定権までは持っていないのが一般的です。 また、「税法上の役員」は、所有株式の割合が一定以上の要件を満たす者とされているのに比べ、執行役員にはそのような判定基準はありません。

 

02みなし役員となる判定基準

みなし役員に該当するかは、かなり複雑で判断が難しいケースもあります。みなし役員に該当しているのに、従業員として給与を支払っている場合は、税法上問題となる可能性があるため、注意が必要です。

「みなし役員」と判定されるには、「経営に従事しているか」「事実上の重要な意思決定に関わっているか」「株式所有割合が一定数以上か」のすべてが満たされているかがポイントとなります。

それぞれの判定基準について詳しく解説します。

経営に従事とは重要な意思決定に関わっているかがポイント

みなし役員に該当するかは、その従業員が経営に従事しているかで判定します。この判定基準では、顧問や相談役等の役職になっているかは関係ありません。経営に従事しているかは、経営上の重要な決定に関わっているかで判断されます。明確に何が重要な意思決定とされるかは、税法上では定義されていません。この部分は税務調査等でも論点とされる部分となります。

例えば法人の経営方針や人事・資金・製品技術や販売網等に関する経営上の重要な決定事項にどのくらい関与しているのかで、総合的に判定されます。

同族会社では特に厳しく判断される

前述の経営に従事しているかのポイントについて、同族会社の場合は注意が必要です。同族会社では、親族は実質的には決定権を持っていない場合でも「重要な意思決定に関わっている」とみなされるケースがあるので、注意しましょう。

同族会社とは、3人以下の株主等、及びこの株主と特殊の関係をもつ株主の保有株式等の割合が50%を超える会社のことをさします。

同族会社の従業員で株式所有割合が一定数以上か

同族会社の従業員である場合、所有している株式の割合が一定数以上かどうかも、みなし役員かどうかの判定を左右します。

所有している株式の割合に対する判定は、以下の3つの要件によって判定されます。

  • ・上位3位の株主グループの保有株式を合計した時に、その従業員が所有割合が50%を越える株主グループに所属している
  • ・その従業員が所属する株主グループの所有割合が10%を超えている
  • ・その従業員と配偶者等の親族の株式の所有割合が5%を超えている

特に配偶者は、株式の所有割合に関わらず3つ目の要件に該当してしまう可能性があります。 配偶者自身が株式を所有していなくても、合算で計算しなければならないからです。

一方で、配偶者以外の場合、上記の要件に該当する割合の株式を所有していたとしても、前述の通り、経営に従事していなければみなし役員に該当しません。 配偶者をみなし役員に該当しないと判断し、従業員として給与を支払っており、後々発覚し税務上問題となるケースが多いです。

 

03みなし役員の報酬に関する注意点

みなし役員の報酬は、従業員と支払い方が異なる部分が多く注意が必要です。 特に、みなし役員に該当しているにもかかわらず、従業員として給与を支払っているケースも少なくありません。

ここからは、みなし役員に支払う報酬に関する注意点について解説します。

税法上は給与ではなく役員報酬として支払われる

みなし役員には税法上の制限があるため、一般従業員と同様の「給与」としてではなく「役員報酬」として支払わなければなりません。従業員への給与と役員報酬はどちらも経費とすることができますが、役員報酬を損金とするには法律上で制約が設けられているため、その支払いがどちらに該当するかが重要になるのです。

一般の従業員は、会社とは雇用関係を結んでいますが、役員の場合は委任関係となります。 つまり、みなし役員は経営層と判定されるので、給与について自由に裁量できる立場とされます。そのため、税務上の制限を受けることになります。仮に制約がないと、経営層が課税を免れるために、役員報酬を調整して、利益を減らすことも可能となってしまうからです。そのようなことができないように、役員は定款または株主総会の決議で定める報酬を受け取るとされています。そして報酬は、毎月一定の金額となります。

配偶者がみなし役員に該当しているのに、従業員と同じように給与を支払っているケースが多いです。税務調査で発覚してしまうと追加で税金が発生する恐れがありますので、注意しましょう。

みなし役員への賞与は事前に届け出ないと経費にならない

従業員への賞与は経費扱いとなりますが、役員賞与は事前に手続きをしていないと経費扱いになりません。役員賞与を経費扱いにするためには、事前に税務署に「事前確定届出給与に関する届出書」を出す必要があります。この際に、届出ている金額通りに、役員賞与を支払わなければ経費として扱われません。 賞与の金額は業績によって変動することが多く、あらかじめ決まっていない会社も多いです。 その場合は金額を事前に届けられないので経費扱いにはできません。

前述の給与と同じくみなし役員に該当するのに、従業員と同じように賞与を支給していると、 経費扱いとしていたものが、後々に実は経費として認められないと発覚することもあり得ます。 このように、会社の経費に影響する部分なので、みなし役員に該当するかどうかは重要なポイントとなります。

給与が支払われる一般従業員や執行役員とは異なるもの

会社法上、定められているわけではありませんが、みなし役員は税法上は役員とされるので、前述の通り、報酬面で税法上大きな制限を受けています。 ここでは、給与や賞与以外にも従業員と取り扱いが異なるものについて説明します。

退職金

退職金は支払う金額が明確に計算方法が定められていれば、経費になります。

一般の従業員の場合は、規定に沿って勤続年数や基本給に応じて、計算式が決まっていることがほとんどであり、問題なく経費にできます。役員の場合は、勝手に自分の都合の良い金額としないようにするため、役員の退職金の決定は会社の定款か株主総会によるとされています。 その決定された金額が適正であれば、原則として金額が確定した事業年度で経費にできるようになっています。

社会保険

みなし役員は会社とは委任契約となるので、一般の従業員と違い、雇用保険には加入していませんが、社会保険には勤務実態によって役員も加入しなければなりません。 非常勤の役員であれば、社会保険に加入する必要はありませんが、常に勤務している実態があれば社会保険への加入義務があります。

常勤の実態があるのに、社会保険に加入しておらず、それが年金事務所の調査で発覚してしまった場合は過去2年に遡ってこれまでの社会保険料を収める必要があります。 社会保険料も長期間分となると大きな金額になるので、気をつけましょう。


 

研修をしてもその場限り」「社員が受け身で学ばない」を解決!
研修と自己啓発で学び続ける組織を作るスクーの資料をダウンロードする


■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など


Schoo_banner

 

04まとめ

みなし役員と役員、一般の従業員について、それぞれ定義や給与支払いや税法上の観点からの違いを解説しました。

一口に役員といっても、「会社法上」か「税法上か」でかなり違いがあります。 税法上のみなし役員に該当すると経費が認められなくなったり、給与を一定金額で支払う必要があったりといろいろと制限がされます。 特に親族の場合は、みなし役員に該当するのに、従業員と同じ扱いをしていることがあるので、注意が必要です。 みなし役員に該当する人がいた場合は、報酬の支給額や社会保険の扱いを慎重にしなければなりません。判定基準を確認しながら、みなし役員に該当する人がいないか、チェックしてみて下さい。

  • Twitter
  • Facebook
  • はてなブックマーク
  • LINE

20万人のビジネスマンに支持された楽しく学べるeラーニングSchoo(スクー)
資料では管理機能や動画コンテンツ一覧、導入事例、ご利用料金などをご紹介しております。
デモアカウントの発行も行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

お電話でもお気軽にお問い合わせください受付時間:平日10:00〜19:00

03-6416-1614

03-6416-1614

法人向けサービストップ