SBUとは?SBUの分類基準やSBUを活かした多角化戦略のメリットを解説
SBUとは、企業を事業戦略で区分したグループです。本記事では、SBUの定義や歴史を確認したうえで、SBUの分類基準や、SBUによる多角化戦略のメリットを解説しています。また、SBU導入時の注意点も解説しているため、ぜひ参考にしてください。
- 01.SBUとは
- 02.SBUの歴史
- 03.SBUの分類基準
- 04.SBUによる多角化戦略のメリット
- 05.SBUを導入する際の注意点
- 06.まとめ
01SBUとは
SBUは、Strategic Business Unitを略した言葉で、戦略的事業単位という意味を持ちます。ひとつの企業のなかで、独立した事業戦略の策定と実行を行う事業単位を指します。事業部は、製品別や地域別、法人・個人などの顧客別で設置されることが多いですが、それら複数の事業部がひとつのSBUとして括られる場合が多く見られます。また、ひとつの事業部が複数のSBUに属されるケースや、仮想的な単位がSBUとして設置されるケースもあります。
SBUが持つ特徴のひとつに、事業戦略の策定と遂行、業績の管理を単独で行えることが挙げられます。同じSBU内で事業戦略や製品が共通しているため、戦略性や戦略遂行までのスピードを高めやすいメリットが存在します。
BUとの違い
SBUと類似した言葉に、BUが挙げられます。BUは、Business Unitを略した言葉で、事業単位と直訳されます。また、BUは企業において設置される部署やグループという意味を持ちます。人事部やカスタマーサポート部といった事業部、営業一課や二課といった区分が、BUの一例です。
Business Unitの略語であるBUは、Strategic Business Unitの略語であるSBUからStrategicを取ってできた言葉です。Strategicは、戦略的という意味であるため、BUには戦略的な意味合いは含まれていないという違いがあります。SBUは事業戦略を基準として区分される事業単位であるのに対して、BUはオフィスの場所や業務内容によって区分されるケースが多くなっています。
分社化との違い
分社化とは、戦略性の強化や効率的な経営の実現のため、特定の事業単位を企業から切り離して別会社とすることです。戦略性の強化という基本的な考え方はSBUと共通していますが、分社化では別の企業を立ち上げる点が異なります。SBUでは、あくまで仮想的にSBUを設定するにとどまるため、企業をわけることは行いません。したがって、分社化はSBUの応用的手法とも言えます。
多角化戦略との関連性
多角的戦略とは、これまで行ってきた事業とは異なる製品や市場をターゲットにして、新規事業を行う経営戦略です。企業の経営戦略には、既存製品を未開拓市場に売り出す「市場開拓」や、既存市場に新製品を売り出す「新製品開発」といったものが挙げられます。
しかし、こうした経営戦略とは異なり、多角的戦略では、既存製品も既存市場のいずれにも頼りません。そのため、多くの経営資源が必要となり、ハイリスクな戦略でもあります。一方で、多角的戦略が成功すれば、新規市場の開拓や新たな製品ブランドの確立、収益リスクの分散化といったメリットが期待できます。
多角的戦略においては、事業部の垣根を超えて、ひとつのSBUが設定される場合がほとんどです。これは、SBUは事業戦略や製品ごとに設定される事業単位であり、事業戦略や売り出す製品を明確に定める多角的戦略と親和性があるためです。
02SBUの歴史
SBUの起源は、アメリカ合衆国にあるGE(ゼネラルエレクトリック)社です。当時の社長であったフレッド・J・ブーチ(Fred J. Borch)氏は、多角的戦略に取り組んでいましたがなかなか成果を上げられずにいました。そこで多角的戦略の成功には組織改編が必要だと考えて、1970年に入ってから、SBUの考え方をもとに組織改編を行ったのです。
GE社でのSBU実施内容
当時、GE社のなかには170を超える製造部門が設置されていましたが、製品や事業戦略ごとに43のSBUに集約しました。そして、それぞれのSBUに、経営上の責任を負う管理者を設けたのです。その結果、経営層が資源配分や戦略を考える対象が170から43に減って、マネジメントにおける負担が激減したのです。
03SBUの分類基準
どのような基準でSBUを分類するのかは、企業によって異なります。しかし、多くの場合は商品特性や購買サイクルの長さ、方向性の違いといった基準でSBUが分類されます。それでは、SBUは具体的にどのような基準で分類されているのか、詳しく見ていきます。
- 1.価格帯や用途といった商品が持つ特性
- 2.購買サイクルの長さ
- 3.販売チャネルの違い
- 4.ビジネスモデルの違い
- 5.競合他社の有無
- 6.戦略における方向性の違い
1.価格帯や用途といった商品が持つ特性
SBUは、価格帯や用途といった、商品が持つ特性を基準に分類されることがあります。例えば、1万円以内で購入できる低価格・中価格帯や1万円以上の高価格帯という基準を設けて、自社製品をいくつかのSBUに分類するケースです。また、毎日使用する消耗品や、1年に数回程度、特別なときに使用するアイテムなど、同じ用途ごとにSBUをわけることも一例として挙げられます。
そのほかにも、通常購入できる標準品や、特別注文が必要な特注品、顧客がカスタマイズできるカスタム品といった視点、ハードかソフトかという違いから、SBUを分類する場合もあります。
2.購買サイクルの長さ
購買サイクルは、顧客が製品を認知し興味を持ち、購入を検討した後、購入に至るまでの過程を指します。一般的に、商品の価格が高ければ高いほど、購買サイクルは長くなりやすいと言われています。これは、高額な商品を購入する場合、購入までの検討期間が長くなる傾向にあるためです。
SBUを分類するうえでは、こうした購買サイクルの長さによって、製品をいくつかのグループに区分することがあります。
3.販売チャネルの違い
SBUは、販売チャネルの違いによって分類される場合があります。販売チャネルとは、自社製品を販売する経路のことで、顧客が製品を購入する場でもあります。例えば、企業直営店や代理店といった実店舗のほか、通信販売サイトやアフィリエイトサイトが挙げられます。また、そのほかにもテレビショッピングや訪問販売、電話営業も販売チャネルの一例です。
4.ビジネスモデルの違い
ビジネスモデルとは、製品やサービスを提供して、収益を得る仕組みです。SBUでは、ビジネスモデルの違いに基づいて分類が行われるケースがあります。
例えば、BtoCかBtoBかという違いのほか、月額料金制で一定の価値を提供するサブスクリプションモデル、仕入れ商品を販売する小売モデルといったビジネスモデルによって、SBUが分類されます。そのほか、自社で生産した製品を販売する販売モデル、製品を貸し出しするレンタルモデルなどが、ビジネスモデルの一例です。
5.競合他社の有無
現在、競合他社が存在するかどうか、また今後新規参入する企業が出てきそうかどうか、といった基準でSBUが分類される場合があります。競合他社がいない場合には、ある程度自由な戦略策定が可能ですが、そうでない場合には競合他社との差別化を測るための戦略を練る必要があります。
こうした理由から、競合他社がいるかどうかによって事業戦略の自由度が変わるため、競合他社の有無がSBU分類の基準になるのです。
6.戦略における方向性の違い
SBUは、事業戦略が同一の事業単位です。そのため、事業戦略における方向性が合致する場合、ひとつのSBUとしてまとめられることがあります。例えば、原価率を低下させることや高価格帯製品の売上個数をアップさせることなどが、事業戦略における方向性の一例です。同じ製品を扱っていなくても、事業戦略の方向性がある程度同じ場合、同一のSBUに分類されるケースもあります。
04SBUによる多角化戦略のメリット
SBUは、新規事業を行う多角化戦略で活用される場合が多く見受けられます。SBUによる多角化戦略には、リスク分散の実現や経営資源の共有といったメリットが期待されます。ここでは、SBUによる多角化戦略のメリットを解説していきます。
- 1.BUを導入した手法より戦略性が高まる
- 2.リスク分散が実現する
- 3.BUを超えて経営資源を共有できる
1.BUを導入した手法より戦略性が高まる
物理的な事業単位であるBUと比較して、同一の事業戦略や製品ごとに区分されたSBUのほうが戦略性の高さに優れています。SBUは単独で事業戦略の策定や遂行ができるため、多角化戦略にSBUを導入することでスピード感のある意思決定が実現します。その結果、急速に変化する市場にも迅速に対応できるようになり、ビジネスチャンスを逃しにくくなります。
2.リスク分散が実現する
企業経営においては、技術革新や市場の変化、法令改正といった外的要因によって、大きなリスクに遭遇する可能性があります。しかし、多角化戦略によって事業を複数展開していると、ひとつの事業が倒れてもほかの事業が支えられるようになります。その結果、リスク分散が実現して、経営基盤の安定化を期待できるのです。
3.BUを超えて経営資源を共有できる
SBUによる多角化戦略には、BUを超えて経営資源を共有できるメリットがあります。例えば、人材や原材料のほか、研究開発結果や事業運営のノウハウ、流通経路や広告といった経営資源が挙げられます。SBUによる多角化戦略を導入すると、こうした経営資源を共有できるようになって、シナジー効果の発生および未活用資源の有効活用につながります。
05SBUを導入する際の注意点
SBUを導入することには多くのメリットがある一方で、いくつかの注意点が存在します。SBU導入時には、事業立ち上げのコストがかかることや、企業ブランドが不明瞭になる点に注意が必要です。それでは、SBUを導入する際の注意点を詳しく見ていきます。
- 1.事業立ち上げのためのコストがかかる
- 2.経営が非効率になる場合もある
- 3.企業イメージが不明瞭になることも
1.事業立ち上げのためのコストがかかる
SBUを導入して多角化戦略を行う場合、新規事業立ち上げのためのコストがかかります。既存事業とはまったく異なる事業を展開するため、製品開発やマーケティング、販売活動において多額のコストが発生するおそれがあります。
2.経営が非効率になる場合もある
単一事業だけを運営している場合、製品材料の大量発注や同一設備の利用によって、経営の効率化を図れます。しかし、SBUによる多角化戦略で複数の事業を展開する場合、SBUごとに発注や設備利用を行う必要があります。こうした理由から、単一事業だけを運営するよりも経営が非効率になる可能性もあり得ます。
3.企業イメージが不明瞭になることも
SBUによる多角化戦略では、従来の企業イメージとは異なる事業を展開する場合があります。そのため、既存顧客が抱く企業イメージと実際の企業イメージとが乖離してしまい、本当の企業イメージが不明瞭になるおそれがあります。多角化戦略に伴って新たなブランドを創立し、既存顧客と新規顧客に与えるイメージのすみ分けを行うことがおすすめです。
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06まとめ
事業戦略や製品ごとに、グループわけを行うSBU。急速に変化する昨今の社会情勢においては、SBUによる多角化戦略を行い、リスク分散と新たな価値の創出を実現する必要があります。SBUの分類基準は企業によってさまざまですが、製品特性やビジネスモデルの違いによって分類されるケースが多くなっています。本記事で紹介した分類基準を参考にして、自社におけるSBUの分類を考えてみてはいかがでしょうか。