リストラクチャリングとは?意味からメリットまで詳しく解説

リストラクチャリングは会社経営をする上で経営者が行う施策だということは理解できるけれど、具体的にどのようなことをするのかまではイメージがわかないという人も多いのではないでしょうか。 この記事ではリストラクチャリングの意味から、行うメリットまで詳しく解説します。
- 01.リストラクチャリングとは?
- 02.リストラクチャリングの方法
- 03.リストラクチャリングを行うメリット
- 04.リストラクチャリングを行うデメリット
- 05.企業におけるリストラクチャリングの好事例
- 06.まとめ
01リストラクチャリングとは?
リストラクチャリングとは英語のrestructuringからできた言葉で、広義では政治や経済、社会全体を根本的な部分から再構築するという意味を持ちます。経営においては企業の価値を高めることを目的に、企業の改革や事業の再構築に取り組むことを指すのです。
具体的には各事業の収益性・安全性・成長性などを見直して不採算事業を整理し、高収益が見込める事業に経営資源を集中させ、全社の収益構造を改革していきます。リストラクチャリングは自社の経営部門で行う場合もあれば、外部の専門家を招いて行うこともあります。
リストラクチャリングとリエンジニアリングの違い
リストラクチャリングとリエンジニアリングはどのように違うのでしょうか。リエンジニアリングも経営の立て直しのための施策の1つですが、ビジネスの過程に目を向けて再構築することを意味します。例えば企業に不採算事業があった場合、その事業自体を整理するのがリストラクチャリングで、不採算になった原因を考え管理方法や業務プロセスを見直すのがリエンジニアリングです。
リストラクチャリングとリストラの違い
リストラクチャリングとリストラはどのような違いがあるのでしょうか。リストラは元々日本ではリストラクチャリングを略した言葉でしたが、バブル崩壊を背景に余剰人員の整理や解雇を意味する言葉として用いられるようになりました。ネガティブなイメージが強く、本来の意味である企業の改革や事業の再構築として受け取られることは少ないでしょう。
02リストラクチャリングの方法
リストラクチャリングを行う方法には、主に以下の4つを挙げることができます。それぞれの詳細な方法について解説します。
- 1.財務リストラクチャリング
- 2.事業リストラクチャリング
- 3.業務リストラクチャリング
- 4.M&Aによるリストラクチャリング
1.財務リストラクチャリング
財務リストラクチャリングは、企業の活動によって得られた収入から支出を差し引いた金額であるキャッシュフローを改善するのを目的として行われます。 具体的には財務諸表の1つである貸借対照表(B/S)で借方に資産(アセット)、貸方に負債(デット)、純資産(エクイティ)が記載されているので、それぞれの数値を見直します。 資産・負債・純資産におけるリストラクチャリングの方法は次の通りです。
財務リストラクチャリングの種類 | 方法 |
資産(アセット)リストラクチャリング | ・長期保有している有価証券を売却して現金にする ・不要な不動産を売却して現金にする |
負債(デット)リストラクチャリング | ・債権放棄をする ・リスケして負債利子の条件緩和をする ・DPO(債権者が債権を額面以下の価格で第三者に売却した後、債務者が債権を第三者から額面以下で買い取ること)をする ・DES(債務の株式化)をする ・DDS(別条件の債務への変更)をする |
純資産(エクイティ)リストラクチャリング | ・各種ファンドや外部スポンサーが出資を行う ・DESによって負債を資本金に振り替える |
財務リストラクチャリングを行うには高度な会計や財務の知識が必要となるため、外部の公認会計士・税理士・中小企業診断士・財務コンサルタントなどに依頼する場合が多いでしょう。
2.事業リストラクチャリング
事業リストラクチャリングとは複数の事業を行っている企業が各事業を見直し、選択と集中を図ることを指します。具体的には次のようなことを行います。
- ・不採算事業の売却や廃止
- ・高収益や成長が望める事業への経営資源の集中投下
PPM分析などのフレームワークを用いて自社の事業の特徴を見える化し、現状把握をするのもよいでしょう。
3.業務リストラクチャリング
業務リストラクチャリングとは事業内容を改善し売上や利益を増加させることを指します。具体的には次のようなことを行います。
- ・顧客ニーズを踏まえた商品開発
- ・顧客との長期的な関係を築くマーケティング
- ・経費節減
経費節減には人件費の削減(リストラ)も含まれますが、法律的な正当性が求められるため専門家のアドバイスを受けながら行うのが望ましいでしょう。
4.M&Aによるリストラクチャリング
M&Aとは企業や事業の合併や買収の総称ですが、リストラクチャリングの手法としても行われます。具体的には不採算事業を売却するのですが、これにより企業として事業構造の改革ができ、売却した資金も得られるのです。
03リストラクチャリングを行うメリット
リストラクチャリングを行うメリットには、以下の3つが挙げられます。それぞれの詳細について解説します。
- 1.利益率を改善できる
- 2.利益率の良い事業に資金や人材を集中できる
- 3.負債によって生じる負荷が軽減できる
1.利益率を改善できる
事業リストラクチャリングで不採算事業を売却したり、リストラで余分な人件費を削減したりすると、企業全体の利益率を改善することができます。
利益率が上がれば事業拡大や負債の早期完済も見込めるため、企業として将来的な成長に向かって進んでいくことができるでしょう。リストラは日本においてはネガティブなイメージがあるため、心理的な抵抗感を持つ人も少なくありませんが、リストラをしないことで企業全体が共倒れになるより、リストラをして残された優秀な人材の雇用を守るという考え方もあります。 慎重な判断が必要とされますが、将来的にメリットが大きいことも意識しましょう。
2.利益率の良い事業に資金や人材を集中できる
事業リストラクチャリングを行うと、高収益や成長が望める事業に資金や人材を集中させられるため、より効率の良い経営をすることができます。またM&Aリストラクチャリングなどで得た資金を収益性の良い事業に投入することで、よりその事業を大規模に展開することも可能となるでしょう。
3.負債によって生じる負荷が軽減できる
負債(デット)リストラクチャリングを行うと、負債による負荷が軽減されるので企業がより健全に成長できるようになります。負債についてはなかなか社外の人に相談しにくい面もありますが、信頼できる専門家を見つけ、早期に解決を図るのが望ましいと言えるでしょう。
04リストラクチャリングを行うデメリット
メリットの多いリストラクチャリングですが、実行前にデメリットにも目を向けておく必要があります。以下の2つについて、解説します。
- 1.将来性のあるビジネスを止めてしまう可能性がある
- 2.従業員のモチベーションが低下する
1.将来性のあるビジネスを止めてしまう可能性がある
新規事業はどのような内容でも黒字化するまでには一定の期間が必要となりますが、現在赤字であるということだけに目を向けて事業リストラクチャリングを行うと、将来性のある事業まで止めてしまうことにつながりかねません。
新規事業が革新的なビジネスアイデアや技術に基づいたものであれば、それが顧客のニーズに合致したタイミングで莫大な利益を企業にもたらすことになるでしょう。 事業リストラクチャリングをする際は、将来得られるはずの利益を失わないようにするためにも、どの事業から撤退するのかは慎重に選ぶ必要があるということです。
2.従業員のモチベーションが低下する
日本においてはリストラのネガティブなイメージが広く浸透しているため、従業員に丁寧に説明をしないとリストラクチャリングを行おうとしているにもかかわらず、人員整理だけをしようとしているかのように誤解されることもあるでしょう。これにより従業員全体のモチベーションが低下してしまうと、リストラクチャリングをしてもかえって業績が悪化する場合があります。
05企業におけるリストラクチャリングの好事例
日本レーザー株式会社は1968年設立のレーザー機器専門商社ですが、1994年に債務超過に陥りました。この時親会社である日本電子からの指示で社長に就任した近藤宣之氏は、1年で日本レーザー株式会社の黒字化に成功します。具体的に行われたのは以下のような施策です。
- ・人件費等の削減
- ・雇用を守ることによる従業員のモチベーション維持
- ・MEBOを使った企業統治形態の変更と従業員の株主化
- ・成果主義への評価制度の見直し
- ・企業理念を重視した経営
近藤氏が経営の黒字化に成功したのは、若いころのリストラクチャリングの経験を活かして経営再建をしたためです。1970年代に近藤氏が勤務していた日本電子が、資本金32億円の会社であるのにもかかわらず38億円もの赤字を抱えることになってしまった時、労働組合の委員長だった近藤氏は大規模な退職面談を担当します。またその後も米国支社において企業の破綻処理や経営改革を担い、これらの経験から近藤氏は経営の要素である「ヒト」「カネ」「モノ」「情報」の4つを同列に考えるのは間違いで、人間こそが企業の成長の原動力だという考えに至ります。近藤氏はこの考えを基に経営を続け、企業の危機を乗り越えました。
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06まとめ
リストラクチャリングとは経営において企業の価値を高めることを目的に、企業の改革や事業の再構築に取り組むことを指します。 この記事も参考にして、よりリストラクチャリングへの理解を深めてみてください。