公開日:2022/12/21
更新日:2023/02/02

ターンアラウンドとは?注目される背景から行うメリットまで詳しく解説

ターンアラウンドとは?注目される背景から行うメリットまで詳しく解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

企業が経営困難に陥った際、ターンアラウンドという言葉がよく使われますが、どのような意味を持つのかよくわからない人も多いでしょう。 この記事ではターンアラウンドが注目される背景から、企業がターンアラウンドを行うメリットまで詳しく解説します。

 

01ターンアラウンドとは?

「turn around」は本来方向転換という意味ですが、ビジネスにおいては「事業再生」「経営改革」を意味し、業績不振の事業を改革し収益を上げられるように立て直すことで、企業の価値を高めることを指します。事業構造、組織構造、収益構造といった企業の根本的な課題に目を向け、部門を問わずさまざまな面を改善するために中長期的なプランを立てて行われるのが特徴的だと言えるでしょう。

ターンアラウンドとワークアウトの違い

「Work out」とは「価値のない仕事をはじき出す」という意味で、1980年代後半にゼネラル・エレクトリック(GE)のジャック・ウェルチ元会長によって提唱された組織運営のための手法です。ワークアウトは「境界のない企業」(全員が一致団結するのに障害のない企業)を実現するのを目的として不要な仕事を捨て、短期的なプランを立てて課題解決をするのが特徴的だと言えるでしょう。

ターンアラウンドとワークアウトはどちらも企業が経営困難に陥った際に経営を立て直すための手法ですが、ターンアラウンドは企業の持つ根本的な課題解決のため長期的に行われるのに対し、ワークアウトはリストラや資産売却などで短期間での収益改善を目指すのが大きな違いだと言えます。

ターンアラウンドと企業再生の違い

企業再生とは企業が債務超過を起こしたり、収支が継続して赤字であったりして存続が難しい状況に陥っている時、その原因を排除して健全な経営状態に戻すことを指します。悪化した資金繰りを正常な状態に戻すため、金融機関から融資をしてもらったり、債権者に債務免除を依頼したりすることもあるでしょう。

ターンアラウンドは前述の通り和訳すると「事業再生」ですが、これには財政的に破綻している事業の立て直しや、立ち行かなくなったビジネスモデルの再構築など様々な手法が内包されます。いずれの言葉も法的な定義が明確にあるものではなく、同じ意味で使用されることもあるため、そこまで厳密に使い分けされていません。

 

02ターンアラウンドマネージャーとは?

ターンアラウンドマネージャーとは(turnaround manager)は経営学の用語でTAMとも呼ばれ、業績の悪化などで危機に直面している企業の再生を請け負う人のことを指します。

ターンアラウンドマネージャーとして仕事をするのに役立つ資格は次の3つです。

  • ・ターンアラウンドマネージャー(TAM)
  • ・事業再生アドバイザー(TAA)
  • ・認定企業再生士(CTP)

ターンアラウンドマネージャーは、企業の経営・会計・財務・法律などの深い知識を持ち、ターンアラウンドやワークアウトなどさまざまな手法を用いて企業を健全な経営へと導いていくのです。

▶︎参考:経済産業省認可団体企業再建・承継コンサルタント協同組合「ターンアラウンドマネージャー養成講座」

▶︎参考:一般社団法人金融検定協会「事業再生アドバイザー認定試験(TAA)」

▶︎参考:一般社団法人日本ターンアラウンド・マネジメント協会「認定企業再生士(CTP)資格について」

 

03ターンアラウンドが注目される背景

ターンアラウンドが注目されるのには、どのような背景が存在するのでしょうか。主な背景3つについて、解説します。

  • 1.バブル経済の崩壊
  • 2.企業再生ファンドの増加
  • 3.新型コロナウイルスの影響

1.バブル経済の崩壊

1990年代のバブル経済の崩壊により、多くの企業が倒産したり、負債を抱えたりして方向転換を余儀なくされました。早急な経営再建が求められる一方で、IT技術の発達やグローバル化の影響があり、企業にとっての経営は少しずつ複雑化し、それが経営再建にブレーキをかけていったのです。そのため企業の経営・会計・財務・法律についての知識を用いて、企業を再建にコミットするターンアラウンドマネージャーへのニーズが高まることになったというわけです。

2.企業再生ファンドの増加

企業再生ファンドとは、投資家から集めた資金を使って経営不振となった企業を立て直すのを目的としたファンドです。

投資家が企業再生ファンドへの投資を行うにあたって重要視するのはオリジナリティのある優秀な技術を持っていたり、将来性の高い事業を行っていたりするのはもちろんですが、ターンアラウンドやワークアウトなどの再生手法を滞ることなく行えるかどうかも含まれます。

企業再生ファンドは経営不振の企業に対して投資するためリスクが大きいのですが、再生できれば多額の利益を獲得できるのが特徴的だと言えるでしょう。

3.新型コロナウイルスの影響

新型コロナウイルスの感染拡大を機に社会が変革し、新たな常識が定着するニューノーマルが起こりましたが、企業においてもそれは例外ではなく、それまで行ってきた経営戦略が通用しなくなりました。

このため前例のない危機に直面し、解決策を見出せない企業に対し救いの手を差し伸べられる存在のターンアラウンドマネージャーに注目が集まったと言えるでしょう。

 

04ターンアラウンドを行うメリット

ターンアラウンドを行うメリットには、以下の3つが挙げられます。以下で、詳細について確認していきましょう。

  • 1.売上不振から抜け出せる
  • 2.抜本的な経営改革ができる
  • 3.従業員の意識改革につながる

1.売上不振から抜け出せる

ターンアラウンドにおいては業績不振の事業の改革を行うため、売上不振から抜け出すことができます。ターンアラウンドをすることで売上が上がらない根本的な原因や解決策を見出し、将来に向けた成長戦略を策定できるでしょう。

2.抜本的な経営改革ができる

ターンアラウンドでは資金や採算管理体制の再構築、業務プロセスの改善、人事制度の再構築なども施策として行うため、抜本的な経営改革が望めます。 例えば収益を上げるためには全従業員がコスト意識を持つことが大切ですが、ターンアラウンドにおいてはコストカット分析の不実施といった現状を改善し、経理以外を担当する従業員にもコスト意識を持ってもらえるようにします。

またAIやIoTを用いた効率的な業務システムを導入したり、ターンアラウンドが行われた後の体制を踏まえた人事制度を構築したりすることで事業の成長が見込めるようになり、健全な経営につながっていくのです。

3.従業員の意識改革につながる

現状維持バイアスとは感情的な要因で認知や意志決定がゆがむ感情バイアスの1つで、変化することを不安に感じ現状維持を望む心理傾向を指しますが、企業においては経営不振の原因となる場合があります。 企業文化として慣習ばかりを大切にしたり、現状維持の姿勢を貫いたりしていると現状維持バイアスに囚われ、企業全体が新しいビジネスアイデアやビジネスモデルを生み出しにくくなってしまうのです。

ターンアラウンドはターンアラウンドマネージャー1人の力ですることではなく、従業員全員が当事者意識を持って取り組む必要があるため、会社全体が慣習的な考えをやめるきっかけとなるでしょう。

 

05企業におけるターンアラウンドの事例

日本においても、ターンアラウンドに取り組む企業はいくつかあります。以下で、3社の例を挙げて解説します。

日本マクドナルド株式会社

日本マクドナルド株式会社に対し長年安定した経営を続けている企業というイメージを持つ人も多いかもしれません。しかし2014年7月に起きた中国メーカー製の期限切れチキンナゲット販売問題や、2015年1月の異物混入事件で顧客離れが起き、2015年12月期には過去最大の赤字となってしまいました。

2013年8月に日本マクドナルドの社長に就任したサラL・カサノバ氏はこれに対して、2015年の間全国のお店を訪問して顧客からのヒアリングを行い、「ビジネスリカバリープラン」を策定・実行したのです。ビジネスリカバリープランでは品質管理の向上、食の安全情報提供の強化、新たな低価格商品の導入などを行い、2020年12月期の営業利益において9年ぶりに最高益を記録しました。

▶︎参考:日本マクドナルドホールディングス「平成27年12月期 通期業績予想の発表 および ビジネスリカバリープランに関するお知らせ」

日産自動車株式会社

日産自動車では1991年以降、8年間で7回も赤字決算となっています。そのため当時の塙社長は自社の努力だけではどうにもできないと考え、カルロス・ゴーン氏を社長に迎えてターンアラウンドに取り組みました。

カルロス・ゴーン氏は日産リバイバルプランを策定し、その中でコスト削減、ノンコア資産の売却といった過去の清算、商品ライン再編、研究開発投資や新型モデル投入といった未来のための準備を行ったのです。 3か年での計画は成功し、日産自動車株式会社は2001年度末には当期純利益が3,700億円、 営業利益率7.9%、有利子負債が4,317億円にまで減少しました。

▶︎参考:岡山大学経済学会雑誌「中小企業におけるターンアラウンド戦略」

カネボウ株式会社

カネボウ株式会社は最終利益が赤字で債務超過に陥っているのが原因で、バブル崩壊以降粉飾決算を繰り返しました。 2004年には、有用な経営資源を持ちながら大きな債務を背負っている企業を支援するのを目的に設立された株式会社産業再生機構の支援を受けるようになったため、経営破綻を免れ2007年に解散することができたのです。 カネボウの事業を承継した会社はクラシエに商号変更し、現在でも事業を続けています。


 

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06まとめ

ターンアラウンドとは業績不振の事業を改革し収益を上げられるように立て直すことで企業の価値を高めることを指し、ターンアラウンドマネージャーとはターンアラウンドやワークアウトなどさまざまな手法を用いて企業を再生させる人のことです。

もし自社が経営破綻しかねない状況になっていたり、債務超過で苦しい状態だったりしてもすぐに諦めるのではなく、ターンアラウンドを少しずつでも進めて健全な経営に戻れるようさまざまな施策に取り組んでみてください。

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