デジタルスキル標準とは?求められる背景やスキル項目から学習項目について解説
デジタルスキル標準(DSS)とは、経済産業省が定めたDX化が求められる現代で求められるスキルや指針などを指します。急速に発展していくデジタル社会で、ビジネスパーソンはどのようなデジタルスキルを身につけていけばいいのか、企業がどのようなデジタルスキルを持った人材を育成すれば良いのかを考える担当者は多いでしょう。この記事では「デジタルスキル標準」が定めた内容についてまとめています。
- 01.デジタルスキル標準とは
- 02.デジタルスキル標準が定義された背景
- 03.デジタルスキル標準の対象者
- 04.デジタルスキル標準の分類
- 05.デジタルスキル標準の学習項目例
- 06.Schoo for BusinessのDX研修
- 07.まとめ
01デジタルスキル標準とは
デジタルスキル標準とは、DX人材育成に必要な素養やスキルをまとめた指標のことです。 社会のデジタル化が急速に進み、デジタル技術によって事業モデルや組織体制などが大きく変革しようとしています。こうしたDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進していくためには、DXに通じた人材の育成が必要不可欠です。
2022年12月、経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、「デジタルスキル標準」を策定しました。
これからのビジネスパーソンがDXを活用していくための基礎となる指針「DXリテラシー標準(DSS-L)」と、DXを推進していく専門技術者の役割や習得すべき能力やスキルを示した「DX推進スキル標準(DSS-P)」を通じて学習方針を規定しています。
DXリテラシー標準(DSS-L)とは
「DXリテラシー標準((DSS-L)」とは、経営者を含むすべてビジネスパーソンが身につけるべきマインド・スタンスや知識・スキルを示す学びの指針のことです。 一人ひとりがDXリテラシーを身に付けることで、これからの社会の業務改革や新たなビジネスアイデアの基礎となっていきます。 DX化が急速に進み続ける社会でビジネスパーソンが活躍していくためには、それぞれが自分の仕事でDXを活用できるようにならなければなりません。企業自体もDXに対応していくためにも、従業員のDXの理解やスキル向上が必要になります。
DX推進スキル標準(DSS-P)とは
DX推進スキル標準(DSS-P)とは、企業のDXを推進する専門技術者となる人材の役割や習得すべき知識・スキルを示したものです。 DX推進スキル標準をもとに、これからの人材採用や育成、またリスキリングの促進につなげていき、実践的な学びの場を創出することや、能力・スキルの見える化を実現することなどが狙いとなっています。
DX推進スキル標準では、DXを推進するための中心的な役割を担う人材を5つの類型にわけて定義しています。
- ビジネスアーキテクト
- デザイナー
- データサイエンティスト
- ソフトウェアエンジニア
- サイバーセキュリティ
このように分類し定義することで、自社組織に必要な人材やポジションを把握するのにも役立ちます。
ITスキル標準(ITSS)との違い
デジタルスキル標準はデジタル技術全般をカバーしているのに対し、ITSSはIT専門職に特化しています。また、対応する技術の範囲も異なり、デジタルスキル標準は最新のデジタル技術やトレンドに対応しますが、ITSSは従来からのIT技術に焦点を当てています。加えて、デジタルスキル標準は組織全体のデジタルトランスフォーメーションを促進し、ITSSは個々の技術者のスキル向上とキャリアパスに重点を置いています。デジタルスキル標準とITスキル標準(ITSS)は、どちらも技術者のスキルとキャリアパスを体系的に整理・評価するための枠組みですが、その目的や範囲、内容にはいくつかの違いがあります。
02デジタルスキル標準が定義された背景
近年、国内のICT化、DX化が推進される中で、デジタルスキル標準が定義された背景としては何が挙げられるのでしょうか。その背景となった以下の2つについて解説します。
- ・AIによるDXの加速
- ・デジタル人材の不足
AIによるDXの加速
近年、ChatGPTを代表とする生成AIは目覚ましい進歩を遂げており、国民の生活や企業活動に大きな影響を与えるようになっています。 事業への活用も急速に進んでいることで、生成AIには生産性向上や社会課題の解決に資する可能性が期待され、DX推進には生成AIを効果的かつ安全に利用するスキルが求められるようになっています。 ビジネスパーソンに求められるデジタルリテラシーやデジタルスキルが、大きく変化しているのと同時に、それらを身につける重要性もさらに増してきている状況があります。
デジタル人材の不足
経済産業省がデジタルスキル標準を発表し、人材の育成に取り組む背景には、日本のデジタル人材不足が圧倒的に不足している状況があります。
スイスの国際経営開発研究所(IMD)が発表した▶︎『世界デジタル競争力ランキング2023』において、日本は63カ国中32位でした。
特に「人材/デジタル・技術スキル」の競争力は、63カ国中62位と非常に低い評価となっていて 日本のデジタル化が進まない大きな要因であることが明らかになっています。
独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が発表した▶︎『DX白書2023』によると、日本企業の84%がDX人材の不足を感じているとしています。 こうした状況にありながら、半数以上の企業では社員のリスキリングの実施が進んでおらず、デジタル人材の育成は急務となっています。
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03デジタルスキル標準の対象者
次に「DXリテラシー標準」と「DX推進スキル標準」がそれぞれが想定している、学びの対象者について解説します。 主に5つのDX推進人材にわけて、それぞれに求められる知識、スキルをそれぞれ深掘りします。
ビジネスパーソン全体
DXリテラシー標準では、デジタル化が進む社会の中で企業の競争力を高めていくために取り組むビジネスパーソン全てを対象としています。 身につけておくべき考え方や基本的な知識を「マインド・スタンス」「Why」「What」「How」という4項目に分けて提示しています。
5つのDX推進人材
DX推進スキル標準では、DXを推進するための中心的な役割を担う人材を、5つの類型に分けて定義しています。
- ・ビジネスアーキテクト
- ・デザイナー
- ・データサイエンティスト
- ・ソフトウェアエンジニア
- ・サイバーセキュリティ
そして、それぞれに求められる知識やスキルとして以下の5つを挙げています。
- ・ビジネス変革
- ・データ活用
- ・テクノロジー
- ・セキュリティー
- ・パーソナルスキル
それぞれの人材、スキルについて解説します。
ビジネスアーキテクト
ビジネスアーキテクトとは、企業経営や事業を推進していくうえで必要なDXの戦略を考え、全体を設計する役割を持った人材です。 ビジネスアーキテクトは、担当分野によって、「新事業開発」「既存事業の高度化」「社内業務の高度化・効率化」に分類されます。
デザイナー
サービスを提供する側の開発の意図とユーザーが求めているものを理解し、わかりやすく使いやすいシステム・アプリケーションをデザインする人材のことです。 「グラフィックデザイナー」「UX/UIデザイナー」「サービスデザイナー」に分類されます。
データサイエンティスト
データサイエンティストは、DXを活用していくために大量のデータを収集・分析し、ビジネスに活かす仕組みを構築していく人材です。またデータ分析した結果をもとに経営にかかわる意思決定のサポートをしていきます。 「データエンジニア」「データサイエンティスプロフェッショナル」「データストラテジスト」に分類されています。
ソフトウェアエンジニア
ソフトウェアエンジニアは、DX推進に必要なシステムやソフトウェアを開発する技術者です。ソフトウェアの設計・開発・保守を通じて、企業のDXをサポートする役割です。 ソフトウェアエンジニアは、「フィジカルコンピューティングエンジニア」「クラウドエンジニア/SRE」「バンクエンドエンジニア」「フロントエンドエンジニア」に分けられています。
サイバーセキュリティ
サイバーセキュリティは、外部からのサイバー攻撃からシステムやデータを守る人材です。企業のシステムやネットワーク分析し対策が求められます。 サイバー攻撃を受けた場合に備えて、対応策の計画・実行も求められます。 「サイバーセキュリティエンジニア」「サイバーセキュリティマネージャー」に分類されています。
04デジタルスキル標準の分類
DXリテラシー標準とDX推進人材では、それぞれ習得すべき知識やスキルが分類されてまとめてあります。
DXリテラシー標準の4分類
DXリテラシー標準は、すべてのビジネスパーソンが身につけるべき知識やスキルを「マインド・スタンス」「Why」「What」「How」という4項目に分類して示しています。 さらに各項目に細かな内容や行動例、学習項目例が規定されています。
マインド・スタンス
「マインド・スタンス」では、急速に変化する社会において、変化に対する積極的な姿勢や、失敗を恐れずに新しいことに挑戦する意識など、新しい価値を生み出していくための基礎となる考え方や姿勢を規定しています。企業が持続的に成長していくために従業員に求められる意識や行動の指針となります。
Why
「Why」には、なぜDXが必要なのかを理解するために、身につけておくべき知識を定義しています。主な要素として、「ビジネス目標の理解」や「社会的意義の認識」、「変革の必要性の理解」などが挙げられます。何のためにDXを行うのか、その背景や目的を明確にすることで、全ての関係者が共通の目標に向かって進むことができるのです。
What
「What」には、DXにはどのようなデータ・技術があるのかという、知っておくべき基本的な事項を示しています。ビジネスにおいて活用されているAI、IoT、ビッグデータ、クラウドコンピューティングなどの最新技術についての基本的な知識やDX推進に使用される具体的なツールやプラットフォームの特徴と用途などが定義されています。
How
「How」には、DXに関するデータ・技術を具体的にどのように利用するのか、その方法や活用事例、留意点などが定義されています。プロジェクトマネジメントや迅速かつ柔軟に対応するための開発手法、データを活用して意思決定を行い、PDCAサイクルを回す方法などが挙げられます。
DX推進スキル標準の5分類
「DX推進スキル標準」では、DX推進人材が共通して身につけるべき知識・スキルを以下の5つに分類し、その内容を細かく規定しています。これらの5分類を理解し、バランスよくスキルを身に付けることで、効果的なDX推進が可能となり、各分野が相互に関連し合い、総合的にDXを成功に導く基盤を形成するのです。
- .
- ・ビジネス変革
- ・データ活用
- ・テクノロジー
- ・セキュリティー
- ・パーソナルスキル
ビジネス変革
ビジネス変革を実現するために求められるスキルをまとめたものです。 ビジネスモデルの構築から戦略の立案、実行のための企画・マーケティングやデザインスキルなどを規定しています。DXの最終目標はビジネス価値の創出であり、そのためにはビジネス変革のスキルが不可欠であるといえます。
データ活用
DXを推進していくうえで求められる、データ活用のテクノロジーに関する知識をまとめて定義しています。具体的には、データ活用の技術やAIに関する知識、統計分析について示しています。データ駆動型の意思決定は、DXの成功に不可欠であり、データ活用能力はその基盤といえるでしょう。
テクノロジー
ソフトウェア開発の手法やフィジカルコンピューティング、先端技術、テクノロジートレンドといった知識をまとめたものです。これらの知識は、技術の導入を進めるにあたって必要になってくるものです。適切な技術選択とその効果的な利用は、DX推進の成否を左右します。
セキュリティー
安全にDXを推進していくためには、情報セキュリティ体制の構築・運営・マネジメントに関する知識やスキルは非常に重要です。 DXを推進していくためには外すことができない必須のスキルで、セキュリティの欠如は、DXの進行を妨げる大きなリスクとなり得ます。
パーソナルスキル
プロジェクトを成功に導くために必要な、リーダーシップやコラボレーション能力、チーム運営能力など様々なパーソナルスキルが必要になります。「コミュニケーション力」や「問題解決」、「リーダーシップ」など、ここではそれらのスキルについて項目ごとにまとめられており、DX推進には非常に重要です。
05デジタルスキル標準の学習項目例
デジタルスキル標準では、それぞれの分類にあわせた学習項目を規定しています。「DXリテラシー標準」「DX推進スキル標準」が掲げる学習項目について、例をあげて紹介します。
DXリテラシー標準の学習項目例
DXリテラシー標準では「マインド・スタンス」「Why」「What」「How」のそれぞれについて、学習項目を示しています。 例えば「What」の項目にある「スキル・学習項目概要」には、学習のゴールとして「データやデジタル技術に関する最新の情報を知り、その発展の背景への知識を深める」としてデータの価値や取扱い方効果的な利用法が示されています。
そして、それを活用するデジタル技術として「AI」「クラウド」「ソフトウェア・ハードウェア」「ネットワーク」が学ぶべき項目とされています。
DX推進スキル標準の学習項目例
5つのDX推進人材は、さらに15のロールに細分化し、求められる知識やスキルの違いを示しています。役割を詳細に示しているため、これから身につけていくべきスキルが明確になります。 例えば、データサイエンティストは、「データエンジニア」「データサイエンティスプロフェッショナル」「データストラテジスト」に分類され、データエンジニアには、データ活用基盤設計やデータ活用基盤実装・運用のスキルが必要とされています。
業務別に詳細な区分をすることで、自社に必要なのはどういったスキルを持つ人材なのかを把握しやすくする狙いがあります。
06Schoo for BusinessのDX研修
オンライン研修/学習サービスのSchoo for Businessでは約8,500本の講座を用意しており、DXほか様々な種類の研修に対応しています。
受講形式 | オンライン (アーカイブ型) |
アーカイブ本数 | 8,500本 ※2023年5月時点 |
研修管理機能 | あり ※詳細はお問い合わせください |
費用 | 1ID/1,650円 ※ID数によりボリュームディスカウントあり |
契約形態 | 年間契約のみ ※ご契約は20IDからとなっております |
DX研修では、診断結果から自動で学習内容を推奨してくれる機能だけでなく、実務で使えるスキルを身につける3ヶ月の学習プログラムまで用意しており、組織全体のDXスキルを底上げすることが可能です。
特長1. DXスキルを診断・結果に応じて学習のレコメンド
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特長2. 実践的なDXスキルが学べる
Schooの学習動画では、第一線で活躍するビジネスパーソンが講師を務めています。そのため実践的なスキルが身につく研修を実施することが可能です。
また、データ分析・ITリテラシーなどスキル毎にカリキュラムもご利用いただけます。カリキュラム作成に時間を割く余裕が無いという方でも、簡単に研修を開始できます。
※DXカリキュラムの利用に、追加料金は一切かかりません。Schoo for Businessの利用者は無料でこの機能をお使いいただけます。
07まとめ
デジタルスキル標準で規定された知識やスキルの体系は、業種や職種を問わず活用できる非常に汎用性が高くまとめられています。自社でのデジタル人材を育成していく際には、確かな目安となるでしょう。 これからの人材採用や従業員のリスキリング、スキル研修などの参考にしてみてはいかがでしょうか。