目標設定理論とは|現場のモチベーションを上げる目標設定のポイントを解説
目標設定理論は、個々の人材の貢献意欲を高め、成果を最大化する効果的な戦術として活用できる理論です。適切かつ具体的で明確な目標があるとき、人は高いモチベーションをもって仕事に取り組みます。高いモチベーションを維持し、仕事に邁進する風土が根付いた組織は業績を向上させ、大きな発展を見込める組織として成長していくでしょう。 この記事では、ロックが提唱した目標設定理論をもとに、現場社員のモチベーションを向上させる目標設定のポイントを解説します。
- 01.目標設定理論とは
- 02.目標設定理論の5つの原則
- 03.目標設定理論のメリット
- 04.目標設定理論のデメリット
- 05.目標設定理論の活用方法
- 06.目標設定理論を定着させるポイント
- 07.まとめ
01目標設定理論とは
目標設定理論とは、明確かつ適切な目標がモチベーションに大きく影響を与えるとした理論です。アメリカの心理学者である、エドウィン・ロック氏とカナダの心理学者ゲイリー・レイサム氏が、1960年に発表した論文で提唱されました。 論文のなかで両氏は、以下のことを結論として導いています。
- ・課題の達成に目標設定が不可欠
- ・困難な目標・自発的な目標が、より高いパフォーマンスを発揮させる
- ・動機付けとして有効に機能するのは、目標を受容している場合のみ
明確で測定可能な目標設定と前向きなフィードバックが、貢献意欲とモチベーションを高め、組織としての生産性や満足度の向上につながるとしています。
02目標設定理論の5つの原則
モチベーションを高める効果的な目標を設定するには、いくつかのポイントがあります。以下に挙げる5つの要素を満たすことで適切な目標となり、高いパフォーマンスを発揮できるのです。
- ・明確で具体的であること
- ・ある程度の達成が困難であること
- ・意欲的に取り組めるものであること
- ・実現可能なものであること
- ・適切なフィードバックがあること
詳しくみていきましょう。
明確で具体的であること
目標は曖昧であってはいけません。より明確で具体的に設定する必要があります。数値化できるものは、必ず数値化し期限を設けることが重要です。
例 「売上アップを目指す」 ⇒「今期売上を昨年度実績より5%上乗せする」
「顧客対応を早くする」 ⇒「3ヵ月以内に受付後60分以内の対応を実現する」
このように、数値化し期限を設けることで「そのためにやるべきこと」も明確になってきます。数値化が難しい場合は、「目標達成した状態」を可能な限り具体的に言語化するとよいでしょう。
ある程度の達成が困難であること
ロック氏とレイサム氏は、論文のなかで「困難な目標ほどモチベーションを高め、パフォーマンスが向上する」としています。高すぎる目標は逆効果となる場合がありますが、簡単に達成できる目標であれば、必死に取り組むことはなくなります。 現状では達成困難だが、かなりの努力を要することで「なんとか手が届く」といった難易度の目標が適切といえるでしょう。
意欲的に取り組めるものであること
目標は「本気になり意欲的に取り組めるもの」であることも大切です。目標が上司から押し付けられたもので、本人が納得していない場合、意欲をもって取り組むことは難しくなります。この場合、本人の納得を引き出すためには、目標の意味や必要性を熱心に説く必要があります。 達成した状態が、本人にとって魅力的であることも、本気で取り組める大切な要素といえるでしょう。
実現可能なものであること
どう考えても達成が不可能な、非現実的な目標は設定してはいけません。そもそも、不可能な目標に対して、本気で努力しようとする人はいないでしょう。 現状の保有スキルと、周囲の環境を考慮し、かなりの工夫と努力により達成が見込める、現実的な範囲の目標にしなくてはなりません。
適切なフィードバックがあること
フィードバックは目標達成理論において、もっとも重要なポイントです。定期的なフィードバックにより、達成度の進捗確認や達成に向けたアドバイスをおこないます。アドバイスは必要ですが、具体的な指示や強制にならないよう注意が必要です。親しみやすい雰囲気のなか質問を促し、相手から答えを引き出すようにすると理想的です。 こうしたフィードバックを繰り返すことで、常に上司と目標を共有している意識につながり、モチベーションの維持に効果を発揮します。
03目標設定理論のメリット
目標設定理論のメリットは、モチベーションの向上につながるだけでなく、達成に向け無駄なく効率的に仕事を進められる点にあります。具体的には以下の3点が挙げられます。
- ・努力の方向性が明確になる
- ・業務の進捗が確認しやすくなる
- ・目標達成や成果につなげやすくなる
努力の方向性が明確になる
目標を明確にすることで、努力の方向性も明確になります。目標達成した状態から逆算し、達成に必要なタスクの洗い出しと優先順位づけができるためです。達成に向けた道筋と、そのためにやるべきことが明確になれば、無駄なことに労力を割くことはなくなるでしょう。最短距離で目標達成に向かうために何が必要か、努力の方向性が明確になるのです。
業務の進捗が確認しやすくなる
目標が明確であれば、達成に向けたプロセスはより具体的な計画に落とし込めるものです。具体的な計画があれば、それに基づき進捗を確認できるのでしょう。チームの目標達成に向け、個人にタスクを振り分けた場合など、一人の未達によりチーム全体の目標が未達に終わるリスクがあります。 定期的なフィードバックにより進捗を確認し、遅れている場合は適切にフォローするなどの手が打てるのです。
目標達成や成果につなげやすくなる
目標を達成することは、成功体験を得ることです。社員は達成感を得て、士気も向上していきます。こうした積み重ねが、高いモチベーション維持につながり、成果を上げやすい組織に成長する要因となるのです。 そのためには、適切なフィードバックが機能していることが欠かせません。
04目標設定理論のデメリット
一方で目標設定理論にはデメリットも存在します。目標が複数ある場合などは、集中して取り組めず、力が分散し成果が上がらないこともあります。また、高すぎる目標で著しく達成が困難な場合は、逆にモチベーションを低下させることにつながるでしょう。 困難かつ複雑で短期間に達成しなければならないなど、要求がきつすぎる場合は、不正などのリスクの高い行動につながる懸念もあります。 適切な目標設定がなされない場合には、こうしたデメリットが生じるため注意しなくてはなりません。
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05目標設定理論の活用方法
目標設定理論を用いて、社員のモチベーションを引き出すには、以下のポイントを押さえておくと、よい結果に結びつきやすくなります。
- ・目標の意義・目的を共有する
- ・達成に向けた計画を立てる
- ・目標達成に必要な支援をおこなう
- ・適切なタイミングでフィードバックをおこなう
詳しくみていきましょう。
目標の意義・目的を共有する
やみくもに目標を立てるだけでは、モチベーションの向上にはつながりません。なぜその目標に取り組むのか、達成した際にはどのようなメリットが得られるのかを明確にする必要があります。 目標の意義や目的が明確であれば、熱意をもって取り組めるものです。そして、その意義と目的は、周囲の同僚や上司、経営層にまで共有されることが理想です。
達成に向けた計画を立てる
モチベーション高く目標に取り組むには、綿密な計画が欠かせません。計画があれば、やるべきタスクが明確になり、日々の業務に意欲をもって取り組めるようになるためです。 計画を立てる際に有効なフレームワークに「SMARTの法則」があります。
- ・Specific(具体的)
- ・Mesureable(測定可能)
- ・Aggresive(挑戦的)
- ・Realistic(現実的)
- ・Time-bound(期限)
上記5つの単語の頭文字をとったもので、この5つの要素を加味して計画を立てることで、目標達成の可能性は高まります。
目標達成に必要な支援をおこなう
目標を設定する段階で、達成に向けて必要なリソースが不足していないか、確認することも必要です。面談時に不足しているものはないか、確認するとよいでしょう。 不足が生じた場合は、適宜提供するなど臨機応変な対応もおこないます。目標を設定したら相手に任せきりにしてはいけません。タイムリーな支援は、モチベーション維持にも効果的です。
適切なタイミングでフィードバックをおこなう
フィードバックが目標設定理論の重要なポイントであることは前述しました。定期的なフィードバックにより、進捗と方向性を確認することで、安心して達成に向けた努力を継続できるでしょう。 また、タイミングを見計らったフィードバックも有効です。例えば、トラブルを抱えて進捗に遅れが出ている場合に、助け舟を出すといったことです。具体的なアドバイスと励ましを与えることで、モチベーションを低下させることなく、達成に向け取り組めるでしょう。
06目標設定理論を定着させるポイント
社員のモチベーション管理の手法として目標設定理論を用いる場合は、全社員を対象にした制度の導入など、企業としての施策が必要です。 例えば、以下のような施策が挙げられます。
- ・目標管理制度(MBO)を導入する
- ・1on1の導入など面談の機会を意図的に増やす
- ・目標設定・管理に関する研修を実施する
目標管理制度(MBO)を導入する
人事評価に目標管理制度(MBO)を導入することも一つの方法です。MBOでは、期初に上司と業務目標を立て、その期が終了した評価時期に目標の達成度で評価をするものです。 評価時期には結果の通知とあわせて、期中の業務行動のよかった点・改善点を丁寧にフィードバックします。もちろん期の途中でも、細かく進捗確認やアドバイスを面談を通じておこないます。 処遇に直結する人事評価と連動させることにより、目標に対する意識を高められる手法です。
1on1の導入など面談の機会を意図的に増やす
タイムリーかつ適切なフィードバックはモチベーション維持には欠かせません。こうした機会を増やすには、1on1の導入が適しています。1on1とは、1ヵ月もしくは1週間に一度など、高頻度かつ定期的に上司と部下の面談機会を設ける制度です。高頻度でおこなうため、一回の面談時間はおおむね30分ほどに設定する場合が多いようです。 進捗確認がしやすく、部下も抱えている問題があれば相談しやすくなるといった効果が期待できます。
目標設定・管理に関する研修を実施する
目標設定や進捗管理の方法を、研修を通じて教育することも必要です。SMARTの法則を用いた適切な目標や計画の立て方は、知識としてインプットしておかなくてはなりません。管理職に対しても、適切なフィードバックの方法や目標のジャッジ、進捗管理の方法を知識として提供しておきましょう。 とくに人事評価に目標管理制度を導入する場合は、評価者によってムラが出る恐れがあるため、管理者に向けた研修は必須であるといえます。
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06まとめ
目標設定理論は社員のモチベーション管理に有効な手法です。うまく機能させるためには、適切な目標設定のポイントを理解してもらうことが大切です。管理職に向けては、効果的なフィードバックがおこなえるような教育機会も設けましょう。 モチベーションの維持・向上を図るには、フィードバックを通じた上司と部下の「密接な関わり」が欠かせません。両者の関係性が向上することにより、さまざまなよい影響が期待できるのではないでしょうか。