ナレッジマネジメントとは?定義から企業が行うメリットまで詳しく解説

ナレッジマネジメントとは個人や企業が持つ知恵を企業全体で共有する経営手法のことを指します。転職市場が活発化し、企業が得た知識やノウハウを社内に効率良く残したり、継承したりするのが難しくなっている現在、競争力を維持するためにもナレッジマネジメントは企業にとって重要な手法だと言えるでしょう。この記事ではナレッジマネジメントとは何かから企業が行うメリットまで詳しく解説します。
01ナレッジマネジメントとは?
ナレッジマネジメントとは、社員が持つノウハウや経験、また企業が持つ情報や知識を組織全体で蓄積・共有して、企業全体の生産性や市場での競争力、また企業価値を高めていく手法です。 ナレッジマネジメントは企業側から見ると経営における管理領域の1つで、生産管理、販売管理(マーケティング)、財務管理、人的資源管理、情報管理に続く第6の管理領域とも言われます。 ナレッジマネジメントを適切に行うことによって企業では新たな変革を促し、全体的な生産性の向上、または業務改善につなげることができるでしょう。
ナレッジマネジメントの意味
ナレッジマネジメントは、英語で「Knowledge Management」と表記します。日本語では、「知識管理」「知識経営」とも呼ばれ、1990年代初頭に経営学者の野中郁次郎が、同じ経営学者竹内弘高との共著「知識創造企業」の中で提唱しました。 日本発の経営理論として提唱されましたが、現在では、多くの企業がナレッジマネジメントを実施しています。
ナレッジマネジメントが生まれた背景
ナレッジマネジメントが生まれた背景を2つご紹介します。
1.日本の高度経済成長期を支えた要因の1つであるため
日本の企業、その中でも製造業のモノづくりは素晴らしいことが世界中に知られていても、欧米ではなぜ日本企業が成功したのかは謎とされてきました。 経営学者の野中郁次郎は、この謎に対して「組織的知識創造」の技能・技術を持ち合わせたのがその成功要因だと述べたのです。 知識を企業の資産と考えるナレッジマネジメントが生まれたのは、日本企業成功の謎を野中氏が理論的に解き明かしたことが背景にあったのです。
2.団塊の世代が定年を迎えたため
2000年代後半になると、団塊の世代が定年を迎え始めました。 これにより、各企業においてモノづくりのノウハウや経験をどのように組織で伝承するのかが改めて問われ、ナレッジマネジメントが注目され始めたのです。 業務の属人化を防ぎ、組織的なナレッジマネジメントを意識することで各企業は弱体化せず生き残ることができたと言えるでしょう。
02ナレッジマネジメントに必要なナレッジワーカーの定義
ナレッジワーカーとは、知識による新たな付加価値を生み出す労働者(知識労働者)を指します。ナレッジワーカーには、知識を提供するナレッジコントリビューターと知識を利用するナレッジユーザーの2種類が存在します。知識は自分のみが知識量を増やしていけばいいわけではありません。ナレッジコントリビューターがナレッジユーザーに対して知識を供給し、ナレッジユーザーが組織の目的達成のために知識を活用して、成果に貢献していくというサイクルを作っていく必要があるのです。
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03ナレッジマネジメントの考え方について
経営学者の野中郁次郎が提唱した知識経営が、現在のナレッジマネジメントの基礎となっていますが、ナレッジマネジメントを行う上で重要な考え方を2つご紹介します。
暗黙知と形式知とは
暗黙知とは企業において個人が仕事において蓄積してきた経験や技能・ノウハウなどを示し、言葉や数字で表現しにくいのが特徴です。 また形式知も企業において個人が蓄積してきたという点では暗黙知と同じですが、こちらは言語化や図解化ができるのでデータやマニュアルとして共有されることが多いでしょう。 ナレッジマネジメントではこの暗黙知をできるだけ形式知へと変換し、組織で共有することを求められます。 暗黙知を形式知へと変えることで、さらに高度な知識を生みだして組織全体を進化させることができます。
SECIモデルとは
ナレッジマネジメントを実践する際に使うフレームワークがSECIモデルです。 新たな知識や変革を生みだす経過を表す4段階、「Socialization(共同化)」「Externalization(表出化)」「Combination(連結化)」「Internalization(内面化)」の頭文字を取って名づけられました。 それぞれの段階について説明します。
1.Socialization(共同化)
共通体験を持つことで暗黙知の獲得や伝達を図ります。 OJTなどがこれに当たり、暗黙知で暗黙知を伝える段階だと言えるでしょう。
2.Externalization(表出化)
得られた暗黙知を共有できるよう形式知化します。 マニュアル化などがこの段階に当たり、企業として1つの財産となる知識が完成するでしょう。 ナレッジマネジメントの肝とも言える段階です。
3.Combination(連結化)
既に存在する形式知と新たな形式知を連結させ、組織内に存在しなかった新たな知識を生みだします。 企業にとって変革を起こす最初の段階と言えるでしょう。
4.Internalization(内面化)
連結された形式知が企業内で利用され、新たな暗黙知へと変わります。 個人が形式知を基に実践することで、新たな経験やノウハウが得られるでしょう。
04ナレッジマネジメントを実践するための手法
企業でナレッジマネジメントを行うための手法にはどのようなものがあるのでしょうか。 代表的な5つの手法である「データマイニング」「データウェアハウス」「知識の共有」「可視化」「エンタープライズサーチ」について、概要や特徴をそれぞれご紹介します。
データマイニング
企業に蓄積されたデータ(形式知)から、人工知能や統計学を活用して知識(暗黙知)を抜き出す手法です。 近年はデータマイニング用のツールが発達しているので、人間の力だけでは辿り着けないような知識も抽出することができるでしょう。
データウェアハウス
データウェアハウスとは直訳すると「データの倉庫」で、1990年にアメリカの計算機科学者ビル・インモンによって、「意志決定(Decision)のため、目的別(Purpose-oriented)に編成され、統合(Integrate)された時系列で、削除(Delete)や更新(Update)しないデータの集合体」と定義づけられました。 ナレッジマネジメントにおけるデータウェアハウスとは、データベースから収集したデータを多角的にまとめることで通常では気づきにくい傾向を察知する手法です。 データマイニング同様、形式知から新たな暗黙知を生みだす段階で役に立ちます。
知識の共有
企業内で知識を共有化できる仕組みを作ることです。 グループウェア、エクセルでの管理、電子掲示板の利用など業務内容に応じてツールを使い分けるのがよいでしょう。 暗黙知を形式知に変換するのに役立つ手法です。
可視化
理解しにくい情報を視覚に訴える形で表現することです。 図や表、グラフなどに変えるのが一般的ですが、CGや動画で表現するのも良いでしょう。 暗黙知が表現しにくいものである場合に可視化の手法を用いると、形式知として使いやすいものにできる可能性があります。
エンタープライズサーチ
企業内の書類、人事情報、経営情報などを統合し、社内で検索できるようにしたシステムを指します。 大企業や歴史の長い企業では共有した方が良い形式知自体の数が多いため、キーワードやタグで必要な知識を検索できるエンタープライズサーチを構築しておくのは重要だと言えるでしょう。
05ナレッジマネジメントを導入するメリットとデメリット
ナレッジマネジメントはその理論や手法も含めて、優れた経営手法であるということがご理解いただけたことでしょう。 しかしこのようなナレッジマネジメントにも、いざ企業で導入するとなるとメリットだけではなくデメリットも発生します。 具体的な導入後のイメージができるようになるために、ナレッジマネジメントのメリットとデメリットをそれぞれご紹介します。
ナレッジマネジメントを導入するメリット
ナレッジマネジメントを導入するメリットは次の3つです。
1.業務が効率化できる
個人が持つ経験やノウハウが、データベースやマニュアルなどの形式知として共有されることで、スムーズに業務が遂行できるようになるでしょう。 効率的な作業方法が共有されることで、企業全体の生産性向上にもつながります。
2.業務の属人化を防止できる
ナレッジマネジメントを行うことで特定の人しかできない業務がなくなり、知識やノウハウの継承もしやすくなります。 従業員の転職や不在に伴って業務が成り立たないという状態を防ぎ、組織としての活動を活発化させることができるでしょう。
3.企業としての競争力が高まる
ナレッジマネジメントにより個人のスキルアップが図れるため、組織としての能力も同時に拡大します。 部署間の情報共有が活発化することからセクショナリズムが解消され、新しいアイデアが浮かびやすくなるので企業としての競争力が高まるでしょう。
ナレッジマネジメントを導入するデメリット
ナレッジマネジメントを導入するデメリットは次の2つです。
1.事業を拡大すると運用しにくくなる
エンタープライズサーチなどの回避策はあるものの、事業を拡大し企業が大きくなるとナレッジマネジメントはその分だけ運用しにくくなります。 これは組織が大きくなった分だけナレッジマネジメントの重要性が社員に伝わりにくくなることと、共有するノウハウが多い年配社員が業務とマネジメントに手を取られ、ナレッジマネジメントに時間を割くのが難しくなるのが原因です。 また成果主義な会社においては、成果につながるノウハウを企業内で共有したくないと考える社員も出てくるでしょう。 機会損失や業務上の障害につながる可能性もあるので、グループウェアや電子掲示板などのツールを積極的に活用し、ナレッジマネジメントを止めない努力が大切です。
2.組織で浸透・普及するまでに時間がかかる
暗黙知を形式知に変換しにくい場合、ナレッジマネジメントを導入しても浸透しにくくなってしまいます。 例えばカスタマイズ部分が大きい商品やサービスの場合、提案時の留意点や必要書類などが都度異なるため、提案方法をマニュアル化したいとなった時にその時点でつまづいてしまいます。 このような場合可視化の手法やツールもあまり役に立たないため、ナレッジマネジメントの導入自体をあきらめてしまいかねません。 しかし場合分けや細分化してマニュアル化する、商品やサービスが入れ替わるたびにマニュアルを作り直すといった継続的な努力をすれば、ナレッジマネジメントを続けていくことができるでしょう。 ナレッジマネジメントは導入後、社内に浸透するまで根気よく続けることが重要です。
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■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など

06人材育成の手法としてのSchooビジネスプラン
Schooビジネスプランでは約6000本の授業をご用意しており、様々な種類の研修に対応しています。その上、自己啓発にも効果的な内容の講座を毎日配信しているため、研修と自己啓発の両方に対応することができるシステムになっています。研修と自己啓発を掛け合わせることにより、誰かに要求されて学ぶのではなく、自発的に学び、成長していく人材を育成することが可能になります。ここでは、Schooビジネスプランの具体的な活用方法と、特徴、さらにはどのようなメリットがあるのかを解説します。
1.研修と自己啓発を両方行うことができる
schooビジネスプランは社員研修にも自己啓発にも利用できるオンライン学習サービスです。通常の研修動画は、研修に特化したものが多く、社員の自己啓発には向かないものも少なくありません。しかし、Schooの約6000本にも上る授業では、研修系の内容から自己啓発に役立つ内容まで幅広く網羅しているため、研修と自己啓発の双方の効果を得ることができるのです。
2.自発的に学ぶ人材を育成できるSchooの講座
上記でも説明したように、Schooでは約6000本もの動画を用意している上に、毎日新しいトピックに関する動画が配信されるため、研修に加えて自ら学び、成長する人材の育成が可能です。近年の社会のグローバル化やテクノロジーの進化などにより、企業を取り巻く環境が刻々と変化しています。それに伴い、社員の業務内容や求められるスキルも早いスパンで変化しています。このような予測のつかない時代の中で会社の競争力を維持するためには、社員一人一人が自発的に学び、成長させ続けることができる環境、いわば「学び続ける組織」になることが必要です。
Schooビジネスプランの講座では、体系的な社員研修だけでなく、自己啓発を通じて自発的に学び、成長できる人材を育成することが可能です。
ここでは、人材育成に活用できるSchooの講座をご紹介します。
メンバーと心がつながる上司力
組織づくりにおける上司の在り方についての著書『『Z世代・さとり世代の上司になったら読む本 引っ張ってもついてこない時代の「個性」に寄り添うマネジメント』で話題の竹内義晴さんに教えていただきます。
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特定非営利活動法人しごとのみらい 理事長
"特定非営利活動法人しごとのみらい理事長の竹内義晴です。「楽しくはたらく人・チームを増やす」をテーマにコミュニケーションや組織づくりに関わる企業研修や講義に従事しています。また2017年よりサイボウズ株式会社で複業を開始。複業や2拠点ワーク、テレワークなど今後の仕事の在り方を自ら実践し、地域を跨いだ活動経験からワーケーションや地域活性化のための事業開発にも関わっています。新潟県在住。 著書『Z世代・さとり世代の上司になったら読む本 引っ張ってもついてこない時代の「個性」に寄り添うマネジメント』(翔泳社)"
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元NHKアナウンサーが教える「心が動く話し方」
文章の書き方や伝え方は、これまで学校や職場、セミナーなどで習う機会はあったかもしれません。 では「話し方」はどうでしょうか。 おそらく少ないと思います。
ましてや、自分の声を録音し、話し方だけでなく、伝わる内容になっているか、深く分析したという方はさらに少ないでしょう。 相手が理解しやすい「話し方」を行うには、2つの点から工夫する必要があります。
- 1.声を出して話すこと自体の工夫。
- 美声など表面的な対策ではなく、あくまで聞き手にとって聞き取りやすいことを意識した、スピード・間・音程・声質の細かい調整を行います。
- 2.話す内容の工夫。
- なんとなくダラダラ話しては聞き手の心に届きません。中身をシンプルに、インパクトを与えるものにしておく準備が必要です。
この授業では、2回にわたり、上記2つのポイントを実演でご覧いただけます。 実際に放送の現場で行ってきた実践的な方法は、皆さんにとって重要な話す場面、プレゼンテーションやスピーチ、オンラインコミュニケーションなどで常に応用可能な、一生ものの武器になるはずです。
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株式会社マツモトメソッド 代表取締役
1991年、NHKにアナウンサーとして入局。主な担当番組は、「英語でしゃべらナイト」司会「NHK紅白歌合戦」総合司会(2007,2008)「NHKのど自慢」司会「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」ナレーションなど。2016年6月退職し、同年7月から「株式会社マツモトメソッド」代表取締役。ビジネスで必要な「理解しやすく」「説得力のある」話し方はもちろん、原稿・スライドの構成までトータルでサポートする。マンツーマン指導を基本として、講演・研修・ワークショップなども実施。著書に「元NHKアナウンサーが教える/話し方は3割」(BOW&PARTNERS 2021年)「心に届く話し方65のルール」(ダイヤモンド社 2017年)がある。
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いまさら聞けない「DX入門」 〜デジタルファーストを理解するための第一歩〜
皆さんは、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」についてどのくらい理解しているでしょうか? 新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、リモートワークを余儀なくされ、デジタル化がより一層加速しました。それと同時に、DXがテレビや経済誌などで取り上げられる機会が増えています。 本授業では、『いちばんやさしいDXの教本 人気講師が教えるビジネスを変革する攻めのIT戦略』(インプレス)の共著者であり、ディップ株式会社で営業のDX化を推進した、亀田重幸先生をお迎えしてDXの“いろは”と応用事例を学んでいきます。 なんとなく理解していたDXを理解し、社内での応用や課題点発見のきっかけをつくれるようになりましょう。
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ディップ株式会社 dip Robotics 室長
2007年ディップ株式会社入社、プログラマーやインフラエンジニア職を経て、アルバイト・パート求人掲載サービス「バイトル」のスマートフォンアプリの企画立案を担当。 エンジニアとディレクターという両側面のスキルを生かし、数多くのプロジェクトマネジメントを手掛ける。ユーザー目線を重視した顧客開発モデルを取り入れ、UXデザイナーとしても活躍。人間中心設計専門家。
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3.受講者の学習状況を把握し、人材育成に役立てることができる
Schooビジネスプランには学習管理機能が備わっているため、社員の学習進捗度を常に可視化することができる上に、受講者がどんな内容の講座をどれくらいの長さ見ていたのかも把握することができるため、社員のキャリアプランの傾向を掴むことも可能です。ここでは学習管理機能の使い方を簡単に解説します。

管理画面では受講者それぞれの総受講時間を管理者が確認できるようになっており、いつ見たのか、いくつの講座を見たのか、どのくらいの時間見たのか、ということが一目でわかるようになっています。

さらに、受講履歴からは受講者がどのような分野の動画を頻繁に見ているかが簡単にわかるようになっており、受講者の興味のある分野を可視化することが可能です。これにより、社員がどのようなキャリアプランを持っているのかを把握できるだけでなく、社員のモチベーションを高めながら人材育成するためのヒントを得ることができます。
さらに、社員に自己啓発を目的として受講してもらっている場合、社員がどのような内容の授業を受講する傾向があるのかを把握できるため、社員のキャリアプランを把握することができます。
07まとめ
ナレッジマネジメントは社員が持つノウハウや経験、また企業が持つ情報や知識を組織全体で蓄積・共有して企業全体の生産性や市場での競争力、また企業価値を高めていく手法ですが、日本初の経営理論としてさまざまな企業で活用されているとわかりました。 ナレッジマネジメントの考え方は、これまでもビジネスのあり方を大きく変化させてきたと言えます。 そして個人で稼ぐ人が増加し、インターネットを通じたグローバル化というビジネス環境の進化の中で、さらにナレッジマネジメントの新しい手法やツールは開発され続けていくでしょう。 ぜひナレッジマネジメントについて理解し、自分の所属する企業と自分自身のために、役に立つ知識やノウハウを積極的に共有してみてください。