公開日:2021/05/28
更新日:2023/01/17

ピグマリオン効果とは?定義からマネジメントでの活用法まで詳しく解説

ピグマリオン効果とは?定義からマネジメントでの活用法まで詳しく解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

近年、ビジネスの場で効率的にマネジメントを行うために、心理学を活用することが増えています。この記事では、上司と部下の間のコミュニケーションを円滑化し、高いモチベーションを持つ人材を育成することにも役立つ、ピグマリオン効果について詳しく解説します。

 

01ピグマリオン効果とは

ピグマリオン効果とは、他者からの期待を受けることで学習成績が向上したり、仕事での成果が上がったりする心理効果のことです。 教師期待効果、ローゼンタール効果とも呼ばれ、1963年~1964年にかけてアメリカの教育心理学者ロバート・ローゼンタールとフォードが行った実験により誕生しました。 ピグマリオン効果については、行われた実験に再現性がないとの批判や、教育に携わる人向けの心得として説明すると、自ら学習するという視点に欠けるということに対する議論が現在も行われていることを覚えておきましょう。

ピグマリオン効果の実験内容

ロバート・ローゼンタールとフォードが行ったピグマリオン効果についての実験とは、どのようなものだったのかについてご紹介します。 1963年に行われた最初の実験では、被験者は大学の学生でグループA、グループBに分けられ、ネズミを用いた迷路実験を行うことを告げられました。 そして実際には個体差のないネズミを学生に渡す際、グループAには「良く訓練された系統の賢いネズミ」、グループBには「訓練があまりされていない系統のネズミ」であることを伝えたのです。 本当は個体差がないので実験結果は同じになるはずですが、実際にはグループAのネズミの方が結果が良く、グループAの方がグループBよりネズミを丁寧に扱っていたこともわかりました。 この実験結果から、ロバート・ローゼンタールとフォードは教師が期待する結果に対して学生が応えたと結論付け、相手の期待に応えようとする心理は他でも働くのではないかと考えます。 そこで1964年サンフランシスコの小学校で、ハーバード式突発性学習能力予測テストと名付けた知能テストを使った実験が行われました。 学級担任には実験とは知らせず、成績が向上する生徒を割り出すための知能テストを行うと伝えて生徒たちにテストを受けさせます。 テスト後無作為に選んだ生徒をAクラス、Bクラスに分け、学級担任にはAクラスを「成績が伸びる優秀な子供たち」Bクラスを「成績の良くない子供たち」と伝えた所、その後Aクラスの成績が向上したのです。 この2つの実験から「人間は相手の期待に無意識に答えようとする結果、パフォーマンスの向上が見られる」というピグマリオン効果が確認されました。

ピグマリオン効果とゴーレム効果の違い

ピグマリオン効果とちょうど逆の概念を表すのがゴーレム効果で、他者に期待されないことによってパフォーマンスが低下してしまう心理効果のことです。 ピグマリオン効果と同じく、アメリカの教育心理学者ロバート・ローゼンタールによって提唱されました。 ピグマリオン効果がポジティブな連鎖を生みだしているのに対して、ゴーレム効果はネガティブな連鎖を生みだしているのが特徴的と言えるでしょう。

ピグマリオン効果とホーソン効果の違い

ピグマリオン効果と類似性の高い概念がホーソン効果で、他者からの注目を受けることでパフォーマンスが向上するという心理効果のことです。 アメリカのホーソン工場で行われた実験から名付けられました。 ピグマリオン効果が、他者からの期待を受けることでパフォーマンスが上がるのに対して、ホーソン効果は、注目や関心によってパフォーマンスが上がるのが特徴的と言えるでしょう。

ピグマリオン効果とハロー効果の違い

ピグマリオン効果と類似性の高いもう1つの概念がハロー効果で、相手の特定部分に対する評価が、相手全体の評価にまで拡大する心理効果のことです。 「後光効果」「光背効果」とも呼ばれ、1920年にアメリカの心理学者エドワード・L・ソーンダイクが作成した「A Constant Error in Psychological Ratings」という論文で提唱されました。 ハロー効果は、肩書や見た目などの特定部分に対する印象で相手の評価が上がる「ポジティブ・ハロー効果」と、相手の評価が下がる「ネガティブ・ハロー効果」の2つに分類されます。 ピグマリオン効果とハロー効果は、どちらも相手への評価に関わる心理効果ですが、ピグマリオン効果は評価する側がされる側の行動に影響を及ぼしていき、ハロー効果は評価する側の認識が変化していくという点で異なります。


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02マネジメントでピグマリオン効果を効果的に活用する方法

ピグマリオン効果の概要について解説したところで、企業におけるマネジメントにおいて、ピグマリオン効果を効果的に活用する方法を7つご紹介します。

1.裁量を与える

上司が部下に対して期待するだけではなく、部下に裁量を与えることでピグマリオン効果はより強く働きます。 なぜなら、上司が部下を信頼して仕事を任せているということを、言葉だけではなく行動で示すことになるためです。 例えば、「予算は20万円以内」や「時間は10時間まで」など数値で区切って裁量を与え、部下が自己判断で安心して判断できる範囲を決めるとよりスムーズでしょう。

2.期待を具体的に示す

ピグマリオン効果では上司からの期待がパフォーマンスの向上につながりますが、ピグマリオン効果の出やすい期待、出にくい期待がそれぞれ存在します。 ピグマリオン効果の出やすい期待とは次の通りです。

  • ・部下が自主性を持って行動することに対して、肯定的な関心を持つ
  • ・結果をあせらず、答えが出るまで見守る
  • ・答えが出ないことに対して感情を露わにせず、内容が良く伝わっていない可能性などを考え、わかりやすく伝えるようにする
  • ・答えを出す過程でヒントを出し、うまく行かなかったときは、正確なフィードバックを与える
  • ・部下を要所要所で褒める

ピグマリオン効果の出やすい期待とは、具体的で部下に伝わりやすい期待であることがわかるでしょう。 反対にピグマリオン効果の出にくい期待とは次の通りです。

  • ・部下の仕事に対して細かく指示や要求、命令をする
  • ・自分の期待通りの結果にならない場合に感情を露わにする
  • ・過度な期待をかけたり、褒めたりする
  • ・部下のためと言いながら自分の利益を考える

上司として部下を育成するなら、やる気を引き起こす具体的な期待をかけるよう、心掛けなければなりません。

3.達成可能な課題を与えて自信につなげる

ピグマリオン効果は、上司が部下に達成可能な課題を与えて自信をつけさせることでも働きます。 小さなハードルをいくつか与えて自信を持たせ、そのあとから少し高めのハードルに挑戦させるようにするのがポイントです。

4.成果だけではなく目標へのプロセスも評価する

上司の目線からすると、つい目標に対して何%達成したかという結果ばかりを見てしまいがちですが、ピグマリオン効果を期待する場合、これは逆効果だと言えるでしょう。 部下が努力した部分や、目標達成につながる行動を上司が具体的に評価することで、部下は自分の能力を認められたと感じ、モチベーションアップにつながるためです。 評価をする際は成果だけではなく、必ずプロセスも含めて見るようにしましょう。

5.結果を出せない時はヒントを与える

上司が期待をかけたからといって、部下は必ずしもスムーズに目標達成ができるとは限りません。 経験の少なさからつまづいてしまったり、悩みを抱えて行動できなくなったりすることもあるでしょう。 そのような時は上司が随時ヒントを与え、寄り添うことで信頼関係が構築され、よりピグマリオン効果が強く発揮されるでしょう。

6.過剰な期待はしない

ピグマリオン効果を期待するからといって、部下に過剰に期待するのはあまり望ましいこととは言えません。 なぜなら、その期待が大きすぎるプレッシャーとなって部下にのしかかり、モチベーションや仕事の成果が逆に低下してしまう可能性があるからです。 部下の性格や現状置かれている状況に配慮し、能力値に合わせた期待をかけていく姿勢が重要だと言えます。

7.公平な評価制度を構築する

ピグマリオン効果をより発揮させるためには、公正・公平な評価制度に基づいた人事評価を行う事が大切です。 期待をかけられて努力をしたものの、評価につながらないのでは、部下も仕事に前向きな気持ちで取り組むことが難しくなってしまうでしょう。 納得感のある人事評価制度で部下を評価し、成長につなげることのできる環境構築に心掛けましょう。

 

03マネジメントでピグマリオン効果を活用する時の注意点

マネジメントでピグマリオン効果を活用する際に注意した方がよい点もご紹介します。

現状に満足するほど褒め過ぎない

ピグマリオン効果をより発揮させたいからと、上司としてとにかく部下をたくさん褒めなければという思いに駆られてしまう人がいます。 しかし、部下を褒め過ぎると逆に現状に甘えたり、仕事の手を抜いたりと成長を自ら止めてしまう場合があるのです。 これは、上司のかける期待に自分が十分応えたと、部下が勘違いすることにより起こる現象です。 部下の性格や現在の状況を把握し、課題をクリアできたら新たな課題を与えて、現状に満足しないように導くことが重要だと言えるでしょう。


 

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04まとめ

ピグマリオン効果とは、他者からの期待を受けることで勉強や仕事のパフォーマンスが向上するという心理効果のことを指し、ビジネスにおいては上司が部下に具体的に期待を伝え、最後は公正・公平に評価することでより効果を発揮します。 過剰な期待をかけすぎず、現状に満足するほど褒め過ぎずといった加減が上司にとっては難しいですが、部下が仕事でつまづいた時に寄り添ったり、自信を付けさせたいという思いで行動したりすればその気持ちは必ず伝わるのではないでしょうか。 ぜひ、ピグマリオン効果を効果的に用いて、部下の成長を適切に促してみてください。

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