更新日:2026/06/18

リスクヘッジの意味や利用事例と能力アップポイントを解説する

リスクヘッジの意味や利用事例と能力アップポイントを解説する | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

ビジネスの現場では、予期せぬトラブルや環境変化によって、計画が大きく変わることがあります。特に管理職やチームを預かる立場では、自分の担当業務だけでなく、組織全体に及ぶリスクを見越して備えることが求められます。そうした事態に備えるために有効なのが「リスクヘッジ」という考え方です。本記事では、リスクヘッジの正しい意味や類似用語との違い、組織で特に備えるべきリスク領域を整理したうえで、実践に活かせる能力向上のポイントを解説します。

 

01リスクヘッジとは

前提として、組織のリスクマネジメント原則・枠組み・プロセスを示したJIS Q 31000:2019「リスクマネジメント-指針」では、リスクを「目的に対する不確かさの影響」と定義しています。ここで重要なのは、「不確かさ」が必ずしもネガティブな事態だけを指すわけではないという点です。影響とは期待されていることから乖離することであり、好ましいもの、好ましくないもの、またはその両方の場合があります。つまりリスクとは、ビジネスの目的達成に影響を及ぼしうる「不確かさ全般」を指す概念です。

そして、こうした不確かさ(リスク)のうち、特に目的達成に不利な影響を及ぼす可能性に備え、影響を回避・軽減するために事前に対策を講じることは、一般的にリスクヘッジと呼ばれます。例えばビジネスの文脈では、プロジェクトの遅延、取引先の倒産、法令改正による影響、人材の離職、自然災害など、目的の達成を妨げる可能性のある事象を事前に想定し、その影響を抑えるための対策を講じることなどが挙げられます。

▼参考:JISQ31000:2019 リスクマネジメント-指針

もともとは金融用語として使われていた

「リスクヘッジ」という言葉は、もともと金融・投資の文脈で使われてきた用語です。株式や為替取引などで相場変動によって損失が発生する可能性を見込み、その損失を回避・軽減するための策をとることを指します。

そこから転じて、現在では、危険を予測し、それを回避・軽減する対策をとるという意味でも広く使われています。またビジネスシーンでは、「万が一に備えて複数の手を打っておく」という広い文脈でも用いられています。

▼参考:証券用語解説集 リスクヘッジ|野村證券

 

02リスクヘッジと類似している用語との違い

「リスクヘッジ」と混同されやすい用語に、「リスクマネジメント」と「リスクテイク」があります。それぞれの意味と違いを理解しておくことで、ビジネスの現場での判断や会話がより的確になります。

リスクマネジメント

リスクマネジメント

リスクマネジメントとは、組織が目的を達成するうえで影響を及ぼしうる不確かさを特定・分析・評価し、対応策の実施やモニタリング、見直しまでを行う一連のプロセスを指します。このときのリスクとは、ポジティブな影響、ネガティブな影響双方を含み、ポジティブなリスクは機会として活用し、ネガティブなリスクは回避・抑制することを目指します。

一方、一般的なビジネス用語として用いられるリスクヘッジは、このプロセスのうち、特に目的達成に不利な影響を及ぼすリスクを事前に予測し、回避・軽減するための備えを指す場合が多いです。

Schoo for Businessの授業『リスクマネジメントの基本と仕組み』に登壇する真部助彦先生は、リスクマネジメント実践の手順を以下3つのフローで解説しています。

  • 1.リスクアセスメント
  • 2.リスク対応(例:予防的対策、発見的対策、突発時対策)
  • 3.モニタリングと評価

この考え方に基づくと、リスクヘッジは上記フローのうち「リスク対応」、特に予防的対策に近い考え方として整理できます。

リスクテイク

リスクテイクとは、損失や失敗の可能性を認識したうえで、将来的なリターンや成長機会を得るために、あえてリスクを受け入れる意思決定や行動を指します。

リスクヘッジがリスクの回避・軽減を目的とするのに対し、リスクテイクは一定の不確実性を受け入れながら、機会の獲得を目指す点に特徴があります。

ビジネスにおいてのリスクテイクは、新規事業への参入、新市場の開拓、大型投資の意思決定など、組織としての成長を実現するうえで必要になる場面があります。重要なのは、無謀にリスクを冒すのではなく、リスクの内容や影響度を見極めたうえで、意図的・戦略的に判断することです。リスクヘッジとリスクテイクは相反するものではなく、リスクを抑えるべき場面と、成長機会のためにリスクを受け入れるべき場面を見極め、状況に応じて使い分けることが重要です。

 

03組織でのリスクヘッジが特に求められる4つの領域

部長やマネージャーなど組織を預かる立場になると、リスクヘッジの対象は自身の業務にとどまらず組織全体に広がります。意思決定の範囲が広がるぶん、トラブルが起きたときの影響も大きくなるためです。

Schoo for Businessの授業『リスクと向き合える部長になるために』に登壇する新井健一先生は、現代を予測不能なVUCAの時代と位置づけています。そのうえで、リーダーには「未来に対する情報収集力」「会計・ファイナンス力」「リスクマネジメント力」が求められ、組織のリスクは戦略・人材・オペレーションなど複数の領域に存在すると説明します。

ここでは同授業をもとに、組織で特に先回りの備えが必要な4つの領域について解説します。

戦略リスク

戦略リスク

戦略リスクは、経営資源の配分を誤ることで、事業成長の機会を逃したり、競争力を低下させたりするリスクです。新井先生は、戦略とは「人・物・金・情報という経営資源をどこに集中投下するか」という資源配分の問題だと説明しています。

リスクヘッジの観点では、投資や人材配置を決める前に「市場は成長しているか」「自社は競合に対して独自の強みを持てるか」を見極めることが重要です。現場の努力だけでは取り返しにくい領域だからこそ、事前の分析と意思決定の精度が求められます。

人材流出リスク

人材流出リスク

人材流出リスクは、必要な人材を確保・定着できず、組織の生産性や競争力が低下するリスクです。少子高齢化による人手不足や売り手市場のなかでは、人材を採用するだけでなく、定着させること自体が重要なリスク対応になります。

このリスクへの備えとして、新井先生はエンゲージメントを高めることの重要性を挙げています。個人と組織が信頼関係を築き、互いの成長に貢献し合える状態をつくることで、離職の予防や人材の活躍を支える要素になります。現場では、部下の話をじっくり聞く、成功体験を積ませる、関係の質を整えるといった日常的な関わりがリスクヘッジになります。

オペレーションリスク

オペレーションリスク

オペレーションリスクは、日々の業務プロセスや現場対応の不備によって発生するリスクです。代表例として、情報漏えいやハラスメントなどのコンプライアンス違反が挙げられます。

授業では、オンライン会議で共有された社外秘資料を写真に撮り、SNSに投稿してしまう事例が紹介されています。こうしたリスクを防ぐには、「当然わかるはず」と考えるのではなく、なぜいけないのかを文脈ごと丁寧に説明することが重要です。また、ハラスメントは現場のちょっとした会話のなかで起こる可能性があるため、日頃から対話の仕方やマネジメントのあり方を見直すことが求められます。

クライシスリスク

クライシスリスク

クライシスリスクは、不祥事や重大トラブルなど、組織の信頼を大きく損なうリスクです。新井先生は、日系企業では組織のまとまりが強みになる一方、有事には「職場を守りたい」「誰かをかばいたい」という意識が働き、問題を隠す方向に傾くおそれがあると説明しています。

このリスクへの備えとして重要なのは、初動対応を誤らないこと、そして隠さないことです。SNSなどを通じて情報が瞬時に拡散する時代だからこそ、管理職には慎重な発信と、録音されている可能性もある前提での言動が求められます。

 

04リスクヘッジ能力をアップさせる方法

リスクヘッジを実践するには、単に知識を持つだけでなく、リスクを見つけ、整理し、継続的に見直すための思考力や行動習慣が必要です。ここでは、リスクヘッジ能力を高める3つの方法を紹介します。

論理的思考力を高める

リスクヘッジを適切に行うには、「何がリスクになりうるか」を筋道立てて考え、整理する力が欠かせません。そのために役立つのが、ロジカルシンキングです。物事を要素に分解し、結論と根拠のつながりを整理することで、リスクの原因や影響を把握しやすくなります。

例えば、トラブルが発生したときに複数の要因や関係性を整理できれば、再発防止策や事前の備えを考えやすくなります。日常業務でも、「なぜそうなるのか」「どの要因が影響しているのか」と問い続けることで、論理的に考える習慣を養えます。

ロジカルシンキング入門

物事を細かく要素分解する方法や、わかりやすく伝えるために整理する方法を学べます。リスクを感覚的に捉えるのではなく、構造的に洗い出すための基礎を身につけたい方に役立つ内容です。

 
  • ビジネス本著者

    1976年大阪府生まれ。灘高校、東京大学経済学部を卒業後、日系メーカーで17年間勤務。経理、営業、業務改革、Web企画、マーケティング、経営企画と多様な部門を経験し、半年間のイギリス留学後に現職に転職。2016年から3年半書きためたブログを元に、2020年より電子書籍の執筆を開始。著作『40歳でGAFAの部長に転職した僕が20代で学んだ思考法』、『4時間のエクセル仕事は20秒で終わる』がある

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PDCAを習慣化する

リスクヘッジは、一度対策を講じれば終わりではありません。対策が機能しているかを確認し、必要に応じて見直すことで、リスクへの対応精度を高めていく必要があります。

課題が発生した際には、原因を整理し、対策を実行し、その結果を振り返ることが重要です。PDCAサイクルを適切に回すことで、同様の課題が再発する可能性を下げ、変化する状況にも対応しやすくなります。逆に、振り返りや改善が不十分なままだと、過去と同じ課題が繰り返されるおそれがあります。

成果が上がる「鬼速PDCA」のススメ

PDCAを振り返りや行動改善につなげられていない方に向けて、高い精度でPDCAを回す方法が紹介されています。リスク対応を一時的な対処で終わらせず、継続的な改善につなげたい方に適した内容です。

 
  • 株式会社ZUU 執行役員/グロースプラットフォーム・カンパニー長

    中堅・中小企業の戦略・組織マネジメントを専門とするコンサルティング会社で、三指に入るコンサルタントとして活動。 70社の戦略設計・推進、120社以上の経営分析と数百社の幹部コーチを務め、コンサルティング先に対する20本の事業起案と3事業の実現を果たす。 超大手企業のインキュベーションリーダーとしてヘッドハントを受け、2年で売上3億円になる事業をゼロベースで構築。その後事業開発の部門長として、複数の新事業アイデアの推進マネジメントの伴走を行い、推進責任者を務める。 ZUUにジョインしてからは、CEO officeにて事業開発を行うとともに、メディア事業を管掌。その後、鬼速エンジニアリング事業管掌を経て、2022年4月より現職に就任。

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多面的に考える力を養う

リスクを洗い出す際、一つの視点だけで判断すると、見落としが生じやすくなります。こうした見落としを防ぐためには、物事を複数の視点から捉える多面的思考力が必要です。

例えば、経営、現場、顧客、競合、社会環境など、立場や環境を変えて考えることで、表面化していないリスクにも気づきやすくなります。

課題設定力の磨き方~本質的な課題を導き出す方法~

生産性やアウトプットの質を高めるうえで重要な課題設定力を磨く方法を学べます。複数の視点から課題の本質を捉える力は、リスクの見落としを防ぐうえでも有効です。

 
  • 株式会社アンド・クリエイト 代表取締役社長

    大手アパレル企業を経て、1998年にプライスウォーターハウスコンサルタント(現IBM)入社。企業変革戦略コンサルティングチームのリーダーとして、多くの変革プロジェクトをリード。「人が変わらなければ変革は成功しない」との思いから、専門を人材育成分野に移し、人材開発のプロジェクトをリード。 2005年に当時の社長から命を受け、コンサルティング&SI事業の人材開発部門リーダーとして育成プログラムを設計導入。ベストプラクティスとして多くのメディアに取り上げられた。2013年に独立し執筆・講演活動を開始。講師として、大前研一ビジネス・ブレークスルー、日本能率協会、日経BPセミナー、大手銀行系研修会社などに多数のプログラムを提供し、高い集客と満足度を得ている。 著書は「一流の学び方」など現在18冊を出版。東洋経済オンライン、プレジデントオンラインなど連載多数。

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Schoo for Businessには主に3つの特長があります。

【1】国内最大級9,000本以上の講座数
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リスクヘッジに関するSchooの講座を紹介

Schooは汎用的なビジネススキルからDXやAIのような最先端のスキルまで、9,000本以上の講座を取り揃えております。この章では、リスクヘッジに関する授業を紹介いたします。

仕事のミスを減らす頭の使い方

この授業では、脳の仕組み、とりわけ「情報処理の中枢」とも言われる「ワーキングメモリ」と、われわれの認識や判断を左右している「潜在記憶」について、その仕組みとその活用法を解説します。

 
  • トレスペクト教育研究所 代表エグゼクティブコーチ・学習コンサルタント

    1967年、京都府生まれ。東京大学経済学部卒業。経済出版社、コンサルティング会社勤務後、ニューヨーク大学スターンスクール留学(MBA)。外資系銀行を経て、2002年に独立。高確率セールストレーナー、CTIジャパンリーダーを務めた。現在は信頼(トラスト)と尊敬(リスペクト)をベースにした組織・社会の実現を目指すトレスペクト教育研究所代表。30年にわたり、心理学や記憶術、速読を実践研究し、脳科学、認知科学の知見も取り入れた独自のコミュニケーション法、学習法を確立。企業研修や個人向けの講座、個別指導を行う。主な著書:『絶妙な聞き方』(PHP文庫)、『スピード読書術』(東洋経済新報社)、『合格(ウカ)る技術』『合格(ウカ)る思考』(すばる舎)、『「1分スピード記憶』勉強法』(知的生き方文庫)、『英語楽読法』(日本実業出版社)、『仕事のミスが絶対なくなる頭の使い方』(クロスメディア・パブリッシング)、『記憶力が最強のビジネススキルである』(かんき出版)、『自分を変える「脳」の習慣』(SBクリエてぃぶ)ほか多数。 訳書:『売り込まなくても売れる! 実践編』(フォレスト出版)、『コーチング・バイブル 第3版』(東洋経済新報社 共訳)

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意外と知らない「情報セキュリティ」―リモートワークの必須事項

この授業では、ハッカーの視点から意外と知らない情報セキュリティの罠や脅威を学び、リモートワークにおける自分たちの身の回りの情報セキュリティについて考え対策を身につけていきます。

 
  • 認定ホワイトハッカー

    合同会社ビーエルケー・スミス 代表執行社員CEO。一般社団法人ITキャリア推進協会 技術顧問。(CEH 認定番号ECC56045708288、CND 認定番号ECC42119683638)EC-Council認定インストラクター。1968年 岩手県生まれ。現在は北海道在住。地元では剣道・居合道の指導も行う。 20年以上にわたる情報セキュリティ業界の経験と、現在も第一線の現場に立ち続けるノウハウにより技術支援と教育を行う。最新著書:「ホワイトハッカー入門」(インプレスブックス)

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組織で働く人のためのコンプライアンス

企業や団体など、組織で働く全ての皆さんへお届けするコンプライアンスの授業です。組織の不祥事はなぜ起きてしまうのか。綺麗事では済まない世の中で、流されず、身を守る心構えとは。そして、働きやすい職場・組織を実現するために私たちは何ができるかを学ぶことができます。

 
  • Big West Brothers合同会社代表/コンプライアンスコンサルタント

    日本郵船フェアートレード推進グループ長(本社法務・コンプライアンス部長)・豪州クルーズ会社CEO・国際物流企業取締役執行役員・現地法人社長(南米Bolivia)、リーガルテック企業執行役員等を歴任後、現職。通算37年間40カ国でグローバルビジネスを経験。郵船国際法務部長時代は42ヵ国200社55000人を統括するグローバルコンプライアンス体制を構築。在籍時6年間で延べ2万人の世界中のグループ社員に対してリーガル研修を対面で行った。一方、大規模国際独禁法違反事件への対応を責任者として米国司法省を始めとする各国当局との交渉を自ら行う。

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06まとめ

リスクヘッジとは、目的の達成に不利な影響を及ぼしうる不確かさを事前に想定し、その影響を回避・軽減するための対策を講じることです。リスクマネジメントという包括的な枠組みの一部として位置づけられ、リスクテイクとは状況に応じて使い分けることが重要です。

適切なリスクヘッジを実践するには、論理的思考力やPDCAの習慣化、多面的な視点を持つ課題設定力といった、思考力・行動習慣の土台が欠かせません。日々の業務のなかでこれらの能力を意識的に磨くことは、トラブルを未然に防ぎ、組織の目的達成を支える対応力の向上につながります。管理職や研修担当者には、自身のスキル向上に加え、チームにリスクヘッジの考え方を浸透させる視点も求められます。

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