常務取締役とは?役割や責任範囲、年収について解説

会社での役職はさまざまあります。常務や専務といった肩書は普段見かける機会は少ないですが、役職を理解していないと相手に失礼になってしまうこともあります。当記事では会社の役員の役職の解説を含め、常務取締役の役割や責任について解説します。
- 01.常務取締役とは?
- 02.常務取締役の主な役割
- 03.常務取締役の責任範囲
- 04.役職別会社役員の年収について
- 05.まとめ
01常務取締役とは?
常務取締役は役員の役職です。「取締役」とつく肩書は従業員ではなく役員に用いられます。企業の代表権を持つ「代表取締役」のほかに「常務取締役」「専務取締役」があります。 「常務取締役」とは社長を補佐する役員です。しかし社長の補佐とはいっても仕事内容や範囲が広いため、企業によっては常務を複数任命している場合があります。「常務」とは日常の業務を担当するという意味で使われています。主な役職として「常務取締役」「常務執行役」などがあります。 一方「専務取締役」も社長を補佐する役員を指します。一般的に常務は日常的な業務の管理・執行を行い、専務が会社の業務全体の管理・監督を行うことで社長を補佐します。 職位は常務より専務が上です。専務は意思決定の補佐を主に担当し、経営者に近い立場にあるため役職が上にあるというのが一般的です。常務は役員のなかでも一番下の役職として、従業員と近い位置にいる管理者という位置づけです。
取締役との違い
常務取締役は取締役のなかの1つの役職です。会社の役職には「法律で定められているもの」と「法律で定められていないが、社内で定められているもの」があります。常務取締役は社内での肩書上は「常務」、法的には「取締役」という位置づけです。 そもそも取締役とはすべての株式会社で必ず置かなければいけません。最低1人以上必要で、取締役会を設置している場合には最低3人以上の取締役が必要です。 一般的に役員は「取締役」「監査役」「会計参与」のことを指します。そのなかで取締役は会社の経営を担う責任者として経営方針や重要事項に関しての決定権をもつ役員です。そのため、上記で紹介した「専務取締役」「常務取締役」も法的にはすべて取締役です。取締役のなかで担う業務により「常務」「専務」などと分けられているのです。
常務執行役員との違い
「執行役員」とは会社経営に関する責任者としての業務を担う役職です。会社経営や重要事項への決定権はもちません。「役員」とついていますが法的には役員ではなく従業員の立場です。あくまで社内で定められている肩書として使われます。 従業員でありながら経営陣に近いポジションにあり、経営方針に従って現場の業務を遂行することが常務執行役員の仕事です。一般的な業務内容は常務取締役とさほど違いはありません。従業員か役員か、決定権があるかないかの違いです。
常務取締役の序列
会社内での役員の立ち位置はそれぞれの会社ごとに異なりますが、一般的な序列を紹介します。
- 1.社長 会社内でもっとも大きな権限を有しており、取締役会の代表も兼ねているケースも多くあります。その際には「代表取締役社長」と表記されます。
- 2.会長 一般的には社長を退任した後に就くことが多いポストです。後任社長のサポートなど役割はさまざまです。
- 3.相談役・顧問 一般的には社長や会長を退任した後に就くことが多い社外のポストです。社外より招聘し、経営に関する助言を求めることもあります。名誉職的な意味合いもあり、意思決定には加わらないこともあります。
- 4.副社長・専務・常務 社長の業務を補佐するポストであり、役員として取締役を兼ねる事が一般的です。 副社長、専務、常務の順で業務の範囲や権限が広くなります。
以上のように常務取締役は社内のなかでは社長、会長、副社長、専務に次いで5番目のポジションです。
02常務取締役の主な役割
前述のとおり役員のなかでもっとも従業員と近い位置で業務の管理・執行を担当します。社長の補佐などの役員的な業務や日常的な業務どちらにも関わります。そのため現場と経営の両方の視点をもった役割が期待されます。
部下の育成
従業員に一番近い役員として、部下の育成・管理は大切な業務です。会社の規模にもよりますが、一般的に常務が育成するのは部長や課長などの管理職です。経営陣からの目線をもって自社の戦略に沿った育成や業務が行われているかを管理することが大切です。
事業戦略の構築
取締役として役員会議に出席し、会社全体の戦略の構築に加わります。役員のなかでもっとも従業員に近い役員として、戦略の実行可能性などに対して意見を求められます。また、決定事項について従業員を通しての実行管理も常務に求められる仕事内容です。
03常務取締役の責任範囲
会社役員の一般義務として善管注意義務と忠実義務があります。これらの義務を果たしているかどうかが取締役として責任を負うか否かに大きく関わってきます。
- ・善管注意義務 会社役員は、民法上の委任契約の受託者として、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理しなければなりません。(会社法第330条、民法第644条)
- ・忠実義務 取締役は、法令および定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のために忠実に職務を行わなければなりません。(会社法第355条)
原則取締役は責任を負わない
原則として会社が倒産したときに取締役は損害賠償請求されることはありません。法人と個人は法律上別の法人格であり、会社の財産と取締役個人の財産は別のものとして考えられています。そのため債権者が会社を訴えても、その債権者が差し押さえできる財産は会社の財産に限ります。しかし、代表取締役が会社の連帯保証人になっている場合や、取締役が本来の義務を怠っていたなどの重要な過失があった場合は例外です。
損害賠償を負うケース
役員が負う可能性のある責任は「会社に対する損害賠償責任」もしくは「第三者に対する損害賠償責任」です。 会社に対する損害賠償責任は、上記で紹介した義務に違反した場合に生じた損害を賠償する責任です。第三者に対する損害賠償責任は、悪意または重大な過失があった場合に第三者に生じた損害を賠償する責任です。 取締役が損害賠償責任を負う場合については次のように定められています。 「取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」(会社法423条1項) 任務を怠るケースとしては「経営判断原則違反」「具体的な法理に違反する行為」「監視・監督業務違反」「内部統制システム構築義務違反」などがあります。
経営判断原則違反
経営判断が著しく不合理な場合に、善管注意義務違反と判断されます。経営上の判断が結果として間違っていたときに損害賠償を負うとなれば、取締役は挑戦的な判断ができなくなってしまいます。 ここでいう善管注意義務違反とは、あくまで情報収集や検討を怠り、著しく不合理な判断を下した場合に限ります。例えば十分な検討もなくリスクの高い投資運用を実施し失敗した場合や、会社業務と関連性のない交際費を使った場合に当てはまります。
具体的な法理に違反する
利益相反行為など法理に違反する行為によって会社に損害を与えた場合には、損害賠償責任を負うことがあります。利益相反行為とは取締役が得をすることにより会社側が損害を被る行為です。 例えば、他社との取引において市場の相場より高い値段で製品を購入し、取引先企業から贈与を受けるなどの行為が当たります。この場合、利益相反取引を行った取締役以外にも業務の執行をした取締役や取締役会での承認決議に賛成した取締役も損害賠償請求の対象となり得ます。
監視監督業務違反
取締役会には個々の取締役の執行を監督する機能が求められています。そのため、個々の取締役はほかの取締役の業務執行を監視する義務を負っています。その義務を怠ったと判断された場合、問題の取締役以外の取締役にも損害賠償請求が行われる可能性があります。 例えば、会社内でコンプライアンスに違反する行為が長年行われていて、明らかにおかしい帳簿のずれがあったとします。この際にはコンプライアンスに違反している部門の取締役だけでなく、その行為に気づかなかった、もしくは見て見ぬふりをしてきたほかの取締役も違反とされる可能性があります。
内部統制システム構築義務違反
「取締役の業務執行が法令や定款に適合することを確保するための体制、および当該企業やその子会社からなる企業集団の業務の適正を図るために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」(会社法第362条4項6) 会社法では、上記のように取締役に企業の体制づくりを求めています。法律的に正しい業務を行う上で必要な体制を作る義務が取締役にはあります。 十分な体制構築を怠り、法令違反をした場合には損害賠償請求の責任を負う可能性があります。
04役職別会社役員の年収について
上場企業1,500社と未上場企業から任意に抽出した1000社を対象にした「年収ガイド」の調査によると、会社役員の平均年収は以下の通りです。
- ・会長:3693万円
- ・社長:3476万円
- ・副社長:2947万円
- ・専務:2433万円
- ・常務:1885万円
特に専務と常務の年収の差が約600万円と大きく開いていることが分かります。現場の従業員を管理・監督するだけでなく賠償責任を負う可能性があるにも関わらず、常務は役員のなかで決して年収が高いと言えないのが現状です。
参考:年収ガイド
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・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など

05まとめ
会社内の序列は非常に分かりづらく、複雑です。ですが、あらかじめ業務内容や担当領域を知っておけば、役職は相手の立場が一目で分かるため、役に立つ情報となります。取引先の先方担当者が常務取締役であれば現場の従業員のことも理解しており、決定権ももっている人と見て問題ないでしょう。役職の知識をもって自社の役職を見直してみると、会社の体制も浮き彫りになります。活用できる知識として覚えておいてはいかがでしょうか。