更新日:2026/08/28

CMOとは?役職の意味から求められる役割まで詳しく解説

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CMOは、企業のマーケティング活動を経営レベルで統括する役職です。市場競争の激化やデジタル化による顧客接点の多様化を背景に、顧客とのコミュニケーション設計は難易度を増していますが、国内におけるCMO設置率は限定的です。 本記事では、CMOの意味や生まれた背景、具体的な役割、求められるスキルについて解説します。

 

01CMOとは?

CMO(Chief Marketing Officer:最高マーケティング責任者)とは、企業のマーケティング活動を統括する、マーケティング領域の最高責任者です。米国マーケティング協会(AMA)によると、CMOは企業における最高位のマーケティング職であり、ブランドの方向性やマーケティング戦略を決定し、マーケティングチームを率いる役割とされています。

CEO(最高経営責任者)やCFO(最高財務責任者)と同じ「CXO」と呼ばれる経営幹部の一員として、マーケティングを通じた収益拡大に責任を負います。

▼参考:What is the Role of the CMO?|American Marketing Association

CMOの役割

ここでは、国内のCMOの現状と展望を整理した研究に基づき、4つの役割を紹介します。

なお、CMOが担う役割の範囲は、企業の事業構造や状況によって異なります。そのためご紹介する役割も、CMOが常に全てを担うわけではなく、ケースによって異なる点は留意が必要です。

▼参考:田中洋ほか「日本型CMOの現状と展望 ―CMOは業績にどの程度貢献しているか―」『マーケティングジャーナル』39巻1号(2019)|J-STAGE

全社戦略の策定とリソースマネジメント

CMOの役割の一つは、全社的なマーケティング戦略の策定と、それに伴う予算や人員等のリソースマネジメントです。どの商品や領域に注力するかという方針を示し、長期・短期の活動計画を策定します。そのうえで、マーケティング部門にとどまらず社内のさまざまな部門と連携しながら、売上や事業成長につながるマーケティング活動をリードします。

全ての企業で、CMOが直接的に売上に責任を持つわけではありません。しかしながら、そうではない場合も、経営幹部の1人として、企業収益につながる活動の促進を担います。また責任を持つケースにおいては、商品企画から広告、売上・利益管理まですべてのプロセスに横断的にかかわることもあります。

部門間の調整とコンフリクトマネジメント

マーケティング活動は通常、営業や商品開発、経営企画など複数の部門と連携しながら進められます。そのため時には、部門間で利害の対立が生じることもあります。CMOには、こうした対立の解決、合意形成を担う調整役としての役割が期待されています。

この役割を果たすには、マーケティングの専門性だけでなく、関係者の立場や利害を踏まえて合意を形成する対人折衝能力が求められます。組織を同じ方向に向かわせる力は、CMOの重要な資質の一つといえるでしょう。

マーケティング・エクセレンスの開発

マーケティング・エクセレンスとは、組織が持続的に価値を提供するために、マーケティング活動を高い水準で実行し続ける能力を指します。優れた担当者がいれば、個別のリサーチや広告施策は上手くいくかもしれませんが、組織としての再現性を担保できません。市場把握から施策の実施、データ分析まで、一連のマーケティング活動を高度に実行するには、組織としての仕組みやチーム、標準化されたノウハウなどが必要です。

CMOは、マーケティング活動のKPIの設定・管理や、成果を測る新しい指標の開発、リサーチ手法の定型化などを通じて、マーケティング・エクセレンスの開発を担います。こうした取り組みは、担当者個人の経験や力量に成果が左右されにくい、組織として継続的にマーケティングの成果を生み出せる仕組みづくりにつながります。

▼参考:Scholars@Duke publication: Organizing for marketing excellence

市場探索と分析

市場を探索し、顧客の潜在的なニーズや新たな成長機会がどこにあるのかを探ることもCMOの役割です。ターゲットとなる顧客のニーズや行動、商品を認知してから購買に至るまでのプロセス、市場や業界の動向などに関する調査・分析を統括し、得られた知見を戦略や施策の判断につなげます。

また、市場探索の一環として、新しい事業パートナーを見つけ、協業や提携につなげる「パートナリング」を担うこともあります。市場の変化をいち早く捉え、経営の意思決定に生かすための情報基盤を担う役割といえるでしょう。

日本の大企業におけるCMOの導入状況

日本総合研究所が2025年に経済産業省の審議会へ提出した資料によると、2024年時点でCMOの呼称を採用している企業は、TOPIX100構成企業99社のうち13社でした。これに対し、米国のS&P100企業では43社、英国のFTSE100企業では29社がCMOの呼称を採用しています。調査対象となった日本の大企業では、米英企業と比べてCMOの採用率が低いことが分かります。

また、日本企業ではCFOの呼称を採用している企業が64社、CHROが34社に上ります。財務や人事の最高責任者と比べると、マーケティングを経営レベルで統括する役職の設置は、まだ十分に広がっていないといえるでしょう。

▼参考:株式会社日本総合研究所「日本企業のCG改革とCxO体制の構築」(2025年2月13日)|経済産業省

CMO設置の効果

CMOを設置することが企業の業績にどう影響するかについては、これまでさまざまな議論がなされてきました。米国では1980年代以降にCMOが企業へ浸透していきましたが、2000年代には、その業績貢献をめぐって否定的な見方も示されていました。例えば、CMOの役割はPRやコミュニケーションに限定され、商品や価格などに十分関与できていないという指摘や、2000年代の実証研究ではCMOの設置と企業業績との間に明確な関係を見いだせないとする報告もありました。

一方、2010年代以降の研究では、CMOの設置が業績に良い影響を与えることを示唆する結果が目立つようになっています。米国の上場企業155社を12年間にわたって追跡した実証研究では、CMOを設置している企業のほうが、トービンのq(株式市場での企業価値をもとにした指標)で測ったパフォーマンスが約15%高いという結果が報告されています。日本でも、マーケティング担当役員やマーケティング本部長・部長などを広義のCMOとして捉えた上場企業の分析で、CMO設置企業のほうが2年間の売上伸張率が高く、約4.7%の増収効果に相当するという結果が示されています。

ただし、これらの結果は、CMOを置けば必ず業績が向上することを意味するものではありません。企業規模や業種、CMOに与えられる権限、既存の組織体制などによって、成果の出方は異なると考えられます。

▼参考:Germann, F., Ebbes, P., & Grewal, R. (2015). The Chief Marketing Officer Matters! Journal of Marketing, 79(3)|SAGE Journals

▼参考:田中洋ほか「日本型CMOの現状と展望 ―CMOは業績にどの程度貢献しているか―」『マーケティングジャーナル』39巻1号(2019)|J-STAGE

 

02CMOに求められるスキル

CMOには、マーケティングに関する専門知識に加え、経営幹部として判断し、組織を動かす力が求められます。ここでは、特に重要な3つのスキルを紹介します。

データを分析し、意思決定に生かす力

データを分析し、意思決定に生かす力

CMOには、売上や顧客、施策の実績などに関するデータから示唆を得て、経営やマーケティングの意思決定につなげる力が求められます。

Schoo for Businessの授業『優れた意思決定のためのデータ分析とは?』に登壇する松本健太郎先生は、データは数字だけを指すものではなく、一定の文脈のなかで意味を持つ情報だと説明しています。授業では、同じ対象を見ても人によって数え方や解釈が異なる例を通じて、単純に見えるデータにも、前提や捉え方の違いが入り込むことが解説されています。

そのためCMOには、分析結果をそのまま結論とするのではなく、どのような定義や条件で得られたデータなのかを確かめる姿勢が求められます。データの限界を理解したうえで、現場の情報や経験、他者の視点も組み合わせて判断することが、意思決定の質を高めます。

顧客を深く理解し、経営に反映する力

顧客を深く理解し、経営に反映する力

マーケティング施策を検討するうえで、顧客への理解は重要な出発点になります。CMOには、アンケートなどの調査データに加え、顧客へのインタビューや行動観察、現場から寄せられる声などを通じて、顧客のニーズや購買行動を具体的に捉える力が求められます。

Schoo for Businessの授業『顧客主導で考えよう~アンケートと行動観察調査の有効性』に登壇する垣内勇威先生は、企業は自社のことや競合に意識を向けやすい一方で、手間のかかる顧客理解を後回しにしがちだと指摘しています。そのうえで、想像上の顧客像を細かく作り込むのではなく、実際の顧客に話を聞くことを勧めています。

というのも、企業の想定と顧客の行動が必ずしも一致しないためです。特にオンライン上で顧客が得られる情報や選択肢が増えた現在では、企業からの発信だけで顧客の行動を促すことは難しくなっています。顧客は複数の情報を比較し、自分にとって納得できる商品やサービスを選ぶようになっているのです。

そのためCMOには、企業側の都合や想定だけで顧客を捉えるのではなく、顧客がどのように情報を集め、比較し、判断しているのかを把握する視点が求められます。

多様な人材や部門を動かすリーダーシップ

多様な人材や部門を動かすリーダーシップ

CMOの仕事は、マーケティング部門だけでは完結しません。営業や商品開発、経営企画などの関係部門と連携し、マーケティングの方針を全社的な取り組みにつなげる力が求められます。

Schoo for Businessの授業『組織の舵取り -オーナーシップの実践』に登壇する川井隆史先生は、上級管理職に求められる「人を動かすスキル」として、以下の内容を挙げています。

  • ・経営方針を現場で動く計画に変える力
  • ・不完全情報で最適解を選び取る力
  • ・利害を超えて人を味方にする力

こうした能力は、部門横断でマーケティングを推進するCMOにも通じます。CMOには、自部門の成果だけでなく、中長期的な事業成長や全社への影響を見渡しながら、関係者を巻き込み、必要な場面では判断を引き受けるリーダーシップが求められます。


 

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04まとめ

CMOは、マーケティング戦略の策定から施策の統括、市場調査・データ分析、顧客とのコミュニケーション設計まで、幅広い領域を担う経営幹部です。その役割を果たすには、データを意思決定に生かす力や顧客を深く理解する力に加え、部門を横断して人を動かすリーダーシップが欠かせません。

日本企業ではCFOやCHROと比べてCMOの設置がまだ広がっていない状況ですが、顧客理解を経営に反映できる人材へのニーズは今後さらに高まっていくと考えられます。

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