採用マーケティングとは? メリットや手順、成功事例を解説
採用マーケティングとは、従来のビジネスで活用されてきたマーケティングのプロセスや手法を、採用業務に当てはめた概念を指します。IT技術の向上によって激化した人材獲得競争によって、多くの企業が注目している手法が採用マーケティングです。本記事では、採用マーケティングの定義と、企業で実施する際の手順、成功事例を解説していきます。
01採用マーケティングとは
採用マーケティングとは、従来のビジネスで活用されてきたマーケティングのプロセスや手法を、採用業務に当てはめた概念を指します。企業がが利益を生み出すために検討するマーケティング戦略では、ターゲットの選定、ニーズやトレンドの把握、社会課題のリサーチや分析を経て、商品やサービスが提供する価値を明確化していきます。 このような一般的なマーケティング戦術を、採用業務に代用した考え方が採用マーケティングと呼ばれ、誰でも同じ情報をつかむことができ、人材の獲得競争が激化した昨今で、その必要性が高まっているのです。
採用マーケティングにおけるファネルとチャネルの関係
採用マーケティングにおいて、根幹をなす概念がファネルとチャネルです。ファネルとはマーケティングの分野で消費者の購買フェーズと、そのフェーズにいる人数を図式化して分析する概念です。興味から始まり、ニーズの明確化、選択、決断といったフェーズを踏み、進むに連れて該当する人数が減る図式が漏斗に似ていることから「ファネル」という名称が用いられています。 また、採用マーケティングにおけるチャネルには、SNS、メール、ウェブなどの方法が含まれます。以前であれば、Web広告や説明会といった手法しかありませんでしたが、昨今の採用市場ではSNSやインターンなどの手法も普及しています。企業によって考え方はことなりますが、関心を惹くファネルであればSNS、ニーズを確認するフェーズはオンライン面談といったように、ファネルに合わせたチャネルの選択が必要です。
採用ブランディングとの違い
採用マーケティングと似たニュアンスを持ち、混同されることの多い言葉が採用ブランディングです。優秀な人材を獲得するための戦略である、という共通点を持つ2つの言葉ですが、客観的な事実を反映しているかどうかという点に大きな違いがあります。 採用ブランディングは、ブランディングという言葉含まれていることからもわかるように、企業の魅力をブランド化し、イメージを高めることで人材を惹きつける手法を指します。自社の訴求すべき魅力を把握できていれば良いため、他社分析といったフローは含まれません。一方で、採用マーケティングは市場の動向を反映し、その手法を変えていくという考え方です。適切なフローを策定するために、さまざまなデータ検証を必要とします。
02人事が採用マーケティングを活用するメリット
ここからは人事が採用マーケティングを活用することで、得られるメリットを紹介していきます。先ほども触れたように、採用業務にマーケティングを応用した考え方が採用マーケティングです。上手に活用することで、ターゲット人材からの応募を増やせる、ミスマッチのリスクを軽減できるといったメリットがあります。
ターゲット人材からの応募が増やせる
人事が採用マーケティングを活用する1つ目のメリットが、ターゲット人材からの応募が増やせるというものです。一般的な採用活動は、求人サイトなどに情報を掲載し、求職者からのアプローチを待つというスタンスが用いられています。しかし、採用マーケティングは、ターゲットとなる人材像を明確にし、そこに適切なアプローチをするというスタンスです。もちろん分析や手法の精度によって結果に差が出ることはもちろんのこと、適切に活用することでターゲット人材の母集団を増やす効果が期待できるでしょう。
採用時のミスマッチリスクを軽減できる
採用マーケティングは、採用時のミスマッチリスクを軽減するというメリットも見込める手法です。人事担当者の中には、「採用後に生じるミスマッチに悩んでいる」という方も多いのではないでしょうか。そんな悩みも採用マーケティングを採用し、ファネルに適したチャネルを選択することで、ミスマッチを軽減できます。 採用マーケティングは、興味から始まる求職者の心理状態に合わせたチャネル選択をおこないます。興味から始まり、ニーズの明確化、選択、決断といったフェーズの経過のなかで、ターゲットを絞り込むというフローを設けることで、適切な人材だけを残すことが可能になるのです。ターゲティングに力を入れることで、理想的とする人材からの応募を増やせるため、必然的にミスマッチが起こる確率も減ってくるのです。
採用業務を効率化できる
採用業務を効率化できることでも、採用マーケティングを活用するメリットの1つです。採用マーケティングには、環境分析やファネル、チャネルの設定などのフローが必要であり、採用ブランディングよりも手間のかかる手法であることは事実です。 ただし、採用業務をイニシアティブを持って進められるため、結果的には採用業務の効率化を実現できます。分析方法やノウハウを蓄積でき、ミスマッチリスクを軽減することも可能であるため、常に人材を探し続けるという状態から脱することができます。
03採用マーケティングを実践するための3つの手順
採用マーケティングの概要を理解したところで、企業に取り入れる際の具体的な手順を把握していきましょう。採用ブランディングとは違い、自社分析やペルソナ設定など、企業が販路拡大のために取り入れる手順を踏む点に大きな特徴があります。
自社分析
採用マーケティングを実践するための1つ目のステップが、自社分析です。自社分析の方法もさまざまありますが、企業が持つ強みを弱みを把握することが大きな目的です。また、採用業務においては、ミスマッチを防ぐヒントにも繋がります。ターゲットとなる人材へのアプローチを始める前に、徹底した自社分析を実施しておきましょう。
ペルソナ設定
ペルソナの設定が、採用マーケティングを実践するための2つ目のステップです。採用においてペルソナとは、ずばり採用したい人物像です。採用マーケティングにおいては、企業に必要な人材を明確にすることが非常に重要です。そうすることで、採用活動に軸が通り、人事部のチーム全体でブレのない人材へのアプローチをおこなえます。
カスタマージャーニー設計
マーケティングにおけるカスタマージャーニー設計とは、商品やサービスの購買を決めるまでのプロセスを指します。そして、採用においても、適切な人材へのアプローチをおこなう場合には、求職者の心理状態にあわせたマップを設計しておく必要があります。先ほども触れたファネルで「企業への関心を喚起する」、「顧客のニーズを把握する」といった形で求職者の心理をカテゴライズし、適切なチャネリングをすることで、採用マーケティングの効果を高められます。
04採用マーケティングの主な手法とは
ここからは、採用マーケティングの主な手法を解説していきます。昨今では、オンラインを活用した採用マーケティングに注目が集まっています。
ダイレクトリクルーティング
採用マーケティングに取り入れられることが多い、1つ目の手法がダイレクトリクルーティングです。ダイレクトリクルーティングとはその名の通り、企業が設定したペルソナや候補者に対して直接アプローチする手法を指します。
オウンドメディア・リクルーティング
オウンドメディア・リクリエーションが、採用マーケティングに使われることが多い2つ目の手法です。オウンドメディアとは、採用をおこなう企業が自ら運営するメディアでを指します。社風や文化をわかりやすい伝えるコンテンツを作成することで、求職者に安心感を与えることができます。
ソーシャル・リクルーティング
採用マーケティングに取り入れられることが多い、3つ目の手法がソーシャル・リクルーティング(SNS)です。ソーシャル・リクルーティングは、すでに広く普及したSNSを採用に活用した手法です。InstagramやTwitterでイメージやメッセージを訴求しつつ、SNS上でのコミュニケーションを図れることも大きな魅力です。
05採用マーケティングを有効活用した実例3選
最後に、採用マーケティングを有効活用した実例を確認していきましょう。実践する前の段階でも、うまく活用した事例を確認することで、明確なイメージ作りをおこなえます。
オウンドメディアを運営したLINE株式会社
先ほど紹介したオウンドメディア・リクルーティングを、有効活用した企業がLINE株式会社です。LINE株式会社は、「全員が主役の採用」というコンセプトを軸に、OnLINEという人事領域に特化したメディアの運営をおこなっています。社員インタビューなどを主なコンテンツに採用し、事業の裏側を見せることで、エージェント経由の10倍も高い割合で求職者を集めることに成功しています。
コンテンツ発信の精度を高めた小学館集英社プロダクション
コンテンツ発信の精度に着目した企業が、小学館集英社プロダクションです。小学館集英社プロダクションは採用管理システムを導入し、候補者情報と採用活動の進捗を徹底的に見える化しました。その結果、求職者の状況に合わせたコンテンツ提供が可能になり、応募後の選考者数を前年比50%引き上げることに成功しています。
業務委託を仕組化した株式会社電通
株式会社電通は業務委託を仕組化することで、採用効率を高めることに成功しています。2020年11月に「ライフシフトプラットフォーム」というコンセプトを立ち上げ、ニューホライズンコレクティブという会社を立ち上げました。そして、株式会社電通を新たに辞める退職者に、新会社から業務委託をおこなうことで安定的に仕事を請け負う体制を構築し、採用業務の効率化に成功しています。
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06まとめ
人材獲得競争が激化したことによって、多くの企業が採用マーケティングに注目しています。採用マーケティングには、企業が能動的に求職者へのアプローチをおこなう側面が強く、採用ブランディングと区別される採用手法の1つです。自社分析やファネルの設定など、ノウハウを構築するまでにはそれなりの時間がかかりますが、適切な人材を獲得できるといった大きなメリットを見込めます。これから採用マーケティングの実施を検討している方は、実例を把握しながら、企業にあった手法を検討することからスタートしていきましょう。