不機嫌ハラスメントとは|職場で発生した場合の対処法を紹介

不機嫌ハラスメント(フキハラ)とは、職場で機嫌の悪さを態度や言動で周囲にぶつけ、悪影響を及ぼすハラスメント行為です。本記事では、原因や具体例、対処法、予防策までをわかりやすく解説します。
01不機嫌ハラスメントとは
不機嫌ハラスメントとは、職場での機嫌の悪さを感情的な態度や態度の変化として周囲にぶつけ、職場環境や業務遂行に悪影響を及ぼす行為のことを指します。感情的な態度、無言の圧力、あからさまな表情などにより、周囲の士気が下がり、人間関係の悪化を引き起こします。加害者本人に自覚がない場合も多く、見過ごされがちである点が問題です。
職場における不機嫌ハラスメントの具体例
不機嫌ハラスメントは、感情が連鎖することで職場全体に広がる可能性があります。たとえば、不機嫌な態度を取られた人がストレスを抱え、他の社員に対しても同じような態度を取るといった悪循環が発生します。こうした状況が常態化すると、組織全体のコミュニケーションが低下し、パフォーマンスにも悪影響を及ぼします。
以下のような行動が継続的に見られる場合、不機嫌ハラスメントに該当する可能性があります。ただし、誰でも一時的に不機嫌になることはあるため、頻度や状況を冷静に見極めることが大切です。
成果があがらないストレス
「いくら頑張っても成果が上がらない」「努力をしていても成果に結びつかない」場合には、誰しもイライラしたり、メンタル面での余裕がなくなる可能性があります。成果が上がらない場合のイライラの背景には、自分なりの努力をしていること、一生懸命頑張っているが成果が出ないということがあります。こうした場合には、一度、自分自身が行っていることを振り返り、別の方法などを見出す必要がありますが、その余裕を持てない間は不機嫌になる可能性が高くフキハラを起こしやすい状況が作られます。
認められていないと感じるネガティブ感情
「自分は他の人に比べて評価されていない」などネガティブな感情を持つことも不機嫌ハラスメントの原因です。評価されていないことで、自分だけがと思ってしまうなどネガティブな感情に拍車がかかり、不機嫌になってしまうこともあります。しかし、ネガティブな感情を持たせないために評価をあげることは企業としてはできません。この様な場合には、できている部分とそうでない部分を切り分け、評価している部分を伝え、より高い評価を得るためにするべきことを伝えるなどの工夫を行いましょう。
睡眠不足などの体調不良
睡眠不足や体調不良などにより不機嫌になることでも、不機嫌ハラスメントはおきます。残業が続いている、休日出勤が重なったなどが原因で不機嫌になり、不機嫌ハラスメントをしている場合には、しっかりと休暇を取らせ、体調を整えさせることも必要です。
02不機嫌ハラスメントをしてしまう原因
不機嫌ハラスメントを引き起こす原因は、以下の4つです
- 1:ストレスがコントロールできない
- 2:周囲の気を引きたい
- 3:体調がすぐれない
- 4:評価に対する不満がある
不機嫌ハラスメントを引き起こす背景には、個人の感情コントロールの未熟さや、身体的・心理的な不調、承認欲求など複数の要因が関係しています。本人に自覚がないまま周囲に不機嫌をぶつけてしまうことも多く、適切な支援と環境整備が必要です。
1:ストレスがコントロールできない
業務上のプレッシャーや人間関係の悩みなど、さまざまなストレス要因に対して自分なりの対処方法を持っていない場合、不機嫌という形で周囲に感情が漏れ出してしまいます。怒りや苛立ちを自分で整理できないまま抱え込むことで、表情や口調、態度にネガティブな影響が表れ、結果的にフキハラにつながるリスクが高まります。
2:周囲の気を引きたい
不機嫌な態度をとることで「気づいてほしい」「心配してほしい」といった感情を表現する人もいます。言葉で伝えられない不安や孤独感が、不機嫌という手段を通じて現れることがあり、意識的・無意識的に周囲の反応を引き出そうとしてしまいます。このような場合、適切なコミュニケーション支援や信頼関係の構築が重要です。
3:体調がすぐれない
睡眠不足、過労、慢性的な体調不良は、心の余裕を奪い、不機嫌さが表に出やすくなります。本人の努力とは関係なく、身体的な状態が原因でフキハラを引き起こしてしまうケースもあります。このような場合、業務量の調整や適切な休息の確保など、職場環境そのものを見直すことが重要です。
4:評価に対する不満がある
「がんばっているのに評価されない」「他人ばかりが認められる」といった不満が蓄積されると、感情的な反発として不機嫌さに変化することがあります。評価への不信感や承認欲求が満たされない状態が続くことで、周囲への態度が悪化し、結果的にハラスメントと受け取られてしまう恐れがあります。
03不機嫌ハラスメントの被害者・加害者を見極めるチェックリスト
不機嫌ハラスメントは、自覚のないまま周囲に悪影響を与えたり、反対に相手の機嫌に過敏に反応して疲弊してしまうことがあります。ここでは、「加害者」と「被害者」それぞれの傾向を確認できるチェックリストを紹介します。自身の行動や感じ方を客観的に振り返るきっかけとしてご活用ください。
▶︎出典:フキハラの正体 なぜ、あの人の不機嫌に振り回されるのか? |ディスカヴァー携書
1:被害者を見極めるチェックリスト
フキハラの被害者は、加害者の機嫌や空気に過度に敏感になり、常に相手の言動を気にしてストレスを抱えていることが多くあります。以下の項目に心当たりがあれば、自身がフキハラの影響を受けている可能性があります。職場や家庭での「空気の圧」によって、自分らしさや安心感が奪われていないか、見直してみましょう。
- ・相手の一挙一動にびくびくする
- ・誰かがいる、あるいは、いると感じるだけでストレスだ
- ・たまたま一緒になった人と話題が止まると気まずくてしょうがない
- ・家庭や職場の暗黙のルールを破らないよう常に気をつけている
- ・相手の「気を遣え」オーラを感知しやすい
- ・不機嫌全開のむっつり顔にビクビクしながら対応している
- ・ピリつく場の「空気」に息がつまって耐えられない
- ・相手にいつも振り回される
- ・人を好きになるとその人のことが気になって仕方ない
- ・どちらかというと気が休まることがない
- ・なんとなく私はいつも萎縮しおびえている
- ・自分には自由がないと感じる
- ・人が怒られているのを見ると、自分まで不安になる
- ・まわりの空気に流されやすい
- ・無性にイライラしてやりきれない気持ちになることがある
2:加害者を見極めるチェックリスト
フキハラの加害者は、無意識のうちに不機嫌な態度で周囲を萎縮させていることがあります。以下の項目は、その兆候を見極めるためのチェックリストです。1つでも該当する場合、自分自身の態度が他者に与える影響について振り返ってみることが大切です。感情の扱い方や他者との接し方を見直すきっかけにしましょう。
- ・思い通りにならないと不機嫌になる
- ・どちらかというと気分屋である
- ・自分が中心でないと満足できない
- ・構ってくれないと残念な気持ちになる
- ・後悔するほど怒ることがある
- ・不機嫌な自分のせいで、場の空気が悪くなったことがある
- ・気遣いが足りないなと思うことが多い
- ・誰も自分のことをわかってくれないと思うことがある
- ・家庭では完全オフモードになりたい
- ・イライラするとまわりが萎縮する
- ・職場の雰囲気はあまりよくないと思う
- ・会議が盛り上がらない
- ・パートナーがいつもイライラしている
- ・人のうわさ話や悪口をよく言う
- ・愚痴が多い
- ・自分は内弁慶かもしれない
- ・パートナーには言わなくても伝わる
04不機嫌ハラスメントを相談された際の対処法
Schooの講座「ハラスメントが起きたときの対応方法」では、不機嫌ハラスメントを含む相談への初期対応として、以下の3つのステップを紹介しています。
- 1:傾聴
- 2:分解
- 3:確認
不機嫌ハラスメントの相談対応では、「傾聴」「分解」「確認」の3つのステップが重要です。相談者の話を丁寧に受け止め、事実と感情を冷静に整理し、希望や体調を確認することで、適切な対応につなげていくことができます。このプロセスを踏むことで、相談者の不安を和らげ、組織への信頼感を保ちながら早期解決を図ることが可能です。
1:傾聴

最初のステップは「傾聴」です。これは単に話を聞くことではなく、相談者が安心して話せるような空間と姿勢を整えることを意味します。表情や仕草などの視覚情報にも意識を向け、話の内容だけでなく、感情や空気感にも耳を傾けることが大切です。対面で話す際は、向かい合うよりも斜めに座ることで、相談者の緊張を和らげやすくなります。
また、傾聴の際には「すぐに解決しようとしない」ことも重要です。相談者が話をすることで心が軽くなる場合もあるため、焦らずに耳と心を傾ける姿勢を持ちましょう。
2:分解

傾聴の次は「分解」です。相談内容には、事実と感情の両方が含まれています。特に不機嫌ハラスメントでは、相手の態度に対する不安やストレスといった主観的な感情が強く表れることもあります。受け手は冷静に、事実と意見を切り分けて整理することが求められます。
同時に、自身の先入観を持ち込まないことも大切です。「この人はいつもこうだから」といった決めつけではなく、「いま聞いている話が全体の一部である」ことを意識することで、より公正な対応が可能になります。また、相談者に過度な期待を持たせないよう、「自分がすべてを解決する必要はない」というスタンスで対応範囲を明確にすることも信頼を得るポイントです。
3:確認

最後のステップは「確認」です。不機嫌ハラスメントは感情面の影響が大きいため、相談者の状態や希望を把握することが不可欠です。まずは心身の健康状態を確認し、必要であれば専門的なサポートにつなげる配慮も必要です。
次に、相談者が望む対応を確認します。話を聞いてほしいだけなのか、部署異動や第三者の介入を希望するのかによって、対応方法は異なります。また、上司や関係者への情報共有が必要な場合は、相談者の同意を事前に得るようにしましょう。こうした確認を丁寧に行うことで、安心感のある支援体制を整えることができます。
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株式会社Niesul(ニースル)代表取締役/社会保険労務士
大学卒業後、機械メーカー、コンサルティング会社を経て2010年にニースル社労士事務所を立ち上げ。以来、200社を超える社内制度づくり・働き方改善に関わる。 本音を言える場づくりを大切に、経営者・社員と「ともに」社内制度を作る参加型プロジェクト「みんなでつくる就業規則づくり」、ハラスメント防止のための研修など多数実施。
05ハラスメント防止研修|Schoo for Business

Schoo for Businessでは、約9,000本の授業をご用意しており、様々な種類の研修に対応しています。ハラスメント防止研修に関するコンテンツはもちろんのこと、管理職向けのコミュニケーション研修に活用できるコンテンツも多く揃っています。
受講形式 | オンライン (アーカイブ型) |
アーカイブ本数 | 9,000本 ※2023年3月時点 |
研修管理機能 | あり ※詳細はお問い合わせください |
費用 | 1ID/1,500円 ※ID数によりボリュームディスカウントあり |
契約形態 | 年間契約のみ ※ご契約は20IDからとなっております |
Schoo for Businessの資料をダウンロードする
ハラスメントに関するコンテンツ一覧
研修内容 | 時間 |
ハラスメントへの「アサーティブ」な対応 - 全ビジネスパーソン向け | 1時間40分 |
ハラスメントの対処法 - 管理職向け | 1時間40分 |
ハラスメントを正しく知る- 全ビジネスパーソン向け | 1時間20分 |
コーチングスキル - ハラスメント対応・壁打ち | 1時間55分 |
改正パワハラ防止法の対応 - 人事向け | 55分 |
パワハラと業務指導 線引きの考え方 -管理職向け | 1時間 |
安全な組織をつくるためのLGBTQ+対応 管理職向け | 1時間40分 |
セクハラちゃんと理解していますか? | 30分 |
「これってハラスメント?」と思ったら -第三者のあなたにできること | 30分 |
ハラスメント防止研修のカリキュラム例
この章では、Schooが保有する9,000本の授業の中から、ハラスメント防止研修におすすめの授業を3つ紹介します。
「ハラスメントを正しく知る- 全ビジネスパーソン向け」
第1回 | ハラスメント対策の必要性/パワハラの要件と判断基準 |
時間 | 30分 |
研修内容 |
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第2回 | セクハラ、SOGIハラ、マタハラ、その他のハラスメント |
時間 | 30分 |
研修内容 |
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第3回 | ハラスメントのない職場を目指す 一人ひとり違うことを理解する |
時間 | 20分 |
研修内容 |
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このコースでは主に職場で問題になるパワーハラスメント、セクシャルハラスメント、SOGIハラスメント、マタニティハラスメントについて、その内容とどういった言動がハラスメントに当てはまるかについて、法令や判例にそって解説しています。 また、ハラスメントの原因になり得る無意識の偏見や価値観の違いについても取り上げ、予防のために心がけるべきポイントについても紹介しています。
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社会保険労務士法人グラース 代表
特定社会保険労務士、ハラスメント防止コンサルタント。ダイバーシティ(仕事と育児・介護の両立、多様な働き方、テレワーク導入、女性活躍、ハラスメント防止等)を専門領域としてコンサルティング、研修を多数実施。厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル作成事業」検討会委員をはじめ、多くの公的委員、調査に加わる。
「ハラスメントの対処法 - 管理職向け」
第1回 | ハラスメントへの管理職としての関わり方 |
時間 | 25分 |
研修内容 |
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第2回 | パワハラの判断基準と相談を受ける際のポイント:ケーススタディ |
時間 | 20分 |
研修内容 |
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第3回 | ハラスメントが起きたときの対応方法 |
時間 | 30分 |
研修内容 |
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第4回 | ハラスメントが起きやすい職場の特徴と対策 |
時間 | 25分 |
研修内容 |
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このコースでは、組織、チームの管理職やリーダーとして知っておくべき、ハラスメントが発生した際のメンバーへの対処方法とその防止策について解説しています。
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株式会社Niesul(ニースル)代表取締役/社会保険労務士
大学卒業後、機械メーカー、コンサルティング会社を経て2010年にニースル社労士事務所を立ち上げ。以来、200社を超える社内制度づくり・働き方改善に関わる。 本音を言える場づくりを大切に、経営者・社員と「ともに」社内制度を作る参加型プロジェクト「みんなでつくる就業規則づくり」、ハラスメント防止のための研修など多数実施。 著書に『「社会人になるのが怖い」と思ったら読む 会社の超基本』がある。YOUTUBE「世界一わかりやすい就業規則」チャンネルを発信中。
「改正パワハラ防止法の対応 - 人事向け」
第1回 | 企業に科せられた10項目の措置義務への対応(前半) |
時間 | 25分 |
研修内容 |
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第2回 | 企業に科せられた10項目の措置義務への対応(後半) |
時間 | 30分 |
研修内容 |
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このコースでは2020年に施行された「改正 労働施策総合推進法」(パワハラ防止法)に基づき、2022年4月1日からすべての企業に科せられた10項目の措置義務への対応について2コマに分けて解説しています。
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高井・岡芹法律事務所 弁護士
2004年早稲田大学卒業。2007年東京弁護士会登録。2011年経営法曹会議会員。企業側弁護士として、労働問題の解決に取り組む。中でもハラスメント等の問題社員対応、職場のLGBTの問題を専門とする。単著として『1冊でわかる!改正早わかりシリーズ パワハラ防止の実務対応』(労務行政)、共著として『知らないでは済まされない!LGBT実務対応Q&A―職場・企業、社会生活、学校、家庭での解決指針―』(民事法研究会)などがある。
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大企業から中小企業・スタートアップまで幅広く導入

Schoo for Businessは、大企業から中小企業まで3,500社以上に導入いただいております。利用用途も各社さまざまで、階層別研修やDX研修としての利用もあれば、自律学習としての利用もあり、キャリア開発の目的で導入いただくこともあります。
導入事例も掲載しているので、ご興味のあるものがあれば一読いただけますと幸いです。以下から資料請求いただくことで導入事例集もプレゼントしております。そちらも併せて参考にいただけますと幸いです。
06まとめ
不機嫌ハラスメントは、加害・被害の双方に無自覚で巻き込まれるケースが多く、職場全体の雰囲気や業務効率に悪影響を及ぼします。本記事では、原因やチェックリスト、相談対応の基本ステップを紹介しました。相談を受けた際は、話を丁寧に聞き、冷静に整理し、本人の状態や意向を確かめることで、的確かつ信頼ある対応につなげることが求められます。