社外取締役とは?期待される役割や相応しい人物像について解説
日本においても上場企業を中心に、社外取締役を設置する企業が増加傾向にあります。社外取締役の設置は企業の成長や健全経営に繋がるものの、具体的な役割についてわからない場合もあるようです。本記事では、社外取締役に期待される役割や相応しい人物像について解説します。
- 01.社外取締役とは?社外取締役の概要
- 02.社外取締役が必要とされる会社とは
- 03.社外取締役の具体的な仕事と期待される役割
- 04.社外取締役に相応しい人物像
- 05.社外取締役として活躍する人物例
- 06.まとめ
01社外取締役とは?社外取締役の概要
社外取締役を選任する企業が増加傾向にありますが、ここでは社外取締役の概要を解説します。
社外取締役とは社外から招いた取締役のこと
社外取締役とは、文字通り、社外から招いた取締役のことです。取締役は、企業の業務執行に関する意思決定をする重要な役割を担いますが、社外取締役は社内で昇格した人材ではないため、社内の利害関係にとらわれずに任務を遂行することが可能です。 欧米では社外取締役の設置が当然のこととみなされ、取締役の半数以上を社外取締役が占めるとも言われています。日本でも、改正会社法の成立により、上場企業を中心に社外取締役の設置が増加傾向にあります。
社内取締役との違いは「客観性」
社外取締役と社内取締役の大きな違いは「客観性」であると言えるでしょう。社内取締役は、通常社内で昇進した社員がその立場に就任します。それに対して、取り引きや資本関係のない社外から取締役を迎えることで、他の取締役や企業との利害関係を一切持たずに、第三者の視点で経営状況に意見することができます。
社外取締役の歴史はコーポレートガバナンスの歴史であるとも言える
バブル経済が崩壊する前までは、融資関係にある銀行が企業経営に大きな影響を与えていました。しかし、規制緩和や資金調達手段の多様化に伴い、株主の影響力が強くなりました。そこで、コーポレートガバナンスを強化するため、つまり企業が法令を守り不正行為を行わないよう監視するための施策のひとつとして、社外取締役が設置されるようになりました。 2014年の改正会社法では、大企業は社外取締役を設置しない場合、株主草加で理由を説明することが義務付けられました。また、2015年から金融庁と東京証券取引所が取りまとめたコーポレートガバナンスコードが適用され、上場企業では社外取締役を2名以上設置することが必須ととなりました。 2018年以降は、社外取締役を2名以上選任している企業の比率は90%以上となり、2021年の改正会社法では、上場企業に対して社外取締役の選任が義務付けられることになりました。
社外取締役の平均報酬は世界と比べて低いのが現状
ウイルス・タワーズワトソンは、2019年の「日米欧社外取締役報酬比較」を実施し、アメリカは3,200万円、ドイツは2,340万円、イギリスは1,430万円、日本は1,430万円、フランスは940万円という結果を公開しています。日本はヨーロッパと同水準であることがわかりましたが、調査の際の算出方法が異なることも指摘されています。 日本における社外取締役の平均報酬は、朝日新聞と東京商工リサーチの調査によると、663万円であると公表されています。社外取締役の報酬額には幅があり、200万円未満が5%、2,000万円以上は17%であることもわかっています。 2つの調査結果をまとめると、社外取締役の平均報酬は、依然として世界と比べて低いのが現状であることがわかります。ただし、複数の企業を掛け持ちすることも可能で、その場合は報酬が高額になる場合もあります。
02社外取締役が必要とされる会社とは
すべての企業が社外取締役を設置しなければならないわけではありません。ここでは、社外取締役が必要とされている会社について解説します。
上場企業では社外取締役の設置が必須である
2015年に施行されたコーポレートガバナンスコードにより、上場企業は社外取締役2名以上の設置が必須となりました。それにより、2019年には99%の上場企業が社外取締役を2名設置するようになりました。 コーポレートガバナンスコードは、東京証券取引所内のルールとして施行されているに過ぎませんでしたが、2021年3月1日に改正会社法が施行され、上場企業における社外取締役の設置が義務となりました。 すでに大半の上場企業が社外取締役の選任を行っていますが、法律で義務化されたため、欠員となった場合の対策として、常に複数人の社外取締役を選任しておく必要が生じています。
株式上場を目指す会社も社外取締役の設置が必要となる
現時点で社外取締役の設置義務化が適用外の会社であっても、将来的に株式上場を目指すのであれば、社外取締役の設置が必要となるでしょう。上場審査で、社外取締役の設置状況が問われる可能性もあるので、上場決定前から設置しておくことで、手続きがスムーズになると考えられます。
ベンチャーキャピタルから出資を受ける場合
高い成長が予想されるとして、ベンチャーキャピタルから出資を受ける企業も少なくありません。この場合、ベンチャーキャピタルから社外取締役が派遣されることもあります。ベンチャーキャピタルは、企業が成長して上場することにより利益を得るため、社外取締役を派遣することで、経営ノウハウの提供や、企業価値を上げるチャンスに敏感に対応することができます。
03社外取締役の具体的な仕事と期待される役割
ここでは、社外取締役の具体的な仕事内容や、期待される役割について解説します。
取締役会に参加する
社外取締役の仕事のひとつは、取締役会に参加することです。会社の方向性や事業戦略などを決定する重要な会議ですが、ただ参加するのではなく、意見をもべることも期待されています。自身の専門知識を活かして意義のある議論を行うために、議事録をしっかりと読み込み、質問などを事前に考えておく必要があるでしょう。
コーポレートガバナンスを強化する
社外取締役にとって、コーポレートガバナンスを強化することも大切な仕事です。社内取締役のみの企業経営では、業績を上げることに執着するあまり、不正行為を行ってしまうことも考えられます。そこで、社外取締役が第三者の視点で監視することにより、不正行為を未然に防ぐ、または問題発生時に速やかに対処することが可能になります。
株主と経営陣の橋渡しをする
社外取締役は、株主と経営陣の橋渡しという重要な役割も担っています。株主は経営に直接関わることはできませんが、意見を述べることである程度の影響を与えることが可能です。しかし、少数株主の意見が反映されることは困難な場合があり、その際に社外取締役が有益な意見を代弁することができます。
客観的な経営助言を行う
社外取締役は、客観的な経営助言を行う役割も期待されています。経営陣が無理な戦略にチャレンジしようとしている場合、社外取締役は客観的な見方で反対意見を述べる必要があります。その一方で、保守的で新たなチャレンジに対して消極的な経営陣に対しては、積極的な見方ができるようアドバイスを与える必要があるでしょう。
04社外取締役に相応しい人物像
社外取締役を選任するにあたり、相応しい人物を選出する必要があります。ここでは、社外取締役に相応しい人物像について解説します。
社外取締役として認められる人物像の要件がある
まず、社外取締役の要件があるため、それを満たす必要があります。要件については、会社法第2条15号に記載されており、要約すると、当該株式会社または親会社や子会社、経営陣などとの間に利害関係を待たない人物である必要があります。会社関係者を除外することで、第三者としての立場や透明性を求めることが可能になります。
経営のノウハウがある人材が多く選ばれている
前述の朝日新聞の調べによると、東証1部の社外取締役は約5,000人で、経営者や経営者としての経験を持つ人が約2,670人であることがわかっています。経営のノウハウがある人材を選任することで、業績向上または新規事業の拡大への貢献を期待することができます。
弁護士や公認会計士も多く選ばれている
経営のノウハウを持つ人物以外にも、弁護士が約730人、会計士や税理士が約530人選ばれています。法律や税金に関する専門知識は、企業を運営するために欠かかすことができません。コーポレートガバナンスを強化するための、最善のアドバイスが期待できるでしょう。
05社外取締役として活躍する人物例
社外取締役として活躍し、知名度を上げている人物もいます。ここでは、社外取締役として活躍する人物例を紹介します。
修羅場をくぐってきたトップ経営者の新浪剛史氏
社外取締役起用の成功例として語られることの多いのが、新浪剛史氏です。同氏はサントリーホールディングス社長で、以前にはローソンの社長であったことでも知られています。同氏は企業経営が難しい現代における社長の条件として「修羅場体験」を挙げており、自らも修羅場をくぐってきた経験を生かして、オリックス、三菱自動車、ACCESSなどの社外取締役を務めてきました。
不二家の社外取締役に抜擢された女優の酒井美紀さん
2021年3月に不二家の社外取締役として抜擢されて注目を浴びたのが、女優の酒井美紀さんです。女優としての知名度だけでなく、主婦であることや国際NGOの親善大使などの経験も活かしたアドバイスが期待されています。特に、不二家の顧客は子ども連れの主婦も多いことから、主婦目線での意見を参考にできると考えられます。
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06まとめ
社外取締役の具体的な仕事や期待される役割、相応しい人物像についてまとめました。改正会社法で上場企業における社外取締役の設置が義務化されたこともあり、その重要な役割が再確認されています。それと同時に、人材不足により候補者が少ないことも多くの企業にとって課題となっており、限られた人材の中から如何に自社に相応しい人物を選任するかも大きなポイントとなっています。