モラール・サーベイとは?従業員の本音を知るメリットについて解説
士気が高く意欲にあふれる組織は常に高い業績を出し、著しい発展を遂げるでしょう。従業員の定着率は高く人材の層も厚みを増し、強固な組織基盤を形成していきます。当記事では従業員の士気や労働意欲を計測するモラール・サーベイと、従業員の本音を知るメリットについて解説します。
- 01.モラール・サーベイとは
- 02.モラール・サーベイの目的とメリット
- 03.モラール・サーベイ実施のポイント
- 04.モラール・サーベイの結果の活用方法
- 05.従業員の本音を知ることは覚悟が必要
- 06.モラール・サーベイが士気を下げる結果になることも
- 07.モラール・サーベイは会社の成績表
- 08.まとめ
01モラール・サーベイとは
モラール・サーベイとは従業員の意識調査のことで、別名「士気調査」や「従業員満足度調査」と呼ばれることもあります。組織運営にはさまざまな課題がつきものです。「社内のコミュニケーションがうまくいかない」「若手人材が定着しない」といった人材面の課題は、早急に解決を図らなければなりません。 モラール・サーベイはこうした課題を正しく把握し、改善を図る目的で行う意識調査のことをいいます。
モラールとモチベーションの違い
モラールとはフランス語で、「士気」「意欲」という日本語に訳されます。モラールと混同しやすい言葉にモチベーションがあります。両者の違いを整理しておきます。 モラールとは組織全体の意識に関する概念で、職場の環境や労働条件、人間関係などに左右される集団の感情のことです。これに対しモチベーションは個人の意識に関する概念で、人に行動を起こさせる「動機」のことを指します。 モラールとモチベーションの違いは、集団に対してと個人に対しての違いであるといえます。
02モラール・サーベイの目的とメリット
モラール・サーベイは、組織力の強化と、従業員のパフォーマンス向上を目的に行われます。モラールを低下させている課題・問題点を把握し改善を図ることで、生産性の向上や離職の防止といった具体的な成果につなげていきます。
組織の課題・問題点の把握
モラール・サーベイは従業員の本音を引き出すことで、解決すべき経営課題を明確にするメリットがあります。職場の士気・意欲が上がらない要因を分析し、結果をもとに対策を検討していきます。モラール・サーベイは科学的な根拠に基づき実施される、組織課題の発見や問題点の把握に効果を発揮する優れた手法であるといえます。
生産性の向上
多くの企業は、その組織規模が大きくなるにつれ経営層と従業員の直接的な接点は少なくなり、心理的な距離が遠くなります。こうした状況でリサーチをせずに、やみくもに施策を講じても、その施策は的外れなものに終始する可能性があります。 モラール・サーベイによる従業員の意識調査を実施し、結果を分析することでモラールの阻害要因をある程度、正確に把握できます。その分析結果をもとに立案した対策は、実効性の高いものになるでしょう。
離職の防止
従業員の離職は組織にとって、「頭の痛い問題」であるといえます。離職の増加は採用コストの増大や、業務の停滞といったあらゆる問題の原因となります。従業員の離職には何らかの原因が必ずあります。モラール・サーベイを実施することで、今まで把握しきれていなかった従業員の不満を把握し、離職の原因となる問題に直接アプローチできるようになります。
03モラール・サーベイ実施のポイント
モラール・サーベイを実施する際には、いくつか重要なポイントがあります。もっとも重要なのは「従業員の本音」を引き出すことです。調査の方法が適切でないと、この「従業員の本音」がうまく引き出せず、分析結果から講じる対策は効果の乏しいものとなるでしょう。モラール・サーベイによる意識調査の精度を上げるには、以下の点に注意して実施する必要があります。
モラール・サーベイ実施の目的を明確にする
モラール・サーベイを実施する際は、その実施目的を従業員に向け正しく発信する必要があります。調査を何のために実施するのか、そしてその結果はどのように使用するのか、分かりやすく説明し、従業員に調査の重要性を理解してもらいます。 従業員の本音を引き出すには、企業の側も本音で語り、本気で改善を行う姿勢があることを示す必要があるのです。
プライバシーへの配慮
従業員の本音を引き出すには、プライバシーへの配慮は重要です。記名式の調査では批判的な意見は出にくいものです。しかし経営層にとって耳の痛い批判的な意見ほど、課題の根本的な原因である可能性が高いのです。 こうした意見を正しく集約するためには、匿名性を担保することは最低条件です。また筆跡などにより、個人の特定ができないような配慮も必要となるでしょう。
回答の使用目的を明確にする
モラール・サーベイを実施する際は、実施目的だけでなく回答の使用目的についても明確にする必要があります。「組織課題改善のための分析資料としてのみ使用する」というように、使用目的について明言しておくのです。あわせて、人事評価をはじめ個人の処遇には一切影響しないことも明言し、心理的安全性を確保する必要もあります。こうした配慮により、本音が引き出しやすくなり調査の精度が向上します。
継続的・定期的に実施
モラール・サーベイにより組織課題を把握し改善していくためには、長期的な視点が必要となります。最低でも一年に一回、理想は半年に一回、定期的に継続して実施すべきです。単発あるいは不定期な実施では、課題改善による従業員の意識の変化を把握できません。「改善への取り組みを継続して行っていく」という企業の姿勢を示すためにも継続は重要です。
自由意見欄を必ず設ける
モラール・サーベイの調査項目を設定する際は、必ず自由意見欄を設けるようにします。選択式の項目だけでなく自由記載の記入欄を設けることで、より具体性をもった課題の抽出が可能になります。自由意見欄に記載された内容は、多数派・少数派の意見に関わらず、いずれも貴重なものです。組織改善に向けたヒントの宝庫であるといえるのではないでしょうか。
04モラール・サーベイの結果の活用方法
モラール・サーベイを実施することで、従業員は企業が課題改善の取り組みを行う意志があることを知り、前向きな印象を抱くでしょう。「自分たちの意見を聴いて、それを反映してくれる」という期待をもつようになるのです。このことは、従業員の経営の参加意識を高めるきっかけになるのではないでしょうか。 こうした良い流れを保ち、経営への参加意識を高め継続していくためには、以下の点に注意する必要があります。
課題を解決する姿勢をみせる
企業が良い方向に変わろうとする意志を従業員に示すには、モラール・サーベイにより抽出された結果を真摯に受け止め、課題を解決しようとする姿勢・方向性を分かりやすく、明確に表明する必要があります。 初回のモラール・サーベイを行った時点では、「このような調査で本当に会社が変わるのか?」と半信半疑の従業員も少なからずいるものです。そうした懐疑的な考えを払拭するためには、課題解決に向けた姿勢を強烈に印象づけなくてはなりません。
社内改革の根拠とする
例えば、モラール・サーベイにより「社内の雰囲気が暗い」「コミュニケーションが不足している」という課題が浮き彫りとなり、それを解決するために「あいさつ運動をしましょう」と社長が号令をかけたとします。モラール・サーベイを実施せず、そのようなことを始めると「単なる社長の思いつき」と取られるかもしれません。 しかし「社内の雰囲気が暗い」という課題が、モラール・サーベイの結果として導き出された「従業員の多くが感じている問題点」であるならば、「みんなで解決していこう」という機運を高めることができます。このように変革の根拠として、モラール・サーベイの結果を使うこともできるのです。
05従業員の本音を知ることは覚悟が必要
モラール・サーベイにより従業員の本音を知ることは、経営層にとって覚悟が必要なことかもしれません。従業員満足に力を入れていると自負していたが、総合的に点数が低いといったことや、自由記載欄に不平や不満をストレートに書いてくる従業員が多数いるといった状況も想定されます。 もしかすると、そうした結果を見て立腹する経営者もいるかもしれません。しかし、それが現実です。現実を直視するには相当な覚悟が必要なのです。
06モラール・サーベイが士気を下げる結果になることも
モラール・サーベイを実施したことが、従業員の士気を下げる結果につながることもあるので注意が必要です。それは、モラール・サーベイの結果に対してフィードバックが行われなかったり、改善のための動きが感じられなかったりといった場合に生じます。 「何のために調査をしたのか」「何を言ったって会社は変わらないじゃないか」という意識をもたれることは、もっとも恐れるべきことです。どのような結果であれ、速やかなフィードバックと改善のためのアクションは必須であるといえます。
07モラール・サーベイは会社の成績表
モラール・サーベイの結果は、現段階における会社の成績表といえます。従業員の不満に接したとき、苛立ちや失望を感じることがあるかもしれません。しかしその現実にしっかり向き合うことで、会社を良くしていく何らかのヒントが発見できるのです。 結果を真摯に受け止め、従業員と一丸となり課題解決に取り組むことで、従業員のモチベーションが上がり、会社の成長につながるのではないでしょうか。
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08まとめ
モラール・サーベイの実施には、「従業員の不満をすべて一旦受け入れる」という覚悟が必要です。「現実を知ることでしか改善を図ることはできない」という、強い気持ちで結果に向き合うことが求められます。従業員満足は顧客満足と同じくらい、あるいはそれ以上に重要であると言っても過言ではありません。従業員満足の向上が良い製品や良いサービスを生み、会社を発展させていくのではないでしょうか。
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1991年、日本IBMを退職、ICT技術を活かしてベンチャーを創業。携帯テクノロジーが注目され、未上場で時価総額 100億円超。その後、組織論と起業論を専門として 学習院大学 客員教授に就任。幸せ視点の経営講義が Z世代に響き、立ち見のでる熱中教室に。現在は ビジネス・ブレークスルー大学 教授として教鞭をふるう。2018年には、社会人向け講座「hintゼミ」を開講。卒業生は 600名を超え、三ヶ月毎に約70名の仲間が増えている。