公開日:2021/09/10
更新日:2023/11/27

レディネスとは?意味から人材育成に活用する方法まで詳しく解説

レディネスとは?意味から人材育成に活用する方法まで詳しく解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

ビジネスで成果を挙げるためには学習し続ける姿勢が不可欠と言えますが、同じように研修を受けてもその効果が人によって異なるのはなぜなのでしょうか。この記事では、心理学の概念であるレディネスの意味から、人材育成に活用する方法まで詳しく解説します。

 

01レディネスとは

レディネスとは心理学における概念で、学習のための準備状態を示す言葉です。 学習するための前提条件として知識や経験、環境などが整っている状態を指すため、教育や学びの場においてレディネスは必須であるとされます。 レディネスが整った学習者は、自ら興味を持ち、積極的に学習に取り組むことができますが、レディネスが整っていない学習者は学習そのものに興味を示さないため、教育の効果を挙げることは難しいでしょう。

ビジネスにおけるレディネスの種類

ビジネスにおけるレディネスの種類はさまざまですが、その中でもイメージしやすく、よく使用されるものを例として3つご紹介します。

デジタルレディネス

現在日本でも多くの企業が、ITの活用を通じてビジネスモデルや組織を変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいますが、このように時代の流れや外部環境の変化に対応してデジタル化への準備を整えることを「デジタルレディネス」と呼びます。 デジタルレディネスが整った人材の多い企業は、DXが推進しやすくなると言えるでしょう。

就業レディネス

学生から就職して新入社員となるにあたっての心構えが整った状態を「就業レディネス」と呼びます。具体的には就職活動を通じて自己理解を深め、社会人としての自覚が芽生えた状態を指します。 就業レディネスの整った新入社員は、新人研修やOJTに積極的に取り組むことができるでしょう。

職業レディネス

特定の業務に強い興味・関心やその業務を遂行できるという自信を持っていて、企業から期待される役割を果たすための職業生活を始める準備が整った状態を「職業レディネス」と呼びます。 心理学者で職業カウンセラーのジョン・L・ホランドの研究では、職業レディネスを判断する際に、適性の高い職業や従業員の性格タイプは6つの「ホランド・タイプ」に分類されます。

類型 興味や関心の対象 適性の高い職業
現実的(Realistic) 機械、モノ オペレータ、職人
研究的(Investigative) 抽象的な概念、理論 学者、医師、IT系技術者
芸術的(Artistic) 音楽、美術、文学 アーティスト、俳優、作家
社会的(Social) 人、人と活動すること 医療・福祉職、販売職
企業的(Enterprising) 企画立案、組織作り 経営管理、広報、財務、営業
慣習的(Conventional) 反復的な活動 経理、事務、法務、編集
 

具体的には、ホランド・タイプに沿って興味と自信を判断する「職業レディネス・テスト」を用いて定期的な人事面接に活用すると、従業員の育成や適切な配置に役立つでしょう。 職業レディネス・テストは、従業員が自分の興味や自信を客観的に把握できることができたり、仕事の適性に迷いがある場合、それを可視化できたりすることがメリットですが、一定の職業経験を積んでいる従業員に対しては効果がないとされているため注意が必要です。

学習優位説と成熟優位説

心理学では、子供の学習において「学習優位説」と「成熟優位説」の2つの主張があります。 教育は早期に行うほどよいと考える学習優位説に対して、一定の成熟が見られ学習への準備が整わなければ教育は意味を成さないと考えるのが成熟優位説です。 学ぶための前提条件として、知識や経験、環境が整っている状態を指すレディネスは成熟優位説に基づく考え方であると言えますが、ビジネスにおいても階層別研修などにこの考え方が応用されていると考えてよいでしょう。 例えば、新人研修でマネジメント研修を行っても、自分事として捉えてもらえないためあまり効果はありませんが、中堅社員に対してマネジメント研修を行うと自分事として捉える人が多いため効果が上がりやすいということがこれにあたります。

 

02レディネスが注目される理由

レディネスが注目されるようになった背景は、大きく次の6つがあります。

  • 1:離職の防止
  • 2:生産性の向上
  • 3:企業のイメージアップ
  • 4:新入社員の育成
  • 5:VUCA時代に即した人材育成
  • 6:ミスマッチの解消

これらの要因が、組織がレディネスの観点から人材管理や育成に注力する理由です。企業がレディネスを活用して、これらの課題に効果的に対処することで、競争力を維持し、持続可能な成長を達成することが期待されています。ここでは、上記の6つについて具体的に解説していきます。

離職の防止

新入社員が、入社前の理想的なイメージと入社後の現実とのギャップによって抱くネガティブな感情を「リアリティ・ショック」と呼びますが、新人研修の前段階として内定者研修などを行い、就業レディネスを整えることで、早期離職を防止する企業が増加しています。 新入社員に対して研修を行う人事の担当者は、研修の内容や進捗ばかりに気を取られがちですが、新入社員の就業レディネスが整っているかどうかをしっかりとチェックすることも重要です。

生産性の向上

レディネスの整った人材は、時代の変化に伴って新しくできた業務や、その業務を行うために必要なスキルの取得にも前向きに取り組むため、企業の生産性が向上します。 このような人材は、既成の概念に囚われない新しいアイデアやビジネスモデルを生み出す可能性も高いため、結果的に企業の成果を向上させることができるでしょう。

企業のイメージアップ

人材育成や組織改革など、働きやすい環境作りに力を入れる企業はブランドイメージが向上しやすく、売上がアップし、さらに自社に合った人材が雇用しやすくなるという良い循環が生まれます。 レディネスを意識して効率よく人材育成を行えば、この循環をさらに加速することができるでしょう。

新入社員の育成

新入社員が組織に順応し、即座に業務に参加できるようになるプロセスは、企業にとって重要です。これには、入社後のトレーニングや教育が不可欠です。レディネスの視点から見ると、新入社員が迅速に業務に取り組める準備が整っていることが求められます。これには、組織が新入社員に必要なスキルや知識を提供し、適切なサポートを行うことが含まれます。

VUCA時代に即した人材育成

VUCA(不確実性、複雑性、曖昧性、変動性)時代では、急速な変化や予測困難な状況が常態化しています。企業はこれに対応するために、柔軟性や適応力を備えた従業員を育成する必要があります。レディネスの観点からは、従業員が変化に対応し、新たな状況にスムーズに適応できる準備が整っていることが重要です。トレーニングや教育プログラムは、従業員が変化に対して柔軟かつ積極的に取り組めるようサポートする役割を果たします。

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ミスマッチの解消

従業員のスキルや経験と、担当する業務やポジションの要件とのミスマッチは、効率性や生産性を低下させる要因となります。レディネスの概念は、従業員と仕事の要件が整合しており、最適なパフォーマンスが発揮できるようになる状態を指します。組織は、従業員のスキルや志向を正確に把握し、それに基づいて適切なポジショニングや役割を割り当てることで、ミスマッチを解消し、効果的なチームを構築することが求められます。

 

03レディネスレベルとは

リーダーシップを発揮してチームの成果を挙げるのがリーダーの役割ですが、部下の状況に応じてリーダーシップ・スタイルを変えることで部下を効率よく成長に導くことができます。 このリーダーシップ・スタイルを考えるためにレディネスが活用できるのです。 具体的には、レディネスをチームにおける部下の状況に当てはめて、「能力」と「意欲」の2軸で構成される4つの領域で分け、これをレディネスレベルと呼びます。 部下のレディネスレベルを測ることで、リーダーはその部下の状況に合わせた適切なリーダーシップ・スタイルがわかる仕組みです。 レディネスレベルにおける能力や意欲は、人事評価で取り上げられる能力や意欲という意味だと誤解されがちですが、そうではなく、特定の課題の達成に対する能力や意欲を示すため、課題に応じて変化します。

レディネスレベルを測る2つの軸

レディネスレベルを測る2つの軸、能力と意欲について解説します。

部下の学習しようとする「能力」

一般的に能力とは、物事を成し遂げる力のことですが、レディネスレベルにおける「能力」とは、特定の作業や活動、課題の遂行に関して、部下が持つ知識や経験、スキルのことを指します。

部下の学習しようとする「意欲」

一般的に意欲とは進んで何かをしようと思うことやその心の動きを指しますが、レディネスレベルにおける「意欲」とは、特定の課題の達成に対する部下の自信や熱意、打ち込み具合、動機の強さのことです。

4つのレディネスレベルとそれに合ったリーダーシップ・スタイルについて

能力と意欲を掛け合わせてできる4つの部下の状況であるレディネスレベルと、それに合った育成方法であるリーダーシップ・スタイルについてそれぞれ説明します。 リーダーの行動は、リーダーが業務の手順などを具体的に部下に指示する「指示的行動」と、信頼関係構築を目的としてコミュニケーションや承認行為を行う「援助的行動」の2つに分類でき、これらを高低2軸とすることで4つのリーダーシップ・スタイルが生まれます。

レディネスレベル1(能力:低×意欲:低)

能力と意欲が共に低いレディネスレベル1の部下には、以下のような特徴があります。

  • ・言い訳や不平不満が多く、自己防衛的な振る舞いをする
  • ・仕事が遅く、納期までに終わらない
  • ・指示通りにしか仕事ができない
  • ・行動や態度が曖昧で、たまに混乱する
  • ・失敗を恐れ、取り越し苦労をする
  • ・会社のビジョンや目的をまだ理解できない

これに適したリーダーシップ・スタイルは指示的行動の割合が高く、援助的行動の割合が低い「教示的リーダーシップ」となり、次のような指導を行うのが望ましいと言えます。

  • ・やるべき事は具体的に説明する
  • ・1回の説明を短めにする
  • ・教えることに集中する
  • ・プレッシャーをかけ過ぎない
  • ・良い方向への進歩があれば、それを強化する

レディネスレベル2(能力:低×意欲:高)

能力が低く意欲が高いレディネスレベル2の部下には、次のような特徴があります。

  • ・仕事を積極的に引き受ける
  • ・物事に関心を示し、素早く行動する
  • ・注意深く人の話を聞き、明確な説明を求める
  • ・過程よりも結果を気にする
  • ・質問に対して表面的な受け答えしかできない
  • ・仕事の目的をまだ理解できない

これに適したリーダーシップは指示的行動と援助的行動を共に積極的に行う「説得的リーダーシップ」となり、次のような指導を行うのが望ましいでしょう。

  • ・コミュニケーションを通じて説明する
  • ・決定事項を説明し、疑問点に対して質問するよう促す
  • ・部下の役割とは何かを説明する
  • ・課題の理解度を調べるための質問をする
  • ・改善や向上が見られたら励ますようにする

レディネスレベル3(能力:高×意欲:低)

能力が高く意欲が低いレディネスレベル3の部下には、以下のような特徴があります。

  • ・次の課題に取り掛かる時に躊躇したり、抵抗したりすることがある
  • ・仕事を無理矢理させられていると感じている
  • ・仕事をする際に軽度の精神的な苦痛を感じている
  • ・周囲からの励ましや慰め、支援を求める
  • ・自分の能力について懐疑的である

これに適したリーダーシップは、指示的行動の割合が低く援助的行動の割合が高い「参加的リーダーシップ」となり、次のような指導を行うと良いでしょう。

  • ・決定の責任は部下にも分担させる
  • ・仕事ぶりをほめて信頼関係を築くようにする
  • ・積極的に部下の話に耳を傾ける
  • ・仕事の結果に焦点を当てるようにする
  • ・部下が不安に感じていることについて話し合うようにする

レディネスレベル4(能力:高×意欲:高)

能力と意欲が共に高いレディネスレベル4の部下には、次のような特徴があります。

  • ・報・連・相を適切に行う
  • ・自立して仕事を進めることができる
  • ・チームメンバーに対して協力的に振る舞う
  • ・知識や情報、アイデアを他者と共有することができる
  • ・責任を引き受け、結果指向である

これに適したリーダーシップは指示的行動と援助的行動が共に低い「委任的リーダーシップ」となり、以下のような指導を行うと良いでしょう。

  • ・仕事を任せ支援のみ行う
  • ・ゆるやかに監督する
  • ・部下主導のコミュニケーションを推奨する
  • ・自発的にチャレンジするよう促す
  • ・成果を認め、ほめる

 

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04レディネスの活用場面

レディネスの概念は、個々の従業員や組織全体が特定の状況や課題に対して適切に準備されている状態を指します。ここでは、異なる活用場面においてレディネスがどのように発揮されるかについての解説です。

入社までの期間

新入社員が入社する前の期間に、組織はレディネスを高めるためのプログラムを実施できます。これには、入社前のトレーニングや資料提供、企業文化や価値観の理解促進などが含まれます。新入社員が最初の日からスムーズに業務に取り組めるように、事前に必要な情報やスキルを提供することが求められます。

インターンシップ

インターンシップは、学生や若手の才能を採用するための一環として利用されます。組織は、インターンに対して業務の実践的な経験を提供し、同時に組織文化や価値観に触れる機会を提供します。これにより、将来的な従業員が組織に適応しやすくなり、即戦力となるためのレディネスが向上します。

企業内研修

組織は、従業員に対して特定のスキルや知識を提供する企業内研修を実施します。これは、新しい業務やプロセスに対するレディネスを向上させるための手段です。トレーニングは、従業員が変化する業務や技術に適応しやすくし、組織全体の効率性を高めるのに寄与します。

メンター制度

メンターシップは、経験豊富な従業員が新人や若手従業員を指導し、サポートするプロセスです。メンター制度は、従業員が組織内でのキャリアの進展や業務に関する知識を効果的に獲得し、自己成長を促進するのに役立ちます。

海外留学

海外留学は、従業員が異なる文化やビジネス環境に触れ、異なる視点を得る良い機会です。組織が従業員やリーダーシップ層のレディネスを高めるためには、様々な取り組みを行うことが重要です。これにより、従業員は変化に柔軟に対応し、異なる状況においても適切なレディネスを発揮できるようになります。

社外研修

社外研修は、外部の専門家や機関から提供されるトレーニングやワークショップを通じて、従業員のスキルや知識を向上させるための手段です。外部の知識やベストプラクティスを取り入れることで、組織全体のレディネスを向上させることが期待されます。

 

05レディネスを活用する際に重要なこと

レディネスを活用する際に、適切なコミュニケーションと社員のフォローアップは非常に重要な要素です。コミュニケーションとフォローアップが効果的に行われることで、従業員は組織の期待に応えるために必要なスキルや知識を身につけ、変化に適応する能力を向上させることができるためです。ここでは、それぞれの重要性と具体的な理由を解説します。

適切なコミュニケーション

レディネスを高めるためには、従業員に対して明確な情報を提供し、彼らが業務や変化に対して正確に理解できるようにする必要があります。適切なコミュニケーションは、情報が適切な形で伝達され、受け手が理解しやすい形式で提供されることを意味します。また、期待値調整も重要です。コミュニケーションを通じて、組織が期待することや目標に対してクリアなメッセージを伝え、従業員がそれに基づいて自身の準備を進めることができます。

社員のフォローアップ

レディネスを向上させるプロセスでは、従業員の進捗を定期的にモニタリングすることが重要です。これにより、トレーニングや研修の効果を確認し、必要に応じて調整することができます。従業員が組織の期待にどれだけ適応しているかを把握するために、フィードバックのプロセスが必要です。フィードバックを受けた従業員は、自身のスキルや知識を適切に修正し、より適切なレディネスを構築することができます。

 

06まとめ

レディネスは、元々学習のための準備状態を示す心理学の用語ですが、ビジネスの場では人材育成からデジタル化の推進、新人教育までさまざまに活かせることがわかりました。 自社に合った形でレディネスの考え方を利用し、組織全体の成長を促すのに役立ててください。

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  • 登壇者:越川 慎司様
    株式会社クロスリバー 代表取締役

    ITベンチャーの起業などを経て2005年に米マイクロソフト本社に入社。業務執行役員としてパワポなどの責任者を経て独立。全メンバーが週休3日・リモートワーク・複業の株式会社クロスリバーを2017年に創業し、815社17万人の働き方と成果を調査・分析。各社の人事評価上位5%の行動をまとめた書籍『トップ5%社員の習慣』は国内外で出版されベストセラーに。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
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Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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