公開日:2021/09/10
更新日:2022/09/21

アクションラーニングの効果やメリットとは?概要や研修の進め方を解説

アクションラーニングの効果やメリットとは?概要や研修の進め方を解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

現実の課題を題材とする「アクションラーニング」は、個人と組織の学習する力を養成する効果的な学習法として注目されています。本記事では、アクションラーニングの概要とメリットや効果を、研修の進め方や導入事例とともに解説します。

 

01アクションラーニングの概要

まず、アクションラーニングの定義や注目される背景について説明します。

現実の課題を題材にして個人と組織が学習する手法

「NPO法人 日本アクションラーニング協会 WIAL Japan」では、アクションラーニングを以下のように定義しています。 「アクションラーニングは、グループで現実の問題に対処し、その解決策を立案・実施していく過程で生じる、実際の行動とそのリフレクション(振り返り)を通じて、個人、そしてグループ・組織の学習する力を養成するチーム学習法です。」 現実の課題を題材にするため、よりリアルな学習を行うことができ、グループワークにより個人の能力開発とともに組織力の強化にも繋がるのが狙いです。
参考:アクションラーニングとは

1930年代にイギリスで提唱された学習法

アクションラーニングは、イギリスのケンブリッジ大学の物理学者であったレグ・レバンスにより、1930年代に提唱されました。彼は、第二次世界大戦後に、炭鉱労働者の教育に携わった際に、チームで作業を行うことが効果的な学習に繋がることを体験し、アクションラーニングの考案に活用したとされています。 アクションラーニングの手法は、イギリスやヨーロッパ各地で人材能力開発の手法として用いられるようになり、1980年代にはアメリカでも注目を浴びるようになりました。その後、企業のみならず政府機関や大学など、日本を含め世界各地のさまざまな分野で幅広く活用されています。

アクションラーニングが注目される背景

アクションラーニングが注目される背景には、社会情勢や企業を取り巻く環境の急激な変化があります。さまざまな変化に迅速に対応する必要があり、そのためには社員一人ひとりの能力だけでなく、組織力の強化も大切なポイントになります。 そこで、グループになって課題に取り組むアクションラーニングの学習方法は、チームパフォーマンスの向上や現代の学習しながら前進する組織のリーダー育成に役立つとして注目されるようになりました。

 

02アクションラーニングの効果やメリット

アクションラーニングに参加することの効果やメリットには、以下の5つのポイントがあります。詳しく見ていきましょう。

現実の問題解決に繋がる

アクションラーニングのセッションでは、企業が抱える現実の課題を題材にして学習が行われます。そのため、研修を行うだけでなく、実際の問題解決に繋がる場合があるのが大きなメリットと言えるでしょう。 研修のプロセスを通して、複雑な問題の根本的に課題に気づき、具体的な対処法を探し出すことが可能です。さらに、このプロセスを他の問題解決に結びつけることができ、継続的な効果をもたらすことにもなると考えられます。

社員個人の能力開発を促進する

また、現実の問題に対する対処法を考えるにあたり、自問自答を繰り返し物事の深い理解を得ようとするため、社員個人の能力開発を促進する効果も期待できます。問題の本質を見つけることから問題解決までのプロセスを体験することが自信に繋がり、業務に取り組む際のモチベーションが向上すると考えられるでしょう。 アクションラーニングにより社員個人が身につけられる能力には、質が高く建設的な審問力、相手の思考を深く理解するための傾聴力、多様なメンバーの異なる立場への共感力などが挙げられます。

リーダーシップの育成ができる

アクションラーニングは、リーダーシップの育成にも活用されています。質問を中心に進められるセッションを通して、相手の思考を理解しようと努力したり、自発的なアクションが取れるように導きます。 現代のリーダーには、単にやるべきことを指示するのではなく、部下に考えさせるスキルが必要とされますが、アクションラーニングを通して、グループを鼓舞し問題解決に導く方法を身につけることが期待できます。

チームビルディングが実践できる

部署や職種の異なるメンバーが参加するため、チームビルディングが実践できるメリットもあります。部署や職種が異なると、お互いに密にコミュニケーションを取る機会が少なくなりがちです。そこで、アクションラーニングのプロセスを通して、部門や職種の垣根を超えたコミュニケーションの重要性に気づかされることもあります。 例えば、他部署の第三者の立場からされる質問が、問題の本質を見出すきっかけになる場合もあります。そして、共に問題に対処するうちに、部署内だけではなく部署間の積極的なコミュニケーションを習慣化させ、互いに協力し合える環境づくりのきっかけにもなると期待できます。

学習する組織の基盤となる

アクションラーニングは、学習する組織の構築の基盤としての効果も期待できます。学習する組織は「ラーニングオーガニゼーション」とも呼ばれ、社員一人ひとりが新たな知識や技能に意欲的に取り組む、絶えず学び続ける組織のことです。 変化の激しい昨今、企業には外的環境変化への適応力や回復力が求められます。そこで、アクションラーニングを通して社員個人そして組織として自ら学び続ける力が養成されるなら、学習する組織が確立されると期待できます。

 

03アクションラーニングの構成要素とルール

アクションラーニングには6つの構成要素と2つのルールがあります。ここでは、それぞれのポイントを解説します。

6つの構成要素

アクションラーニングの6つの構成要素は以下の通りです。

  • ・問題
  • ・チーム
  • ・質問とリフレクションのプロセス
  • ・問題解決のための行動
  • ・学習へのコミットメント
  • ・アクションラーニングコーチ

各構成要素について詳しく解説します。

問題

アクションラーニングでは社内え緊急性や重要度が高い問題を取り上げます。組織における問題のため、チームで取り組める問題を選定することが重要です。取り上げた問題に即したメンバーを選出し、解決策の立案、実行までを行います。

チーム

アクションラーニングにおけるチームのメンバーは4~8人程度が適切です。メンバーは問題の状況を理解している人が必要です。また、その他のメンバーはバックグラウンドに多様性を持たせるように構成し、様々な視点から意見やアイデアが出るようにすることが理想的です。

質問とリフレクションのプロセス

アクションラーニングでの議論は質問を中心に行い、質問された際に意見を述べます。 そして、リフレクションでは議論がうまく進んでいるかを定期的に振り返り、新しい問題が発生すれば適宜修正をかけることが大切です。

問題解決のための行動

議論に参加するメンバーは、問題解決に向けて積極的に行動することが重要です。 そのためには、メンバー全員に問題を解決できるような環境や権限を持っていることが必要です。

学習へのコミットメント

アクションラーニングは人材育成などを目的に実施されるため、各メンバーには、学習の重要性を理解しつつ問題解決に向けて積極的に参加することが求められます。

アクションラーニングコーチ

アクションラーニングコーチとは、アクションラーニングを円滑に進めていく役割を担う人物です。 議論には直接関与しないものの、議論の時間を管理したり、メンバーの学習に結びつくような質問をするといったことが求められます。

2つの基本ルール

アクションラーニングには主に以下の2つのルールがあります。事前にルールを徹底することで、効果的なセッションを実現できるでしょう。

セッションは質問を中心に進める

アクションラーニングのセッションは、質問を中心に進めます。自身の意見を述べるのは、質問に回答するときのみで、誰かがその場を独占するのを防止することができます。質問により有意義な話し合いが行われるため、各人はリフレクションを促し、チームプロセスに目を向ける効果的な質問を用意する必要があります。

コーチはいつでも介入できる

アクションラーニングコーチは、セッション中いつでも介入し、議論の方向性を調整することができます。そして、意見がまとまらない場合のサポートをし、メンバーの感情に留意し共有と行動を促進します。メンバーは、アクションラーニングコーチ介入があった場合、質問に答える必要があります。

 

04アクションラーニング研修の進め方

ここでは、アクションラーニング研修の進め方を、5つのステップに分けて解説します。

アクションラーニングの事前準備をする

まず、アクションラーニングの事前準備として、アクションラーニングコーチの選任、問題提示者とその他のメンバーの役割分担を決めます。それから、2つの基本ルールの確認と、チームの決まり事を設定します。決まり事には、守秘義務やセッションへのコミットメント、平等な関係を築いて尊重し合うことなどが挙げられます。

アクションラーニングを開始する

問題提示者が題材となる問題についての簡潔な説明をし、質問によるセッションを開始します。自由に答えられるオープンな質問、問題についてより深く広く考えさせる突っ込んだ質問、詳細や説明を求める質問など、多角的な質問を通して問題を深く掘り下げます。途中でアクションラーニングコーチが介入し、リフレクションを行います

問題を再定義する

質問とリフレクションを繰り返したら、問題を再定義します。ここでは、アクションラーニングコーチが主導になり、メンバー全員が同意するまで質問を繰り返し、問題の本質を探ります。

目標を設定し行動計画を作成する

再定義された問題の対策とゴールを決めます。目標の達成を阻む課題が見つかれば、さらに質問による話し合いを行い、目標達成までの行動計画を作成していきます。

セッション全体を振り返る

最後に、アクションラーニングコーチを中心に、セッション全体を振り返ります。質問の内容や手応えについて話し合い、次回のセッションに活用します。

 

05アクションラーニングの導入事例

最後に、アクションラーニングの導入事例として以下の2社を紹介します。

株式会社日立情報通信エンジニアリング

2013年4月に日立コンピューター機器株式会社と日立情報通信エンジニアリング株式会社が合併し、一体感の醸成を目的としてアクションラーニングを同年12月から導入しました。所属や役職、在勤場所や出身会社が重複しないよう工夫し、多様なメンバー編成によるセッションを実施しました。 その結果、課題や悩みを共有できたり、「自分が常識と思っていたことが実は当たり前ではないことに気がついた」など、多様な視点や価値観の再認識ができたりして、一体感の醸成に繋げることができました。

キヤノン株式会社

キヤノン株式会社では、1999年より「CKI活動」と呼ばれる組織の課題解決を行う活動に取り組んでいます。アクションラーニングとの相性の良さに着目して、2012年から社内コンサルタントに研修の導入を開始しました。 アクションラーニングの効果として、コンサルタント自身のマインドチェンジと、現場における「質問の力」に気づいたことが挙げられています。


 

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06まとめ

アクションラーニングの概要や、メリットと研修の進め方を導入事例とともにまとめました。激しい変化の中で、社員個人と組織の両者が学習し、チーム力や問題解決力を開発することは重要課題と言えます。そこで、現実の問題解決の糸口にも繋がるアクションラーニングは、多くの企業にとってメリットの多い研修になるでしょう。

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    株式会社クロスリバー 代表取締役

    ITベンチャーの起業などを経て2005年に米マイクロソフト本社に入社。業務執行役員としてパワポなどの責任者を経て独立。全メンバーが週休3日・リモートワーク・複業の株式会社クロスリバーを2017年に創業し、815社17万人の働き方と成果を調査・分析。各社の人事評価上位5%の行動をまとめた書籍『トップ5%社員の習慣』は国内外で出版されベストセラーに。

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