サッカー型組織とは?意味から導入するメリットまで詳しく解説
ビジネス環境の急激な変化やニューノーマルと言われる時代の変化に企業が対応し、今後も生き残っていくためには柔軟な組織体制が不可欠です。この記事では企業が新しい変化に対応できる組織形態として注目されている、サッカー型組織について詳しく解説します。
- 01.サッカー型組織とは?
- 02.サッカー型組織が注目される背景とは
- 03.サッカー型組織を導入するメリット
- 04.サッカー型組織を導入するデメリット
- 05.サッカー型組織で成果を挙げている企業の事例
- 06.まとめ
01サッカー型組織とは?
サッカー型組織とは、従業員1人1人が企業の経営方針を理解してそれに従い、状況の変化に応じて主体的に判断・行動できる自律性に富んだ組織のあり方を、サッカーのチームマネジメントの特性になぞらえて表現した言葉です。 サッカーの試合においては監督が指示を出しますが、選手の1つ1つのプレー全てに対して指示を出すのではなく、監督が決めたチーム全体の戦術に基づき、選手が自ら判断して都度最適なプレーを選択しています。 またサッカーでは選手1人1人のポジションが決まってはいますが、いざ試合が開始すると攻守が入り交じり、都度フォーメーションを試合の流れに応じて的確に変化させながら動き回ることとなります。 このように、サッカーのマネジメントにおいては監督が逐一指示を出すのではなく、一定の方針に基づいて選手が自主的な判断で行動することが尊重されるため、企業において従業員の自主性を重んじる組織形態を、サッカー型組織と呼ぶようになったのです。
サッカー型組織と野球型組織との違い
サッカー型組織と良く比較して語られるのが野球型組織ですが、同じスポーツになぞらえたこの2つの組織形態の違いとはどのようなものなのでしょうか。 野球型組織とは、トップダウンでの管理性が強く、仕事における担当別の役割分担がはっきりとした組織のあり方を、野球のチームマネジメントの特性になぞらえて表現した言葉です。 野球の試合においては、監督またはその意向を理解したコーチが決める戦略・戦術に基づいて1球ごと、ワンプレーごとに指示を出し、選手はその指示に忠実に行動することが求められます。 選手は守備のポジションや攻撃時の打順において役割分担が明確化され、他の選手のテリトリーに踏み込むことはありません。 このように野球のマネジメントにおいては、監督またはコーチの采配でチームが一丸となって動くため、企業において上意下達で動く組織形態を野球型組織と呼ぶようになったのです。 近年、サッカー型組織が時代に合っていて、野球型組織は旧態依然の組織形態なので変えた方が良いといった論調になりがちですが、今の時代に適応するためには必ずサッカー型組織にしなければならないということではなく、それぞれにメリットがあるということを覚えておきましょう。
02サッカー型組織が注目される背景とは
日本では、2019年4月から厚生労働省が主体となって働き方改革を推進しています。 しかし、2020年3月に株式会社リクルートマネジメントソリューションズが159社を対象に行った「『働き方改革』と組織マネジメントに関する実態調査」の結果では働き方改革の進捗・達成状況について「推進中であるが苦戦している」と回答した企業が52.2%で1位だったことがわかりました。 また「推進中であるが苦戦している」と回答した企業のうち、6割以上の企業が推進課題を「現場や他部署との連携が難しい」と回答しています。 働き方改革とは、個人の努力で行うものではなく、働き方における課題を職場主体で解決する必要があるため、達成するためには組織が抱える課題を解決しやすくなるように組織改革をし、必要あれば他部署とも連携して推進しなければなりません。 サッカー型組織では、トップダウンで指示を待つのではなく、従業員が職場の課題に主体的に取り組むことができるため、働き方改革を推進しやすくなります。 このような背景から、企業のサッカー型組織への変革は注目を集めていると言えるでしょう。
03サッカー型組織を導入するメリット
企業がサッカー型組織を導入するメリットを3つご紹介します。
素早い意思決定で市場や時代の変化に柔軟に対応できる
日本の企業においては人手不足、長時間残業、時間あたりのアウトプットの減少などが理由で、慢性的に労働生産性が低下しており、働く人のモチベーションを下げる原因にもなっています。 しかし、サッカー型組織を導入すれば素早い意思決定が可能となるため、従業員はトップの意思決定を待つことなく、労働生産性を高めるための活動に取り組むことができるのです。 そして、従業員自身が常に時代やビジネス環境の変化を感じながら仕事に取り組むこととなるため、都度課題が発生してもそれに柔軟に対応できるようになるでしょう。
従業員の主体性が発揮できる
サッカー型組織では、トップダウンでの指示や判断を待つ必要がないため、従業員が臨機応変に判断して行動する機会が増え、主体性の発揮につながります。、従業員が主体的に仕事に取り組み、短い時間でも収益性を確保できる労働環境を持続的に整えることが可能となるのです。 また従業員が主体的に行動できるようになることで、新しいビジネスチャンスやビジネスモデルを現場から生み出す可能性も高まるでしょう。
組織が成果を挙げやすくなる
従業員が成果を挙げられるのは、指示されて仕事に取り組んでいる時よりも、圧倒的に自発的に仕事に取り組んでいる時だと言えます。 サッカー型組織では、従業員1人1人が自分でやるべきことを考え行動に繋げていく環境となるため、組織が成果を挙げやすくなるのです。 また、従業員が自身で判断する経験を少しずつ積むことで、そのスキルが向上するため、組織が成果を挙げるための選択を迫られた際も、的確な判断ができるようになるでしょう。
04サッカー型組織を導入するデメリット
企業においてサッカー型組織を導入するデメリットもご紹介します。
組織文化や仕事の内容に合わない場合もある
日本では働き方改革の波に乗って、野球型組織からサッカー型組織に組織改革をしたいと考える企業が増加してきています。 しかし組織の形はサッカー型組織と野球型組織の2種類だけではありません。そのため、全ての業種・職種にサッカー型組織が適しているとは言い切れません。 組織改革をする際には、組織形態にどのような種類があるのかを調べたり、自社の業種や組織文化に、その組織形態が合っているかどうかを検討したりしてから行う必要があるでしょう。
05サッカー型組織で成果を挙げている企業の事例
サッカー型組織で成果を挙げている企業の事例を3つご紹介します。
スタジオアリス
スタジオアリスは子供向けの記念写真撮影サービスを全国で展開している企業ですが、ホームページのマネジメントメッセージでサッカー型組織での経営を明言しています。 IR情報でスタジオアリス経常利益を見ると、2020年2月期で33.3億円だった経常利益が2021年2月期で49.6億円にまで増加しているため、サッカー型組織でコロナ禍にもかかわらず成長を続けている企業だと言えるでしょう。 スタジオアリスでサッカー型組織を導入しているのは、従業員1人1人がプライドを持ち、上司の指示を待つのではなく「自ら考え、自ら判断する」ことで、主体的な状況判断により顧客に対して適切な行動ができると考えているからです。 働き方改革にも女性活躍推進を中心に取り組み、管理職に占める女性比率が70%を越えるなど成果を出し続けています。
株式会社アトラエ
株式会社アトラエは「世界中の人々を魅了する会社を創る」を経営ビジョンに掲げて2003年に設立された比較的新しい会社で、ITやWeb業界向けの求人メディアの運営やビジネスマッチングアプリの開発など幅広い事業を手がけています。 ホームページで業績ハイライトを見ると、2019年9月に32.29億円だった売上高が2021年9月には34.3億円に増加しているため、サッカー型組織で成長している企業だと言えるでしょう。 株式会社アトラエでサッカー型組織を導入しているのは、従業員1人1人が経営的な視点を持って動くことができるようになるためで、性善説に基づいた組織のルール作りや会社に貢献した順番に評価する形の人事評価制度などで、従業員が働きやすくなる環境も整えられています。 また株式会社アトラエでは、中期経営計画で従業員のエンゲージメントスコア(他社平均は60点前後)を87から95へと引き上げるのを目標とするなど、常に組織の改善に前向きに取り組み続けています。
星野リゾート
星野リゾートは1914年に長野県軽井沢で日本の旅館として初めて設立され、現在では国内外で「顧客満足度と利益の両立」を目標に37の施設を運営しています。 サッカー型組織やティール組織に似たフラットな組織作りは、ユニットと呼ばれるチームで構成されていますが、ユニットのリーダーとなるユニットディレクターは立候補制で、年2回行われるテレビ会議で自分がリーダーになった場合のユニットにおける戦略をプレゼンする必要があるのです。 また個人や家庭の事情でユニットディレクターの職務から外れることもでき、その期間を従業員は「充電」と呼び、キャリア設計が自由にできるようになっています。 このような組織作りをしているため、星野リゾートでは役職に関わらず同じテーブルで議論ができ、組織内でも役職名をつけて呼び合うことはせず全員「さん」付けで呼ぶなど、従業員とマネジメント層両方が気持ちよく働ける環境が整っています。
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06まとめ
サッカー型組織とは従業員が企業の経営方針を理解し、状況の変化に応じて主体的に判断・行動できる自律的な組織のあり方を、サッカーのチームマネジメントの特性になぞらえて表現した言葉です。 働き方改革の推進のためにも組織改革をするのは企業にとって重要ですが、サッカー型組織だけではなく、さまざまな組織形態を比較・検討し、自社の業務や社風に合った組織形態を選択し、改革へと繋げていってください。
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1991年、日本IBMを退職、ICT技術を活かしてベンチャーを創業。携帯テクノロジーが注目され、未上場で時価総額 100億円超。その後、組織論と起業論を専門として 学習院大学 客員教授に就任。幸せ視点の経営講義が Z世代に響き、立ち見のでる熱中教室に。現在は ビジネス・ブレークスルー大学 教授として教鞭をふるう。2018年には、社会人向け講座「hintゼミ」を開講。卒業生は 600名を超え、三ヶ月毎に約70名の仲間が増えている。