公開日:2021/09/10
更新日:2022/07/14

人材ポートフォリオとは?メリットや効果的に作るポイントを解説

人材ポートフォリオとは?メリットや効果的に作るポイントを解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

「人材ポートフォリオ」は、多様な働き方や人手不足が叫ばれる中、人材の採用や育成、最適配置に活用できるとして注目されています。本記事では、人材ポートフォリオの意味や必要とされる背景、メリットや効果的に作るポイントを解説します。

 

01人材ポートフォリオの意味や必要とされる背景

はじめに、人材ポートフォリオの意味や必要とされる背景について解説します。

企業内の人材タイプを分類して分析すること

人材ポートフォリオとは、企業内の人材タイプを分類して、分析することです。社内には部門や役職など、さまざまなポジションにスキルや能力の異なる人材が配置されています。人材ポートフォリオでは、それぞれのポジションにどんな人材がどのくらい必要なのか、理想と現状を分析し、調整できるようにします。 人材ポートフォリオの設計は、適材適所の人材配置や今後の人材採用を含め、中長期的な人事マネジメントに効果的であるとして注目されています。

もともとの意味は「紙ばさみ」

もともと「ポートフォリオ(Portfolio)」は「紙ばさみ」「折りかばん」「携帯用の書類入れ」という意味がありました。その後、書類入れに有価証券を入れて保管または携帯するようになり、「有価証券一覧表」という意味を持つようになりました。 それ以外にも、デザイナーやクリエイターの作品集や、教育分野では生徒たちのレポートなどを保存するパーソナルポートフォリオなど、さまざまな意味で使用されています。そして、人事用語として、企業の人的資材の構成を表す言葉としても用いられるようになりました。

人材ポートフォリオが必要とされる背景

人材ポートフォリオが必要とされる背景に、働き方の多様化が挙げられます。1980年代以前の日本では、男性総合職を中心に企業が回っており、メインの人材採用や育成、人材配置に関してそれほど問題は生じませんでした。しかし、男女雇用機会均等法や労働者派遣法の施行により、女性の社会進出や、派遣社員の増加で、雇用の多様化が進みました。 加えて、終身雇用制度の崩壊により、人材の流動性が高まったり、「働き方改革」の推進でテレワークの導入やワークライフバランスの実現を目指す働き方が注目されるようになり、企業が生産性を上げるためには、現在と将来を見極めた人材マネジメントを行う必要性に迫られていると言えます。

 

02人材ポートフォリオ分析を実施するメリット

人材ポートフォリオ分析を実施するメリットを、大きく3つのポイントに分けて解説します。

最適な人材配置ができる

人材ポートフォリオ分析の実施により、最適な人材配置が可能になります。事業の特性や社員個人の志向に合わせて、業務内容に最適な人材配置ができるようになり、業務効率化や生産性向上にも繋がると期待できます。 また、社員は自身の強みを活かして業務に取り組むことができ、モチベーションの維持や離職率の低下などのメリットも生み出すと考えられます。

人材の過不足のマネジメントができる

人材ポートフォリオ分析で、社内のどこにどれだけの人材が配置されているかを分析すると、人材の過不足のマネジメントにも繋げることができます。例えば、マネジメント人材とオペレーション人材の過不足を考慮して、人材採用や人材育成の計画を立てることができるでしょう。 また、無期雇用社員と有期雇用社員のバランスを保ち、役割を明確にすることで、現時点で保有する人的資源を最大限に活用し、人材の流出があった場合も、計画的に人材獲得や人事異動を行いスムーズに対応できるようになると期待できます。

社員のキャリアアップに繋がる

社員に多様なキャリアパスを示すことができ、キャリアアップに繋がるのもメリットの一つです。多様な働き方が可能になった昨今、管理職への昇進を目指すことだけがキャリアパスではなく、専門職を極めることや、ワークライフバランスを実現するために派遣労働を選ぶ人も少なくありません。 個人の志向を考慮した人材配置や、キャリアパスの提示ができるようになるほか、管理職から外れた人材に高い専門性がある場合、相応の待遇で報いることも可能になります。

 

03人材ポートフォリオの作り方

ここでは、人材ポートフォリオの作り方を5つのステップで解説します。

活用の目的を明確にする

「人材ポートフォリオを活用して何を実現したいのか」を明確にしておく必要があります。目的を定めずに進めてしまうと人材配置の際にミスマッチが発生してしまったり、最悪の場合は離職に至るケースもあります。したがって、人材ポートフォリオは中長期的な経営計画や企業戦略を元に目的を定めていきます。必要に応じて、経営層とのすり合わせをしていく必要があるため、目的の設定は念入りに行いましょう

基準の軸を決める

まず、自社に必要な人材タイプを分類する前に、基準となる軸を決めます。凡庸性が高い一般的な軸に「個人と組織」「創造と運用」が挙げられます。個人単位で行うかチーム単位で行う業務か、新しい商品や事業を創造するか、既成のものを運用するかで判断します。この軸を使って人材を4つに分類すると、「クリエイティブ」「マネジメント」「エキスパート」「オペレーション」に分けることができます。 業務内容や人材ポートフォリオ分析の目的に合わせて、自社に適した軸を決めます。他にも雇用形態で分類する例として、「総合職と専門職」「常時雇用と臨時雇用」を軸とすることもできます。

社内の人材タイプを分類する

基本の軸が決まったら、社内の人類タイプを分類します。分類の際に、人事担当や分類をする人の主観が入らないよう、客観的なデータを活用すると良いでしょう。例えば、能力や性格により分類する際は、適性検査の結果に基づいた分類を行います。 新卒採用で利用される「SPI3」や、測定項目数が豊富な「eF-1G」などの適性検査を全社員に受けてもらい、科学的かつ客観的に分類します。そうすることで、社員にとっても納得のいく結果となるでしょう。

理想の配置人数と比較する

人材タイプを分類したら、理想の配置人数と比較します。ここで、人材配置の課題が見えてくるでしょう。例えば、「マネジメント人材の人数は多いが、若手が少ないため数年後に不足するだろう」「オペレーション人材に対してマネジメント人材が少なすぎる」などです。 人材の過不足や、将来の見通しを可視化することで、次にやるべきことが明確になります。理想と現実のギャップをすぐに比較できるよう、企業が理想とする人材ポートフォリオを作成しておくのが効果的です。

人材の不足や過剰を調整する

人材ポートフォリオ分析で明確になった課題を調整するために、理想の人材配置となるよう不足や過剰を調整します。対策方法は基本的に以下の4つになります。

  • ・採用(新卒、中途、アルバイト、派遣社員など)
  • ・退出・解雇(早期退職の推奨や役職定年制度など)
  • ・育成(研修や人事評価など)
  • ・配置転換(部署異動や転勤など)

適材適所がされていない人材を減らして、組織としてのパフォーマンスを最大化するのがポイントです。

 

04人材ポートフォリオを効果的に作るためのポイント

人材ポートフォリオを効果的に作るにはいくつかのポイントを抑える必要があります。ここでは、特に重要な5つのポイントを解説します。

全社員を対象とする

人材ポートフォリオ分析を行う際は、正社員だけでなく、派遣社員やパート、アルバイトも含めて全社員を対象としましょう。分析の目的は、企業の目標を達成するための人材配置の最適化であるため、雇用形態に関わらず、すべての社員を含める必要があります。 仮に、正社員のみを対象とすると、派遣社員やパート社員が占めているオペレーション人材の不足が結果として出てしまうなど、正確な分析に繋がらないと考えられます。

人材の分類に優劣を付けない

人材ポートフォリオの分類に優劣を付けないことも重要なポイントです。これは、人材タイプを客観的に把握するためで、順位を付けたり優遇するために用いたりすることが社員に知れ渡ると、不満を抱いてモチベーションが下がることが考えられます。離職に繋がる場合もあるので、取扱いに注意が必要です。

経営戦略を反映させる

人材ポートフォリオの軸や理想とする人数を決める際は、経営戦略を反映させることが重要です。最終的には企業目標の達成を目指しているため、関係性のある項目を軸として設定しましょう。「何となく他の企業もそうしているから」という理由で軸を決めると、一貫性のない取り組みになると考えられます。

作成には時間がかかることを理解する

人材ポートフォリオの作成には、時間がかかることも理解する必要があります。作成にあたっては、人事担当だけでなく、企業の経営陣や管理職も含めて話し合い、企業目標や取り組みの方向性を決定することになります。また、軸の決定は人材ポートフォリオの完成度を左右する大切なポイントなので、時間をかけて決める必要があると言えるでしょう。その他、適性検査の実施や人材の分類、分析にも時間がかかると考えられます。

社員の希望を考慮に入れる

人材ポートフォリオの分析結果に基づいて人材配置を行う際は、社員の希望を考慮に入れるようにしましょう。本人の希望を聞かずに一方的に配置を決めてしまうと、モチベーションの低下や離職にも繋がる可能性があります。そのため、社員の希望をヒアリングする機会を設けることも忘れないようにしましょう。

採用の要件定義を見直す

人材ポートフォリオを作成していく中でそもそも自社が求める人材と実際に採用している人材のズレがある場合があります。ズレが生じたまま、採用を進めていくと人材ポートフォリオの均衡が崩れてしまいます。したがって、人材ポートフォリオを作成していく段階で、自社の採用における要件定義とズレがないかはチェックしていきましょう。

 

05人材ポートフォリオの導入事例

最後に、人材ポートフォリオの導入事例を紹介します。

株式会社電通国際情報サービス

ITバブルの崩壊で、情報サービス業界は事業環境の厳しさに直面するようになりました。そこで、「事業ポートフォリオの再構築」の計画に対応して「人材ポートフォリオの再構築」にも着手することになりました。目的は、強化するべき人材の質と量を見極めて、確保と育成を図るためです。 あるべき人材ポートフォリオと、スキルチェックの結果で把握した現状の人材ポートフォリオのギャップ分析と対策検討を行い、人材育成への展開に活用しました。また、毎年度制作される人材ポートフォリオで、人材リソースの見える化が可能になりました。

花王株式会社

大手消費財メーカーの花王では、社員が自ら大きな目標掲げて挑戦していくことで、一人ひとりが成長し、結果的に会社の成長や社会に貢献すると考え、KPIに基づいた目標管理・評価制度を改定。「ありたい姿や理想に近づくための高く挑戦的な目標」としてOKR(Objectives & Key Results)を導入しました。

株式会社サイバーエージェント

インターネット広告の代理店を軸としてさまざまな事業を行うメガベンチャーのサイバーエージェントでは、広告事業で培った「結果を出す」というカルチャーのもと、新卒1年目を子会社社長に抜擢したり、経営部門への若手起用、社外人材を活用した研修などを実施しています。これにより、メディアやゲーム、テレビといった継続的な事業拡大を実現しています。


 

研修をしてもその場限り」「社員が受け身で学ばない」を解決!
研修と自己啓発で学び続ける組織を作るスクーの資料をダウンロードする


■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など

Schoo_banner
 

06まとめ

人材ポートフォリオの概要やメリット、効果的に作るためのポイントをまとめました。多様な働き方の実現や、企業の目標達成のためには、既存の人材の見直しと改善が必要不可欠です。この点で、理想とする人材ポートフォリオと現実の人材ポートフォリオを比較して、適材適所の人材配置とパフォーマンスの最大化を目指すことが効果的であると言えるでしょう。

  • Twitter
  • Facebook
  • はてなブックマーク
  • LINE

20万人のビジネスマンに支持された楽しく学べるeラーニングSchoo(スクー)
資料では管理機能や動画コンテンツ一覧、導入事例、ご利用料金などをご紹介しております。
デモアカウントの発行も行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

お電話でもお気軽にお問い合わせください受付時間:平日10:00〜19:00

03-6416-1614

03-6416-1614

法人向けサービストップ