コーポレート・アイデンティティ(CI)とは|3つの要素や事例について解説
企業に必要なCI(コーポレート・アンデンティティ)とは、どのような意味を持つ用語なのでしょうか。現在、企業ブランド戦略の中で必要な概念として、多くの企業が取り入れている考え方です。本書は、コーポレート・アイデンティティについて、その用語の意味や役割について解説していきます。
01コーポレート・アイデンティティ(CI)とは
コーポレート・アイデンティティとは、企業理念や事業内容、企業の社会的責任 (CSR)などについて、その存在価値を体系的に整理し、改めて定めた理念や行動指針を社内外で発信する一連の活動のことです。この活動を通して、より企業責任を果たす企業活動を行うことも含まれおり、広義ではその計画についても含んでいるとされています。
コーポレート・アイデンティティは、主に社外における企業イメージ作りのために実施されますが、社内向けの施策としても効果を発揮します。企業価値の共有により引き出される意識の向上、品質や生産性、採用活動の改善など、社内の人に対してもプラスの影響が起きることもあるでしょう。
また、コーポレート・アイデンティティの話となると、「ロゴを一新すること」と誤解されがちです。しかし、目的は「企業の本質を理解してもらうこと」にあるので、あくまでもロゴの一新は、企業理解を促すため活動の一貫に過ぎません。
CI(コーポレート・アイデンティティ)の役割
コーポレート・アイデンティティの役割とは、企業ブランド力の向上だけが役割ではありません。社内外における企業理解を促すことこそが、本当の目的(役割)になります。事業を行っていく中では、企業成長を果たす必要があります。この企業成長においては、社内外にいるステークホルダーに企業を理解してもらい、企業のファンになってもらうことでの信頼関係構築が必要です。このファン作りのためにも、コーポレート・アイデンティティを活用し企業成長、継続的事業経営を実現していきます。
02コーポレート・アイデンティティ(CI)の種類
コーポレート・アイデンティティを行うには、その特徴に合わせた種類があります。次にこの種類について解説していきます。コーポレート・アイデンティティを実施する際に必要となる3つの種類別に行うべきことが異なる点を理解し、その特徴に合わせた対応を行っていきましょう。
マインド・アイデンティティ(MI)
マインド・アイデンティティ(MI/Mind Identity)とは、企業の理念やビジョンなど企業の存在意義をわかりやすい言葉で表したものを指します。企業の考え方や社会への貢献についての役割などを社内外に伝えていくための手段でだと理解しておきましょう。マインド・アイデンティティとはブランディング用語として使われることが多いものの、ブランディングを超えた企業経営や企業活動までにおよぶ概念であると理解しておきましょう。
ビヘイビア・アイデンティティ(BI)
ビヘイビア・アイデンティティ(BI)とは、社員の行動規範(クレド/Credo)のことです。行動規範とは、企業理念や企業ビジョンにともなって、社員がどのように考え、行動をすべきかが整理されたものです。ビヘイビア・アイデンティティにより社員は自からがどういった企業人(従業員)であるべきかを理解することができます。社外においては、その企業で働く人物像を想像できるものとなり、企業のあり方をより深く理解するために活用されていきます。
ビジュアル・アイデンティティ(VI)
ビジュアル・アイデンティティ(VI)とは、企業ブランドやコンセプトを可視化したロゴデザインやシンボルマークなどのブランドを象徴するデザイン様式一式のことを示します。VIシステムと呼ばれるものには、ブランドデザインに関する利用方法などを細かく記したルールを意味し、その使い方を定義しています。
03コーポレート・アイデンティティ(CI)を行うメリット
次に、コーポレート・アイデンティティを活用するメリットについて解説していきます。コーポレート・アイデンティティについては、企業の分ランド力をアップする概念でありますが、そのメリットについてより詳しく見ていくことにしましょう。ここでご紹介する内容を自社のメリットとして置き換えた場合に、何を最も重要視するかがコーポレート・アイデンティティを取り入れる目的になっていきます。
知名度の一新による信頼度の向上
コーポレート・アイデンティティを取り入れることで、企業のブランドイメージを一新することが期待できます。ブランドイメージを一新することによって、知名度の向上を図ったり、新しいイメージを持つ企業として信頼度の向上にも期待を持つことができるでしょう。このブランドイメージの一新は、通常は簡単に行えるものではありません。こうした一新を行う際には、コーポレート・アイデンティティを活用し社内外への理解を深めることを実施していきます。ブランド力の向上は、企業における新しいビジネスチャンスを作ることにもつながるなど、より企業成長に貢献できる結果を期待することができる大きなメリットになります。
従業員の意識改革
従業員の意識改革は、容易に実施できることではありません。しかし、コーポレート・アイデンティティの実施が進むと、社外だけではなく社内の人材に対する働きかけにもなります。企業のビジョンなどを明確にすることで、より企業理解を促進させ事業への参画意識の向上、そして企業への愛着を創出していきます。従業員が企業への愛着を持つことは、企業で働き続けたいという気持ちを向上させ、長期的な勤務を希望させるため離職率の低下などのメリットも生んでいきます。こうした感情の変化は、業務への取組み姿勢にも変化を生じさせます。
企業ビジョンの明確化
次に、企業ビジョンの明確化があります。コーポレート・アイデンティティとは、、企業理念や事業内容、企業の社会的責任 (CSR)などについて、その存在価値を体系的に整理し、改めて定めた理念や行動指針を社内外で発信するこ一連の活動を意味しています。この活動を実施することで、今までにあった企業ビジョンを一から見直すことができるため、全く新しい企業ビジョンが生まれる可能性もあります。今までとは異なる企業ビジョンであっても新たに定義付けすることで、社内外への浸透を促進することができるでしょう。
04コーポレート・アイデンティティ(CI)の注意ポイント
次に、コーポレート・アイデンティティにおける注意点について解説していきます。コーポレート・アイデンティティを行う際に特に気を付けておきたい事柄を整理していますので、全ての内容を予め意識してコーポレート・アイデンティティを実施するようにしましょう。
基盤づくりはマインド・アイデンティティから実施する
最初に行うのは、マインド・アイデンティティからになります。いきなり、ロゴの作成などを行うのではなく、自社のビジョンを整理することから開始しなければ意味がありません。ますは、基盤づくりとしてマインド・アイデンティティを社内で繰り返し検討していき基本となる考え方を確立していくことが大切です。
マインド・アイデンティティを意識したビヘイビア・アイデンティティの作成
次に、行動様式の確立です。作成されたマインド・アイデンティティをもとに、自社の社員がどういった社員であるべきかを取り決め、ビヘイビア・アイデンティティを構築していきます。行動様式については、その後の社員の活動、そして企業イメージにも大きく影響するものです。社員の今後の行動が変わるきっかけにもなるため、しっかりと浸透できる内容を決めていきましょう。
ビジュアル・アイデンティティをデザイナーに一任しない
ロゴなどの作成には、デザイナーのアイデアを採用することも多々あります。しかし、全てを一任していいということではありません。自社の想いをデザイナーに伝え、形にしていくことが必要だと理解しておくことも大切です。デザイナーはあくまで、自社の想いを形にする存在であるということを理解しておくことが必要です。
05コーポレート・アイデンティティ(CI)の事例
次に、コーポレート・アイデンティティを実施した企業例をご紹介していきます。企業により、さまざまな内容でコーポレート・アイデンティティを展開していますので、自社にとって参考となる事例をもとに、より具体的なイメージの立案を実施してください。事例を参考にすることで、実施後のイメージをよりリアルにしていきましょう。
富士重工
富士重工業は2017年の創業100周年を機に、社名を「SUBARU」に変更しています。国内外で親しまれている自動車のブランド名を社名にすることで、ブランド力や知名度を高めることと目的としています。現在では、SUBARUの名前は定着され、ブランドの名称ととしても確立されています。
▶︎参考:富士重工業株式会社が「株式会社SUBARU」に社名変更を実施
松下電器産業株式会社
松下電器産業は2008年に社名を「パナソニック」に変更しています。国内で使用していたブランド名「National」を廃止し、「Panasonic」にブランド名を一本化したことでブランド力の強化を促進しており「真のグローバルエクセレンス(世界的優良企業)になるには、ブランドを統一して全従業員の力を結集する必要があると判断した」とコメントしています。
▶︎参考:松下電器産業株式会社が「パナソニック株式会社」に社名を変更
楽天株式会社
楽天は2018年に、世界での企業認知度を高めていくためにブランドのロゴを新しいデザインに変更しています。新ロゴはグループ全体で統一されブランド力の強化を期待しています。
▶︎参考:楽天、グローバル統一ロゴのデザインを一新
株式会社Schoo
弊社Schooも2016年にコーポレート・アイデンティティを刷新しています。Schooは2011年10月に創業して以来、「世の中から卒業を無くす」というビジョンを掲げてオンライン動画学習サービス『schoo WEB-campus』を運営していました。
2015年に「世の中から卒業を無くしたその先」にあるものが「人類の変革」であるという結論に辿り着き、ビジョンを「インターネット学習で人類を変革する」に変更。そして翌年2016年に会社としてもサービスとしても、よりビジョンに即した表現にしていくことを目的とし、ロゴをリニューアルいたしました。
旧ロゴが6色を配置した「スクーを通じて様々な可能性を知る」ということを表現しているのに対して、新ロゴでは矢印がSchooユーザーひとりひとりを表し、それらが様々な方向を示しているということから、無限の可能性を持ち「自ら選択し能動的に学ぶことで人生が変わる」ということを表現しています。
▶︎参考:Schoo|プレスリリース
Schoo 新CI・ロゴのデザインプロセス全公開
2011年10月に創業して以来、一度も変わることがなかったCI・ロゴ。これを変更していくプロセスの裏側には、アートディレクターの技術と葛藤がありました。本授業では、それらのプロセスを全て公開させていただいています。通常はクライアント守秘義務の観点からお話しにくい内容も、出来る限り全て公開させていただいております。デザイナー・アートディレクターに具体的プロセスを学んでいただくのはもちろん、新しい何かを作ろうとしている人や、今までのものを一新していこうとしている人に向けて、気付きとヒントを提供できる授業になっております。
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グラフィックデザイナー/アートディレクター
2003年金沢美術工芸大学卒業後、日本デザインセンターに入社。原デザイン研究所の勤務を経て、2011年大黒デザイン研究室設立。主な仕事にTAKAO 599 MUSEUMの総合ディレクション、PRISTINEや武蔵野美術大学2011-15 のアートディレクション、皇后美智子さまの御歌のブックデザインや、越乃寒梅のパッケージデザインなどがある。主な受賞歴:東京ADC原弘賞、JAGDA新人賞、JAGDA賞、D&AD金賞、NY ADC金賞、グッドデザイン賞、SDA優秀賞など。
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・自己啓発への活用方法 など
06まとめ
本記事では、コーポレート・アイデンティティ(CI)について解説しています。コーポレート・アイデンティティの概念を通して企業の成長を行うこと、企業のブランド力を向上させることを目的としています。本記事を参考に、自社のブランド力を上げより成長する企業になる計画を立案していきましょう。