プロジェクトアリストテレスとは?定義から具体的なプロセスまで詳しく解説

プロジェクトアリストテレスとは、Googleが行った生産性が高いチームの共通点を発見するためのプロジェクトということで、あらゆる業界の企業から注目を浴びました。本記事では、プロジェクトアリストテレスの概要やGoogleが導き出した特徴、さらに具体的なプロセスについて紹介します。
01プロジェクトアリストテレスとは?
プロジェクトアリストテレスは、2012年にGoogleが発表した 企業向けリサーチ のことです。このプロジェクトの目的は、生産性の高い「効果的なチームの条件」を調査し定義づけるというものでした。「プロジェクトアリストテレス」という名前は、古代ギリシャの哲学者・アリストテレスの言葉、「全体は部分の総和に勝る」から来ています。
Googleはこれまでに、「優れた上司の条件」や効果的な目標設定・管理方法である「OKR」など労働環境が抱える様々な問いの解決法を生み出してきました突き止めてきました。今回のプロジェクトの研究も、「従業員は単独ではなく、チームで働いた方が大きな成果を上げられる」という考えを実証するために行われました。導き出した結論として、「チームの生産性向上には個々のパフォーマンスよりも、集団的知性のほうが大きな影響力を持つ」ことが分かりました。
Googleが企業に向けて発信した「効率的なチーム」の研究計画のこと
Googleのリサーチチームが定義した「効果的なチーム」は、以下の4つの観点を重視しています。
- ・マネージャーによるチームの評価
- ・チームリーダーによるチームの評価
- ・チームメンバーによるチームの評価
- ・四半期ごとの売上ノルマに対する成績
この四つの結果を導き出すために、最初のステップとして「チームの生産性を客観的に測る指標」を探しました。しかし、書いたコード数やバグの修正数、顧客満足度といった指標を検討する中で、「今ある指標が本質的に不完全であるかもしれない」ということに気がつきました。
書いたコード数が多くてもハイクオリティとは限らず、バグが多発した場合修正するためにコードが長く・複雑になってしまうからです。
そのため、リサーチチームは「定性的な評価」と「定量的な指標」を組み合わせる方法へ変更しました。
設定された定性的な評価と定量的な指標とは
定性的な評価では、「マネージャー」「チームリーダー」「チームメンバー」という3つのポジションからの意見や尺度を収集し、チームの評価について解説をしてもらう中で、ポジションによって評価の指標が異なることがわかりました。
マネージャーがチームの生産性を測るために最も重要だと考えた指標は、売上高やサービス立ち上げなどの「結果」でしたが、チームリーダーは、当事者意識やビジョン、目標など「大局的な問題と個人的な問題」の両方、チームメンバーは「チーム内の文化と風土」が重要であると主張しました。
定量的な指標は、ポジションごとに主観が混じってしまいますが、チームの生産性を具体的に図る物差しとなることがわかりました。この調査の結果から、効果的なチームの条件を的確に判断するには、「定性的な評価」と「定量的な指標」を組み合わせ、4つの指標を組み合わせることが重要だと明らかになりました。
02Googleが定めた効果的なチームの作り方
上記の調査を含め、様々なリサーチを行ってきたGoogleが導いた効果的なチームを支える「生産性向上の5つの柱」について解説します。この5つの柱について理解することで、自社のチーム作りも改善することに役立つでしょう。
- ・1.心理的安全性(Psychological safety)
- ・2.信頼性(Dependability)
- ・3.構造と明瞭さ(Structure & clarity)
- ・4.仕事の意味(Meaning of work)
- ・5.インパクト(Impact of work)
1.心理的安全性(Psychological safety)
心理的安全性とは、他人の反応を気にしたり、自分の発言を恥ずかしいと感じたりすることなく、ありのままの自分で過ごせるような環境のことを指します。チームのメンバーに対し「無知」「無礼」などのネガティブな印象を与えるような行動をしてしまった場合でも、メンタル的に問題ないと感じることができるでしょう。
心理的安全性の高いチームに所属していると、他のメンバーと接する中で生じるリスクに不安を感じません。それは無責任になるということではなく、自分の過ちを素直に認めたり、気軽に質問をしたり、積極的にアイデアを提案したりできるということです。「誰も自分を馬鹿にしない」とお互いを信じているチームは、生産性が高いと言えます。
2.信頼性(Dependability)
お互いに信頼しあっているチームは、各自の仕事をハイクオリティかつ時間内に仕上げる傾向があります。それに対し、相互信頼の低いチームに所属するメンバーは、自分の責任や業務を他のメンバーに押し付けるケースがあります。つまり、プロジェクトアリストテレスにおける信頼性とは、互いを信じあえるチームで働くことで人材は自らの仕事に責任感や自信を持てるようになるということです。
今信頼性が低いチームにいる場合は、懇親会やランチ会などを定期的に開き、コミュニケーションを取ることを意識してみましょう。
3.構造と明瞭さ(Structure & clarity)
チームに高い生産性を求める場合は、「自分が要求されていること」「その要求を満たすためのプロセスが明確であること」「メンバーの働きによる成果が共有されていること」が重要です。個人やチーム全体で目標を設定する際は、「モチベーションを維持できる」なおかつ「具体的で達成可能なレベル」でなければなりません。Googleでは、短期的・長期的な目標をそれぞれ設定して、メンバーに周知する「目標と成果指標(OKR)」という手法が広まっています。
4.仕事の意味(Meaning of work)
チームの生産性を向上させるには、チームメンバーに対し「仕事」と「仕事の成果」の目的意識を持たせる必要があります。仕事の意味とは、「経済的な安定を得るため」「家族を支えるため」「チームの成功を助けるため」「自己表現をするため」など、人それぞれです。仕事の意味を強く感じられるチームで働くことで、業務中のやりがいだけでなく、働きに応じて得られる成果も大きなものとなります。
5.インパクト(Impact of work)
仕事の意味をそれぞれが理解するだけでなく、「自分の仕事には意義がある」とメンバーが主観的に思えるかどうかも重要です。「個人の働きがチームや社内全体の目標達成に貢献している」ということを可視化して、モチベーションを維持できる仕組みを整えるのも大切です。
03プロジェクトアリストテレスの具体的なプロセスを紹介
Googleが定めた「効率的なチーム」は、
- ・1.仮説の設定
- ・2.モニタリングの実施
- ・3.分析と仮説検証
- ・4.トライ&エラーによる追加検証
の4つのプロセスがうまく機能しているかどうかが判断基準となります。プロジェクトアリストテレスを行う際に、Googleはこの4つの観点がないと、チームが定めた指標自体が不完全である可能性があると導きだしたからです。4つの観点から自分が所属しているチームを見てみると、何が不足しているのか「見直し」ができるでしょう。
プロセス1.仮説を設定する
Googleは長い間、「最高の人材を揃えること」がチームで動く上で欠かせないということを主張してきました。しかし、この主張の立証がされてこなかったのも事実です。このチームが成功するためのポイント(因子)を証明するために、Googleは成功するチームの共通点をリスト化して仮説を立てることにしました。具体的な例として、成功しているチームはランチの時間を共にしているのか、学歴に共通点があるか、などです。
プロセス2.モニタリングを実施する
仮説を立てたあと、Googleの人員分析部は、100以上のプロジェクトチームにモニタリングを実施しました。例えば、社員の生活リズムや、社内以外の人間関係などの観察です。このモニタリングにより、一人一人の細かい行動パターンを探り、共通点を見つけることに成功しました。プロジェクトアリストテレスにおいて、このモニタリング検証は非常に大きな意味を成したと言えます。
プロセス3.分析と仮説の検証を行う
次にモニタリング検証から得た結果を元に、チームワークに重点をおいた分析と仮説の検証を行いました。しかしGoogleの優秀な社員でも、チームにおける労働生産性の相関性を明確にすることはできませんでした。そのため、チームのメンバー編成から視点を変更し、他の視点から再度研究を開始しました。
プロセス4.トライ&エラーによる追加検証を行う
次はチーム内で扱われている不文律や、暗黙の了解などの集団規範に着目し、さらに学問的視点からのアプローチも必要だと気づき、集団心理学に関連する学術論文の読解などを行うことにしました。Googleは追加検証として日々トライアンドエラーを繰り返し、多角的なアプローチによるチームの成功因子を発見したのです。
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04まとめ
プロジェクトアリストテレスはチームのメンバーで仕事をするうえで、必要な考え方です。仕事がしやすい環境を作るためには「心理的安全性」が要求されます。本記事では、プロジェクトアリストテレスから導き出された5つの柱の特徴、導入するメリットやGoogleが導き出した方法について、紹介してきました。今回の記事を参考に、社内のチームを改善するために日ごろから積極的にトレーニングする機会を作ることが大切でしょう。