更新日:2026/05/20

複線型人事制度とは?導入するメリットやその方法について解説する

複線型人事制度とは?導入するメリットやその方法について解説する | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

複線型人事制度は、同一企業内に複数のキャリアコースを設定し、社員の志向や適性に応じたキャリア形成を支援する人事管理制度です。管理職への昇進だけでなく、専門職や職務特化型のキャリアパスを設けることで、多様な人材の活躍を促しやすくなります。本記事では、複線型人事制度の概要やメリット・デメリット、主なキャリアコース、設計・導入時のポイント、企業事例を解説します。

 

01複線型人事制度とは

複線型人事制度とは、同一企業内に複数のキャリアコースが並立する多元的な人事管理制度を指します。例えば厚生労働省の「雇用管理調査」では、「複数の職掌(総合職、一般職など)を設定し、人事管理を分けて行う制度」と定義されています。

区分ごとに、募集・採用、配置、昇進、教育訓練、賃金を含む処遇などを異なる形で運用できるのが特徴です。総合職・一般職という職掌区分はその代表例ですが、他にも管理職を目指す「マネジメントコース」と特定分野の専門性を磨く「スペシャリストコース」を並列で設ける形など、企業の実態に合わせてさまざまな設計がなされます。

▼参考:平成14年雇用管理調査結果の概要(4 用語の定義)|厚生労働省

複線型人事制度が求められている背景

複線型人事制度が注目される背景には、さまざまな要因が絡み合っています。第一に、組織のピラミッド構造上、管理職ポストには数に限りがあり、優秀な人材であっても、組織状況やポストの空き状況によっては昇進できないという構造が挙げられます。その結果、モチベーションの低下や離職につながる可能性もあります。

複線型人事制度は、管理職ポストそのものを増やす制度ではありませんが、管理職以外にも正当に評価・処遇されるキャリアルートを設けることで、こうした課題に対応しやすくなります。

また、技術革新や新規事業創出が経営課題となる中、高度な専門人材を内部で育成・確保する必要性も高まっています。しかし、管理職への昇進を前提とした単線型の制度では、専門性を高めたい人材に対して、十分な処遇やキャリアの見通しを示しにくい場合があります。複線型人事制度では、専門職コースなど管理職とは異なるキャリアパスを設けることで、専門人材の役割や評価基準を明確にし、定着・育成につなげやすくなります。

加えて、ワーク・ライフ・バランスを重視する人が増えるなど、従業員のキャリア観も多様化しています。管理職への昇進を唯一の成長の道とする単線型の制度では、こうした変化に対応しきれない場面が生じています。そのため、企業には、従業員一人ひとりの志向や能力に応じて、多様なキャリア形成を支援できる人事制度の整備が求められているのです。

単線型人事制度との違い

日本の伝統的な雇用慣行では、長期雇用を前提に、職能資格制度や年功的な運用のもとで昇給・昇格が行われるケースが多く見られました。その結果、キャリアアップの経路が管理職、いわゆるライン職への昇進に収束しやすく、単線型の構造が定着していきました。

しかし、管理職ポストには限りがあるうえ、従業員の志向や求められる専門性も多様化しています。そのため、近年では、管理職への昇進だけをキャリアアップの道とする単線型の制度だけでは、専門人材の育成・処遇や多様なキャリア志向への対応が難しくなっています。

こうした課題に対応する制度として、管理職コースと専門職コースなど、複数のキャリアルートを設ける複線型人事制度が注目されています。ただし、複数のコースを設ければよいというわけではありません。制度設計によっては、コース間の役割や処遇の違いが不明確になったり、一部のコースが補助的・限定的な位置づけと受け止められたりするおそれがあります。

複数のキャリア区分を設ける制度設計を考えるうえで参考になる動きとして、総合職・一般職といった旧来型のコース別雇用管理があります。近年、日本生命保険や三菱UFJ銀行などでは、一般職の廃止・統合が進んでいると報じられています。背景には、業務実態として総合職と一般職の差異が薄れてきたことや、賃金格差の是正といった課題があります。

一方で、こうした動きは、複線型人事制度そのものが不要になったことを意味するものではありません。管理職コースと専門職コースを並立させるような複線型の制度は、専門性を持つ人材を適切に評価・処遇し、多様なキャリア形成を支える仕組みとして、引き続き有効な選択肢となります。

▼参考:Bloomberg『さよなら「一般職」、生保・銀行最大手で相次ぎ廃止-賃金格差是正へ』

単線型のメリット・デメリット

単線型人事制度には、制度運用がシンプルでわかりやすく、従業員にとってもキャリアの見通しを立てやすいという利点があります。また、ジョブローテーションと組み合わせることで、幅広い業務経験を積むゼネラリストの育成にも適しています。

一方で、管理職ポストの数には限りがあるため、優秀な人材であっても昇進できず、キャリアが停滞するリスクがあります。また、専門性の高い人材を適切に評価・処遇する仕組みを設けにくく、専門職志向の従業員のモチベーション維持や定着に課題が生じやすい点がデメリットとして挙げられます。

 

02複線型人事制度のメリット

複線型人事制度の導入は、社員一人ひとりのキャリア形成を後押しするだけでなく、組織が必要とする人材を計画的に育成するうえでも重要な選択肢となります。ここでは、代表的なメリットを3つの観点から解説します。

▼参考:労働政策研究報告書No.196 第Ⅱ部 日本企業の人材育成・キャリア管理、従業員の能力開発に関する分析|独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)

専門職・管理職それぞれのキャリアを明確にしやすくなる

複線型人事制度を導入することで、管理職キャリアと専門職キャリアをそれぞれ明確に定義し、役割に応じた評価・処遇の体系を整備しやすくなります。

近年は、職場の多様化や事業環境の高度化により、管理職には組織を円滑にマネジメントする能力が、専門職には特定領域で高い成果を出すための知識・スキルが求められています。そのため、共通の評価軸を持ちつつも、両者の役割に応じた評価項目や育成の仕組みを設ける意義が高まっています。

社員の意向に沿った配置やキャリア形成を行いやすくなる

複線型人事制度は、社員一人ひとりのキャリア志向や適性を人事管理に反映しやすくする点でメリットがあります。

JILPTの調査では、複線型キャリア管理に力を入れている企業ほど、「社員自身の意向を反映した仕事への配置」にも注力している傾向が見られます。具体的には、同項目に力を入れている企業の比率は、複線型キャリア管理に力を入れている企業で37.8%となり、力を入れていない企業との差は24.8ポイントでした。

また、同調査では、複線型キャリア管理に力を入れている企業ほど、社員の自律的キャリア形成促進にも注力する傾向が示されています。管理職キャリアと専門職キャリアを明確に分けることで、社員は自分が目指すキャリアに必要な能力開発を意識しやすくなります。結果として、主体的な学習やキャリア形成を促しやすくなることが期待できます。

経営方針と人材育成を結びつけやすくなる

複線型人事制度の導入は、経営戦略と人材育成の方向性を整合させるうえでも有効な手段の一つです。

管理職コースや専門職コースなどを明確に定義することで、経営上どのような役割や職務が重要かを組織として明確化する機会になります。各コースに求められるスキルや経験を具体化することで、「経営が必要とする人材像」と「社員が選択・形成できるキャリア」を接続しやすくなり、人材育成を経営計画と連動した形で設計しやすくなるためです。

また、社員の側からも、自身が進むコースに必要な能力開発の方向性が明確になることで、主体的なスキルアップへの取り組みが促されやすくなります。組織のニーズと個人の成長意欲を同じ方向に向けやすくなる点は、複線型人事制度における経営戦略上の強みといえるでしょう。

 

03複線型人事制度導入のデメリット

複線型人事制度には、社員のキャリア形成や専門人材の育成を後押しするメリットがある一方で、制度設計や運用が複雑になりやすいという課題もあります。導入前に想定されるデメリットを把握し、評価基準や運用体制、社員への説明方法を整えておくことが重要です。

制度設計・運用にかかる負荷が大きくなる

複線型人事制度を導入する際のデメリットとして、制度設計と運用の負荷があります。単線型人事制度と比べ、複数のキャリアコースを設けるだけでなく、コースごとの役割定義や評価基準、等級制度、報酬体系を見直す必要があるためです。さらに制度を開始した後も、社員一人ひとりのキャリア情報や能力開発の進捗を継続的に把握し、管理職による定期的なキャリア面談やキャリア支援の仕組みを運用していくことが求められます。

こうした運用は人事部門だけでは完結せず、各部署の管理職にも新たな役割が生じるため、組織全体の業務負荷が増える可能性があります。導入前には、現状の人事リソースでどこまで対応できるかを見極めた上で、外部リソースの活用や既存業務の見直しを含めた体制づくりを検討しておくことが重要です。

評価の方法や基準が複雑になる

キャリアコースが複数になると、管理職と専門職のように役割の異なる社員をどのような基準で評価するかが課題になります。評価基準が曖昧なままでは、社員が「どのような行動や成果が評価されるのか」を理解しにくく、評価への納得感が低下するリスクがあるため注意が必要です。

対策としては、全コース共通の基本評価項目と、各コースの役割に応じた専門評価項目を分けて設計することが有効です。共通部分で評価の一貫性を担保しつつ、専門性や役割の違いを適切に反映できる仕組みにすることで、コースをまたいだ評価バランスの確認もしやすくなります。

定着まで時間と手間がかかる

新たな評価軸やキャリアコースを設ける場合、制度が社内に定着するまでには一定の時間がかかります。導入直後は、管理職や社員が制度の目的や評価基準を十分に理解できず、運用にばらつきが生じる可能性もあります。

そのため、導入スケジュールには余裕を持たせ、対象部門を限定したスモールスタートから始めることも有効です。段階的に実施範囲を広げることで、運用上の課題や必要な工数を確認しながら、制度の精度を高めやすくなります。

制度変更への不安や不公平感が生じる可能性がある

複線型人事制度を導入するうえでは、社員の理解を得ることが重要です。既存の評価軸やキャリアパスが大きく変わる場合、社員の中には「自分の職種は正しく評価されるのか」「コースによって昇進や処遇に不利が生じないか」といった不安を抱く人もいるでしょう。

そのため、制度の目的や導入背景、各コースの役割、評価・処遇の考え方について、全社説明会や部門別説明会、管理職向け研修などを通じて丁寧に伝える必要があります。導入前に社内サーベイを行い、社員の不安や疑問を把握しておくことも有効です。

 

04複線型人事制度で設計される主なキャリアコース

複線型人事制度では、企業の事業内容や人材戦略に応じて、複数のキャリアコースを設計します。本記事では、代表的な設計例として、管理職コース、専門職・スペシャリストコース、専任職・職務特化コースを取り上げます。

管理職コース

管理職コースは、組織のマネジメントを担う人材を育成・処遇するキャリアラインです。部下の指導・監督やチームの目標達成、組織運営の中核を担う役割が期待され、一般に課長・部長などのライン管理職への昇進を軸にキャリアが形成されます。

ジョブローテーションや幅広い業務経験を通じてゼネラリストとしての視野を広げながら、将来的には課長・部長といった上位ポストを目指すルートが設計されます。評価においては、チームのマネジメント力、組織への貢献度、リーダーシップなどが重視される点が、専門職コースとの主な違いです。

専門職・スペシャリストコース

専門職・スペシャリストコースは、特定分野の高度な知識や技術を持つ人材が、管理職にならなくても適切に評価・処遇されるキャリアラインです。厚生労働省の雇用管理調査では、専門職制度について「専門的な知識や技能をもつ者に対し、専任職・スタッフ管理職などのポストを設けてライン役職と同等の処遇を与える制度」と説明されています。専門職・スペシャリストコースは、管理職以外のキャリアパスを設ける代表的な仕組みの一つです。

JILPTの報告書でも、技術面などの高度な専門性を競争力の源泉とみなす企業では、ライン管理職に準じる位置づけではなく、専門職として独自に評価・処遇する取り組みが進められていると指摘されています。エンジニア・研究者・デザイナーなど、マネジメントよりも専門性の深化を望む人材の活躍機会を広げ、専門ノウハウの蓄積につながることが期待されます。

専任職・職務特化コース

専任職・職務特化コースは、特定の業務や職域に長期的に携わる人材を処遇するキャリアラインです。管理職のようにチームを率いる役割とは異なり、長年の実務経験で培った知識・スキルを特定職務の遂行に集中して発揮することが期待されます。

例えば、営業事務、品質管理、製造現場の熟練業務、カスタマーサポート、社内システム運用など、組織運営に欠かせない特定業務を安定的に担う人材が対象となります。評価においては、担当業務の正確性、業務改善への貢献、後進への知識共有、安定した成果創出などが重視されます。

このようなコースを設けることで、管理職や高度専門職を目指す以外にも、特定職務で経験を積みながら組織に貢献するキャリアパスを示しやすくなります。ただし、業務範囲が固定化されすぎると、本人の成長機会が限定される可能性もあるため、定期的な職務の見直しや能力開発の機会を設けることが重要です。

 

05複線型人事制度を設計・導入する際のポイント

複線型人事制度は、単に複数のキャリアコースを設ければ機能するものではありません。導入目的、対象範囲、等級・評価・処遇の考え方を整理し、社員が納得して選択できる仕組みとして設計することが重要です。ここでは、設計・導入時に押さえておきたいポイントについて解説します。

導入目的と対象範囲を明確にする

複線型人事制度の設計に着手する前に、まず導入目的と対象範囲を明確にしておくことが重要です。目的が曖昧なまま制度設計を進めると、コース設定や評価基準が揺らぎやすくなり、運用段階で混乱を招くリスクがあります。

導入目的としては、管理職ポスト不足への対応、専門人材の育成・活躍機会の拡大、社員のキャリア自律促進など、自社が抱える課題に即したものを設定することが求められます。目的によって必要なコースの数や設計の方向性が変わるため、経営層と人事部門が連携し、中長期の事業計画と結びつけた形で整理しておくことが望ましいです。

対象範囲については、全社員を一律に対象とするのか、特定の職種や等級以上の社員に限定するのかを事前に定めておく必要があります。初めて導入する場合は、一部の部門や職種に対象を絞って試行的に始めることも有効です。運用上の課題を早期に把握し、段階的に適用範囲を広げていくことで、制度の定着をより確実に進めやすくなります。

キャリアコースごとの役割・等級・評価基準を設計する

キャリアコースごとの役割・等級・評価基準を設計する

導入目的と対象範囲が定まったら、次に具体的なキャリアコースの内容と、各コースにおける等級制度を設計します。この段階が制度全体の骨格となるため、丁寧に設計することが求められます。

キャリアコースの設計では、各コースに期待する役割・職務・行動基準を具体的に明文化しておくことが重要です。「管理職コースはどのような人材を育てるのか」「専門職コースはどの水準の専門性を求めるのか」といった問いに対して、具体的な言葉で答えられる状態にしておくことで、社員が自身の目指す姿を描きやすくなります。

等級設計においては、コースをまたいで処遇のバランスが取れているかという横断的な視点が求められます。管理職コースと専門職コースで等級の上限や報酬水準に著しい差があると、特定コースへの集中や不満につながるおそれがあります。各コースの等級に対応した役割定義・評価基準・報酬レンジをセットで設計し、各コースの役割や貢献に応じて公正に評価されるという社員の納得感を確保することが、制度を機能させるうえでの前提条件となるでしょう。

この点に関して、Schoo授業『ミドルシニア人材の「戦略的再配置」|第1回 経営層・人事部門が取り組むべき構造改革と実践ロードマップ』に登壇する清水久三子先生は、ミドルシニア人材の活躍を阻む要因として、役割や責任が不明瞭なまま現場任せになっている状況を挙げています。

授業では、ジョブ型要素を導入する際には、職務定義書を作成するだけでなく、上司と本人が期待をすり合わせ、役割遂行に必要なリソース提供やフィードバックを行うことが重要だと説明しています。また、「役割を定義したら終わりではなくて、この評価のサイクルを回す」ことが重要であり、評価文化が醸成されていないと、制度を導入しても機能しにくいと述べられています。

これは主にミドルシニア人材の戦略的再配置やジョブ型要素の導入に関する指摘ですが、複線型人事制度を設計するうえでも参考になります。各コースの役割と評価基準を明確にしたうえで、面談や育成施策、フィードバックの仕組みと連動させて運用することが、制度を形骸化させないための重要な視点といえるでしょう。

コース転換のルールを設ける

複線型人事制度を長期にわたって機能させるためには、コース間の転換ルールをあらかじめ設けておくことも重要です。ライフステージの変化やキャリア志向の変化に応じて、社員が柔軟にコースを選び直せる仕組みがあることで、制度への信頼感が高まり、長期的なエンゲージメントの維持にもつながりやすくなります。

転換ルールを設計する際には、転換の申請時期・頻度・必要な要件といった基本的な条件を明確にしておく必要があります。また、転換後の等級や処遇の扱いについても事前に定めておかないと、個別対応が増え、人事部門の運用負荷が高まる原因になります。制度の趣旨に沿った転換を促すためにも、単なる処遇目的の転換申請を防ぐ審査の仕組みや、転換前後のキャリア面談など、運用上の歯止めをあわせて整えておくことが望ましいです。

社員への説明・面談を行う

制度設計が整ったとしても、社員一人ひとりの理解と納得がなければ、複線型人事制度は形だけのものになりかねません。導入前から丁寧なコミュニケーションを重ねることが、制度定着の成否を大きく左右します。

説明の場は、全社向けの説明会にとどまらず、部門・チーム単位での説明や、個別面談を組み合わせて実施することが効果的です。特に個別面談では、各社員が自身のキャリア志向や適性と照らし合わせながらコースを検討できるよう、上司や人事担当者がサポートする役割を担います。制度変更の背景・目的・評価基準の変化といった内容をわかりやすく伝えるとともに、社員が抱く疑問や不安に対して丁寧に応じる姿勢が、制度への信頼を築く基盤となるでしょう。導入後も定期的な面談やサーベイを通じて運用状況を確認し、必要に応じて制度を見直していく継続的な運用改善が求められます。

 

06複線型人事制度を導入した企業事例

複線型人事制度は、企業の課題や人材戦略に応じて設計内容が異なります。ここでは、実際に制度を導入・見直した企業の事例をもとに、設計のポイントを紹介します。

株式会社バイク王&カンパニー

同社では、従来の管理職コースに加え、職種別に特化した「エキスパートコース」を新設しました。導入の背景には、管理職への昇進よりも買取営業など現場の第一線で専門性を磨きたいと考える社員に対応するキャリアパスがなかったという課題があります。エキスパート職は企画専門職・買取営業職・販売職・整備職などで構成されており、職種ごとに独立したコースが設けられています。

制度設計の起点となったのは、管理職の職務調査です。部門横断的な共通評価基準を整備するにあたり、「現在誰が担っているか」ではなく「本来誰が担うべき仕事か」という視点で職務内容を洗い出した点が特徴的です。その後、管理職・エキスパートコース双方の人事考課に厚生労働省の職業能力評価基準を活用し、評価項目の客観性と根拠づけを図りました。 運用面では、現場の声を制度改定に反映するためのヒアリングを重ね、複数回のトライアル評価を通じて基準を精査しています。「人事が単独でつくった制度ではなく、関係部署と一緒につくった制度である」という姿勢が、社員の納得感と社内浸透につながったとされています。

同社の事例は、管理職一本のキャリア構造を見直し、職種別の専門職コースを加えることで、社員の多様な志向に対応しようとした実践例です。制度設計の際には、職務実態の調査と、客観性のある評価基準づくりが重要であることを示しています。

▼参考:職業能力評価基準 活用事例集|中央職業能力開発協会

東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)

東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)は、両立支援制度やワーク・ライフ・バランス施策の整備を進める一方で、意欲ある社員の活躍を促すことを目的に、2012年に人事・賃金制度を抜本的に見直しました。

同社は、等級試験を廃止し、管理者の補佐役としての「主務職」、人材育成のプロとしての「技術専任職」を新設するなど、複線型人事制度を導入しています。制度改革の狙いは、50代管理職の大量離職を控え、優秀な人材に一歩抜きん出た役割を果たしてもらうことで、技術やスキルの継承をスムーズに進めることにありました。

また、これまでの年功制度を脱し、伸びる人材を抜擢・育成する仕組みを整えることも制度改革の狙いとされています。新卒入社の社員だけでなく、中途採用者にも能力発揮の機会を広げるため、昇進資格の短縮や飛び級制度の新設も行われました。

同社の事例は、年功的な運用を見直し、意欲や能力に応じて役割を広げることで、技術・スキルの継承や人材の抜擢・育成を図った例として参考になります。

▼参考:ダイバーシティ100選 東日本旅客鉄道株式会社|経済産業省


 

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07まとめ

本記事では、複線型人事制度の概念や導入の背景から、設計・運用のポイント、企業事例まで解説しました。管理職ポストの不足や専門人材の流出、従業員のキャリア観の多様化といった課題が顕在化する中、管理職への昇進を唯一の成長の道とする従来の単線型人事制度では対応しきれない場面が増えています。複線型人事制度は、こうした変化に対応するための選択肢として注目されています。

一方で、制度を導入すれば課題が解決するわけではありません。導入目的の明確化、コースごとの役割・評価基準の整備、社員への丁寧な説明など、設計・運用の各段階で地道な取り組みが求められます。本記事が、自社の人事制度を見直す際の参考になれば幸いです。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
Editor
Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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