役員とはどんな役職?組織における役員の義務と効果的な研修を紹介
役員とは、一般的に取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事といった役職を指します。当記事では、役員の定義と組織における役員の義務や効果的な研修などについて解説します。役員について理解を深めたい方、人事担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
- 01.会社法における株式会社の役員の定義とは?
- 02.会社法における「役員等」に含まれる役職は?
- 03.役員と混同しがちな役職
- 04.役員の主な義務とは
- 05.役員に就任するリスク
- 06.役員におすすめの研修
- 07.まとめ
01会社法における株式会社の役員の定義とは?
日本の会社法における株式会社の役員とは、取締役・会計参与・監査役のことを指します(会社法第329条)。会社法施行規則では、執行役までも含めています。執行役員も役員と思われることが多いものですが、執行役員は「会社法が定める役員」ではありません。
取締役
株式会社における取締役とは、業務執行に関する意思決定を行う者を指します。現在の会社法が施行される前は、取締役会の設置が義務付けられていました。以前は最低でも3人の取締役と1人の監査役を設置しなければなりませんでしたが、現行の会社法では取締役1人だけでも会社を設立可能です。
代表取締役
代表取締役とは、会社を代表する取締役です。取締役会を設置している会社では、代表取締役が業務執行にあたります。一般的にみると代表取締役=社長というパターンがほとんどですが、必ずしも社長というわけではありません。
会計参与
会計参与には、名前のとおり会計に参与する役目があります。取締役と共同しての会計書類の作成、保管、開示などが主な職務となります。会計参与には、税務・会計の国家資格を有する者が就くこととなっており、税理士・税理士法人・公認会計士・監査法人以外の人は就くことができません。
監査役
監査役とは株主総会で選任される会社法上の役員を指します。会社では取締役の職務執行を監査する役割を担います。取締役の職務に不正がないかを独自に調査し、取締役会や株主総会で報告したり、不正行為差止請求の権限をもちます。
02会社法における「役員等」に含まれる役職は?
株式会社の役員とは、会社法第329条第1項では取締役、会計参与、監査役と定義されており、会社法施行規則第2条第3項第4号では、さらに執行役も加えて会社役員とされています。取締役・会計参与・監査役以外の役員等に含まれる役職は以下の通りです。
執行役
執行役はエグゼクティブ・マネジャー、執行委員などとされ、最上級管理職にあたります。執行役は株主や取締役会から移譲された特定の執行権限を保持しており、上級マネジメントや経営幹部マネジメントを重点的に担い、最高レベルの責任を負っています。
会計監査人
会計監査人は、公認会計士または監査法人でなければなりません。 株主総会の決議によって選任・解任されますが、選任等に関する議案の内容については、監査役(監査役会)が決定します。
03役員と混同しがちな役職
一般的に役員とされる役職と、会社法の役員に含まれる役職の定義は異なります。ここが混同しやすい部分であり、曖昧に認識している方も多いようです。ここでは役員と混同しがちな役職について解説していきます。
執行役員とは
執行役員は役員ではありません。執行役員というと、その名の通り役員というイメージをもたれますが、実は役員ではないのです。立場的に言うと取締役会のすぐ下、社員の中では上に位置します。執行役員は経営層の意思決定に従って現場を管理する、いわば「従業員のトップ」といった位置づけになります。 法律上の役員には含まれないため、注意が必要です。執行役員には法律上の定義もありません。会社独自のルールによって設置することができる役職なのです。
みなし役員
みなし役員は、役員として登記されない立場であっても、役員と同じ扱いを受けている者を指します。具体的には「A社の業務に従事していないが、経営に関わっている人(経営者)」や「同族会社B社の業務に従事しており、A社に対して一定の持株割合を有する株主として経営に関わっている人」などです。 みなし役員は、報酬のあり方やその会計処理の方法などについても、役員と同様の扱いをしなければなりません。
使用人兼務役員
使用人兼務役員とは、現場で業務を執行する立場であり、かつ役員としての扱いを受ける者を指します。使用人兼務役員になる場合は、証明書の準備、ハローワークでの手続きが必要です。会社の代表権をもつ役員は使用人兼務役員となることができません。
04役員の主な義務とは
役員の主な義務としては、善管注意義務・忠実義務、利益相反取引回避義務、競業避止義務などがあります。聞きなれないものも多いかと思いますが、以下でそれぞれ簡単に述べたものと会社法を用いた正しい内容をお伝えしていきます。
善管注意義務・忠実義務
善管注意義務・忠実義務は会社役員の一般的な義務です。 それぞれ、会社法、民法を用いて説明します。 ・善管注意義務 会社役員は、民法上の委任契約の受託者として、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理しなければなりません。(会社法第330条、民法第644条) ・忠実義務 取締役は、法令および定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のために忠実に職務を行わなければなりません。(会社法第355条)
利益相反取引回避義務
利益相反取引回避義務は簡単に言えば、「取締役や会社は勝手に取締役個人が利益を得て会社に不利益が生じる取引を行ってはならない」というものです。会社法では以下のように説明されています。 取締役は、自己または第三者の利益を図るために、会社(自らが取締役を務める会社)と取引を行う場合(直接取引)、また会社が取締役の債務を保証することや、取締役以外の者との間で会社とその取締役との利益が相反する取引を行う場合(間接取引)には、原則として事前に株主総会(取締役会設置会社では取締役会)において、その取引についての重要な事実を開示し、承認を受けなければなりません。(会社法第356条第1項第2号、第3号
競業避止義務
競業避止義務は、簡単に言えば「取締役は勝手に会社と同じような事業を行ってはならない」ということです。会社法では以下のように説明されています。 取締役は自己または第三者の利益を図るために、会社(自らが取締役を務める会社)の事業の部類に属する取引(競業取引)を行う場合には、原則として事前に株主総会(取締役会設置会社では取締役会)において、その取引についての重要な事実を開示し、承認を受けなければなりません。(会社法第356条第1項第1号)
05役員に就任するリスク
役員に就任するとなると、さまざまな権限も得られるため、手放しで喜ぶ方もいるかもしれません。ですが、就任するうえではリスクも存在しているのです。このリスクについてしっかりと認識しておくことが重要です。以下をぜひ参考にしてください。
損害賠償責任を負うリスクがある
取締役等の損害賠償責任は、会社法では以下のものがあります。 1.役員等は任務を怠って損害を株式会社に生じさせたときは損害賠償を負う。 2.取締役の違法な自己取引は、その取引の利益額が会社の損害額と推定される。 3.利益相反取引によって会社に損害を与えた時は、取締役が任務を怠ったものと推定される。 4.役員等が職務を遂行する時に悪意、重大な過失があった場合は、第三者へ損害賠償する責任を負う。 実際に株主代表訴訟などで請求されている事例があります。
解任されるリスクがある
取締役等の解任は、株主総会の決議によって行います。株主総会決議が適切に実施されている場合には、解任の効力自体を争うことはできません。どんなタイミングでも解任はできるため、常時解任されるリスクがあります。
雇用保険・労災保険・労働基準法の適用外
従業員は雇用契約を会社との間で結ぶのに対して、取締役は委任契約を結びます。このため、役員は労働法の保護が及ぶ労働者ではなくなるのです。労働者ではないということは、どれだけ働いたとしても残業代は出ませんし、年次有給休暇もありません。また、雇用保険の適用はないため、突然解任されたとしても失業給付はもらえません。 さらに原則として労災保険にも加入できません。業務中にケガを負った場合には何の保障もされないため、自身でリスク回避について考えておかなくてはいけません。
06役員におすすめの研修
役員も一般の社員、管理職の社員と同様に研修を受け、役職に合わせて必要な知識やスキルを習得する必要があります。これまでとは違った責任を追い、業務に取り組んでいくなかで、的確な判断ができるような研修を行いましょう。
リスクマネジメント研修
リスクマネジメントとは社内業務などで発生する可能性のあるリスクを把握し、事前にリスク回避・分散をすることです。例えば、違反行為・不祥事による会社への損害や企業イメージの悪化、自然災害や事故などのリスクが挙げられます。このような内部要因、外部要因による企業への損害・損失を最小限に抑えることが目的です。 緊急時にも適切な対応が求められるため、事例を挙げるなどして理解を浸透させましょう。
コンプライアンス研修
役員・取締役は、コンプライアンスについて正確に理解したうえで、何を行うべきかを決定しなければなりません。また、企業の業務における多種多様な法律に対して幅広い知識の習得が必要です。研修では法律知識を分かりやすく解説することも重要です。
リーダーシップ研修
リーダーシップ研修では、自身の価値観や理念に基づいて高い目標を設定できること、チーム全体が目標達成に向かって前進していける環境を作ることを学べるようにします。 目標達成を実現できる体制の構築や、周囲の人々の意欲を高めること、企業・事業における課題や障害を解決できるスキルや知識の習得を取り入れると効果的です。
コンセプチュアルスキル研修
コンセプチュアルスキルとは、物事の本質を的確に捉えることで個人や組織のもつ可能性を最大限に高める能力です。具体的には下記の3つに分けられます。
・事業、組織を俯瞰し本質を捉える力・社内外の現状把握と将来の動向予測能力・事業の戦略立案能力経営階層が上がるにつれて「テクニカルスキル」よりも「コンセプチュアルスキル」と「ヒューマンスキル」の重要度が高まるとされています。役員向けの研修ではこのコンセプチュアルスキル研修を行うことで、ポジションに合わせて活かせる能力を高められます。
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■資料内容抜粋
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・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など
07まとめ
役員とはどんな役職か、組織における役員の義務と効果的な研修について解説してきました。役員は、ほかの従業員よりも幅広い視野と責任が求められます。現場で業務を遂行する社員とは異なり、経営視点で物事を考えて会社と関わっていくことになります。この記事を参考に、自社の役員の役割について一度考えてみてください。