スキルズインベントリーとは?その必要性や基本的な活用法と注意点を解説
人材育成を効率的に進めるためには、社員のスキルを把握し、管理する必要があります。その際に役立つのがスキルズインベントリーです。当記事では、スキルズインベントリーとはなにか、その必要性や基本的な活用法や活用のステップと注意点について解説します。
- 01.スキルズインベントリーとは
- 02.企業が求めるスキルとは
- 03.スキルズインベントリーの必要性
- 04.スキルズインベントリーの基本的な活用法
- 05.スキルズインベントリーを活用する際の注意点
- 06.まとめ
01スキルズインベントリーとは
スキルズインベントリーとは、企業が社員のスキルや資格などの情報を管理しやすいように、一覧表にして記録しておくことを指します。また、スキルや資格以外にも、業務内容や階層なども合わせて管理するのが一般的です。 スキルズインベントリーによって、適材適所な人員配置が可能になります。また、職務上必要となるスキルに対し、社内基準に達していない社員をピックアップして、研修を行うなど、人材教育の強化がスムーズになります。企業に不足しているスキルが分かることで、人材の補充や採用の際にも活用が可能です。
02企業が求めるスキルとは
スキルズインベントリーで扱うスキルは、業務上必要なビジネススキルのことを指します。また、業務に直接関係がなくても、業務を遂行する上で必要になるものもスキルと呼びます。ここでは、主なビジネススキルについて解説します。
ヒューマンスキル
マネージャーや管理職などに求められる能力で、対人関係能力ともいわれ、業務上の円滑な人間関係を構築するためのスキルを指します。具体的には、コミュニケーション、ネゴシエーション(交渉、折衝)、ヒアリングのスキルなどです。さまざまな業種や職種に共通した普遍的な能力ともいえます。
テクニカルスキル
実務に欠かせない技術的な能力のことです。ビジネスマナーやパソコンスキルといった汎用的なスキルと業務固有の専門的スキルの2つに大別されます。専門的スキルは、販売職であれば、商品知識、接客技術、販売技術、観察力、説明力などが挙げられます。また、専門的スキルを細分化し、より高度な業務に必要なスキルを特化スキルと呼びます。
ポータブルスキル
近年注目されているポータブルスキルとは、「持ち出し可能な能力」という意味です。業種や職種の専門性などの業務上のスキルに加えて、コミュニケーションやマネジメント、論理的思考力、課題解決能力といった、ビジネスの基礎的なスキルがあります。また、性格や人柄なども含まれ、ポータブルスキルは、個人がもつスキル全般を指します。
03スキルズインベントリーの必要性
必要性は、以下の4つが挙げられます。
ここでは、4つの必要性について分かりやすく解説します。
社員のスキルと組織のスキルの総量が分かる
社員がもつスキルを管理することで、社員個人だけでなく、組織全体や部署ごとのスキルの総量、さらに強み・弱みまでも把握することが可能です。社員や組織の現状を知り、弱みを解決するための具体策も立てやすくなります。
適材適所の人員配置が可能になる
社員や組織のスキル量が分かると、組織に不足しているスキルをに対して、他部署からの異動などの人員配置を行うことができます。また、専門的なスキルを必要とする部署の場合、必要なスキルをもつ社員をピックアップして、そこに特化した業務を行ってもらうことも可能です。
適切な能力評価ができる
管理職が、社員一人ひとりのスキルを把握して、能力を評価することは難しいものです。スキルズインベントリーであれば、評価基準が明確になっているため適切な評価ができます。また、管理職と社員が共有することによって、評価やその理由を知ることができることも、評価の公平性を保つ上で有用です。
人材育成の計画が立てやすくなる
スキルを把握できると、人材育成の計画が立てやすくなります。人材育成の計画には、会社に不足しているスキルや社員の現状を正確に認識する必要があります。企業の方針とどの程度のギャップがあるのかを確認しておくことも大切です。獲得するスキルに優先順位をつけることで、長期的な人材育成計画も立てやすくなり、適切な教育を適切なタイミングで行うことが可能になります。
- ・社員のスキルと組織のスキルの総量が分かる
- ・適材適所の人員配置が可能になる
- ・適切な能力評価ができる
- ・人材育成の計画が立てやすくなる
04スキルズインベントリーの基本的な活用法
ここでは、基本的な活用法として、厚生労働省のフォーマットをご紹介し、活用の7つのステップについて解説します。
フォーマット例:厚生労働省
引用:キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロード
職業能力評価シートのファイルは、下記のとおりにわかれています。
- ・表紙
- ・評価シート
- ・サブツール
表紙には使用方法、サブツールには評価シートの具体的な知識や能力が記載されています。 これらのシートは、そのまま使うことも可能ですが、あくまでもフォーマットとして利用し、自社の実状に合った項目や評価基準に見直す必要があります。 厚生労働省では、下記15種類の業種別シートが用意されています。 エステティック業、警備業葬祭業、ディスプレイ業、外食産業、フィットネス産業、卸売業、在宅介護業、スーパーマーケット業、電気通信工事業、ホテル業、 ビルメンテナンス業、アパレル業、ねじ製造業、旅館業、ウエブ・コンテンツ制作業 自社がもっとも使いやすいフォーマットを選び、利用または参考にしてみてください。
スキルズインベントリー活用のステップ
スキルズインベントリー活用のステップには、7つあります。
ここでは、7つのステップについて解説します。
1.目的を明確化する
まず、スキルズインベントリーを作成する目的を明確にします。作成に関わる人の間に相違がないか、認識を共有しておきましょう。どのような場面で活用するのか、改善したいことは何かということに焦点を当てることで、目的が整理しやすくなります。
2.作成責任者を決める
誰が作成するのかを決定します。部署の責任者が作成するケースが一般的です。しかし、組織によっても異なるため、どのような役職・階層の人が作成すべきなのかを検討し、責任者を決定します。
3.業務内容とスキル、階層を決める
業務内容と必要なスキル、階層を分けて決めます。特にスキルに関しては、スキルや必要な知識、資格などを細分化して具体的に記載することで、次のステップで作成する評価基準の設定がしやすくなります。
4.評価基準を設定する
業務内容と必要なスキル、階層を設定後、スキルの評価基準を設定します。評価基準を数値化し、誰が見ても分かりやすように定義します。厚生労働省では、スキル区分をレベル1から4までの4段階に分けていますが、自社の実情に合わせて増やしても構いません。ただし、このレベルが増えすぎると、かえって評価しにくくなってしまいます。設定後は、必要に応じて微調整するようにしましょう。
5.試験運用を行い検証する
本格導入の前に試験運用を行い、社員や管理者、作成責任者間でフィードバックをもらい検討することが大切です。さまざまな意見に基づいて、設定項目や評価基準に不備がないか見直しを行いましょう。使いやすさは効果的な活用において重要なポイントになります。
6.マニュアルを作成する
記入方法、評価基準などを分かりやすく記載してマニュアルを作成します。また、なぜスキルズインベントリーを作成したのか、どのような役割があるのかなど、全体像も分かりやすく書くことが重要です。
7.本格運用する
マニュアルを作成したら、いよいよ本格的な導入です。実際に運用してみると、改善点が出てくるケースがあります。また、定期的にフィードバックを行いながら見直すことも重要です。業務内容が変わったときや、企業に方針転換があったときなどのタイミングが見直しの目安になります。
- 1.目的を明確化する
- 2.作成責任者を決める
- 3.業務内容とスキル、階層を決める
- 4.評価基準を設定する
- 5.試験運用を行い検証する
- 6.マニュアルを作成する
- 7.本格運用する
05スキルズインベントリーを活用する際の注意点
ここまでは、スキルズインベントリーを導入するまでの流れを見てきました。ここからは、導入後に有効活用する際の注意点について解説します。
全社をあげて協力・連携することが大切
スキルズインベントリーの活用によって、社員個人や組織におけるスキルの総量が分かり、人員配置や人材育成にも貢献します。そのためにも、経営層との意思疎通が重要です。 作成者と社員だけではなく、経営層を含めたさまざまな部署での連携が必要となるのです。効率よく運用し成果を上げていくためには、全社をあげて協力・連携することが大切になります。
項目は解釈の余地がない表現を用いる
スキルの評価基準や定義において、抽象的な言葉や2通り以上の意味にとれる言葉を使うと、評価がしづらくなります。人によって異なる評価を受ければ、公平な評価とはいえなくなるでしょう。そのためには、誰が見ても分かりやすく、解釈の余地がない表現を用いることが重要です。
全社員で共有する
導入の際には、社員にスキルズインベントリーの活用について理解する場を確保することが大切です。マニュアルを用いて研修を行うのも1つの方法です。全社員に共有してはじめて、評価の公平性や透明性が確保できるのです。
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・自己啓発への活用方法 など
06まとめ
当記事では、スキルズインベントリーとはなにか、その必要性や基本的な活用法や活用のステップについて解説しました。 スキルズインベントリーを活用することで、社員のスキルや組織全体のスキルを把握し、不足しているスキルを強化することができます。結果として、企業規模でのスキルアップにもつなげることができるでしょう。 活用のステップや注意点を参考にして、スキルズインベントリーの導入を検討してみてください。