公開日:2022/01/26
更新日:2022/09/22

期待理論とは?活用するメリットやモチベーション向上に成功した事例を紹介

期待理論とは?活用するメリットやモチベーション向上に成功した事例を紹介 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

期待理論とは、「人は仕事をするうえで、どのようなプロセスを経て動機づけされるのか」について、その過程を説明した理論です。本記事では、期待理論の概要や活用するメリットについて解説します。また、モチベーション向上に成功した企業事例を紹介しています。

 

01期待理論とは?

期待理論とは、「人はある種の行動によって自分が期待し、価値を認める代償が得られると思えば、その行動に対するモチベーションが生まれる」という考えです。イェール大学の経営学・心理学教授、ヴィクター・H・ヴルーム氏が提唱し、1964年に「Work and Motivation」(仕事とモチベーション)を刊行しました。著書のなかで、氏はモチベーションについて以下のように述べています。 1.頑張ってどれだけのことが成し遂げられたか(期待) 2.成し遂げられた場合、さらに何がもたらされるか(道具性) 3.もたらされたものに、どれだけの価値があると予想されるか(誘意性) モチベーションの高さを数値化すると、「モチベーション=期待×道具性×優位性」と考えられます。

期待とは

ふたつの「期待」を連鎖的に成立させると、モチベーションがアップすると考えられています。期待の連鎖を成立させるためには、下記の3つが必要不可欠な要素です。 1.成果を実現するために必要な目標値の設定(Goal) 2.目標値を実現するために必要な戦略展開(Efforts) 3.魅力のある成果の設定(Reward) すなわち、「達成すべき目標が明確であり、目標達成に向けて十分な戦略が練られ、達成した目標の成果が魅力的であれば、目標に向かうモチベーションが生まれる」ことを意味します。

道具性とは

ヴルームの期待理論における道具性とは、目標達成によって得られる結果がさらに次の目標を達成するために、どの程度役に立つかの見込みを意味します。たとえば、海外で自分の実力を試したいと思っている人にとっては、海外勤務できる部署への異動は、道具性が高いといえます。

誘意性とは

誘意性とは、目標を達成した結果に対して得られる魅力の度合いです。モチベーションを上げる要素には、報酬や昇進・昇格、適切な目標設定、仕事を円滑に進めるための戦略などが挙げられます。個々人の性格や価値観によって要素は異なるものの、魅力の度合いが高ければ高いほど、誘意性も高まっていくものです。

 

02期待理論と関連のあるモチベーション理論

期待理論の概要について紹介しました。ここからは、ヴルームの期待理論と関係のあるポーターとローラーの期待理論について解説します。そのほかのモチベーション理論であるマズローの欲求5段階説、ピグマリオン効果についても説明します。

ポーターとローラーの期待理論

レイマン・ポーター氏とエドワード・ローラー三世は、ヴルームの期待理論をベースとする「ポーターとローラーの期待理論」を提唱しました。ヴルームの期待理論との違いは、「ループの発想」が掲げられている点です。ループの発想とは、仕事で成果を出した際、得られた報酬に対する満足度が高ければ高いほど、その後の仕事に対するモチベーションもアップする、すなわち報酬とモチベーションには大いに相関性があるという理論です。

マズローの欲求5段階説

米国の心理学者アブラハム・マズロー氏が考案した「欲求5段階」の欲求とは、生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現です。人には5つの欲求があり、生理的欲求を満たした後には、安全欲求を満たそうとし、最終的には自己実現を目指して成長するという、人間の基本的な心理的行動を表すものです。

ピグマリオン効果

ピグマリオン効果とは、他者から期待をかけられると、それに応えようという心理が働き、学習や仕事の成果がアップする現象です。米国の心理学者ロバート・ローゼンタール氏が提唱したもので「ローゼンタール効果」とも呼ばれていいます。逆に、誰にも期待されないことで、モチベーションが下がり、仕事の成果がダウンする現象を「ゴーレム効果」といいます。つまり、同じ人材に対しても期待のかけ方次第で、結果が異なってくることを意味します。

 

03期待理論を活用するメリット

期待理論の概要と関連するモチベーション理論について解説してきました。ここからは、期待理論を活用し、従業員の仕事に対するモチベーションをアップすると、どのようなメリットがあるのでしょうか。3つのメリットについてみていきましょう。

業績アップや生産性の向上が見込める

社員一人ひとりが、高いモチベーションを保ちながら日々の仕事に取り組むと、生産性の向上が見込めるでしょう。この高いモチベーションと企業の生産性向上を両立するには、適正な人事評価が重要なポイントです。従業員に評価制度への納得をもらい、能力を最大限発揮できる環境を保ち続けましょう。

新たなアイデアの創出につながる

期待理論を活用することで、新たなアイデアの創出につながる可能性も高まります。成果を出した従業員にだけインセンティブなどの報酬を与えるのではなく、プロセスにおいても何らかの報酬を与えるなどの工夫をします。報酬に対してのプレッシャーを感じさせなくすると、自由闊達な意見が出てくるはずです。その結果、画期的なアイデアが創出されるかもしれません。

離職率の低下につながる

労働力不足が叫ばれるなか、優秀な人材を確保することは企業にとって喫緊の課題です。期待理論をベースに、自社の社風にあわせた施策を考えることで、会社へのエンゲージメントを高められるでしょう。その結果、離職率の低下につなげられるはずです。

 

04期待理論を活用する際の注意点

期待理論を活用することで得られるメリットを理解できたと思います。一方、期待理論を活用する際には、いくつかの注意点があります。自社の社風にあわせた施策を考える点と、全従業員に効果があるとは限らない点について注意をする必要があるのです。

全従業員に効果があるとは限らない

人は、性格や価値観が一人ひとり異なるように、モチベーション向上の要因にも個人差があることを念頭に置いておきましょう。たとえば、海外転勤の可能性が高い部署への異動は、海外勤務を希望する人にとっては魅力的な要素ですが、望まない人にとってはまったく魅力的ではなく、モチベーションアップにはつながらないのです。

自社社風にあわせた施策を考える

全従業員に対して、魅力的な道具性の設定は難しいものです。ヴルームの期待理論を活用するためには、自社の社風にあわせたマネジメントを行いましょう。従業員の性格や価値観にマッチする施策を考えることがポイントです。社内アンケートを実施するなどして、従業員が働き方や報酬を含め、どのような原因により、モチベーション低下を招いているのかを調査するのもひとつの手段です。

 

05期待理論を活用しモチベーション向上に成功した企業事例

期待理論を活用するメリットと注意点について解説してきました。では、実際に期待理論を活用し、モチベーション向上に成功した資生堂、サイボウズ、ザ・リッツ・カールトンの3社の事例を紹介します。ぜひ、自社で期待理論を活用する際の参考にしてください。

株式会社資生堂

化粧品の大手メーカーである株式会社資生堂では、仕事と育児を両立させるため、小学校3年生までの子どもがいる美容部員が、短時間勤務できる育児時間制度を設けています。時短勤務の美容部員に代わり、店頭活動の手伝いをする「カンガルースタッフ制度」を採用し、育児期の美容部員が育児に専念できる環境を整えています。社員に対する期待を「働きやすさ」に重点をおくことで、企業への帰属意識も高まるとともに、モチベーションアップにも効果的です。

サイボウズ株式会社

ソフトウェア開発のサイボウズ株式会社では、2018年から育児や介護に限定せず、通学・副業など個人の事情に応じて、勤務時間や場所を決められる「働き方宣言制度」を開始しました。こうしたワークライフバランスに配慮した制度や、社内コミュニケーションを活性化する施策を充実させた結果、離職率が28%(2005年)から3%(2020年)へと大幅に下がったのです。その結果、採用や教育コストも抑えられるようになりました。

ザ・リッツ・カールトンホテルカンパニーL.L.C.

ザ・リッツ・カールトンホテルでは、お客様に対してだけでなく、上司・同僚・部下に対しても感謝を示すことをモットーに、従業員全員に感謝と敬意を示す「ファーストクラス・カード」を持たせています。 このカードは、他の部門の従業員に助けてもらった際など、感謝の気持ちを具体的に書いて、本人に直接手渡しするものです。カードをもらった従業員だけでなく、カードを渡した従業員も人事考課においてプラスとなる点がポイントです。カードを受け取った従業員は、仲間や会社から評価されることで、みずからの存在理由が確かなものとなり、モチベーションの向上につながります。 またカードのコピーを食堂に提示することで、全従業員が把握できるだけでなく、顧客対応マニュアルの役割をも果たしているのです。ファーストクラス・カード制度の活用は、従業員全体の一体感が増すだけでなく、顧客へのホスピタリティの精神へとつながっていっています。


 

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06まとめ

期待理論の概要や活用するメリット、注意点について解説してきました。期待理論を活用してモチベーション向上に成功した企業事例などを参考に、自社社員のモチベーション向上に効果的な施策を検討してみてはいかがでしょうか。

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    Great Place to Work® Institute Japan 代表

    2003年HRR株式会社(現 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ)入社。営業職として中小~大手企業までを幅広く担当。顧客企業が抱える人・組織課題に対するソリューション提案を担う。2012年から管理職として営業組織をマネジメントしつつ、2015年には同社の組織行動研究所を兼務し、女性活躍推進テーマの研究を行う。2020年より現職。

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