公開日:2021/09/10
更新日:2022/09/21

ジョブクラフティングとは?従業員のやりがいがもたらすメリットについて解説

ジョブクラフティングとは?従業員のやりがいがもたらすメリットについて解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

毎日の仕事に「やりがい」を感じ、活き活きと働けることは幸せなことです。しかし現実は上司の指示の下、与えられた仕事を黙々とこなしていくというように、「やりがい」を感じにくいことのほうが多いのではないでしょうか。ジョブクラフティングとは、仕事に向き合う心構えを変えることにより、単純な日常業務に「やりがい」を見い出していく手法です。当記事ではジョブクラフティングの概要と、従業員の「やりがい」が企業にもたらすメリットについて解説します。

 

01ジョブクラフティングとは

ジョブクラフティングとは比較的新しい概念で、日本で認知され始めたのは2016年頃だといわれています。ジョブクラフティングは、日常業務をルーティンとしてこなすのではなく、仕事のあり方を主体的に捉え直すことで、日常業務に「やりがい」を感じられるように導く手法です。上司の指示や会社のルールで「やらされて」いるのではなく「自らの意思で取り組んでいる」という意識に変え、従業員のモチベーションアップを図ることを目的としています。

ジョブデザインとの違い

ジョブデザインとは、経営者が社員に対して、働きがいがある仕事を設計し、割り振ることを指します。ジョブデザインもジョブクラフティングも働きがい・モチベーションに関連する理論ですが、主語がどちらにあるのかという点が異なります。

ジョブデザインは経営者が主語で、ジョブクラフティングは社員が主語です。ジョブデザインは経営者が主語で社員のモチベーションを管理・コントロールしようとするという点で、根本的な考えが異なるのです。

やらされ仕事とやりたい仕事の違い

「やらされている仕事」と「やりたい仕事」の違いは、主体性の有無の違いではないでしょうか。与えられた業務を黙々とこなすだけの「受け身の労働」では、モチベーションを保つのは難しいでしょう。反対にモチベーションが上がる「やりたい仕事」とはどういうものでしょうか。それは主体性をもち、自分の頭で考えた工夫が成果につながる仕事です。指示やルールにむやみに従うのではなく、自の頭で考え、工夫する余地があることがモチベーションにつながるのです。

3人のレンガ職人のエピソード

ジョブクラフティングについて語るとき、引き合いに出される「3人の石工(レンガ職人)」というエピソードを紹介します。このエピソードはピーター・F・ドラッカー氏が著書のなかで紹介しているものです。 ヨーロッパを旅しているとき、道で3人の石工に出会います。その3人の石工に対し、「何をしているのですか」と尋ねると3人からは三者三様の答えが返ってきました。

  • ・一人目 「親方の指示でレンガを積んでいるのさ」
  • ・二人目 「レンガで塀を作っているのさ」
  • ・三人目 「お祈りするための大聖堂を作っているのさ」

これは、同じ作業をしていても捉え方により、その作業に意味を見い出せるかどうかを端的に説明しているエピソードです。 三人目の石工は、「活き活きした様子」でレンガを積んでいたのではないでしょうか。

 

02ジョブクラフティングが注目される背景

近年ジョブクラフティングが注目されるようになった背景には、次のような要因があります。一つ目は従来の日本企業において一般的だった、トップダウン的な仕事の進め方が通用しなくなっていることが挙げられます。顧客の価値観は多様化し、単純に決められた作業をこなせば成果が上がるという時代ではなくなったのです。 もう一つの要因は、従業員の価値観の多様化です。作業効率のみを追求し、与えられた指示を黙々とこなす働き方を否定し、仕事に「やりがい」を求める人が増えたことです。主体的な行動でモチベーションを上げなければ、生産性が向上しない時代になったのです。

仕事やスキルの複雑化・多様化

ジョブクラフティングが注目される背景には、仕事やスキルが複雑かつ多様になっているという点が挙げられます。技術革新のスピードが目まぐるしく、10年前には希少で価値を持っていた職種・スキルが今では汎用的になっているというものは少なくありません。例えば、20年前にはWebサイトを作成できるスキルというのは希少性がありましたが、今ではノーコードツールが無料で使えるようになり、誰でもホームページを数分で作成できるようになっています。このような社会背景の中で、企業が各社員に必要なスキルを見繕うというスピード感では間に合わず、社員自らが仕事にやりがいを見つけ、自分で新たなスキルを身につけていくような仕組みが必要になってきています。

働き方改革

働き方改革によって、リモートワークは進み、副業を解禁する大手企業も増えてきました。このような社会背景もジョブクラフティングが注目される理由の1つでしょう。これまでは終身雇用で企業が求めるスキルを、各階層で身につけていけば昇進はある程度見えている状態でした。しかし、働き方改革によって外の世界に触れる機会が増え、価値観が多様化しています。転職という選択肢は大手企業にプロパーで入社した人にも増えてきており、企業が何をしてほしいかだけでは、優秀な人材を繋ぎ止めておけず、社員が何をしたいかが重要になってきています。

モノ消費からコト消費へ

経済産業省の『平成27年度地域経済産業活性化対策調査報告書』では、モノ消費とコト消費を以下のように定義しています。

【モノ消費】 個別の製品やサービスの持つ機能的価値を消費すること。価値の客観化(定量化)は原則可能。 【コト消費】 製品を購入して使用したり、単品の機能的なサービスを享受するのみでなく、個別の事象が連なった総体である「一連の体験」を対象とした消費活動のこと

▶︎引用:平成27年度地域経済産業活性化対策調査(地域の魅力的な空間と機能づくりに関する調査)報告書

これまではモノ消費が中心だったので、極端にいうと給料が多ければ仕事はどのような内容でも良く、休日にいかに満足できるモノ消費ができるのかが重要でした。一方でコト消費になると仕事上での体験も満足度に影響を及ぼします。もちろん娯楽における体験価値も重要ではありますが、どのような仕事を経験できているかという観点を重視する社員が増えてきているのも事実なのです。

 

03ジョブクラフティングにおける3つの視点

近年ジョブクラフティングが注目されるようになった背景には、次のような要因があります。一つ目は従来の日本企業において一般的だった、トップダウン的な仕事の進め方が通用しなくなっていることが挙げられます。顧客の価値観は多様化し、単純に決められた作業をこなせば成果が上がるという時代ではなくなったのです。 もう一つの要因は、従業員の価値観の多様化です。作業効率のみを追求し、与えられた指示を黙々とこなす働き方を否定し、仕事に「やりがい」を求める人が増えたことです。主体的な行動でモチベーションを上げなければ、生産性が向上しない時代になったのです。

 

04ジョブクラフティングの三つのアプローチ

それでは実際にジョブクラフティングを行う際の、三つのアプローチについて紹介します。

仕事の意義を見い出す

一つ目のアプローチは、現在行っている「業務の意義」について考えることです。毎日、目の前の作業をこなしていると、その作業は「何のために行うのか」が分からなくなることがあります。給料のために黙々とこなすのではなく、少し視野を広げて考えてみると良いでしょう。自分が行っている作業の目的、誰の役に立っているのかを考え、認識することで、「やりがい」と積極性を見い出していきます。

仕事のやり方を考える

二つ目のアプローチは、仕事の進め方を自分なりに考えて変えていくというものです。むやみに作業手順やルールに従って作業をこなすのではなく、「もっと効率良く、楽に進められる方法はないか」と考え創意工夫を加えていくのです。 もちろん、勝手なルール変更はできないかもしれませんが、提案はできるのではないでしょうか。

仕事の人間関係を豊かにする

三つ目は人間関係に対するアプローチです。多くの仕事は人と関わらずに進めていくことはできません。 例えば、作業ルールを「効率良く変えていこう」と取り組むのであれば、周囲の同僚も巻き込んで一緒に取り組むようにするのです。このように、人との関わり方を現状より深くすることは、人間関係を豊かにします。こうした「仲間意識」からも「やりがい」はもたらされるのです。

 

05ジョブクラフティングが企業にもたらすメリット

企業がジョブクラフティングに取り組むことにより、さまざまなメリットが期待できます。それまで受け身だった従業員が能動的に仕事をすることで生産性は向上し、事業活動に良い影響をもたらすのではないでしょうか。

従業員が能動的になる

従業員が日々の業務に意義を見い出し、能動的な姿勢に変わることによって業務の効率化や生産性の向上といった成果につながります。当事者意識が生まれ、責任感やプロ意識も向上するのではないでしょうか。何より、従業員が活き活きと働いている姿は、企業に勢いをもたらすものです。

アイデアが生まれる

ジョブクラフティングにより、これまで機械的に行っていた作業を新たな視点で捉え直すことで、意義がある業務として認識できるようになります。より深く自分の業務を捉え直すことで、創造的なアイデアや発想の転換が生まれやすくなるのです。具体的に業務の効率化や新製品のアイデアといった、好ましい成果につながっていくのではないでしょうか。

適材適所

従業員が主体的な考えをもつことで、業務を効率的に進めるために作業手順や役割分担を自主的に見直すようになります。従業員どうしで話し合い、さまざまな工夫を始めれば、それぞれの得意分野を生かした適材適所の人員配置が自然にできあがります。こうした過程において、リーダーシップを発揮する従業員が出てきて、組織は活性化するのではないでしょうか。

従業員満足につながる

日々の業務を主体的に取り組むことにより、「やりがい」を感じられるようになれば従業員満足度が高まります。目標意識や達成への執着といった事業の参加意識も高まり、実際に目標を達成することにより、大きな達成感を覚えるようになります。自分の仕事の価値を理解し活き活きと働けるようになるのです。

 

06ジョブクラフティングの注意点

従業員が主体性を取り戻し、能動的に業務に取り組むことは企業にとって好ましいことです。しかしジョブクラフティングはメリットばかりではなく、注意しておかないと大きな問題に発展する危険性もあります。

やりがい搾取の問題

ジョブクラフティングは、従業員が自分の意思で仕事に「やりがい」を見い出すことで効果が上がるものです。企業の側が仕事を「やりがい」として押し付けるのであればジョブクラフティングは「やりがい搾取」につながる可能性があります。 「やりがい」は、あくまで従業員が自分の意思で見い出してこそ意義があるのです。

仕事の属人化

仕事内容や進め方の創意工夫を従業員の裁量に任せることにより、仕事が「属人化」する危険性があります。ある仕事が特定の人しか対応できないという状態は、大変危険です。病気による長期休暇や、退職があった場合に、その業務が回らなくなるという状況に陥ります。 業務に個人の創意工夫が加わり改善されることは歓迎すべきことです。しかし、こうした属人化には常に注意しておくべきです。

 

07ジョブクラフティングの進め方

ジョブクラフティングの進め方を6つのステップで紹介します。個人でジョブクラフティングを進めたい方は参考にしてみてください。

1:現状のタスクを見直す

まず、自らのタスクを把握しましょう。どのような仕事をしていて、それにはどのようなスキルを用いているのか、どれくらいの時間を割いているのか、それは全体の何%を占めているのかを紙やエクセルなどにまとめてみてください。

2:情熱・強み・価値を明確にする

次に、「情熱・強み・価値」をめいかくにしましょう。これらはジョブクラフティングをする上で、重要な基準になります。

  • ・情熱:強い興味・関心があること(仕事に限らない)
  • ・強み: 自分が成果を出す上で役立っているスキル
  • ・価値: 人生の中で重要としている指針、仕事を通して最終的に得たいこと

3:タスク・クラフティング

1で洗い出したタスクと、2で書き出した情熱・強み・価値を繋げ、現状のタスクが2に沿っているかどうかを確認しましょう。例えば、1で新規事業を生み出すことが全体の6割を占めており、2で自分の情熱に新規事業を作ることがあるのであれば、それはジョブクラフティングの観点から十分な状態にあると言えるでしょう。

4:自ら改善できる箇所を探す

自ら言語化した情熱・強み・価値と現状タスクをどう接合させていくのか、具体的に改善できる箇所を探しましょう。まずは出来ることから自分なりに創意工夫してみるということが重要です。

5:他者との関わりを見直す

ジョブクラフティングを自身で完結させないためには、他者との関わりを見直すことも大切です。同僚や先輩、上司などにフィードバックをもらい、改善点があれば見直し、改善サイクルを回しましょう。

 

08ジョブクラフティング推進に必要なこと

企業としてジョブクラフティングを推進していくにあたり、必要なことがいくつかあります。従業員を支援し、従業員が効果的にジョブクラフティングを実施するためには、企業は以下の取り組みを実施すると良いでしょう。

今の職務を見直す機会を与える

日常業務に追われているような状態であれば、一旦今の職務を見直す機会を与えることです。時間が取れれば1日、難しいようであれば半日でも構いません。座学研修を開催し、今の業務を見直し、ジョブクラフティングについて考える時間を取るようにすると良いでしょう。

自律的な職務を与える

従業員に自律的な職務を与えることも有効です。厳密に決められた作業ルールではなく、ある程度自由度の高い大枠の作業ルールを定め、その範囲で創意工夫してもらうことで仕事の捉え方の意識を変えることができます。

部下の気持ちを尊重する

ジョブクラフティングが定着し、部下から主体的な創意工夫のアイデアが出たときに、上司がネガティブに反応しないことも重要です。部下の気持ちを尊重し、率直に話し合えるような雰囲気作りが必要となるでしょう。

上司からの無言のメッセージ

上司自らがジョブクラフティングを実行し、自分の仕事に創意工夫や、自分らしいこだわりを見せることも効果的です。上司自身が仕事に対して「やりがい」を感じている姿を見せることは部下に対する無言のメッセージとなるのではないでしょうか。


 

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09まとめ

ジョブクラフティングにより、従業員が能動的に仕事に取り組むようになることで、企業にはさまざまなメリットがあるようです。多くの従業員が「やらされ感」ではなく、当事者意識をもって仕事に取り組めば企業には勢いが生まれ、目覚ましく発展するのではないでしょうか。従業員の主体性を引き出し、モチベーションを上げる取り組みについてぜひ考えてみてください。

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  • 登壇者:高木 一史 様
    サイボウズ人事本部 兼 チームワーク総研所属

    東京大学教育学部卒業後、2016年トヨタ自動車株式会社に新卒入社。人事部にて労務(国内給与)、全社コミュニケーション促進施策の企画・運用を経験後、2019年サイボウズ株式会社に入社。主に人事制度、研修の企画・運用を担当し、そこで得た知見をチームワーク総研で発信している。

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