内発的動機づけとは|外発的動機づけとの違い・社員のやる気を高める方法を紹介
人材育成において「動機付け」が重要視されています。この動機付けによりモチベーションのアップを高め育成を促進させることを目的として活用されますが、そのうち「内発的動機」の重要性とはどのようなものなのでしょうか。本記事では、内発的動機に関して着目し人材育成に欠かせない理由について解説していきます。
- 01.内発的動機づけとは
- 02.内発的動機づけが企業に必要な理由
- 03.内発的動機づけの具体例
- 04.内発的動機づけを促す際の注意点
- 05.社員の内発的動機づけを促す5つの方法
- 06.まとめ
01内発的動機づけとは
そもそも、動機とは「モチベーション」と訳されビジネスで多用されています。動機付けは「人が目的や目標に向かって行動を起こし、達成までそれを持続させる、心理的過程を表す」という心理学用語です。動機付けに繋がる要因には「内発的機動機(動因):人の内部に沸き上がる欲求が要因」となって行動を起こす動機と、「外発的動機(誘因):外部からの要因」によって行動を起こす動機の2種類があります。
内発的動機づけとは
内発的動機づけとは、物事に対する強い興味や探求心など「人の内面的な要因によって生まれる」動機づけのことです。内発的動機は、仕事に対する興味や関心、そこから生まれるやりがいや達成感などといった自分自身の内からなる動機により行動に結びつきます。結果として、行動をすること自体が目的になるので、高い集中力の発揮、質の高い行動を自ら進んで長期間に渡り続けられるというメリットがあります。内発的動機が生まれる前提条件として「その仕事に対する好奇心や探求心、向上心」が必要となるため、実施方法が明確でなく、短期的には効果が出にくいというデメリットがあります。
内発的動機と「やる気」の違い
内発的動機に類似する用語に「やる気」があります。やる気もモチベーションと訳されることが多くある用語ですが、内発的動機が好奇心や探求心、向上心からくるのに対して、やる気は自己効力感からくるもんです。自己効力感とは、「ある事態に対処するために必要な行動を、うまくやり遂げることができるかどうかについての、本人の判断。」であり、影響する内容が異なる点で大きな違いがあります。
外発的動機づけとは
外発的動機づけとは、報酬や評価、罰則や懲罰といった「外部からの働きかけによる動機付け」です。外発的動機づけのメリットとしては、実施方法が「報酬を与える」「罰を与える」などシンプルで分かりやすいため、強い関心や興味がない人のモチベーション向上には有効に働きます。「報酬が欲しい」「罰を受けたくない」などは、ほとんどの人のモチベーションにつながるため、短期間で効果が表れます。外発的動機づけのデメリットとしては「効果が長続きしない」「自主性や創造性を妨げる可能性がある」「仕事そのものの価値や貢献度を高めにくい」などが挙げられます。そのため、外発的動機は短期的な効果は見込めるが持続性は期待できない。一方で、内発的動機は短期的に変化を促すのは難しいが、持続性があり、効果も外発的に比べて高いという違いがあります。
内発的動機の構成要素
内発的動機づけは、「自主性」「有能感」「関係性」という3つの骨子で構成されています。まず、自主性は自分の意思で行動できるという感覚で、個人が選択や決定を自ら行えることが重要です。有能感は自分の能力を信じ、挑戦的な課題に取り組む中で成功体験を得ることで高まります。最後に、関係性は他者とのつながりや信頼関係を感じることで、人はサポートされていると実感し、動機づけが強化されます。この3つの要素が揃うことで、人は内発的に動機づけられ、より深く関与し、持続的に取り組むことができるようになります。
02内発的動機づけが企業に必要な理由
内発的動機づけが企業に必要な理由とは、どんな理由なのでしょうか。内発的動機づけを企業が重要視する理由にはいくつかありますが、その主な理由をここではご紹介します。動機付けの必要性として理解していきましょう。
自発的行動に繋がる
定義でもご紹介していますが、内発的動機づけとは物事に対する強い興味や探求心など「人の内面的な要因によって生まれる」動機付けのことです。仕事に対して興味、関心を持つ事から行動に繋がる動機となり長期的に働きかけます。新しい業務に興味を持つ、業務に役立つ資格に興味を持つなど自発的な行動となりながらも長期的に続く高いモチベーションは企業にとっては必要不可欠なものです。
生産性の向上に期待できる
物事に対して強い興味や探求心を持つことを示すため、業務に対しての姿勢も積極的となり問題解決や生産性向上への取り組みを行います。無駄な工程の削除など、業務工程の見直しにも積極的に取り組み業務効率化や生産性向上に寄与する期待が持てます。
職場の連帯感を強める
内発的動機がアップすることで、モチベーション力アップにつながります。モチベーションがアップすることで、職場へも良い影響を与え雰囲気の改善にも影響を与えます。この影響が連帯感のアップにもつながり組織力アップに効果を期待できます。
モチベーションの維持につながる
内発的動機づけはモチベーションの維持につながります。外部からの刺激に頼らず、内部からのやりがいや喜びに基づいて仕事を行うことで、従業員は長期間にわたってモチベーションを維持しやすくなります。モチベーションが維持されることで、従業員の離職率が低下し、企業の安定性が向上する可能性があります。
03内発的動機づけの具体例
次に内発動機づけの具体例をご紹介します。内発動機付けを起こす働きかけを行う際の参考にしていきましょう。人事部門では、内発的動機づけの支援として主導的に様々な方法を行う必要があります。
得意分野におけるスキルアップを促す
個々人における得意分野におけるスキルアップを促す方法です。人事部門では、個々人の特性を活かして得意分野を見つけ部門長と相談しスキルアップの実施を計画していく必要があります。得意分野を見つけ出すことやスキルアップ項目の精査については慎重に計画して実施していくようしなければ、モチベーション低下に逆行することもあることに留意しましょう。
人事評価制度などを利用しモチベーションアップを促す
人事評価制度を利用して成長したことを正しく評価していくこともモチベーションアップを促す方法です。評価をするということを先に伝えることでの動機付けは外発的動機付けとなりますが、結果を元に評価し更なる成長を自発的に行うことは内発的動機付けになります。
評価することやフィードバックする満足度の向上
日常においても努力や成果に対して評価することや、その評価をフィードバックすることは職場への満足度が向上し内発的動機に繋がっていきます。自分自身の努力を評価されていることは外発的動機付けとなりますが、結果として評価の結果を受け個々人自らが更なる自己スキルアップを目指す場合には、内発的動機づけとなります。
04内発的動機づけを促す際の注意点
社員の内発的動機付けを促そうとするときに、注意すべき点がいくつかありますのでここで解説します。
そもそも内発的動機づけを行うことは難しい
外発的動機づけに比べ内発的動機づけを行うことは難しいとされています。個々人の価値観や興味に左右されることが原因となっており、昇給などのように他人から得られるものではなく個々人の内面から起きる動機でありコントロールしているのは、あくまで本人自身となるためです。
内発的動機づけの効果には個人差が生じる
内発的動機づけの効果には、個人差があります。興味関心の度合いは人それぞれであり、何かを基準として決まっていくにも違いがあります。また、高いモチベーションと言った場合も同様に基準や、ものさしが存在しないため個人差を埋めて統一化をはかることはできません。
1強制や過度な管理を避ける
人が自主的に行動できるように、強制や過度な管理を避けることが重要です。過剰な指示や細かい管理は、自主性を損ない、内発的動機づけを低下させる恐れがあります。
適切な挑戦とフィードバックを提供する
内発的動機づけを高めるためには、挑戦的な課題を提供し、その成果に対して建設的なフィードバックを行うことが必要です。これにより、有能感を育むことができます。
05社員の内発的動機づけを促す5つの方法
最後に、内発的動機づけの方法について解説していきます。どの様な方法があるかを理解し、人事部門主導にて働きかけを行っていきましょう。内発的動機を促すことができれば、高い成果を出す事も期待できます。
自己分析の機会を設ける
内発的動機づけを促すには、自分自身の興味・関心や価値観を自己認識する必要があります。そのため、1on1やキャリア面談を通じて、自分がどんなことに興味があるのか、どんな仕事を面白いと感じるのかなどを読み解くための自己分析の機会を設けるといいでしょう。また、自分の特性に気づいていない社員も多く存在します。「特技がない」と答える日本人は多く、これは他者と比較してしまうことに起因しているようです。このような場合は現場の管理職が「君のこういうところが良いよね」・「他部署の人がこういうところを褒めていたよ」などと、周りから気づきを与えてあげることも効果的です。
<自己分析についてのSchooおすすめ授業>
自己分析の第一歩として、自分自身の感情の整理があります。いろいろなことを考えて、整理がつかないといった悩みがある人は、まず感情を書き出し、自分自身の頭の中の感情を整理していくことがおすすめです。
この授業では、「自分に合った習慣化の法則」にも出演され、習慣化のプロとして活躍されている古川武士先生から、「書き出す」「片づける」「習慣化する」という3ステップから、自分の感情を整理する「書く瞑想」について教えていただきます。
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習慣化コンサルティング株式会社代表取締役
米国NLP協会認定NLPマスタープラクティショナー。 関西大学卒業後、日立製作所などを経て2006年に独立。3万人以上のビジネスパーソンの育成経験から「習慣化」が最も重要なテーマと考え、日本で唯一の習慣化をテーマにしたコンサルティング会社を設立。オリジナルの習慣化理論・技術を基に、習慣化講座、企業の働き方改革のコンサルティングを行っている。
意思決定の機会を与える
意思決定の機会を与えることは、内発的動機に繋がりやすいと言われています。意思決定には多少のストレスがかかります。これは多くの意思決定をしている管理職であれば体感していることかもしれません。ストレスがかかる一方で、自分で意思決定をしているという実感は、内発的動機に繋がりやすいのも事実です。自分の意見を承認してくれているという一種の承認欲求も満たされているのかもしれません。そのため、一定の裁量を与えたり、フィードバックの際も答えを教えるのではなく「どうしたら良かったと思う?」と自分の言葉で語らせたりすると効果的です。
<意思決定についてのSchooおすすめ授業>
従業員の内発的動機を向上させる手段として、意思決定の機会が存在します。ですが、意思決定は適切なプロセスを経て実施する必要があります。
本授業では、業務の速度を高める意思決定の基本を、実践的な思考プロセスを通じて学んでいきます。明確な意思決定軸を言語化し、迅速で効果的な意思決定ができるようになることを目指していきましょう。
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コラボ・ソリューションズ合同会社代表
コラボ・ソリューションズ合同会社代表/一般財団法人 DRIジャパン理事/筑波大学大学院非常勤講師。1998年に日本ヒューレット・パッカード株式会社に新卒入社後、株式会社日本総合研究所、デル株式会社を経て、ケプナー・トリゴー・グループ日本支社にて企業幹部・管理職向けに問題解決・意思決定力の強化に関する研修講師、および業務プロセス改革支援のコンサルティングに従事。2011年、事業の推進力のコアとなる人材育成・組織変革を支援するコラボ・ソリューションズ合同会社を起業。実務に直結した研修とハンズオン型のコンサルティングサービスを提供している。
目標設定に対する理解度の向上
面談の場などを通して、期待していることや良い点、伸ばして欲しい点などを伝えることで評価されていること、期待されていることへの興味関心がわき、内発的動機に繋がります。面談の場での伝え方などは、人事部門から面接者への指導を行い適切な対応を取れる様にする必要があります。
個人の適性に応じた業務配分を行う
得意、不得意、適性を把握し、やりがいを感じやすい業務を担当させることも内発的動機に繋がりやすい方法です。得意としていることは、言い換えると好きなこと、関心があることです。それを活かした業務配分を行うことでストレスを軽減しながらも、パフォーマンスの発揮に期待が持てます。得意なことと適性が異なる場合もあります。その様な場合には、適性を活かし業務配分を行います。ただし、配分に関して適性を勘案したなどの説明を行い納得できるサポートが必要です。
アンダーマイニング効果を避ける
アンダーマイニング効果とは、内的な達成感や満足感などを得るために自ら行っていたことが、お金など他人から報酬を受けることで、目的にすり代わり、本来の内的な動機が失われることです。その他にも 外的動機づけの評価に繋がらないとやる気を削がれるなどを避ける必要もあります。これだけやっているのだから、昇給するだろうなどと考えていた結果、そうなった場合にはモチベーションは下がってしまいます。そうならないためには、努力はしているが不足している部分が何かを指導し、より一層頑張っていけるフォローを行う必要があります。普段から高い評価をし続けることも内発的動機を下げる要因になります。評価されることが当たり前となり、評価されないことに不満をもつ認識となればそれは外発的要因となります。
▼アンダーマイニング効果について詳しく知りたい方はこちらから▼
【関連記事】アンダーマイニング効果とは?内発的動機つけで社員のやる気をアップさせる方法を解説
研修でモチベーション向上の重要性を伝える
内発的動機を促すには、研修でモチベーション向上の重要性や方法を学んでもらうことも有効です。管理職には部下育成の一環として、メンバーにはモチベーション向上研修として受講してもらい、双方の目線を合わせると効果的な研修になるでしょう。
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後輩や部下などのモチベーションをマネジメントするスキルを身につけたい方向けの研修パッケージです。モチベーションマネジメントの基礎スキルを身につけ、他者を動かすコミュニケーション方法を実践形式で学ぶことができます。
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中堅社員を対象とした、モチベーションアップを目的とした研修パッケージです。社会人としてある程度経験値を蓄積し、スキルを会得してきた中堅社員は、仕事へのモチベーションが下がる傾向があります。このパッケージでは、会社の中核を担う中堅社員のモチベーションを向上させるための研修となっています。
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■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など
06まとめ
本記事では、内発的動機をテーマに動機付けや企業メリットなどを解説しています。自らの内からでてくる内発的動機は長期的に良好な影響を与え、かつ、企業にとっても大きなメリットを産む動機付けです。動機付けを行う際には慎重な対応が必要ですが、従業員の成長のために人事部門が主体となり内的動機付けの実施を行っていきましょう。
▼【無料】自律型組織の作り方〜人的資本時代のリーダーシップと人材育成〜|ウェビナー見逃し配信中
自律性を持った人材を育てる「自律型組織」についてのウェビナーアーカイブです。トップダウンの統率による組織に限界を感じ、ボトムアップで社員が自律的に動けるよう組織開発を行う企業が増えています。Zホールディングスにて次世代リーダー開発を担う伊藤羊一氏をお招きし、現代に適応した自律型の組織の作り方についてお話いただきます。
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登壇者:伊藤 羊一 様Zアカデミア学長 / 武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長 / Voicyパーソナリティ
日本興業銀行、プラスを経て2015年よりヤフー。現在Zアカデミア学長としてZホールディングス全体の次世代リーダー開発を行う。またウェイウェイ代表、グロービス経営大学院客員教授としてもリーダー開発に注力する。2021年4月に武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(武蔵野EMC)の学部長に就任。代表作に56万部超ベストセラー「1分で話せ」。ほか、「1行書くだけ日記」「FREE, FLAT, FUN」など。