公開日:2022/10/20
更新日:2023/06/26

バーンアウトとは?人材損失を回避するために企業ができる予防方法を解説

バーンアウトとは?人材損失を回避するために企業ができる予防方法を解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

近年、労働環境の急激な変化によって、バーンアウトを起こす社員の増加が懸念されています。企業にとって、社員の精神的健康や心の安定は重要なテーマといえるでしょう。本記事では、バーンアウトの概要や特徴的な症状と要因、予防方法について解説します

 

01バーンアウト(燃え尽き症候群)とは

バーンアウトは、1970年代にアメリカの精神心理学者のフロイデンバーガー博士が提唱した概念です。WHO(World Health Organization:世界保健機関)によると、「職場での慢性的なストレスをうまく処理できないことに起因する症候群」と定義されています。

バーンアウトは、燃え尽き症候群と呼ばれ、これまで高いモチベーションで仕事に取り組んでいた人が、まるで燃え尽きたかのように意欲や関心を失い、生気のない状態を指します。バーンアウトすると、休職や退職を余儀なくされるというケースは珍しくありません。企業はこうした事態に陥らないよう予防策を施す必要があるのです。

バーンアウトの歴史

バーンアウトについて研究されていた久保 真人氏によると、バーンアウトが注目されはじめたのは、ヒューマンサービス職の需要が増加した1970年代中期以降とのことです。当時、急激な需要増加により、ヒューマンサービスの現場が対応しきれなくなりました。そのため、従事者の多くが過度な負担に耐え切れずに、ストレスを訴えはじめ、バーンアウトが多発したとのことです。

▶︎参考:バーンアウト (燃え尽き症候群) ヒューマンサービス職のストレス|久保真人

うつ病との違い

バーンアウトと似たような意味として、うつ病が挙げられます。うつ病は、一般的に長期間にわたって持続する深刻な気分の低下や無力感を特徴とする精神的な疾患です。うつ病は、一般的な生活のストレスや遺伝的要因によって引き起こされることがあります。バーンアウトとうつ病の違いについてですが、バーンアウトは主に仕事に関連する問題であり、一時的な状態と考えられます。一方、うつ病はより広範で一般的な生活に影響を及ぼし、専門的な治療やケアが必要となります。

 

02バーンアウトにみられる特徴的な症状

バーンアウトには3つの症状があり、一連のプロセスを踏むと考えられています。ここでは、バーンアウトにみられる特徴的な症状について、MBI(Maslach Burnout Inventory)マニュアルに掲載されている定義とともに解説します。

ここでは、バーンアウトの主な症状は、以下の3つです。

  • 1.情緒的消耗感 
  • 2.脱人格化 
  • 3.個人的達成感の低下
 

1.情緒的消耗感

情緒的消耗感とは、ストレスに関連した反応を指し、「仕事を通じて、情緒的に出し尽くし、消耗してしまった状態」と定義されています。身体面と感情面に悪影響を及ぼすといった、バーンアウトへ至る重要な症状です。

情緒的消耗感は英語では「emotional exhaustion」と表記されるように、仕事において感情を押さえこんだり、無理にコントロールしようとしすぎることで生じる消耗状態を指します。仕事をする上で、相手との信頼関係の構築が不可欠です。信頼関係を築くためには、相手に対して自分にできることがあればサポートに入るなど、誠実で思いやりのある対応が求められることも少なくありません。そのため、信頼関係を築く過程で、多くの情緒的エネルギーが費やされることになります。自分の職務に強い責任感がある人ほど、極度の疲労を招くことになります。

2.脱人格化

情緒的なエネルギーが消耗した状態になると、「脱人格化」と呼ばれる行動が見られるようになります。脱人格化とは、「クライアントに対する無情で、非人間的な対応」のことです。

仕事上で関わる人と距離を置き、機械的で思いやりのない言動をするようになります。仕事の質に直接関係する症状ですが、この段階では仕事のやりがいは保たれています。脱人格化は、これ以上の情緒的なエネルギーを消耗させないための防衛反応の意味合いが強いのです。

3.個人的達成感の低下

個人的達成感は 「職務に関わる有能感、達成感」 と定義されています。情緒的消耗感や脱人格化の症状は、仕事の質そのものに影響を与え、個人的達成感の低下へと進んでいきます。

バーンアウトにより、これまで高いモチベーションで行っていた仕事ができなくなるため、周囲はもちろん、自分でも仕事の質の低下を認識するようになります。自分の職務に強い責任感をもって精力的にたずさわった人ほど深く悩みことから、強い自己否定や離職などの行動に結び付くケースも少なくありません。仕事に対するやりがいを喪失する段階といえます。

 

03バーンアウトかどうかを診断する方法

バーンアウトは蓄積されたストレス反応であり、表面上には見えづらいものですが、診断することは可能です。バーンアウトを診断するためのテストはいくつかありますが、ここでは、「日本版バーンアウト尺度」について紹介します。

日本版バーンアウト尺度

前述した久保 真人氏が作成した「日本版バーンアウト尺度」というものがあります。質問に回答する形で診断するのですが、以下の全17問で構成されています。

2日目

設問 分類
こんな仕事, もうやめたいと思うことがある。 E
われを忘れるほど仕事に熱中することがある。 PA
われを忘れるほど仕事に熱中することがある。 D
この仕事は私の性分に合っていると思うことがある。 PA
同僚や患者の顔を見るのも嫌になることがある。 D
自分の仕事がつまらなく思えてしかたのないことがある。 D
1 日の仕事が終わると 「やっと終わった」 と感じることがある。 E
出勤前, 職場に出るのが嫌になって, 家にいたいと思うことがある。 E
仕事を終えて, 今日は気持ちのよい日だったと思うことがある。 PA
同僚や患者と, 何も話したくなくなることがある。 D
仕事の結果はどうでもよいと思うことがある。 D
仕事のために心にゆとりがなくなったと感じることがある。 E
今の仕事に, 心から喜びを感じることがある。 PA
今の仕事は, 私にとってあまり意味がないと思うことがある。 D
仕事が楽しくて, 知らないうちに時間がすぎることがある。 PA
体も気持ちも疲れはてたと思うことがある。 E
われながら, 仕事をうまくやり終えたと思うことがある。 PA

各分類について、「E=情緒的消耗感」、「D=脱人格化,」、「PA=個人的達成感」を表します。上記の設問について「いつもある」、「しばしばある」、「ときどきある」、「めったにない」、「ない」の5段階で回答します。どのような結果であればバーンアウトとされるといった基準はありませんが、あくまでも症状を自覚するためのものとして利用してみてください。

 

04バーンアウトを引き起こす要因

バーンアウトは、職場での慢性的なストレスが蓄積された結果生じるストレス反応の1つとして位置づけられています。バーンアウトを引き起こす要因は、以下の2つです。

  • 1.個人要因
  • 2.環境要因

1.個人要因

性格や年齢、勤続年数などがバーンアウトの要因になり得る要素です。これらは、単独の要因ではなく、いくつかの要因が介在していると考えられています。性格でいえば、ひたむきに仕事に向き合い、熱心に他人と関わろうする人ほど、バーンアウトしやすいのです。

また、勤務年数が長く、年齢の高い人よりも若い人の方がバーンアウトする確率が高いといわれています。なぜなら、若い人の方が職務達成への期待が高く、周囲の期待に応えようとする傾向にあり、ストレスへの対処経験が不足しているためです。

2.環境要因

長時間勤務や激しいノルマ、身体的負担を伴う作業などの過重負担は、バーンアウトと密接な関係があることが、多くの研究によって明らかになっています。その一方で、たとえ勤務時間が長く、 過重負担が感じられるような状況であっても、関わる人数が少なければバーンアウトの発症頻度は下がることから、サービスの適正数も影響するようです。

さらに、 この過重な負担が強制や命令といった場合は、やり遂げたとしても、充実感ではなく疲労感の方が強まるでしょう。仕事の量や進め方を自分でコントロールすることが難しくなり、バーンアウトのリスクが高い深刻な環境といえます。

 

05社員のバーンアウトを予防する方法

バーンアウトを引き起こす個人要因、環境要因について解説しました。性格特性や年齢、勤勤続年数と業務の量と質、企業体質などがバーンアウト発症の要因になっています。ここでは、社員のバーンアウトを予防する方法について解説します。

  • ・社員の労働環境を整備する
  • ・サポート体制を整える
  • ・個人を尊重する組織文化を整える
  • ・ストレスチェックを活用する
  • ・メンタルヘルス研修を実施する

1.社員の労働環境を整備する

バーンアウトの予防には、現行の労働環境の改善と整備が重要なポイントになります。労働時間の目標値を定め、恒常的な残業を削減することで、長時間勤務が当たり前の過酷な労働を回避できるでしょう。

加えて、有給休暇やリフレッシュ休暇などが計画的に取れるようにすることも必要です。労働契約で定められた労働条件であっても、職場の雰囲気によっては、労働条件の権利を行使できないケースも少なくありません。労働環境に問題があるほど、バーンアウトの予防効果が高くなるため、積極的に労働環境の整備を進めましょう。

2.サポート体制を整える

社員の精神的サポートができる体制を整えることも、バーンアウト予防のポイントです。特に、新入社員や他部署から異動した社員は注意が必要になるでしょう。経験やスキルが十分でなかったり、周囲との信頼関係が築けていなかったりするため、多くのエネルギーを費やすことになるためです。勤続年数の長い社員においても、新しい業務に対して、今までのやり方を大きく変更しなければならない場合は不安や疲労を溜め込みがちになります。

社員の精神的サポートには、1on1ミーティングでコミュニケーションをとることが効果的です。業務状況を尋ねるなど、社員が抱える悩みや疑問などを共有すると、バーンアウトの予兆を察知することができるでしょう。

3.個人を尊重する組織文化を整える

バーンアウトの予防には、個人を尊重し、思いやりと共感のある企業文化を築くことが重要です。離職率が高い企業では、社員の間に不安定感が漂いやすく、相手に対する配慮が欠けていることは否めません。一方で、社員同士が尊重し合える関係性が育っている企業は、比較的安定した雰囲気があり、社員の心身に良い影響を与えています。

バーンアウト予防の観点から、企業や組織をリードする管理職には、バーンアウトのリスクを見落とさないためのスキルやトレーニングが必要になります。情緒的に消耗している社員に「頑張りなさい」と激励したり、「できないなら仕方ない」と突き放したりする不適切な指導があると、休職や退職に結びつくリスクがあるためです。さらに、バーンアウトの状態に自分自身、もしくは周囲の社員が気づけるよう、知識として知っておくことも必要でしょう。

4.ストレスチェックを活用する

ストレスチェックを活用するのも、バーンアウトの予防に効果があります。2015年に労働安全衛生法が改正され、企業(労働者が50人以上)は労働者に対し、ストレスチェックを行うことが義務付けられました。

社員のストレス状態を判断するためには、一定の基準に基づいたストレスチェックが効果を発揮します。バーンアウトの初期症状は、なかなか気づきにくいものです。ストレスチェックを定期的に実施することで、メンタルヘルス不調の徴候を早期に発見し、バーンアウトの発症を防止につながります。

5.メンタルヘルス研修を実施する

社員のバーンアウトの予防には、メンタルヘルス研修が役に立ちます。バーンアウトに関する知識は、全社員を対象に、研修で身につけるのが効率的です。

研修では、ストレスの兆候と対応の仕方からバーンアウトの症状や要因、ストレスコントロールのスキルや思考法など幅広く学ぶことが可能です。また、バーンアウト以外にも、うつ病といった心の病の症状と要因、克服方法についても知っておくと、自社のメンタルヘルス対策の水準を上げることができるでしょう。

 

06バーンアウトを防ぐSchooのオンライン研修

Schoo for Businessでは約8,000本の授業をご用意しており、様々な種類の研修に対応しています。その上、自己啓発にも効果的な内容の講座を毎日配信しているため、研修と自己啓発の両方に対応することができるシステムになっています。研修と自己啓発を掛け合わせることにより、誰かに要求されて学ぶのではなく、自発的に学び、成長していく人材を育成することが可能になります。ここでは、Schoo for Businessの具体的な活用方法と、特徴、さらにはどのようなメリットがあるのかを解説します。

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1.研修と自己啓発を両方行うことができる

Schoo for Businessは社員研修にも自己啓発にも利用できるオンライン学習サービスです。通常の研修動画は、研修に特化したものが多く、社員の自己啓発には向かないものも少なくありません。しかし、Schooの約8,000本にも上る授業では、研修系の内容から自己啓発に役立つ内容まで幅広く網羅しているため、研修と自己啓発の双方の効果を得ることができるのです。

2.自発的に学ぶ人材を育成できるSchooの講座

上記でも説明したように、Schooでは約8,000本もの動画を用意している上に、毎日新しいトピックに関する動画が配信されるため、研修に加えて自ら学び、成長する人材の育成が可能です。近年の社会のグローバル化やテクノロジーの進化などにより、企業を取り巻く環境が刻々と変化しています。それに伴い、社員の業務内容や求められるスキルも早いスパンで変化しています。このような予測のつかない時代の中で会社の競争力を維持するためには、社員一人一人が自発的に学び、成長させ続けることができる環境、いわば「学び続ける組織」になることが必要です。

Schoo for Businessの講座では、バーンアウトの防止に役立つメンタルヘルス、心理学に関する授業も多数ご用意しています。

ここでは、バーンアウトの防止に活用できるSchooの講座をご紹介します。

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07まとめ

近年、バーンアウトは増加傾向にあり、ひたむきに仕事に向き合い、他人と熱心に関わろうする人ほど、バーンアウトしやすいです。さらに、人材不足などによる長時間労働や過重労働といった労働環境上の課題も、バーンアウトを引き起こす要因になっています。そのため、企業としては労働環境やサポート体制を整え、メンタルケアについて研修を実施することも重要な取り組みとなります。企業におけるバーンアウト予防の取り組みが、今後ますます求められるでしょう。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
Editor
Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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