バーンアウトとは?人材損失を回避するために企業ができる予防方法を解説

近年、労働環境の急激な変化によって、バーンアウトを起こす社員の増加が懸念されています。企業にとって、社員の精神的健康や心の安定は重要なテーマといえるでしょう。本記事では、バーンアウトの概要や特徴的な症状と要因、予防方法について解説します
- 01.バーンアウト(燃え尽き症候群)とは
- 02.バーンアウトにみられる特徴的な症状
- 03.バーンアウトを引き起こす要因
- 04.社員のバーンアウトを予防する方法
- 05.バーンアウトを防ぐSchooのオンライン研修
- 06.まとめ
01バーンアウト(燃え尽き症候群)とは
バーンアウトは、1970年代にアメリカの精神心理学者のフロイデンバーガー博士が提唱した概念です。WHO(World Health Organization:世界保健機関)によると、「職場での慢性的なストレスをうまく処理できないことに起因する症候群」と定義されています。
バーンアウトは、燃え尽き症候群と呼ばれ、これまで高いモチベーションで仕事に取り組んでいた人が、まるで燃え尽きたかのように意欲や関心を失い、生気のない状態を指します。バーンアウトすると、休職や退職を余儀なくされるというケースは珍しくありません。企業はこうした事態に陥らないよう予防策を施す必要があるのです。
02バーンアウトにみられる特徴的な症状
バーンアウトには3つの症状があり、一連のプロセスを踏むと考えられています。ここでは、バーンアウトにみられる特徴的な症状について、MBI(Maslach Burnout Inventory)マニュアルに掲載されている定義とともに解説します。
ここでは、バーンアウトの主な症状は、以下の3つです。
- 1.情緒的消耗感
- 2.脱人格化
- 3.個人的達成感の低下
1.情緒的消耗感
情緒的消耗感とは、ストレスに関連した反応を指し、「仕事を通じて、情緒的に出し尽くし、消耗してしまった状態」と定義されています。身体面と感情面に悪影響を及ぼすといった、バーンアウトへ至る重要な症状です。
情緒的消耗感は英語では「emotional exhaustion」と表記されるように、仕事において感情を押さえこんだり、無理にコントロールしようとしすぎることで生じる消耗状態を指します。仕事をする上で、相手との信頼関係の構築が不可欠です。信頼関係を築くためには、相手に対して自分にできることがあればサポートに入るなど、誠実で思いやりのある対応が求められることも少なくありません。そのため、信頼関係を築く過程で、多くの情緒的エネルギーが費やされることになります。自分の職務に強い責任感がある人ほど、極度の疲労を招くことになります。
2.脱人格化
情緒的なエネルギーが消耗した状態になると、「脱人格化」と呼ばれる行動が見られるようになります。脱人格化とは、「クライアントに対する無情で、非人間的な対応」のことです。
仕事上で関わる人と距離を置き、機械的で思いやりのない言動をするようになります。仕事の質に直接関係する症状ですが、この段階では仕事のやりがいは保たれています。脱人格化は、これ以上の情緒的なエネルギーを消耗させないための防衛反応の意味合いが強いのです。
3.個人的達成感の低下
個人的達成感は 「職務に関わる有能感、達成感」 と定義されています。情緒的消耗感や脱人格化の症状は、仕事の質そのものに影響を与え、個人的達成感の低下へと進んでいきます。
バーンアウトにより、これまで高いモチベーションで行っていた仕事ができなくなるため、周囲はもちろん、自分でも仕事の質の低下を認識するようになります。自分の職務に強い責任感をもって精力的にたずさわった人ほど深く悩みことから、強い自己否定や離職などの行動に結び付くケースも少なくありません。仕事に対するやりがいを喪失する段階といえます。
03バーンアウトを引き起こす要因
バーンアウトは、職場での慢性的なストレスが蓄積された結果生じるストレス反応の1つとして位置づけられています。バーンアウトを引き起こす要因は、以下の2つです。
- 1.個人要因
- 2.環境要因
1.個人要因
性格や年齢、勤続年数などがバーンアウトの要因になり得る要素です。これらは、単独の要因ではなく、いくつかの要因が介在していると考えられています。性格でいえば、ひたむきに仕事に向き合い、熱心に他人と関わろうする人ほど、バーンアウトしやすいのです。
また、勤務年数が長く、年齢の高い人よりも若い人の方がバーンアウトする確率が高いといわれています。なぜなら、若い人の方が職務達成への期待が高く、周囲の期待に応えようとする傾向にあり、ストレスへの対処経験が不足しているためです。
2.環境要因
長時間勤務や激しいノルマ、身体的負担を伴う作業などの過重負担は、バーンアウトと密接な関係があることが、多くの研究によって明らかになっています。その一方で、たとえ勤務時間が長く、 過重負担が感じられるような状況であっても、関わる人数が少なければバーンアウトの発症頻度は下がることから、サービスの適正数も影響するようです。
さらに、 この過重な負担が強制や命令といった場合は、やり遂げたとしても、充実感ではなく疲労感の方が強まるでしょう。仕事の量や進め方を自分でコントロールすることが難しくなり、バーンアウトのリスクが高い深刻な環境といえます。
04社員のバーンアウトを予防する方法
バーンアウトを引き起こす個人要因、環境要因について解説しました。性格特性や年齢、勤勤続年数と業務の量と質、企業体質などがバーンアウト発症の要因になっています。ここでは、社員のバーンアウトを予防する方法について解説します。
- ・社員の労働環境を整備する
- ・サポート体制を整える
- ・個人を尊重する組織文化を整える
- ・ストレスチェックを活用する
- ・メンタルヘルス研修を実施する
1.社員の労働環境を整備する
バーンアウトの予防には、現行の労働環境の改善と整備が重要なポイントになります。労働時間の目標値を定め、恒常的な残業を削減することで、長時間勤務が当たり前の過酷な労働を回避できるでしょう。
加えて、有給休暇やリフレッシュ休暇などが計画的に取れるようにすることも必要です。労働契約で定められた労働条件であっても、職場の雰囲気によっては、労働条件の権利を行使できないケースも少なくありません。労働環境に問題があるほど、バーンアウトの予防効果が高くなるため、積極的に労働環境の整備を進めましょう。
2.サポート体制を整える
社員の精神的サポートができる体制を整えることも、バーンアウト予防のポイントです。特に、新入社員や他部署から異動した社員は注意が必要になるでしょう。経験やスキルが十分でなかったり、周囲との信頼関係が築けていなかったりするため、多くのエネルギーを費やすことになるためです。勤続年数の長い社員においても、新しい業務に対して、今までのやり方を大きく変更しなければならない場合は不安や疲労を溜め込みがちになります。
社員の精神的サポートには、1on1ミーティングでコミュニケーションをとることが効果的です。業務状況を尋ねるなど、社員が抱える悩みや疑問などを共有すると、バーンアウトの予兆を察知することができるでしょう。
3.個人を尊重する組織文化を整える
バーンアウトの予防には、個人を尊重し、思いやりと共感のある企業文化を築くことが重要です。離職率が高い企業では、社員の間に不安定感が漂いやすく、相手に対する配慮が欠けていることは否めません。一方で、社員同士が尊重し合える関係性が育っている企業は、比較的安定した雰囲気があり、社員の心身に良い影響を与えています。
バーンアウト予防の観点から、企業や組織をリードする管理職には、バーンアウトのリスクを見落とさないためのスキルやトレーニングが必要になります。情緒的に消耗している社員に「頑張りなさい」と激励したり、「できないなら仕方ない」と突き放したりする不適切な指導があると、休職や退職に結びつくリスクがあるためです。さらに、バーンアウトの状態に自分自身、もしくは周囲の社員が気づけるよう、知識として知っておくことも必要でしょう。
4.ストレスチェックを活用する
ストレスチェックを活用するのも、バーンアウトの予防に効果があります。2015年に労働安全衛生法が改正され、企業(労働者が50人以上)は労働者に対し、ストレスチェックを行うことが義務付けられました。
社員のストレス状態を判断するためには、一定の基準に基づいたストレスチェックが効果を発揮します。バーンアウトの初期症状は、なかなか気づきにくいものです。ストレスチェックを定期的に実施することで、メンタルヘルス不調の徴候を早期に発見し、バーンアウトの発症を防止につながります。
5.メンタルヘルス研修を実施する
社員のバーンアウトの予防には、メンタルヘルス研修が役に立ちます。バーンアウトに関する知識は、全社員を対象に、研修で身につけるのが効率的です。
研修では、ストレスの兆候と対応の仕方からバーンアウトの症状や要因、ストレスコントロールのスキルや思考法など幅広く学ぶことが可能です。また、バーンアウト以外にも、うつ病といった心の病の症状と要因、克服方法についても知っておくと、自社のメンタルヘルス対策の水準を上げることができるでしょう。
05バーンアウトを防ぐSchooのオンライン研修
Schoo for Businessは、国内最大級7,000本以上の講座から、自由に研修カリキュラムを組むことができるオンライン研修サービスです。導入企業数は2,700社以上、新入社員研修や管理職研修はもちろん、DX研修から自律学習促進まで幅広くご支援させていただいております。
Schoo for Businessの特長
Schoo for Businessには主に3つの特長があります。
【1】国内最大級7,000本以上の講座数
【2】研修設定・管理が簡単
【3】カスタマーサクセスのサポートが充実
バーンアウトに関するSchooの講座を紹介
Schooは汎用的なビジネススキルからDXやAIのような最先端のスキルまで、7,000本以上の講座を取り揃えております。この章では、バーンアウトに関する授業を紹介いたします。
習慣が10割-知らないうちにメンタルが強くなっている授業-
本コースは知らないうちにメンタルが強くなるために、メンタルとの向き合い方を学んでいく授業です。
-
有限会社シンプルタスク 代表取締役
有限会社シンプルタスク代表取締役。習慣形成コンサルタント。喜働会会長。JADA協会SBT1級コーチ。「大人を元気にする」を使命に、自己実現のための習慣形成連続講座『喜働力塾』を全国で延べ84期実施、卒業生は2,500人以上。習慣形成のメソッドを中心に、成果・結果を積み上げていく方々を、今なお多数輩出し続けている。多業種にわたり各企業の顧問として、人間力戦略のコンサルティング、人材育成トレーニングを中心に増収増益のお手伝いを担当する傍ら、習慣形成を軸に人材育成トレーニングや講演、セミナーで全国をまわっている。子供たちの夢を叶えるために、小、中、高等学校の生徒向け、保護者向けの講演も積極的に行っている。脳の機能と習慣形成を活用した能力開発で、ビジネスマンだけでなく、スポーツチーム指導、受験生の能力アップも行っている。著書には「成功する社長が身につけている52の習慣」「習慣が10割」などがある。
習慣が10割-知らないうちにメンタルが強くなっている授業-を無料視聴する
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
メンタルヘルスマネジメント〜メンタルダウンを未然に防ぐラインケアの基礎〜
この授業では職場の上司が部下の心の健康づくりのためにケアをしていく「ラインケア」を学び、 心身ともに健全なチームづくりの実践ができるようになることを授業のゴールとしています。
-
株式会社カイラボ 代表取締役
大学卒業後、(株)日本能率協会コンサルティングにて企業の業務効率化などに従事。ストレスが原因で入社2年で退職。 2011年に社会人教育のベンチャー企業でマネージャーを務める。 2012年株式会社カイラボを設立。新卒入社後3年以内で辞めた若者100人インタビューをおこない、その内容をまとめた「早期離職白書」を発行。 現在は多くの企業の若手社員定着率向上支援を行うほか、 講演、管理職・OJT担当者向け研修、採用コンサルティングなどを行っている。
メンタルヘルスマネジメント〜メンタルダウンを未然に防ぐラインケアの基礎〜を無料視聴する
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
06まとめ
近年、バーンアウトは増加傾向にあり、ひたむきに仕事に向き合い、他人と熱心に関わろうする人ほど、バーンアウトしやすいです。さらに、人材不足などによる長時間労働や過重労働といった労働環境上の課題も、バーンアウトを引き起こす要因になっています。そのため、企業としては労働環境やサポート体制を整え、メンタルケアについて研修を実施することも重要な取り組みとなります。企業におけるバーンアウト予防の取り組みが、今後ますます求められるでしょう。