抜擢人事のメリットは?年功序列に代わる新しい人事制度を徹底解説
「年功序列」より「実力主義」の会社が求められるようになった今、成果主義の考え方に由来する制度「抜擢人事」への注目が高まっています。本記事では、抜擢人事のメリットや、導入を成功させるポイントについて紹介します。これから抜擢人事を導入したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
- 01.抜擢人事とは
- 02.抜擢人事で期待できる効果
- 03.抜擢人事の注意点
- 04.抜擢人事を成功させるポイント
- 05.まとめ
01抜擢人事とは
抜擢人事とは、人材登用の際に年齢や年功を飛び越えて未経験者や若い人材を高いポジションに就かせることです。
2019年に行われた朝日生命の調査によると、7割以上の労働者が「年功序列」よりも「実力主義」の会社を求めていることがわかります。仕事の成果や実力を、正しく評価してほしいと考える労働者は多く、従業員のモチベーション維持には、適材適所の人事采配が必要不可欠であると考えられてます。
近年は、企業の人事管理の枠組みが年功を重視したものから、成果や業績を重視したものに切り替わりつつあります。それに伴って抜擢人事制度への注目が高まってきているのです。
抜擢人事が求められる背景
抜擢人事が求められる背景には、成果主義への価値観の移行や、グローバル化の促進などが挙げられます。我が国では少子高齢化の影響によって中高年齢層の社員が増え、年金や退職金などの人件費が経営を圧迫していることから、年功序列制度の廃止を決断する企業が増えています。これにより、従来の年功序列制度は崩壊を迎え、代わりに労働者の価値観は、成果至上主義へ移行しつつあります。 また、現在のビジネスシーンでは、市場に飛び交う情報の量とスピードが飛躍的に上昇しているだけでなく、異分野同士のコラボレーションが新たなビジネスを創造しています。常に新しいものに迅速に対応する能力は、あらゆる企業に求められるようになり、現代ビジネスの流れに乗り遅れるのは、企業の存続にも関わる重大な問題だと考えられるようになりました。 こうした背景により、抜擢人事は労働者の価値観の移行や、現在のビジネスの速度に対応するために有効な人事采配だと考えられているのです。
抜擢人事の方法
抜擢人事では未経験であっても能力がある、成果を上げるなど、一個人のポテンシャルの高さで重要なポストに登用することが一般的です。そのため若手社員が先輩社員を飛び越して昇進し、上司に抜擢される場合もあります。 また、社外から優秀な人材を引き抜き、重要ポストに登用するケースも少なくありません。社外からの人材登用は、しがらみによる人事制度を抜本的に見直せるため、社内全体の活性化にも期待できます。
02抜擢人事で期待できる効果
ここまでは、抜擢人事の概要や主な方法について解説してきました。 抜擢人事は実施することで、「次世代リーダー育成」「組織全体の活性化」「従業員のモチベーションアップ」「人事の活性化」「若手社員の成長促進」「人事担当者の意識変革の促し」など、あらゆる効果をもたらします。ここからは、抜擢人事で期待できるそれらの効果について詳しく紹介します。
次世代リーダー育成
抜擢人事により、若い人材が高いポストに就くことで、自分の手腕をさらに発揮できるようになるため、リーダーとしての資質を身につけやすくなります。 適切なポストに能力のある人材が登用されると、若い世代はその姿勢を見て育つようになり、新たな次世代リーダーを育成しやすくなるのです。
組織全体の活性化
従来の年功序列制度では、能力だけでは高いポストに就けないという課題が強く問題視されていました。しかし、抜擢人事は年齢や年功に関係なく、能力次第で人員配置が変わります。そのため、早期に役職者に出世しようと努力する人も増え、結果的に組織全体の活性化につながります。
従業員のモチベーションアップ
年功序列型の人事では、プロジェクトを主導する立場にある役職に就くためには経験や社歴が評価基準となり、若手や転職者にはチャンスが回ってこないため、社員のモチベーション維持が難しいという問題がありました。 その点、抜擢人事では「誰にでもチャンスがある」という環境が作れるため、若手を中心とした全従業員のモチベーションを向上させられるのです。
人事の活性化
抜擢人事制度を採用することで、ポジションに新しい人材を登用できるようになります。また、成果を挙げられる人物に相応の職務を与えることでやりがいや成長をもたらし、モチベーションを維持・向上させる効果を期待できます。
若手社員の成長促進
抜擢人事は、若くても能力があれば主要ポストに抜擢される人事です。そのため、入社年数が浅い若手社員にも、先輩社員と同じチャンスが与えられます。能力のある若手社員に未経験の分野やポストを任せた場合、潜在的な能力が発揮されるケースも少なくありません。能力のある人材が上司になって部下の能力が引き出されれば、それは会社にとって大きなメリットとなるのです。
人事担当者に意識変革を促せる
従来の年功序列制度では、先例にならった人事配置が行われるだけで、能力やスキルなどは重視されていませんでした。一方、抜擢人事では社員の能力やスキル、経験などを吟味したうえで人事配置を行う必要があるため、人事担当者の手腕が問われます。従来のやり方のままでは通用しないため、必然的に人事担当者の意識変革を促します。
適材適所に社員を配置できる
適材適所に従業員を配置できる点もメリットです。上司や人事部の固定観念や、先入観で人材を配置をしていると、従業員の適性と業務内容にギャップが生じ、能力が十分に発揮できないおそれがあります。 企業にとって大切な経営資源である人材の現状を把握し、能力を存分に発揮できる適切な場所への配置こそ、企業の業績向上には欠かせないものです。
03抜擢人事の注意点
企業だけではなく、社員にとってもあらゆるメリットをもたらす抜擢人事。しかし、事前の準備なしにいきなり制度導入をすると、失敗してしまうこともあるため注意が必要です。 ここでは、抜擢人事を導入する際の注意点について解説します。
企業風土に合わせる
長年、年功序列制度をとっていた企業の場合、上位に立つ人たちのほとんどが年功序列の影響を受けており、抜擢人事に対して強い抵抗感を示す可能性があります。 抜擢人事ではこれらの人々を無視して新たな人材を抜擢することになるため、企業風土に悪影響を与えるケースも少なくありません。導入時には、自社の企業風土に適しているのかを考慮したうえで制度化を検討する必要があります。
他の従業員のモチベーションダウンに配慮する
抜擢人事の最大のデメリットは、抜擢されなかった社員の不満やモチベーションダウンです。年功序列の意識が高い会社であればあるほど、その傾向は強くなります。 そのため、抜擢されなかった従業員のモチベーションコントロールの配慮を怠らないようにしましょう。
抜擢後に能力・人脈不足が発生しやすい
抜擢人事をしたのに抜擢者の能力が実際には不足していた場合、期待していたほどの成果が挙げられない状況となってしまいます。 抜擢者に抜擢されるだけの能力がなかったことが明らかになった場合、抜擢人事をした人事側にも不満を持つ人が出てきて、企業に悪影響を与えてしまうこともあります。
社内で反対勢力が生まれることもある
評価に正当性がなく、選考のプロセスが不透明な場合、新しく抜擢した人に他の社員がついていかないなど、組織が正常に機能しない事態も起こりえます。社員のフラストレーションが溜まり、最悪の場合は、社内で反対勢力が生まれることもあるため、抜擢人事では抜擢されなかった人への処遇も考えておきましょう。
04抜擢人事を成功させるポイント
抜擢人事導入時には、なぜ今、抜擢人事が必要なのかなど、抜擢人事の必要性やメリットを従業員に十分に理解してもらうことが重要です。ここからは、抜擢人事を成功させるポイントを紹介します。自社の運用開始時にぜひ参考にしてください。
評価方法をオープンにする
抜擢人事にあたり、その評価制度及び抜擢人事の選考プロセスは明確化しておかなければなりません。評価によって能力のある人を抜擢するため、その評価基準が明確であることは人事の正当性の証となります。必ず、評価方法の詳細を全従業員に開示するようにしてください。
フェアな評価を徹底する
抜擢人事を成功に納めるには、不公平な雰囲気を与えないことが重要です。 「年功序列制度で次は自分が高いポストに就くはずだったのに、突然の抜擢人事でそれが阻まれた」と感じると、従業員は企業に不満や不信感を覚えます。 そのため、評価時には正しく公平な評価を徹底し、従業員の不安を募らせないように努めなければなりません。
抜擢されなかった人のケアを忘れない
さらに人事として行うべきは、抜擢をされなかった社員への配慮をすることです。抜擢されなかった社員にも、それぞれの役割を活かした活用の仕方を考えることで、社員の不満も減り、より人材を最大限に活かすことができるようになります。
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05まとめ
抜擢人事は、年齢や社歴にかかわらず、若い社員を主要な要職に起用する人事制度です。抜擢人事には社員のモチベーションをアップさせるメリットがある一方で、年齢や学歴、経験などにかかわらずポストが与えられるため、年功序列制度が根深く残っている企業では反発が予想されるというデメリットがあります。 そのため制度導入時には、急激な改革ではなく、まずは成果主義の導入や、役員から抜擢人事を行うといったように、段階的に取り入れていくとよいでしょう。ぜひ本記事を参考に、従業員のモチベーションアップによる組織全体の活性化を目指し、抜擢人事の導入を検討されてみてはいかがでしょうか。
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登壇者:高木 一史 様サイボウズ人事本部 兼 チームワーク総研所属
東京大学教育学部卒業後、2016年トヨタ自動車株式会社に新卒入社。人事部にて労務(国内給与)、全社コミュニケーション促進施策の企画・運用を経験後、2019年サイボウズ株式会社に入社。主に人事制度、研修の企画・運用を担当し、そこで得た知見をチームワーク総研で発信している。