人事通達とは?適切な人事通達を出すためのポイントを解説
人事異動の季節が近付いてくると、社内に向けて人事通達が発信される企業が多いのではないでしょうか。人事通達とは、企業が所属している社員に対して人事異動を発表・掲示することを指します。この記事では、人事通達の解説と共に適切な人事通達を出すためのポイントを解説します。
- 01.人事通達とは?主に2種類に分けられる
- 02.辞令の種類
- 03.内示が行われるタイミングは辞令の2週間前が一般的
- 04.人事通達の書き方やフォーマット
- 05.まとめ
01人事通達とは?主に2種類に分けられる
人事通達には、主に2種類あります。それは「辞令」と「内示」です。どちらも、企業から働いている社員に対して出されるものです。対象となる社員の今後の動きに関する重要な通達となるため、取り扱いには十分に注意しなければなりません。
辞令
辞令とは、人事事項の決定通知のことです。具体的には、企業が従業員の転勤や異動、昇進、降格といった人事の決定自事項を従業員に伝えることを指します。日頃、上司が従業員に出す業務命令とは異なり、勤務地や賃金、役職、就業内容等、人事に変更があるような命令であることから、言葉で通知するだけでなく「辞令書」という書類を交付して通知するのが一般的です。
内示
内示とは、人事通達である辞令を社内で公にする前の段階で、当事者となる人物に対して物事を伝達することです。用いられる場面は、配置換えや転勤などの事前通知の場面が多いです。 また、企業は配置換えなどの人事異動を公式発表する前に、非公式で内々に本人や一部の関係者だけに異動内容を伝えることがあります。こうした伝達の方法の総称を「内示」と呼びます。
その他の社内発信と間違えやすい
人事通達には、他の社内発信と紛らわしく感じるような一面があります。そのため、正しい理解をしておかなければ、どのような発信か分かりづらい場面があることに注意しましょう。人事通達を出す際には、対象者には事前に「内示」で伝えるのが一般的ですが、その他の社員については、発信の前日までにいつ情報が公開されるのかを事前に通達するのが一般的です。
人事通達と通知の違い
通知とは、特定あるいは不特定多数の人物に対して、必要な物事を知らせることです。基本的に法的な強制力などはなく、相手に事前に内容を知らせる行為を意味する場合が多いです。使用例としては、「本社に採用の通知が届いた」や「合格の通知を相手に出す」などで、通知を別の意味合いを持つ通告や通達に置き換えることはできません。
人事通達と勧告の違い
勧告とは主に役所や官公庁などが相手方の任意の同意と協力を得て、相手の行動と得たい成果の実現を目指す告知行為のことです。しかし、勧告は法的な拘束力を持ちません。また、相手方に対して直接に法的効果を伴わない告知行為となるため、扱いには十分に注意をする必要があります。一般企業でも勧告を用いることがありますが、これは口頭での注意のレベルを超えて、文書として記録が残すのが一般的な対応となります。
02辞令の種類
辞令の種類にはどのようなものがあるのでしょうか。基本的に現在所属している部署や役職に変動がある場合は辞令が発出されます。この記事では多くの種類がある中でも目にすることが多い「採用辞令」「配属転換辞令」「出張辞令」「転籍辞令」「転勤辞令」「昇格辞令」「昇給辞令」を紹介します。
採用辞令
採用辞令は入社が決まったことを伝えるために交付する辞令のことです。このうち「採用通知書」は、法律で交付が義務付けられている書類ではありません。しかし、人材を採用する際には、労働基準法によって「労働条件通知書」の交付が義務付けられています。無用なトラブルを避けるため、採用通知書と労働条件通知書は両方用意しておくことが良いでしょう。また、その他に採用日や基本給などの労働条件を伝える辞令を改めて交付する企業が多いです。
配属転換辞令
配属転換辞令は、配属先の変更を交付する事例です。こちらも法律上の義務はない辞令ですが、業務内容を変更する日を伝えるなどを通して労働者の精神的な区切りを付けやすくするために交付を行う企業が多いです。
出張辞令
出張辞令は、「勤務地以外の場所での出張業務を、一時的に行うことを伝達する辞令」です。近年では、わざわざ辞令として出す企業はほとんどなくなり、長期出張時のみというのが一般的です。出張辞令を受けた社員は、社内の出張規則に則って出張を行うことになります。
転籍辞令
「別の企業に異動することを伝える」辞令です。出向と似た意味合いを感じますが、明確に意味が異なります。そもそも出向には、転籍出向と在籍出向があります。この転籍辞令は出向の中でも「今の企業を辞めて、辞令が出た先の企業の社員となることを命じる辞令」となります。つまり、この辞令によって、元の会社との雇用関係は終了し、以降、その労働者の給与は転籍先の企業が支払うことになるのです。 転籍辞令は、会社を分割する際などに、子会社への異動を伝える辞令としての活用が想定されます。仮に子会社(グループ企業)であったとしても、全く異なる会社への転籍となり、社風も給与体系も全く異なっている場合が多いため、労働条件の確認は必ず行う必要があります。ちなみに転籍辞令を機に退職する場合は「企業都合」での退職になるため、失業保険を申請する際には注意が必要です。
転勤辞令
転勤辞令は、「転勤を命じるために交付される辞令」です。業務内容は変わらずとも、勤務地の変更が言い渡されます。転勤辞令が発出された社員はその後社内の転勤に関する就業規則に則って、転勤地への異動の準備を始める必要があります。「転勤なし」という就業規則または労働条件で勤務している場合を除き、基本的に社員に拒否する権利はありません。
昇格辞令
昇格辞令は「社員の格を引き上げる辞令」です。後述する昇進辞令とは異なり、役職には関係しない辞令です。昇進が役職が上に上がることに対して、昇格が社員の格を上げることになるので理解しにくい部分もあるかもしれません。例えば、現在の身分では課長になることはできないという規定がある社員を、課長を務められる社員の格に引き上げ、課長にいつでもなれる状態にするというイメージを持つと良いでしょう。
昇進辞令
昇進辞令は「役職を上げることを伝達する辞令」です。辞令の中では非常に分かりやすく、良いことを伝える辞令です。人事評価を基に役職の昇進を決定し、そのことを伝えるために用います。これまでの企業への貢献度を評価したり、周囲からの高い評価が辞令内容に繋がるため、社員のモチベーションも高まる効果が期待できます。
03内示が行われるタイミングは辞令の2週間前が一般的
一般的に辞令が当該社員に「内示」という形で伝達されるのは2週間前が一般的です。ただし、転居を伴う転勤辞令などの場合は、距離や時期などによって1ヶ月前までになるなど幅があります。他の社員に知られないように別室で行ったり、オンライン会議の場で伝えたりすることが多いようです。
基本的に内示を拒否することはできない
内示は、企業としての決定事項として伝えられるものです。つまり「相談」ではないため、社員の意思は基本的に加味されません。つまり、内示を提示された時点で、それは辞令の発出に等しいものと捉える必要があるものです。しかし、内示の内容が企業と労働者が結んでいる労働契約に反している場合はその限りではなく、交渉するまたは拒否することも可能になります。
拒否することで懲戒解雇に該当する可能性もある
労働条件に反していない辞令を拒否することで、企業が懲戒解雇を行う可能性もあります。辞令はそれだけ重要な、企業から労働者への指示命令ということです。一方で、近年では転勤を望まない社員も増えてきており、世の中の働き方も変化してきているため、労働条件に転勤なしの項目を設けるなど制度変更も進んでいます。企業側も優秀な社員を転勤がきっかけで辞めさせてしまうことのないよう、労働条件の運用を定期的に見直していくことが重要です。
内示の内容について上司に相談することは可能
内示を受けた後に、上司にその内容について相談することも可能です。しかし、先述した通り、内示は拒否することの出来ない辞令の内容を、事前に伝えているに過ぎません。つまり、あくまで相談であり、上司が内示をひっくり返すことができる場合は非常に稀です。 そのような場合でも上司も同じように転勤を経験している場合が多いため、転勤後の相談等に乗ってもらうことを目的にするのが一般的です。人事側としては、上司に相談に乗ってもらうように依頼をかけておくのが良いでしょう。
内示の内容は辞令が出るまで口外しないのがベター
内示が出た場合は、その内容を他の社員に口外しないことがベターな選択です。公式の辞令ではない状態で口にすると、不要な詮索を受けることになったり、噂話が広がることになったりすることで各所に迷惑をかけてしまいかねません。内示はあくまでも、本人が当日驚きすぎないように企業が事前に知らせておく配慮の一環です。企業によっては、内示を行わない場合もあります。
04人事通達の書き方やフォーマット
人事通達のフォーマットとなるものは、インターネット上に多く公開されています。それらを参考にすると、比較的簡単に通達を作成することができます。また、自社の決まったフォーマットが存在する場合は、それを活用して作るように指示があるはずです。その方法に従って作成しましょう。
決められた書き方はなく企業ごとに異なる
人事通達に法律などで決められたフォーマットはありません。企業によって書き方、伝える内容などはさまざまです。人事通達を出す際に大切なのは、「誰に、どのような内容を、いつから変更するか」という点です。内示を上手に伝えながら活用するのが良いでしょう。
押さえておくべき記載内容
人事通達には一般的に以下の項目を含めておくことが必要です。
- ・日付
- ・社名と発令者
- ・タイトル
- ・辞令の発効日付
- ・対象者
- ・事例の内容
上記の項目を含めた辞令であれば伝わりやすいと考えられます。あまり長い文章を記載することなく、端的にかつ簡潔に伝えることがポイントです。
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05まとめ
人事通達にはさまざまな種類があります。それぞれの辞令が社員の今後の人生を大きく左右するものであることに間違いはありません。適切な人事通達を出すためにも発令内容やタイミングを協議して運用することが大切です。