バーナードの組織の三要素とは?組織に必要な3つ要素を理解し導入するためのポイントを解説
「組織の三要素」は、組織を構築していく過程において念頭に置くべき重要な要素です。この3つの要素を正しく理解し組織運営に活用することにより、しっかりとした組織の基盤が完成し、ブレない組織を形成することが可能となります。 当記事では、「組織の三要素」について詳しく解説するとともに、具体的に組織に導入するためのポイントをご紹介します。
- 01.組織の三要素とは
- 02.組織と集団の違い
- 03.組織存続に必要な2条件
- 04.「共通目的」の組織目標を立てる際のポイント
- 05.「情報共有」を円滑にするためのポイント
- 06.社員の「貢献意欲」を高めるためのポイント
- 07.まとめ
01組織の三要素とは
「組織の三要素」とは、「コミュニケーション」「貢献意欲」「共通目的」という3つのエレメントを指し、これらは組織を形成するための重要な条件であるといわれています。 ここでは「組織の三要素」の理解を深めるために、「三要素」が具体的にどのように定義され、それぞれの要素が組織においてどのような役割を担っているのか詳しく解説します。
C.I.バーナードが提唱した組織の定義づけ
「組織の三要素」は、アメリカの経営学者チェスター・バーナードが提唱した、組織が成立するために必要な3つの条件のことを言い、別名「バーナードの組織の三要素」として広く知られていますバーナードは、1938年に出版した著書「組織の役割」の中で、組織が成立するためには、「コミュニケーション」「貢献意欲」「共通目的」の三要素が不可欠であり、どれか一つでも欠けている場合には不完全な組織として、組織が健全に機能しなくなると定義づけました。加えて、組織とは、2人以上の集まりによる集合体であり、2人以上の人間が何かを成し遂げようとする時に組織が形成されると言及しています。 このように、バーナードが定義づけた「組織の三要素」は、組織の本質を見事に突いており、現代においても組織を構築しマネジメントしていく上で無視することの出来ない基本の大原則とされています。 それでは「組織の三要素」について、それぞれの要素がどういった働きを持つのか詳しく解説します。
コミュニケーション(意思疎通)
組織が成立するための1つ目の要素は、「コミュニケーション」です。 組織においてコミュニケーションは、メンバー同士の情報共有に不可欠であり、コミュニケーションなしには組織が物事を進めることが出来ません。会社というひとつの組織に置き換えてみても、同僚や上司との意思疎通がきちんと取れていなければ、組織全体がまとまりなく非効率でバラバラな状態となってしまいます。 コミュニケーションは組織が機能するための必須条件といえるでしょう。
貢献意欲(協働意欲)
次に、2つ目の要素は、「貢献意欲」です。 貢献意欲とは、組織の一員が組織に貢献したい思うモチベーションのことを指します。 これには、組織全体に対する貢献だけではなく、チームや仲間に対する貢献も含まれ、組織のメンバー同士が一緒に働き、互いに助け合いながら組織に貢献したいという意欲でもあります。つまり、「貢献意欲」は「協働意欲」と言い換えることも出来るでしょう。 ひとつの組織が組織として確実に機能し、高い成果を出していくためには、この貢献意欲が非常に重要となります。社員が積極的に組織に貢献したいという欲求が欠けていれば、組織として目標を達成できる見込みは極めて低くなり、最後には組織が崩壊してしまうかもしれません。「貢献意欲」は組織が機能するために不可欠な要素です。
共通目的
そして3つ目の要素は「共通目的」です。 共通目的とは、組織全体が同じ目的意識を持って何かに取り組むことを指します。これを会社に当てはめると、「企業理念」や「経営ビジョン」に該当するでしょう。 バーナードの定義づけに基づいて考えると、組織は同じ目的を持つ人々の集まりによって形成されます。つまり、組織内部において社員が互いに「共通目的」を共有することにより、組織全体が同じ方向性を持って進むことができ、ひとつの組織としてまとまりを持って機能することが可能となるのです。 このことから、「共通目的」は組織を構成するための重要な要素の一つとして考えることが出来ます。
02組織と集団の違い
前述の通り、バーナードは組織の概念を、2人以上の人間が何かを成し遂げようとしたときに組織が形成されると言い表しました。それでは、「組織」と「集団」にはどのような違いがあるのでしょうか。 まず「組織」の特徴として、共通目的を達成するために組織内部で綿密な役割分担がなされ、それぞれの活動が調整されていることが挙げられます。これらの特徴は、「分業」と「調整」と呼ばれ、組織が効率的に機能して行く上で大きな役割を果たします。つまり組織とは、組織の三要素により成り立っており、かつ、個々の役割と働きが明確化されることによりひとつの組織として十分に機能すると言えるでしょう。 一方で「集団」の特徴は、集団内における共通目的の有無に関わらず、偶発的に同じ時間に同じ場所に人々が集まっていることが挙げられます。また、集団内の構成メンバーはそれぞれが完全に独立しており、目的達成のために互いにコミュニケーションを取ったり協働作業を行うことは必要条件ではありません。つまり、集団は独立した個々の集まりと言えるでしょう。
03組織存続に必要な2条件
組織成立の次に重要課題となるのは、組織を長く存続させることです。 どんなに良い組織が成立しても、その先も上手く機能し続けることが出来なければ、やがて衰退し崩壊してしまうでしょう。 バーナードは、組織成立の三要素に加えて、組織が存続するために必要な2つの条件についても言及しています。そこで、ここでは組織存続に必要な2条件をご紹介します。
内部均衡
組織存続のための1つ目の条件は、内部均衡です。 内部均衡とは、組織内部の貢献度のバランスを表し、メンバーが自分の貢献以上のリターンを受け取っていると考えている状態を言います。バーナードは、組織が存続していくためには、組織メンバーの貢献意欲を継続的に引き出すことが重要であり、メンバーの貢献意欲を引き出すためには、メンバーを満足させるための誘因(対価)が必要であると考えました。誘因の具体例として、雇用の安定、貢献度に見合った給料・ボーナスの支払いなどが挙げられます。 組織内部において、このような「貢献」と「誘因」のバランスを常に上手く保つことがメンバーの存続、そして組織存続の条件となるのです。
外部均衡
2つ目の存続条件は、外部均衡です。 外部均衡とは、社会(外部環境)における組織の存在意義や有効性のことを言います。 時代とともに変化し続ける「社会」や「市場」において、常に貢献し続けることが存続にとって重要となります。そのためには、外部環境の変化に応じて柔軟に対応し変化していく必要があります。 このことから、社会に貢献し必要とされる組織であり続けることが、組織存続の条件といえるでしょう。
04「共通目的」の組織目標を立てる際のポイント
ここからは、組織の三要素を組織運営に取り入れる際のポイントについて詳しく解説します。 まずは、「共通目的」としての組織目標を設定する際のポイントについて詳しく見ていきましょう。共通目的は、組織ビジョンであり会社の方向性を決める大切な要素です。また、共通目的を組織内部でしっかりと共有することは、ひとつの組織としてまとまりを持って機能するために不可欠です。つまり、共通目的を上手く設定し組織に反映させることが、円滑な組織運営のための重要な鍵となります。それでは、実践的なポイントを詳しくご紹介します。
具体的な目標を設定する
「共通目的」として設定する組織目標は、出来る限り具体的な目標に定めることが大切です。 なぜなら、組織目標は社員の目標とも言える会社のビジョンであり、目標達成をするプロセスにおいて社員が達成する過程を具体的にイメージし、納得できる目標設定でなければ社員の貢献意欲を高めることが難しくなるからです。ここで曖昧な目標設定をしてしまうと、組織が非効率になり、無駄な時間やコストが増えてしまうリスクも高まります。 いつまでに達成するべき目標なのか期限を明確に定め、組織目標の背景や理由、達成までのプロセスを中長期的な目線に細かく落とし込むことで、社員が組織目標を具体的にイメージし社内共有しやすくなります。また、明確な組織目標であることで、組織が団結して機能することが可能となるでしょう。
達成可能な目標を設定する
目標を設定する時には、目標の難易度を見極めた上で適切に目標設定することが肝心です。 組織目標は、社員のモチベーションに大きく影響します。簡単な目標では、組織全体の成長や社員のパフォーマンスを最大限に引き出すことができません。反対に、あまりにも高いレベルの目標では社員が成功体験を得ることが出来ず、社員のやる気を奪ってしまいます。 組織目標の設定は、難しいけれど達成可能なレベルの目標設定であることが理想的です。
組織目標と個人目標を連動させる
組織目標を達成するためには、社員一人ひとりが組織目標の意味をしっかりと理解し、個人目標に反映させることが重要となります。それにより、組織の方向性を見失うことなく業務を稼働させることが可能となります。 組織目標と個人目標を連動させることで、組織の目指すベクトルが揺らぐことなく、個人と組織全体の成長に繋げることが出来ます。
05「情報共有」を円滑にするためのポイント
「情報共有」は組織成立のための要素のひとつです。また、組織の業務効率化や生産性を向上させるためにも、組織内部における情報共有を円滑にすることは組織運営において重要と言えます。ここでは、情報共有を円滑にするために押さえておきたいポイントを具体的に解説します。
社員に情報共有の必要性を理解させ意識を改善する
組織が成立するためには情報共有を徹底させることが鍵となります。 しかしながら、社員一人ひとりが情報共有をすることの必要性と重要性を十分理解し、実行に移さなければ、組織内部における情報共有やコミュニケーションが活発になることはありません。 情報共有の必要性を理解してもらうために、情報共有のもたらすメリットを提示し、業務における利点を示すことは社員の意識を高めることにつながります。 情報共有を円滑にする第一歩として、まずはその意識を高めることが不可欠です。
社内システムを整備する
情報共有をスムーズにするためには、社内システムを整備することも有効でしょう。 社内システムを活用することにより、組織内部において必要な情報が分かりやすく整理され、社内の情報共有を効率的に行うことが可能となります。 また、社内システムを構築することにより、情報共有のための仕組みやルール作りの見直しと改善にも繋がります。 社内システムの導入により情報共有するための環境を整えておくことは、情報共有を円滑にするために効果的な手段と言えるでしょう。
情報共有を行った社員を賞賛・評価・感謝する
情報共有を行った社員を積極的に評価したり感謝することは、組織内部の情報共有を活発にするためのポイントです。 例えば、社員が積極的に情報共有を行っても、メンバーに感謝されなければ、情報共有を行った社員はチームに貢献している実感が得られません。 人間は、自分の行動が社会や人の役に立っていると実感出来たときに、欲求が満たされ、もっと周囲に貢献したいと考えるようになります。そのため、情報共有を行った社員に対して日ごとから互いに感謝したり褒めることは、情報共有を活性化させるための土壌作りという観点から非常に重要となります。
06社員の「貢献意欲」を高めるためのポイント
最後に社員の「貢献意欲」を高めるために意識すべきポイントを解説します。 貢献意欲は、社員のモチベーションであり、組織やチームメンバーと互いに協力し合いながら物事を成し遂げるための協働意欲でもあります。機能する組織を作り上げるためには、社員の「貢献意欲」を高く維持し続けることが大切です。
人事評価制度を改善する
現行の人事評価制度を見直し、必要であれば改善させていくことは社員のモチベーションを高めるために有効です。 なぜなら、仕事の貢献度や個人の能力が適正に評価されることは、社員の仕事に対するモチベーションや組織に対する信頼感に大きく影響するからです。 適正な人事評価を採用することにより、不公平感なく社員の貢献度を評価し報酬を与えることが出来れば、社員は満足感を持って業務に励むことが出来ます。必然的に組織に対する貢献意欲も高まるでしょう。 これらは、先述した「組織存続の2条件」のうちのひとつ「内部均衡」における貢献と誘因のバランスにも共通した考え方です。 つまり、人事評価制度の改善は、組織成立と存続のための重要課題と言えるでしょう。
社員のライフスタイルに合わせた働き方を提供する
組織に対する貢献意欲を高めるためには、社員が組織の中で安心して仕事に取り組める枠組みを作ることが大切です。 そのためには、ワークライフバランスの取れた働き方を会社が積極的に社員に提供することが効果的となります。具体例として、育児休暇制度や時短制度の導入、社内有給取得率の是正、フレックスタイム制度の導入、社員研修制度の充実化などが挙げられます。こうした取り組みにより、個人のライフスタイルに適した柔軟な働き方が実現するとともに、社員の組織に対する信頼度・安定感・モチベーションが高まり、組織に対する貢献意欲を向上させる効果が期待できます。
社内コミュニケーションを充実させる
組織内部の貢献意欲を高めるために、コミュニケーションは不可欠です。コミュニケーションを通して、社員は組織の一部であることを再認識したり、メンバーの悩みや仕事の問題点を互いに共有し、お互いが支えあいながら組織に貢献していくきっかけになることが期待できます。 コミュニケーションを充実させることは、組織に対する貢献意欲と社員同士の協働意欲を活性化するために、重要な取り組みのひとつであると言えるでしょう。
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■資料内容抜粋
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07まとめ
今回は、組織が成立するための三要素について導入のポイントと合わせて解説しました。 組織の三要素を組織の運営に反映させることは、より機能的で強固な組織を生み出すために欠かせません。組織の三要素を意識的に組織構築に取り入れることにより組織マネジメントの強化に役立てて下さい。
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組織開発の全体像から実践できる具体的な方法まで、体系的な組織開発の全貌をテーマにしたウェビナーのアーカイブです。テレワークの拡大も進む中、組織に広がる「他責のムード」に悩まされる人事責任者は多いのではないでしょうか。組織開発のフレームワークを活用して、組織の中で必要な「対話と合意形成」を生み出すことで、他責型組織から自律型組織への変革を実現する方法についてお話します。
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登壇者:小金 蔵人 様株式会社ZOZO 技術本部 技術戦略部 組織開発ブロック ブロック長 / 組織開発アドバイザー STANDBY 代表
1998年に大学卒業後、味の素株式会社に入社し、営業マーケティングに従事。2006年にヤフー株式会社へ転職し、新規ビジネス開発・サービス企画のリリースを経験するかたわらで各種組織活性プロジェクトを推進。2016年に希望して人事部門に異動後、全社の人材開発・組織開発を担当。1on1ミーティングをはじめとしたピープルマネジメントツールの推進や管理職のマネジメント支援と並行して、現場の組織課題解決をサポート。2019年に個人での組織開発アドバイザリー事業と組織開発エバンジェリストとしての情報発信を開始。2020年に株式会社ZOZOテクノロジーズ(現・株式会社ZOZO)へ転職し、現在は全社およびクリエイター部門の人事企画・人材開発・組織開発に携わっている。